「ハロー・リトル・ガール 」(Hello Little Girl )は、ジョン・レノン が初めて作曲した楽曲である。作曲者のクレジットにはポール・マッカートニー との共同名義であるレノン=マッカートニー が使用されている[ 注釈 1] 。 1957年に書かれた本作は、1962年に行われたビートルズ のデッカ・レコード でのオーディションで演奏され、当時の演奏は1995年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー1 』に収録された。
1963年にザ・フォーモスト やジェリー&ザ・ペースメイカーズ らによって録音され、ザ・フォーモストによるシングル盤は全英シングルチャート で最高位9位を記録した。
背景・曲の構成
ジョン・レノン は、ポール・マッカートニー が「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール 」を作曲したのと同じ1957年の末ごろに「ハロー・リトル・ガール」を作曲した。この楽曲はレノンが初めて書いた楽曲とされているが、ビートルズの歴史家であるマーク・ルイソン (英語版 ) は、本作を「レノンが書いた3作目の曲(最初であることに固執している)」と説明している。本作についてレノンは、1980年の『プレイボーイ 』誌のインタビューで「1930年代か1940年代の楽曲のパロディ。母がよく歌ってた古い歌をヒントに作ったんだと思う」と語っている 。ルイソンは、本作についてザ・クリケッツ (英語版 ) およびバディ・ホリー からの影響を指摘している。音楽学者のウォルター・エヴェレット (英語版 ) も、本作についてホリーの特徴を強くつかんでいると述べている。とくに、「ハロー・リトル・ガール」はレノンがリード・ボーカルを務め、マッカートニーがディスカント (英語版 ) を歌うという、ビートルズがホリーのダブルトラック によるボーカル・パート を再現した初の楽曲となっていて、以降ほとんどの楽曲でこのアレンジが採用された。
本作は1960年から1962年までの間に大きく曲の構成が変更されており、エヴェレットはマッカートニーとジョージ・ハリスン によるバッキング・ボーカル を加えるために行われた可能性を示している。後のバージョンには、「ツイスト・アンド・シャウト 」や「抱きしめたい 」のように三連符が用いられている。
レコーディング・リリース
「ハロー・リトル・ガール」のレコーディングについて知られているうちで最古の例は、1960年の演奏となっている[ 注釈 2] 。このレコーディングでは、レノンのリード・ボーカルとヘフナー・クラブ40 で弾いたギターのパートを主体とし、マッカートニーはハーモニー・ボーカル を歌ったほか、フラマス (英語版 ) のアコースティック・ギター を演奏した。レコーディングには、ハリスンと当時のベーシストであるスチュアート・サトクリフ も参加している。この当時の音源は公式発売はされていないが、海賊盤 で流通している。
ビートルズは、1962年1月1日のデッカ・レコード のオーディションに向けて、本作のレコーディングを行った。ルイソンは、この時のハリスンのギターの演奏について、他の楽曲での演奏と比較して「標準以下」と述べている。ピート・ベスト は、セクションとセクションの間にスネアロール を加えている。ルイソンは、本作を同日のセッションにおいてうまくいった数少ない楽曲の1つとし、主にレノンとマッカートニーのツインボーカルのおかげであると述べている。
2月8日、ビートルズは、ラジオ番組のプロデューサーであるピーター・ピルビームのオーディションによるオーディションで、「ハロー・リトル・ガール」を含む4曲を演奏した。この時のテープは保管されていない。ピルビームは、「ハロー・リトル・ガール」に対する短評として「マッカートニー NO 」「レノン YES 」と記した。その後3月7日にピルビームが手がけるBBCラジオ の番組のためにプレイハウス・シアター (英語版 ) でレコーディングを行った。この時に本作を含む4曲が録音されたが、本作のみ放送されなかった。
2月13日、マネージャーのブライアン・エプスタイン がジョージ・マーティン を訪ね、デッカ・レコードのオーディションで録音した「ハロー・リトル・ガール」と「ティル・ゼア・ウォズ・ユー 」を収録したアセテート盤 を渡した。エプスタインは、アセテート盤にペンでA面に「Hu llo Little Girl by John Lennon & The Beatles」、B面に「Til There Was You by Paul McCartney & The Beatles」と記した[ 24] [ 25] 。エプスタインは、1964年に出版した自伝の中でマーティンが「ハロー・リトル・ガール」と「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」を気に入っていて、とりわけハリスンのギターを気に入っていたことを書いている。
1995年11月21日に『ザ・ビートルズ・アンソロジー1 』が発売され、「ハロー・リトル・ガール」を含むデッカ・レコードのオーディションのために録音された楽曲が収録された。この翌年には「ハロー・リトル・ガール」と「ライク・ドリーマーズ・ドゥ 」を収録したアセテート盤が、£ 4,000(2023年時点の£9,500と同等)で販売された。
2016年3月22日にウォリントンで行われたオメガ・オークションで、元ジェリー&ザ・ペースメイカーズ のレス・マクワイア (英語版 ) が所有していたアセテート盤が出品され、£77,500で落札された[ 30] [ 24] [ 25] 。
クレジット
※出典(特記を除く)
デッカ・レコードのオーディション(1962年)
ジョン・レノン - ボーカル、ギター
ポール・マッカートニー - ボーカル、ベース
ジョージ・ハリスン - ギター、バッキング・ボーカル
ピート・ベスト - ドラム
ザ・フォーモストによる演奏
1963年7月3日、ザ・フォーモスト がEMIレコーディング・スタジオ で「ハロー・リトル・ガール」のレコーディングを行った。同年8月30日にデビュー・シングルとして発売され[ 33] [ 34] 、B面には「ジャスト・イン・ケース」が収録された[ 35] 。全英シングルチャート には17週にわたってチャートインし、7週目に最高位9位を記録した[ 31] 。1965年に発売されたアルバム『ファースト・アンド・フォアモスト』には未収録となった[ 36] 。
1979年に発売されたコンピレーション・アルバム『ザ・ソング・オブ・レノン&マッカートニー (英語版 ) 』に収録され[ 37] 、2016年に発売された『ファースト・アンド・フォアモスト +18』には、本作を含むアルバム未収録曲などが追加収録された[ 36] 。
他のアーティストによるカバーや文化的影響
ザ・フォーモストと同年に、ジェリー&ザ・ペースメイカーズ のカバー・バージョンをレコーディングした。このカバー・バージョンは、1991年に発売されたコンピレーション・アルバム『EMI Legend of Rock'n Roll Series:The Best Of Gerry And The Pacemakers-The Definitive Collection』に収録されるまで、未発表のままとなっていた[ 38] 。
1966年にフランスの歌手シェイラ が歌ったフランス語バージョン「ハロー・プティト・フィーユ -こんにちわマドモアゼル-」が日本発売されラジオの洋楽チャートで人気となり、中尾ミエ による孫カバー「ハロー・プティット・フィーユ 〜こんにちはマドモアゼル〜」も発売された[ 39] 。
2009年に公開されたジョン・レノンの伝記映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ 』で、レノン(演 : アーロン・テイラー=ジョンソン )がマッカートニー(演 : トーマス・ブロディ=サングスター )に聴かせるために、オープンリール方式テープレコーダに録音するシーンで使用された。歌唱・演奏はジョンソンによるもの[ 40] 。
脚注
注釈
^ ただし、映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ 』のサウンドトラック盤では、作者名は「ジョン・レノン」と表記されている。
^ ルイソンは、レコーディングが行われた日を「1960年6月18日ごろ(マッカートニーの18歳の誕生日)」とし、エヴェレットは「1960年4月ごろ」としている。
出典
^ a b “ビートルズの「聖杯」、1200万円で落札 希少なデモレコード 写真2枚 国際ニュース” . AFPBB News (フランス通信社 ). (2016年3月23日). https://www.afpbb.com/articles/-/3081307 2020年9月4日 閲覧。
^ a b “ビートルズ、62年に作られた最初の10インチ盤が1200万円を超える価格で落札 ”. NME Japan . BandLab UK (2016年3月23日). 2020年9月4日 閲覧。
^ Baxter, Todd (2016年3月22日). “'Holy Grail' of Beatles records sells for $110k ”. CNN . 2020年9月4日 閲覧。
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^ Carr, Roy; Tyler, J. E. A. (1981) [1975]. The Beatles: An Illustrated Record . Harmony Books. p. 135. ISBN 0517544938
^ Womack, Kenneth (2017). Maximum Volume: The Life of Beatles Producer George Martin, The Early Years, 1926-1966 . Chicago Review Press. p. 170. ISBN 1613731922
^ Osborne, Jerry; Hamilton, Bruce (1978). Popular & Rock Records, 1948-1978 . O'Sullivan Woodside. p. 85. ISBN 0890190658
^ a b “The Fourmost / フォアモスト「First And Fourmost / ファースト・アンド・フォアモスト +18」 ”. Warner Music Japan. 2022年7月6日 閲覧。
^ Unterberger, Richie. Songs Lennon & McCartney Gave Away - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年9月4日 閲覧。
^ “重要CDを振り返る:リミックス再発の先駆けとなった米EMIによる『EMI Legend of Rock’n Roll Series』 ”. merurido.jp . 芽瑠璃堂 (2019年6月23日). 2022年7月6日 閲覧。
^ 中村俊夫 . “カヴァー三代目物語 ”. 中村俊夫の復刻堂徒然日誌 . 芽瑠璃堂. 2021年3月24日 閲覧。
^ Mower, Sarah (2010年9月8日). “A Day in the Life: Aaron Johnson ”. Vogue . Condé Nast . 2022年7月6日 閲覧。
参考文献
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Gottfridsson, Hans Olof (1997). The Beatles from Cavern to Star-Club: the Illustrated Chronicle, Discography & Price Guide 1957-1962 . Stockholm, Sweden. ISBN 978-9-197-18947-7
Lewisohn, Mark (2013). The Beatles – All These Years , Volume One: Tune In . Crown Archetype. ISBN 978-1-4000-8305-3
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd revised ed.). London: Pimlico. ISBN 978-1-84413-828-9
Sheff, David (2000). All We Are Saying . St Martin's Griffin. ISBN 0-312-25464-4 . https://archive.org/details/allwearesayingla00lenn
Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four . Santa Barbara, CA: ABC-CLIO. ISBN 0313391726
外部リンク