ヒヨドリ
ヒヨドリ(鵯、白頭鳥、Hypsipetes amaurotis)は、ヒヨドリ科ヒヨドリ属に分類される鳥の一種[2]。 分布日本、サハリン、朝鮮半島南部、台湾[3]、中国南部、フィリピンの北部[3](ルソン島[4])に分布する。日本国内では留鳥または漂鳥としてごく普通に見られるが、他の地域での生息数は少ない[5]。 形態全長は約27.5 cm[6][7] (27–29 cm[8])。翼開長は約40 cm[7]。尾は長めで(尾長10.9-12.5 cm[9])、ムクドリやツグミより体型はほっそりしている[10]。くちばしは黒くて先がとがる。雌雄同色。頭部から胴体は灰色の羽毛に覆われるが、頬に褐色の部分があり、よく目立つ。また、頭頂部の羽毛は周囲よりやや長く、冠羽となっている。翼や尾羽は灰褐色をしている。南に生息する種は、北に生息する種より体色が濃い(グロージャーの法則)。 生態里山や公園などある程度樹木のある環境に多く生息し、都市部でも見られる。ツグミやムクドリよりも体を直立させてとまり[10]、おもに樹上で活動するが、地上に降りることもある。飛ぶときは数回羽ばたくと翼をたたんで滑空するパターンを繰り返して飛ぶため、飛ぶ軌道は波型になる。 鳴き声は「ヒーヨ! ヒーヨ!」などと甲高く聞こえ、和名はこの鳴き声に由来するという説がある。また、朝方には「ピッピッピピピ」とリズムよく鳴くこともある。 日本では周年見られるが、春および秋には渡りが各地で確認される[3]。秋には国内暖地へ移動する個体も多く、10-11月には渡りが日本各地で観察され[6]、房総半島南端、伊良湖岬のほか、関門海峡では1,000羽を越えて渡る群れも観察される。 果実や花の蜜を食べる。繁殖期には果実に加え昆虫類も多く捕食する一方、非繁殖期の餌は果実(センダンやイイギリ、カキ、ヘクソカズラなど)がほとんどである。ツバキなどの花の蜜を好む[5]。早春にはツバキの木の近くにずっと陣取って、花の蜜を求めて飛来するメジロなどを追い払う姿をよく見かける。 5-9月にかけて繁殖する。繁殖期間が比較的長いことについては、捕食されるなど繁殖の失敗による再繁殖が多いことが一つとして考えられる[3]。木の枝上に外径 12–20 cm の体の大きさに比べると小型の巣を作る[9]。高さ1-5mに営巣し[3]、巣は椀形で[11]、小枝、枯れつる、イネ科の茎、細根[9]、市街地ではビニールの紐などを使って作られ[3]、産座には松葉やシュロの繊維、ササの葉などが粗雑に敷かれる[11]。1回の繁殖で4個(3-5個[4])の卵を産み[3]、卵の大きさは約2.95 cm × 2.05 cm[4] (2.75-3.3 cm × 2.0-2.1 cm) で、淡いバラ色に赤褐色の斑がある[9]。おもに雌のみによって12-14日間抱卵され、孵化した雛は雌雄により育てられる[3]。雛は10-11日で巣立つが[4]、多くは巣立って数日のうちはあまり飛べないため巣の近くにおり、またその後1-2か月のあいだ親鳥とともに行動する[3]。 人間との関係日本では里山や公園でよく見られる身近な野鳥の一つである。富山県砺波市の市の鳥に指定されている。 糖分を好むためか、ツバキやサクラやあんずやゴールデン・ベルなどの花にやってきて蜜を吸ったり、庭先にミカンやリンゴなど果物の半切れを置いておくとすぐにやって来て独り占めする[12]。 しかし、ときに集団で畑に現れキャベツやブロッコリー、イチゴ、ミカンなどの農作物を食い荒らすこともあり、農家には嫌われる。狩猟鳥の指定も、果樹を食害する農業害鳥である本種を煩瑣な手続きなしで駆除できるよう配慮したものである。 仔飼いにすると非常によく慣れ、飼い主を見分けることから平安時代は貴族の間で盛んに飼われた。古今著聞集などにその記述があり、現在の競走馬のように個体名が付けられ愛玩されたようである。 一ノ谷の戦いで知られる鵯越はヒヨドリの渡りの場所だったことから呼ばれていた[13]。現代ではひよどりごえ森林公園やひよどり展望公園が整備されている。 前述のように、日本国内では都市部を含めごく普通に観察されるが、分布がほぼ日本国内に限られているため、日本を訪れる海外のバードウォッチャーにとってはぜひ観察したい野鳥のひとつとなっている[12]。1993年に旭山動物園が、ヒヨドリの繁殖賞を受賞している。 近年、生息域を里山から都市部に広げており、その広範な雑食性などから”ギャング”の異名を持つ[14]。 日本の亜種
イソヒヨドリはヒヨドリの名が付くが、ヒヨドリ科ではなくツグミ科の鳥であって類縁関係は遠い。 文化俳句秋の季語 ギャラリー
脚注
参考文献
関連項目リンク
|