『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』(とうきょうするめクラブ ちきゅうのはぐれかた)は、村上春樹と吉本由美[注 1]と都築響一の三者による旅行記。
概要
2004年11月11日、文藝春秋より刊行された[3]。月刊誌『TITLE』(2002年10月号、11月号、2003年3月号~5月号、7月号、10月号、11月号、2004年1月号、2月号、5月号)に不定期で連載された「東京するめクラブ」をまとめたものである。写真は都築響一、石川啓次、山田なおこ、松村映三。イラストは安西水丸。装丁は野中深雪。2008年5月9日、文春文庫として文庫化された[4]。
訪れた場所は、名古屋市、熱海市、ハワイ、江の島、サハリン州、清里。2004年2月号に掲載された「特別編 アイスランド独りするめ旅行。」は単行本には収録されず、2015年11月刊行の『ラオスにいったい何があるというんですか?』(文藝春秋)に収録された。
主に紹介されているもの
- 魔都、名古屋に挑む[注 2]
- 喫茶マウンテン、小倉トースト、鉄板焼スパゲティー、美宝堂、名古屋ボストン美術館、女装クラブ、コーヒーぜんざい
- 62万ドルの夜景もまた楽し――熱海
- 熱海城、熱海秘宝館、風雲文庫、うさみ観音寺
- このゆるさがとってもたまらない――ハワイ
- マイタイ、ウクレレ、ホノルルマラソン、ブライアン・ウィルソン、ドン・ホー・ショー
- 誰も(たぶん)知らない江の島
- 岩本楼ローマ風呂、江島神社、江の島水族館、岩屋、ホノルル食堂
- ああ、サハリンの灯は遠く
- 『サハリン島』[注 3]、トド、花咲ガニ、ガガーリン公園、ドミトリー・コワレーニン[注 4]
- 清里――夢のひとつのどんづまり
- ポール・ラッシュ、清泉寮、やまね、花の森公園
脚注
注釈
- ^ 吉本由美は1948年熊本市生まれの作家・エッセイスト。大橋歩のアシスタントを経て、主に女性誌でライター、インテリア・スタイリストとして活躍した[1]。かつて村上のエッセイで「ご近所に住むマニアックなヤクルト・ファン」と紹介されたことがある[2]。
- ^ 「魔都、名古屋に挑む」が掲載されたのは『TITLE』2002年10月号、11月号。村上はのちに「名古屋のラブホを取材したとき、従業員の部屋みたいなのがとても面白かったので、それをモデルにして『アフターダーク』のラブホ『アルファヴィル』を描きました」と述べている[5]。それからまた村上は2013年、名古屋を舞台にした長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)を上梓した。
- ^ 『サハリン島』はアントン・チェーホフが書いた旅行記録。『1Q84』に同書の訳文が引用された[6]。
- ^ ドミトリー・コワレーニンはサハリン出身のロシア人翻訳家。村上の作品を多数訳したことで知られる。彼の誘いにより「東京するめクラブ」のロシア(サハリン)探訪が実現した[7]。コワレーニンも村上と旅したサハリン探訪を、ロシア語の自著(2004年刊行)に詳細に書き記している[8]。
出典
関連項目