歴史上のある時点で、自国をなんらかの定義で「社会主義国」と政府が宣言した全ての国。色はその地域が社会主義を宣言した期間である。 70年間以上
60 - 70年間
50 - 60年間
40 - 50年間
30 - 40年間
20 - 30年間
20年間未満
現在においてマルクス・レーニン主義 を宣言している国(中国 ・ベトナム ・ラオス ・キューバ )。なお北朝鮮 は純粋なマルクス・レーニン主義ではなく、これを基づいて発展させた独自の主体思想 を掲げるという。
歴史上のある時点で、憲法にマルクス・レーニン主義以外の何らかの社会主義への言及を含めた国
社会主義国家 (しゃかいしゅぎこっか)は、自国を社会主義 と標榜し、憲法 ・国家理念・国家原則などの中に社会主義的な考え方を記載する共和国 のこと[ 1] [ 2] 。世界初の社会主義国は1917年 に成立したロシア・ソビエト連邦社会主義共和国 だが[ 3] 、1989年 の東欧革命 及び1991年 のソ連崩壊 によって、ほぼ全ての社会主義国が滅亡した。現在では、社会主義国を自称する国は中国 ・北朝鮮 ・ベトナム ・ラオス ・キューバ の5か国のみである。
定義
社会主義国という言葉は以下の二つの意味に分類できる[ 1] [ 2] [ 4] [ 5] 。
歴史
誕生
19世紀 の資本主義 社会は過酷な労働環境をもたらすなど多くの矛盾・問題点を抱えていた。その問題点は多くの社会主義 学者によって分析され理想の社会が論じられてきたが、特にカール・マルクス 、フリードリヒ・エンゲルス らは、資本主義が成熟した後に社会主義(共産主義 )が実現しうるとした。
世界初の労働者による革命政権は1871年 のパリ・コミューン であり、世界で最初の社会主義国家は、ロシア革命 と十月革命 を経てボリシェヴィキ が主導権を握ったことで1917年 に成立したロシア・ソビエト連邦社会主義共和国 である。ボリシェヴィキの政権 はロシア内戦 を経て1922年 に成立したソビエト連邦(ソ連) の前身となった。この他にもロシア内戦の時期には旧ロシア帝国 領内に複数の社会主義政権が生まれている。1919年 にはバイエルン・レーテ共和国 とハンガリー・タナーチ共和国 が成立したが、まもなく消滅した。1924年 には中華民国 から独立する形で、アジア 最初の社会主義国としてモンゴル人民共和国 が誕生した。
拡大と冷戦
第二次世界大戦 後、多くの社会主義国が誕生した。
東欧 では、多くの国々がソ連により「解放」された結果として社会主義国(衛星国 )となり、ソ連を盟主とする軍事同盟のワルシャワ条約機構 に加盟した(東ドイツ 、ポーランド 、チェコスロバキア 、ブルガリア 、ルーマニア 、ハンガリー 、アルバニア )。ただしアルバニアは中ソ対立 の際に親中路線をとり脱退した。ユーゴスラビア は当初の親ソ路線から独自の社会主義路線に転じ、非同盟 中立 政策や、一定の自由市場 経済を認める市場社会主義 を採用した。
東アジア では、大日本帝国 の敗戦により、1948年 に韓国 樹立に対抗する形で北朝鮮 が成立した。中国では第二次世界大戦後に国共内戦 が再開され、蔣介石 率いる中国国民党 及び中華民国 が台湾に逃走した結果、1949年 に中国共産党 率いる中華人民共和国 が成立した。ソ連、中国の間では同盟 が結ばれた。
東南アジア では、終戦の混乱に乗じて1945年 に旧仏領インドシナ 地域が独立 を宣言し、ベトナム民主共和国 (北ベトナム)が成立した。しかし1946年 にはフランス が東南アジアの利権を守るべく傀儡政権 のコーチシナ共和国 を成立させたことで、南北分断国家 となり、南北対立と断続的な戦争 が行われた。
北ベトナムはソ連や中国の(中ソ対立 ではソ連側に付いた)、南ベトナム は当初はフランスの、後にはアメリカ合衆国 の支援を受けた。しかし1975年 、北ベトナム軍は南ベトナムの首都 サイゴン を陥落させ、社会主義国としての統一を実現した。周辺国のカンボジア 、ラオス も社会主義国となった。
これに対し、ミャンマー (ビルマ)では、1962年 、ネ・ウィン がそれまでの国内の混乱を背景にクーデターを決行。「社会主義へのビルマの道 」と呼ばれる独特の民族主義 ・国家主義 ・社会主義体制を確立。アメリカ・ソ連との関係を最低限の範囲にまで縮小させて、国際的には孤立化の道を歩む事となった。
南アジア においては、インド はソ連の支援を受け、社会主義的政策を取った。
中東 ・アフリカ では、1976年 にはアンゴラ 、1977年にはセーシェル 、1978年 にはエチオピア 、モザンビーク 、南イエメン 、アフガニスタン で社会主義政権、もしくは親ソ政権が誕生した。
中南米 では、アメリカの半植民地状態であったキューバ で、1959年 にカストロ 率いる革命政権が発足した。また1970年 にチリ の自由選挙 においてサルバドール・アジェンデ が大統領 に選出される。しかしこのアジェンデ政権は、1973年 にはCIA の後援を受けたピノチェト 将軍らによるチリ軍事クーデター により崩壊した。
以上のように西側諸国 は「ソ連が国内には恐怖政治 、国外には革命の輸出を行っている」として軍事的圧力や経済封鎖、反革命勢力への武器提供や資金援助を行った。東側諸国 はこれに対抗して国内統制を強化しコミンフォルム を通じて西側の社会主義政党にも介入したため、冷戦 や、朝鮮戦争 やベトナム戦争 などの代理戦争 が繰り広げられた。
なお、東南アジア・アフリカ・南米などの社会主義国は、資本主義が進化して社会主義へ進んだというより、旧宗主国 である西側諸国と対決して植民地 や半植民地状態から独立し、ソ連などの援助を得て国家指導の近代化 建設を推進する面が強く、陣営は異なるものの反共主義 を掲げて西側の援助を得た開発途上国 の開発独裁 とも共通する。
ソ連崩壊
1953年 にソ連及び社会主義陣営に絶対的な影響力を持っていたソ連の最高指導者ヨシフ・スターリン が死去すると、1950年代 半ば以降は社会主義諸国の間でもさまざまな紛争 が起こり、軍事負担や西側の経済封鎖の影響もあり、「共産主義は一枚の岩の如きに団結」という宣伝は短期間で崩壊した。社会主義国同士は「近い未来、共に共産主義を実現せよ」と言いながら、1956年 のスターリン批判 とハンガリー動乱 ・米ソの平和共存 路線に反対する形での中ソ対立 ・1968年 のソ連のチェコスロバキアへの軍事介入 ・1978年 からのソ連のアフガニスタン侵攻 ・1979年 の中越戦争 などに激突していた。
他方、資本主義諸国では、アメリカ合衆国のニューディール政策 やイギリスの福祉国家 、更には北欧諸国の社会民主主義 政策など、教育水準の向上が社会流動性をもたらし、社会保障 等の福祉制度の充実と生産力の向上が、貧困の克服と一定の社会の成熟と安定をもたらした。この背景には、国際的にも国内的にも社会保障面で社会主義勢力に対抗する必要があったこと、各国の社会民主主義勢力の役割などが挙げられる。
1980年代 後半にはソ連共産党 による体制が消耗を見せ、ベルリンの壁崩壊 などの東欧諸国の民主化 やペレストロイカ を経て、1991年 にはソ連が崩壊 した。重しの外れたヨーロッパ の社会主義国は次々に社会体制を改め、現在ヨーロッパにはソ連型社会主義国は残っていない。
現在
2016年 現在では、アジア (中華人民共和国 、ベトナム 、ラオス 、北朝鮮 )と中米 (キューバ )では一党独裁制 の社会主義国が残っているが、それらの国々でも北朝鮮を除けば、ある程度開発独裁 的な体制である社会主義市場経済 を採用している。
アジアでは、中華人民共和国 は改革開放 、ベトナム はドイモイ 政策を採用し、政治的には社会主義(共産党一党独裁)を堅持しながらも、経済的には資本主義化(国有企業の株式会社 化、外資誘致など)を導入して効率化と発展を追求する、一種の混合経済 を進めている。朝鮮民主主義人民共和国 (北朝鮮)は独自の主体思想 を掲げる軍事独裁専制国家で、経済的・政治的な体制はソ連型社会主義 とも異なるが、2002年 7月の経済改革では農産物 など部分的な自由市場が認められ、2009年 の憲法では、「社会主義」を標榜してはいるが、「共産主義」の語は削除され、独自の「先軍思想 」が明記された。
一方、中南米 ではキューバ の社会主義政権が崩壊せず続いている事に加え、1990年代 末より市場開放による国内産業の壊滅や貧富の差の拡大もあり、左派 勢力が力を増し、ベネズエラ のチャベス政権 を筆頭に、エクアドル 、ニカラグア 、ボリビア など社会主義を志向する国が続いており、2009年にもエルサルバドル では、かつては共産ゲリラであったファラブンド・マルティ民族解放戦線 が選挙で政権を奪取した。米州自由貿易地域 に対抗した米州ボリバル同盟 が結成されている。
なおロシア 、ベラルーシ などの旧社会主義圏では、エリツィン 時代の急速な市場経済導入による混乱と国家弱体化の反動で、超大国 時代の社会主義ソ連を懐古する層もあり、大統領 への権限集中を後押しする一因となっている。
西側諸国の現在
西側諸国の社会主義者や社会主義政党では、かねてよりイギリス労働党 などの社会民主主義 と、プロレタリア独裁 を掲げソ連型社会主義 を目指したマルクス・レーニン主義 が対立していたが、マルクス・レーニン主義勢力は次第に縮小した。
日本共産党 は1950年代から「自主独立路線」を掲げ、ソ連共産党や中国共産党から次第に自律的な路線を模索しはじめる。1963年 には部分的核実験禁止条約 をきっかけにソ連共産党と対立し、関係を断絶。1966年 には中国との対立も表面化し翌年には関係断絶に至る。このような流れの中で日本共産党は1966年の党綱領に自主独立路線を明記。1974年 には党綱領からプロレタリア独裁の規定を削除し、1976年 には「自由と民主主義の宣言 」を出して議会制民主主義 の擁護を明確にした。
西側最大の共産党であったイタリア共産党 は、1970年代 にはマルクス・レーニン主義を放棄しユーロコミュニズム の路線を確立、1980年代には社会民主主義政党へ路線転換した。西側では長らくソ連共産党への支持を続けたフランス共産党 は、退潮傾向にあり1990年代より多様な路線を模索している。
対立する一方の超大国が消滅したため、世界唯一の超大国となったアメリカ合衆国の軍事力の突出に懸念する声もある。冷戦下では共通の敵を持ち歩調を合わせてきた西側諸国の中でも、アメリカ合衆国の軍事行動に同調しないケースが増えつつある。また冷戦終了後もアメリカ合衆国の二重基準 が続いている(民主主義と市場経済 を唱えながら、サウジアラビア などの独裁政権は支持し、選挙で選ばれたイラン 、ベネズエラなどの政権には敵対する)ことを批判する声もある。
2007年 に世界金融危機 が発生したが、その背景として「社会主義に勝利した」とする新自由主義 によって推進された、自由主義経済の行き過ぎ(市場原理主義 )と、政府や社会による市場の監視・管理機能の低下が、資本主義諸国の指導者からも含め、広く指摘されている。
評価
ソ連及びソ連の影響下で成立した多くの社会主義国家では、基本的な教育・賃金 ・住宅 ・医療 などが保障され、身分 ・民族 ・男女などによる差別 は公式には否定され、国家による産業(特にインフラ )の整備が行われて近代化が促進された。一方、基本的には共産党一党独裁であり、言論の自由 、信教の自由 などはしばしば制限され、また官僚制による腐敗や非効率も深刻化した。特にスターリン 時代には大規模な人権侵害 が長期間行われた事がスターリン批判 で暴露されたが、共産党独裁自体は継続された。またソ連の影響下の国々は衛星国 とも呼ばれ制限主権論 も唱えられた。
ソ連の影響下ではなく独力で社会主義政権を建設した国では、ユーゴスラビア やキューバ のようにソ連に比べ政権党の統制が比較的緩やかな場合もあるが、とりわけ、中国 ・カンボジア ・北朝鮮 [ 注釈 1] は、ソ連以上に厳しい抑圧体制を敷いた。カンボジアのポル・ポト 政権は、中国の文化大革命 に触発されて極端な農業 集団化を推し進め、人口 700万の同国で150万から300万の国民 (国外亡命 者を含む)を処刑 した。1989年 6月には中国で天安門事件 が発生し、民主化 を求める学生デモを武力鎮圧した。中国では現在、ネット検閲 によってサイバー空間 でも国民を抑圧し、またチベットにおける人権侵害 が現在進行形で行われている。
日本共産党 は特に日中共産党の関係 が悪化した2019年 以降の中国を、過激な大国主義や覇権主義 などから社会主義に相当しないと批判している[ 6] 。
一覧
現在の社会主義国の最高指導者一覧
社会主義国の場合、支配政党 の中央委員会書記長 ・総書記 ・第一書記 が党首 にあたるものとして存在し、党だけでなく国家の実権を掌握することが多かった。
現在の社会主義国の国家元首一覧
国家主席 ・国務委員長とは、世界における社会主義国の国家元首 (大統領 )の役職名である。社会主義国の場合、国家元首は儀礼的な存在。
現在の社会主義国の政府の長一覧
社会主義国の場合、政府の長(首相 )が保持する行政権は最高指導者に劣る。総書記や国家元首とは異なる人物が務めている。
社会主義国の一覧
現存もしくは過去に存在した社会主義国の一覧は以下の通り。どのような範囲を「社会主義」または「社会主義国」と呼ぶかは議論があるが、ここでは憲法等の国家基本法等で「社会主義」を記載した国を記載する。「社会主義」のうち、特にマルクス・レーニン主義は「共産主義」と呼ばれる事も多い。マルクス・レーニン主義以外の社会主義はアラブ社会主義 、ビルマ型社会主義 、主体思想 など。なお朝鮮民主主義人民共和国 (北朝鮮)は当初はマルクス・レーニン主義を発展させたとする主体思想 を掲げていたが、1992年以降は憲法から「マルクス・レーニン主義」および「共産主義」を削除し、主体思想を掲げる「社会主義」となった。
種類
現存
備考
マルクス・レーニン主義
現存
憲法等に社会主義(マルクス・レーニン主義)を掲げた現存する国家
マルクス・レーニン主義
過去に存在
憲法等に社会主義(マルクス・レーニン主義)を掲げた過去に存在した国家
その他
現存
憲法等に社会主義(その他)を掲げた現存する国家
その他
過去に存在
憲法等に社会主義(その他)を掲げた過去に存在した国家
社会主義を掲げた暫定・臨時政権の一覧
以下は、戦争 や革命 の時期(第一次世界大戦 の余波によるものが大部分)に、短期間存在したが、国際的な承認を得て永続的な政権には至らなかったものである。これらの政権は自らを一定の解釈のもとで「社会主義」であると主張した。
19世紀
パリ・コミューン (1871年3月18日 - 5月28日。史上初の社会主義共和国)
1910年代
1920年代
1930年代
1940年代
1950年代以降
脚注
注釈
出典
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^ a b Steele, David Ramsay (September 1999). From Marx to Mises: Post Capitalist Society and the Challenge of Economic Calculation . Open Court. p. 45. ISBN 978-0875484495 . "Among Western journalists the term 'Communist' came to refer exclusively to regimes and movements associated with the Communist International and its offspring: regimes which insisted that they were not communist but socialist, and movements which were barely communist in any sense at all."
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関連項目
思想
歴史
政治
経済
種類
その他