株式会社博報堂(はくほうどう、英: Hakuhodo Inc.)は、東京都港区赤坂に本社を置く日本の広告代理店である。博報堂DYホールディングス傘下の完全子会社で、博報堂DYグループの1つ。
概要
1895年10月、教育雑誌の広告取次店として設立[2]。廣告社(1888年創業)と並び日本の広告黎明期から活動を続ける広告代理店である。
2003年10月、大広および読売広告社との経営統合により、博報堂DYホールディングスを設立。国内1位の電通と合わせて、広告代理店の二大巨頭という意味で「電博」(でんぱく)と総称されている[3]。しかし近年は、大規模な海外広告会社を傘下に加えている電通との差は広がりを見せている。
また経営統合に伴い、博報堂・大広・読売広告社のメディア枠仕入れ部門は博報堂DYメディアパートナーズに移管された。
2008年5月、赤坂サカスにある赤坂Bizタワー内に本社を移転。先に移転を完了していた博報堂DYメディアパートナーズとの連携を強めた。その後もグループ企業が赤坂に集結している。
かつてはマッキャンエリクソンと業務提携を行っていた。現在は、オムニコム系列のTBWAとの合弁会社「TBWA\HAKUHODO[注 1]」を東京に設立。
沿革
神田錦町の旧本社ビルは1930年竣工(後年増築)、岡田信一郎設計の様式建築であった。2009年には近隣地権者との共同再開発に伴い取り壊されたが、その後、複合ビル「テラススクエア」内に外観が再現された[4]。
歴代社長・会長
企業体質
- 創業者の瀬木家は、現在も博報堂DYホールディングスの大株主である。また、経営トラブルの後に大蔵省(当時)出身の国税庁長官が2代続けて社長となったことがあった。
- 無借金経営でも知られており、格付投資情報センターの信用格付においてA+を獲得している[5]。自社ビルは所有していない。2008年5月には、芝浦や汐留に分散していたグループを赤坂サカス内赤坂Bizタワーに集めている。また、関連会社の博報堂プロダクツなどは豊洲に集合している。
- 博報堂のCC(コーポレートコミュニケーション)局の中に、企業の情報危機を管理する部門が存在する。雪印事件を契機として設置された部署であり、クライアント企業で不祥事などの問題が発生した際の、経営陣によるマスコミ対応や消費者対応などをナレッジパッケージとしてクライアントに提供している。
制作陣と賞
- 大貫卓也をはじめ、箭内道彦や佐藤可士和、佐野研二郎など数多くの著名なクリエイターを輩出(既にこの4人は退社)。
- カンヌ国際広告祭でグランプリを2度受賞したことがあるため、2003年にカンヌ国際広告祭事務局から特別賞を贈られている[6]。受賞は広告代理店では世界で7社、アジアでは博報堂1社であり、「クリエイティブの博報堂」とも呼ばれた。その後一時期は広告賞の受賞数が低迷したが、現在では再び盛り返している[7][8]。
- 1994年、多摩美術大学卒の元アートディレクター、東海林隆が代表取締役社長に就任。現在の博報堂DYホールディングス代表取締役社長・戸田裕一、博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長・佐藤孝はともに制作局コピーライター出身。
- 1948年より、広告文化の創造と発展を目的として雑誌『広告』を不定期に出版している[9][10]。
制作に関わった主な作品
不祥事・諸問題
不正経理問題
1973年の博報堂関連会社の増資をめぐり、瀬木博政会長が福井純一社長らを不正経理を行ったとして告発。社長らが商法違反(特別背任)、業務上横領などに問われた(特別捜査部#東京地方検察庁特別捜査部参照)。1979年7月23日、東京地方裁判所は「企業に与えた損害は大きいが、既に和解が成立している」として元社長らに対して執行猶予付きの有罪判決を言い渡した[11]。
郵便料金割引制度の不当利用
2008年11月、障害者団体の定期刊行物に適用される郵便料金割引制度を不当に利用し、家電量販店企業のベスト電器のチラシを2年半にわたり計約1100万通送っていたことが判明した。顧客から「問題があるのでは」と告発、指摘をされ取りやめた。この制度の利用は博報堂関連会社である博報堂エルグ(福岡県本拠・2009年9月30日営業停止)が提案し、勧めたため、企業が採用した[12]。その後、大阪地検特捜部によって翌年春にこの事案に関与した幹部らが逮捕・起訴された。これを受けて内部処分も同時に行われた[13]
雇い止めをめぐる訴訟
同社九州支社に嘱託社員として勤務していた女性が、2018年4月に無期雇用転換を申請できることになっていたが、同社はその前年の2017年12月に、次年度以降の雇用契約を更新しないことを女性に伝えた。女性は社員としての地位確認を求め福岡地方裁判所に提訴。2020年3月17日に同地裁は女性の訴えを認め、雇用を継続した上で、雇い止めの翌月に当たる2018年4月から判決確定日までの賃金と賞与を支払うよう命じる判決を言い渡した[14]。
2020東京五輪・パラ大会運営費の中間搾取問題
2020東京五輪・パラ大会開会直前の2021年6月7日、JOCの経理部長が都営地下鉄浅草線中延駅で電車に飛び込み逝去した。折しも、東京五輪・パラ大会の大会運営業務委託に絡み、東急エージェンシー、ADK、博報堂、そして電通など大手広告代理店数社やフジメディアHG系列の番組制作会社フジクリエイティブコーポレーション、人材派遣会社パソナによる、「日給35万」といった人件費や管理費名目の多額にのぼる"中抜き"(丸投げやピンハネ)が表面化しており、様々な推察や憶測を呼んだ[15][16]。
2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑
2022年11月28日、市民団体の告発によって東京地検特捜部と公正取引委員会により、2020東京五輪・パラ大会組織委員会が発注したテスト大会実施計画立案業務の入札で談合した疑いがあるとして、独占禁止法違反の疑いでの家宅捜索を受けた。同年11月25日、東京地検特捜部と公正取引委員会は独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、電通本社ビル、イベント制作会社「セレスポ」(東京都豊島区)など関係先の家宅捜索を行った[17]。11月28日には、博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社「セイムトゥー」(東京都千代田区)、フジクリエイティブコーポレーションなどを、翌11月29日には、電通ライブ、ADKマーケティング・ソリューションズ、イベント制作会社「シミズオクト」(東京都新宿区)及び「トレス」(東京都中央区)などを家宅捜索した[18][19][20][21][22][23]。2023年2月28日、東京地検特捜部は博報堂など法人6社と博報堂DYスポーツマーケティングの社長や元大会組織委員会大会運営局次長など7人を独占禁止法違反の罪で起訴した[24]。
2024年7月11日、東京地裁は博報堂に罰金2億円、博報堂DYスポーツマーケティングの前社長に懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した[25][26]。24日、博報堂と前社長は判決を不服として控訴した[27]。
ジャニー喜多川の性加害報道記事の隠蔽問題
2023年4月3日、博報堂は同社が発行する雑誌『広告』の記事でジャニー喜多川による性加害問題をいったん取り上げたが、博報堂広報室長が「ジャニーズ事務所はビジネスパートナー」という理由で一部の表現を削除をした[28][29][30][31][32]。
サントリーら複数社への過大請求問題
2023年11月27日、博報堂はサントリーなどから受注した広告制作費について、事前に決めていた代金より過大に請求していたと発表した[33]。博報堂は過大請求の金額を明らかにしていないが、サントリー側と返納に向けて協議しているという。
2024年6月14日、上記のサントリー及びサントリー食品インターナショナルへの不適切請求問題に関する外部専門家による調査委員会じゃらの報告書を受領。その中で、さらにもう1社に対しての不適切請求が発覚した(社名や金額は非公表)。この状況を踏まえて、戸田裕一会長や水島正幸社長、担当役員の報酬返上や、解職、降格などの処分を決めた。[34]
博報堂出身の著名人
博報堂出身のクリエイター
脚注
注釈
出典
外部リンク