エドワード・ボンド - 1934年生まれ。イギリスの過激で反体制的な劇作家。労働者階級出身で中学までの教育しかなく、ローマ法王やイギリス王室などを茶化す劇を書いた。1968年の『奥の細道(The Narrow Road to the Deep North)』は松尾芭蕉が主人公で、最後には彼が首相になってしまう物語。この舞台の記事を当時、小林は新聞で読んで「喜劇的想像力」を刺激され、15年後に『ちはやふる奥の細道』を書いた。
蓮實重彦 - 雑誌『海』で、小林の小説『ちはやふる奥の細道』 の書評を執筆。小林がこの小説の「原題」とした「ROAD TO THE DEEP NORTH」はビング・クロスビー&ボブ・ホープの「珍道中シリーズ」の原題のパロディだが、それに呼応して「アラバマ珍道中」(ROAD TO THE DEEP SOUTH)という架空の映画を話題にし、この「なぜか、シリーズ中で唯一日本未公開の」映画の脚本家が「W・C・フラナガンの祖父である」などと、小林のギャグにさらに悪乗りする内容であった。この書評は『小林信彦の仕事』に収録されている。