カッシーニは自らが発見した4つの衛星に対して、ルイ14世を讃えて Sidera Lodoicea と名付けた。これは「ルイの星」という意味である[13]。17世紀の終わりになると、天文学者はこれらの4衛星とタイタンをあわせ、Saturn I から Saturn V というように番号で呼ぶようになった。1789年にミマスとエンケラドゥスが発見されるとこの命名方法は Saturn VII まで拡張され、古い5衛星の番号を押し上げる形で番号が振り直された。この方式が続いたのは1848年にヒペリオンが発見されるまでであり、この時はイアペトゥスの番号が Saturn VIII に変更された。
これらの7つの衛星に現在知られている名前を与えたのは、天文学者のジョン・ハーシェルである。彼はミマスとエンケラドゥスの発見者であるウィリアム・ハーシェルの息子である。1847年に発表した『Results of Astronomical Observations made at the Cape of Good Hope』の中で、7つの衛星に対して命名した。ディオネの名前は他の土星の衛星と同じく、ギリシア神話の巨人族(ティーターン)の1人ディオーネーに因む。ディオーネーはクロノスの姉で、またゼウスとの間にアプロディーテーをもうけたとされる[8]。
軌道
ディオネの軌道長半径は 377,415 km であり[2]、これは地球の月の軌道長半径より 2% ほど小さい。しかし土星の質量は地球のおよそ95倍と大きいため、ディオネの軌道周期は月の10分の1程度である。
その後2005年10月11日に、カッシーニはディオネから500 km の近距離をフライバイして観測を行った。この時には氷崖を斜め方向から撮影した画像が得られており、これをもとに崖のいくつかは数百メートルの高さを持つことが判明した。
クレーター
ディオネの表面には、クレーターが非常に多く存在する領域と、クレーターがやや多い平原、少しのクレーターが見られる平原、地質学的な破砕が見られる領域が存在する。クレーターが非常に多く存在する領域では、直径が 100 km よりも大きなクレーターが多数存在する。平原領域に見られるクレーターは直径が 30 km 以下という傾向がある。クレーターが非常に多い地形の大部分は後行半球側に見られ、クレーターが少ない平原は先行半球に見られる。これは科学者が予想した状態とは反対の傾向である。ユージン・シューメーカーと Ruth Wolfe は潮汐固定された衛星へのクレーター形成のモデルを提案しており[23]、先行半球でクレーター形成率が最も高く、後行半球で最も低くなるとした。そのため、ディオネは後期重爆撃期の最中は現在と逆向きに土星に潮汐固定されていたことが示唆される。ディオネは比較的小さい衛星であるため、35 km 以上のクレーターを形成するような天体衝突が発生した場合、衛星が回転させられる。このサイズのクレーターは多数見られるため、形成直後の後期重爆撃期には何度も衝突によって回転させられていた可能性がある。現在のディオネのクレーター形成のパターンと、先行半球側が明るい表面を持つという特徴から、ディオネが現在の向きで潮汐固定されてから数十億年は経過していると考えられる。
ディオネの初めての接近観測はボイジャー1号によって行われた。また土星探査機カッシーニによる接近観測は合計5回にわたって行われた。ディオネを目標とした近接フライバイでは、2005年10月11日に 500 km の距離からの観測が行われ[27]、その他にも2010年4月7日にも同じく 500 km の距離からの観測が行われている。3回目のフライバイは2011年12月12日に行われ、99 km の距離にまで接近している。その後2015年6月16日には 516 km[28]、同年8月17日には最後のフライバイが 474 km の距離で行われている[29][30]。
^ abcRoatsch, Th.; Jaumann, R.; Stephan, K.; Thomas, P. C. (2009). Cartographic Mapping of the Icy Satellites Using ISS and VIMS Data. pp. 763–781. doi:10.1007/978-1-4020-9217-6_24.
^Jacobson, R. A.; Antreasian, P. G.; Bordi, J. J.; Criddle, K. E.; Ionasescu, R.; Jones, J. B.; Mackenzie, R. A.; Meek, M. C. et al. (2006). “The Gravity Field of the Saturnian System from Satellite Observations and Spacecraft Tracking Data”. The Astronomical Journal132 (6): 2520–2526. doi:10.1086/508812. ISSN0004-6256.
^Price, Fred William (2000). The Planet Observer's Handbook. Cambridge; New York: Cambridge University Press. ISBN978-0-521-78981-3
^Cassini, G. D. (1686–1692). “An Extract of the Journal Des Scavans. Of April 22 st. N. 1686. Giving an Account of Two New Satellites of Saturn, Discovered Lately by Mr. Cassini at the Royal Observatory at Paris”. Philosophical Transactions of the Royal Society of London16 (179–191): 79–85. doi:10.1098/rstl.1686.0013. JSTOR101844.
^Porco, C. C.; Helfenstein, P.; Thomas, P. C.; Ingersoll, A. P.; Wisdom, J.; West, R.; Neukum, G.; Denk, T. et al. (2006). “Cassini Observes the Active South Pole of Enceladus”. Science311 (5766): 1393–1401. doi:10.1126/science.1123013. PMID16527964.