ウィンナ・コーヒーウィンナ・コーヒー (Wiener coffee[1], Vienna coffee[2]) は、オーストリアのウィーン発祥とされるコーヒーの飲み方の一つ。ウィンナー・コーヒーと表記されることもある。ウィンナとはドイツ語で「ウィーン風の[3]」「ウィーンの[4]」を意味する Wiener(ヴィーナー[5])、または英語で「ウィーン」を表す Vienna に由来し[2][6]、ウィンナ・ワルツと同語源である。「ウィンナ・コーヒー」をあえてドイツ語表記すれば「Wiener Kaffee」(ヴィーナーカフェー[5])となるが、ドイツ語では文字通り「ウィーン風コーヒー」という意味でしかなく、特定の飲み方を具体的に示す言葉ではない。 解説日本では、コーヒーの上にホイップクリームを浮かべたものが、一般的に「ウィンナ・コーヒー」と呼ばれる[7][8]。この名前を冠したコーヒーを初めて提供した店は、東京の神田神保町にある喫茶店「ラドリオ」で[9]、同店の常連であった東京大学の教授がウィーンに留学した際に目にしたコーヒーの話を参考に開発されたものである[10]が、この名称の由来となったウィーンには「ウィンナ・コーヒー」ないし「ヴィーナー・カフェー」という名称のコーヒーは存在しない。日本のウィンナ・コーヒーに近いものとして「アインシュペナー」(Einspänner)[7]や「カフェー・ミット・シュラークオーバース」(Kaffee mit Schlagobers) などがある。アインシュペナーはコーヒーにほぼ同量の生クリームが載っていて、カップではなくグラスに注がれている。アインシュペナーとは一頭立ての馬車を意味し[7]、かつて馬車の御者が暖を取るために飲んでいたことから名付けられた[8]。カフェー・ミット・シュラークオーバースは、コーヒーカップとは別の器に砂糖をかけたホイップクリーム(シュラークオーバース、Schlagobers)が添えられている。 ウィーンの人々が日常的に多く飲んでいるのは、エスプレッソと温かいミルクを加えた上にミルクの泡を載せた「メランジェ」(フランス語で「混ぜる」の意)という種類で、カプチーノとほぼ同じものである[7]。またメランジェのミルクの泡の代わりにホイップクリームを載せた「フランツィスカーナー」(Franziskaner) と呼ばれるものもある。これはフランシスコ会修道士という意味で、その僧服の色が似ているからという説があり、カプチーノの名の由来(一説にカプチン会修道士の僧服の色より)とも共通する。 オーストリアは地方によってもコーヒーの呼び名が違い、また、コーヒーや入れるミルクの状態などによっても名前が変化する。たとえば「フェアレンゲルター」(Verlängerter, 「薄めたもの」の意)と呼ばれるミルク入りのコーヒーや、さらに温かいミルクを若干多めに入れた「ミルヒカフェー」(Milchkaffee) などがある。 アメリカ・イギリス・フランスなどでは、エスプレッソにホイップクリームを載せた「エスプレッソ・コン・パンナ」(espresso con panna, イタリア語でクリームを添えたエスプレッソの意)を、同じくウィーン風コーヒーという意味である「カフェ・ヴィエンヌ」(café vienne) または「カフェ・ヴィエノワ」(café viennois) と呼ぶことがある。なお、フランスでは第一次世界大戦でオーストリア=ハンガリー帝国と敵対することになったため、カフェ・ヴィエノワを「カフェ・リエジョワ」と呼ぶようになった。 ウィンナ・コーヒーが登場する作品トーマス・マンが1947年に発表した小説『ファウストゥス博士』の執筆の過程を記した自伝的作品『『ファウストゥス博士』の成立』(Die Entstehung des Doktor Faustus. Roman eines Romans, 1949年)の第6章で、マンと同様にアメリカに亡命していたアルノルト・シェーンベルク宅で、Wiener Kaffee を飲んだことが記されている。
ただし、この Wiener Kaffee がどんなコーヒーであるかは、作中では説明されていない。 脚注
参考文献
関連項目Information related to ウィンナ・コーヒー |