|
この項目では、短編集について説明しています。表題作については「めくらやなぎと眠る女」をご覧ください。 |
『めくらやなぎと眠る女』(めくらやなぎとねむるおんな)は、村上春樹の短編小説集。
概要
2009年11月27日、新潮社より刊行された[1]。本書は米国のクノップフ社から2006年7月に発行された村上の短編小説集『Blind Willow, Sleeping Woman』の日本語版である。
作品の収録順序は英語版をそのまま踏襲している。日本語版の副題は「TWENTY-FOUR STORIES」。収録された24作品は、クノップフ社のゲイリー・L・フィスケットジョンのアドバイスを受けて村上自らが選んだ[2]。
日本語版は原則として、『村上春樹全作品 1979~1989』(講談社)および『村上春樹全作品 1990~2000』(同社)、『バースデイ・ストーリーズ』(村上春樹 翻訳ライブラリー版)、『東京奇譚集』(新潮文庫版)を底本としている。
冒頭に、「日本語版の読者に」と「Blind Willow, Sleeping Womanのためのイントロダクション」の2つの文章が掲載されている。
収録作品
|
タイトル |
初出 |
英訳
|
1 |
めくらやなぎと、眠る女 |
下記を参照のこと |
Blind Willow, Sleeping Woman (Harper's. June, 2002)
|
2 |
バースデイ・ガール |
『バースデイ・ストーリーズ』 (中央公論新社、2002年12月7日) |
Birthday Girl (Harper's. July, 2003)
|
3 |
ニューヨーク炭鉱の悲劇 |
『BRUTUS』1981年3月号 |
New York Mining Disaster (The New Yorker. January 11, 1999)
|
4 |
飛行機―あるいは彼はいかにして詩を 読むようにひとりごとを言ったか |
『NADIR』1987年秋号 『ユリイカ臨時増刊 村上春樹の世界』1989年6月号 |
Aeroplane: Or, How He Talked to Himself as If Reciting Poetry (The New Yorker. July 1, 2002)
|
5 |
鏡 |
『トレフル』1983年2月号 |
The Mirror (The Yale Review. July, 2006)
|
6 |
我らの時代のフォークロア ―高度資本主義前史 |
『SWITCH』1989年10月号 |
A Folklore for My Generation: A Pre-History of Late-Stage Capitalism
|
7 |
ハンティング・ナイフ |
『IN★POCKET』1984年12月号 |
Hunting Knife (The New Yorker. November 17, 2003)
|
8 |
カンガルー日和 |
『トレフル』1981年10月号 |
A Perfect Day for Kangaroos
|
9 |
かいつぶり |
『トレフル』1981年9月号 |
Dabchick (McSweeney's. Late winter, 2000)
|
10 |
人喰い猫 |
『村上春樹全作品 1979~1989』第8巻 (講談社、1991年7月) |
Man-Eating Cats (The New Yorker. December 4, 2000)
|
11 |
貧乏な叔母さんの話 |
『新潮』1980年12月号 |
A "Poor Aunt" Story (The New Yorker. December 3, 2001)
|
12 |
嘔吐1979 |
『IN★POCKET』1984年10月号 |
Nausea 1979
|
13 |
七番目の男 |
『文藝春秋』1996年2月号 |
The Seventh Man (Granta. March, 1998)
|
14 |
スパゲティーの年に |
『トレフル』1981年5月号 |
The Year of Spaghetti (The New Yorker. November 21, 2005)
|
15 |
トニー滝谷 |
『文藝春秋』1990年6月号 |
Tony Takitani (The New Yorker. April 15, 2002)
|
16 |
とんがり焼の盛衰 |
『トレフル』1983年3月号 |
The Rise and Fall of Sharpie Cakes
|
17 |
氷男 |
『文學界』1991年4月臨時増刊号『村上春樹ブック』 |
The Ice Man (The New Yorker. February 10, 2003)
|
18 |
蟹 |
日本語初出 |
Crabs (Stories Magazine. April, 2003)
|
19 |
螢 |
『中央公論』1983年1月号 |
Firefly
|
20 |
偶然の旅人 |
『新潮』2005年3月号 |
Chance Traveler (Harper's. July, 2005)
|
21 |
ハナレイ・ベイ |
『新潮』2005年4月号 |
Hanalei Bay (The Guardian. April 15, 2006)
|
22 |
どこであれそれが見つかりそうな場所で |
『新潮』2005年5月号 |
Where I'm Likely to Find It (The New Yorker. May 2, 2005)
|
23 |
日々移動する腎臓のかたちをした石 |
『新潮』2005年6月号 |
The Kidney-Shaped Stone That Moves Every Day (The New Yorker. September 26, 2005)
|
24 |
品川猿 |
『東京奇譚集』(新潮社、2005年9月16日) |
A Shinagawa Monkey (The New Yorker. February 13, 2006)
|
1. 「めくらやなぎと、眠る女」は 『
文學界』1983年12月号にまず掲載される。1984年7月刊行の短編集『螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮社)に収められ。その後90年代半ばに大幅に短縮されたバージョンが発表された。本書に収められたのはそのショート・バージョンである。
4. 「飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」は『NADIR』1987年秋号にまず掲載され、その後加筆がなされ、『
ユリイカ臨時増刊』に掲載された。
6. 「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」の英訳版は2種類存在する。短編小説集『
Blind Willow, Sleeping Woman』に収められた「A Folklore for My Generation: A Pre-History of Late-Stage Capitalism」は
フィリップ・ガブリエルが翻訳したものだが、
アルフレッド・バーンバウムも翻訳している。バーンバウム版のタイトルは「The Folklore of Our Times」と言い、『The New Yorker』2003年6月9日号に掲載された。
7. 「ハンティング・ナイフ」は、英訳に際して村上は大幅な書き直しをおこなった。よって、本書に収録されたものはオリジナル版とは大きく異なっている。
17. 「氷男」の英訳版は2種類存在する。『
ザ・ニューヨーカー』に掲載されたものはリチャード・L・ピーターソンが翻訳した。本短編集に収録されたものはフィリップ・ガブリエルが翻訳した。
翻訳
上記24編のうち、短編集『東京奇譚集』に収められている5編のみ訳出したロシア語版、韓国語版、中国語版、タイ語版については、「東京奇譚集#翻訳」を参照のこと。
映像化
2022年に村上の「かえるくん、東京を救う」、「バースデイ・ガール」、「かいつぶり」、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「UFOが釧路に降りる」、「めくらやなぎと、眠る女」を翻案したアニメ映画『Saules Aveugles, Femme Endormie(邦題・めくらやなぎと眠る女)』(監督・ピエール・フォルデス、2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作)が制作された[3]。
脚注
関連項目