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福井鉄道140形電車

福井鉄道140形電車(ふくいてつどう140がたでんしゃ)は、かつて福井鉄道に在籍していた電車。初代と2代目が存在した。

  1. (初代)1964年昭和39年)に名古屋鉄道(名鉄)から譲渡されたモ700形ク2200形を組み合わせたもの。2編成4両が在籍した。
  2. (2代)初代の老朽化に伴い、その代替として1979年(昭和54年)から1981年(昭和56年)にかけて登場した車両。こちらも他社より譲渡された車両であるが、種車については後述する。3編成6両が在籍し、560形とともに、福井鉄道で最後まで残った吊り掛け駆動車両であった。

本項では初代および2代目両方の本形式を称した車両について述べる。

初代140形電車

福井鉄道140形電車(初代)[1]
基本情報
製造所 日本車輌製造
改造所 自社
主要諸元
編成 2両
軌間 1067 mm
電気方式 直流 600 V (架空電車線方式)
編成定員 200 名(座席94名)
車両定員

100 名(座席44名)(モハ

100 名(座席50名)(クハ
車両重量

25.7 t(モハ)

19.2 t(クハ)
最大寸法
(長・幅・高)

14,475 × 2,438 × 4,172 mm(モハ)

14,066 × 2,641 × 3,780 mm(クハ)
車体 半鋼製
台車

日車27MCB(モハ141)

ボールドウィン78-25-A(モハ142)

日車ボールドウィン型(クハ141・142)
主電動機 TDK516-A
主電動機出力 63.75kW/個  
搭載数 4基 / 両
駆動方式 吊り掛け駆動方式
歯車比 3.42
制御方式 電動カム軸式
制御装置 東洋ES152-B
制動装置 SME 非常直通3管式
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車両概要

モハ141・142

モハ140形141・142は元名鉄モ700形701・705で、1927年(昭和2年)4月に日本車輌製造で新製されたものである。1964年昭和39年)3月に借入という形で入線し、同年7月に正式譲渡されている[2]。主要機器[注釈 1]については名鉄時代そのままであるが、入線に際して以下の改造が施工されている。

同年11月には、本形式にも装備されている名鉄車独特の大型標識灯が、急カーブ区間走行時に連結相手側に接触し破損することがあったため、対策として2両固定編成化が施工された[3]。その際、以下の改造を施工している。

  • 連結面を切妻構造化[3]
    • これにより、丸妻形状の妻面の円弧部分を切断し切妻形状化したことから、全長が若干短縮されている。また、この短縮によって旧運転台部分に相当する側窓がなくなり、窓配置が1D6D6Dに変化した。
  • 前面窓のHゴム固定化
    • ただし、モハ141が前面窓3枚のうち中央の運転台窓のみHゴム固定とされたのに対し、モハ142は3枚の前面窓全てがHゴム固定とされた。
  • 運転台部分の側窓の一段下降窓化
  • 客用扉の自動扉化
  • 車内放送装置の新設

クハ141・142

クハ140形141・142は元名鉄ク2200形2201・2202で、瀬戸電気鉄道が1936年(昭和11年)10月に日本車輌で新製したガソリン動車キハ300形301・302がその前身である[2]。モハ140形141・142と同様、1964年昭和39年)3月に借入という形で入線し、同年7月に正式譲渡されている。入線に際して以下の改造が施工されている。

  • 台車を日本車輌製ボールドウィン型台車[注釈 4]に換装
  • モハ140と同様、併用軌道区間走行のため前面床下に排障器を、客用扉部に乗降用折り畳みステップをそれぞれ設置[3]

同年11月、モハ140と同様の理由で以下の改造を施工している。

  • 連結面を切妻構造化[3]
    • これにより、全長が若干短縮された。ただし、モハ140とは異なり窓配置は変化なし。
  • 前面窓のHゴム固定化
    • こちらは元は2両とも平妻2枚の2段窓で、前面窓を2枚とも窓幅を若干広げた上でHゴム固定の1段窓にしている。

この他、モハ140と同様に運転台部分の側窓の一段下降窓化、客用扉の自動扉化、車内放送装置の新設が施工された。

その後の経緯

前述の固定編成化後は特に改造を受けることなく使用されたが、車体の老朽化が進んだことから2代目140形に代替されることとなり、モハ141・142はモハ141-1・142-1に、クハ141・142はモハ141-2・142-2にそれぞれ車籍を譲って現車は1979年(昭和54年)に廃車・解体処分された[2]

2代目140形電車

福井鉄道140形電車(2代)[1]
140形電車141編成
(141-1側 2005年10月8日、市役所前駅
基本情報
製造所

汽車製造(モハ141-1・142-1)

加藤車輌製作所(モハ143-1)

日本車輌製造(モハ141-2・142-2・143-2)
改造所 自社
主要諸元
編成 2両
軌間 1067 mm
電気方式 直流 600 V (架空電車線方式)
編成定員 200 名(座席100名)
車両定員 100 名(座席50名)
車両重量

27.5 t(モハ141-1・142-1) 28.6 t(モハ143-1)

30.5 t(モハ141-2・142-2・143-2)
最大寸法
(長・幅・高)

16,600 × 2,750 × 4,147 mm(モハ141-1・142-1) 16,250 × 2,750 × 4,045 mm(モハ143-1)

16,750 × 2,750 × 4,158 mm(モハ141-2・142-2・143-2)
車体 半鋼製
台車

汽車KSK-2H4(モハ141-1・142-1)

日車D-14(モハ143-1)

日車27MCB(モハ141-2・142-2)

日車D-16B(モハ143-2)
主電動機 WH556-J6
主電動機出力 60kW/個  
搭載数

4(モハ141-1・142-1・143-1)

2(モハ141-2・142-2・143-2)基 / 両
駆動方式 吊り掛け駆動方式
制御方式 電動カム軸式
制御装置 ES517-B
制動装置 SME 非常直通
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141編成の141-2側 (2005年11月3日、田原町駅)
141編成の141-2側
(2005年11月3日、田原町駅

モハ140-1形-モハ140-2形からなる2両編成で、武生方モハ(-1)に制御器を、福井方モハ(-2)に電動発電機(MG)および電動空気圧縮機(CP)をそれぞれ搭載する固定編成である。車内は全車セミクロスシート仕様で、客用扉間が転換クロスシート、後部客用扉より連結面までがロングシートで構成されている。本形式の種車は譲渡車・生え抜き車の計3車種からなり、出自の違いから車両形状が各々異なっている他、座席定員にも差異が生じている[注釈 5]

主要機器は入線に際して全車統一され、制御器は東洋電機製造製ES516型電動カム軸式制御器、主電動機はウェスティングハウス社製WH556-J6型[注釈 6]である。主電動機は武生方モハ(-1)に4基、福井方モハ(-2)に2基搭載とした変則全電動車編成とされており、パンタグラフは武生方モハ(-1)に1基搭載されている。

その他、詳細な改造項目は後述するが、全車共通の改造項目として以下が施工されている。

  • 前面中央窓下に行先・種別表示幕を新設
  • 併用軌道区間走行のため前面床下に排障器を、客用扉部に乗降用折り畳みステップをそれぞれ設置

以下、種車ごとにその詳細を述べる。

各車両の詳細

モハ141-1・142-1

種車は長野電鉄より譲り受けたモハ300形301・302で、1941年(昭和16年)に汽車製造で新製されたものである。1978年(昭和53年)に福井鉄道が譲り受け、翌1979年(昭和54年)から1980年(昭和55年)にかけて竣工した。入線に際して以下の改造が施工されている。

  • 福井寄り運転台を撤去して貫通路を新設・片運転台化
  • 武生寄り(運転台寄り)客用扉の移設
  • 前面窓・戸袋窓等固定窓のHゴム固定化

これら改造によって窓配置は原形のd3D7D3dからdD10D3・1(d:乗務員扉, D:客用扉)と変化したが、種車が元より前面非貫通構造であったこともあり、他グループよりは比較的外観上の原形を保っている。乗務員扉撤去跡の側窓はHゴム固定の小窓とされており、元は両運転台車であった面影が残っている。台車は種車が装備していた汽車製KSK-2H4型釣り合い梁式台車をそのまま使用した。なお、本グループは手続き上は初代モハ140形141・142の更新扱いで竣工している。

モハ143-1

種車はモハ40形42で、本形式中唯一の福井鉄道生え抜き車両である。前身は1929年(昭和4年)に加藤車輌製作所で新製された鯖浦電気鉄道デハ10形12で、合併による福井鉄道設立時にモハ42と改称・改番され、1953年(昭和28年)に車体新製による更新を施工したものである。改造前は主に単行運用に供され、福武線および鯖浦線で使用されていたが、1981年(昭和56年)に後述モハ143-2と2両固定編成化を行うため大改造を受け、モハ143-1と改称された。以下に改造項目を記す。

  • 車体延長工事を施工[注釈 7]
  • 福井寄り運転台を撤去して切妻形状とし貫通路を新設・片運転台化
  • 前面窓の連続3枚窓化
  • 乗務員扉新設
  • 客用扉の移設およびプレス扉化[注釈 8]
  • 前面窓・戸袋窓など固定窓のHゴム固定化

これら改造の結果原形は完全に失われ、モハ143-2とほぼ同一の外観に変化を遂げたが、車体長の差異から窓配置はdD11D3と、モハ143-2と比較して客用扉間の側窓が1枚少ない[注釈 9]。その他、前面雨樋形状[注釈 10]や幕板寸法、屋根の深さなど、種車の違いに起因する形態上の相違点が存在した。台車は名鉄より譲り受けた日本車輌製D14型釣り合い梁式台車を装備する。なお、本車は手続き上は新製扱いで登場しており、モハ42は同様に手続き上は廃車扱いとされている。

モハ141-2・142-2・143-2

三連窓が特徴的なモハ143-2

種車は名鉄より譲り受けたモ900形で、1931年(昭和6年)に日本車輌で新製されたものである。瀬戸線昇圧に伴い余剰となったモ901・902・907を譲り受け、1979年(昭和54年)から1981年(昭和56年)にかけて順次竣工した。本グループも入線に際して以下の改造が施工されている。

  • 福井寄り前面の貫通扉撤去・非貫通構造化
  • 武生寄りの乗務員扉撤去[注釈 11]
  • 福井寄り(運転台寄り)客用扉の移設
  • 乗務員扉の鋼製化および客用扉のプレス扉化[注釈 8]
  • 前面窓・戸袋窓等固定窓のHゴム固定化
  • 外板の張り替え[注釈 12]
  • パンタグラフの撤去

これら改造によって窓配置は原形のd2D10D2dからdD12D3となり、外観上原形はほぼ失われたといっていいほどの変化を遂げた。さらにモハ143-2についてはモハ143-1同様に前面窓の連続3枚窓化・連結面の切妻化も施工されている。台車はモハ141-2・142-2が名鉄ク2300形の廃車発生品である日本車輌製27MCB型[注釈 2]を、モハ143-2が同じく名鉄から譲り受けた日本車輌製D16B型をそれぞれ装備する。なお、本グループのうちモハ141-2・142-2は手続き上はクハ140形141・142の更新扱いとされ、モハ143-2については編成相手のモハ143-1同様新製扱いとされている。

その後の経緯

141編成さよなら運転の様子
(2006年10月14日、西鯖江にて撮影)

入線後、1984年(昭和59年)に列車無線取り付けが、1987年(昭和62年)には武生方モハ(-1)の台車のD16型への換装が、1992年(平成4年)にはATS(自動列車停止装置)の設置がそれぞれ施工されている。その間車体塗装の新塗装化も行われ、入線から約20年間福武線の主力形式として使用された。

しかし1990年代後半に至り、経年による老朽化が顕著となってきたことから、600・610形導入に伴う代替対象となって142編成が1998年平成10年)に、143編成が1999年(平成11年)にそれぞれ廃車となった。141編成はその後も予備車として在籍し、乗務員訓練用途にも使用されていた。2004年10月1日改正ダイヤでは、いずれも平日・土曜日の朝に、武生新駅 → 田原町駅 → 神明駅間の普通および武生新駅 → 田原町駅間の急行(田原町駅・神明駅 → 武生新駅間は回送)の運用で、検査およびビール列車運行時の車両不足を補う形で使われていた。

名鉄から譲り受けた低床電車の導入により2006年(平成18年)4月1日をもって定期運用から完全に離脱した後、同年10月14・15日に行われたさよなら運転を最後に廃車となった。除籍後は西武生(現・北府)の車両工場に留置されていたが、2007年(平成19年)6月に解体処分され、姿を消した。

編成

初代
モハ141(元名鉄モ700形モ701)-クハ141(元名鉄ク2200形ク2201)
モハ142(元名鉄モ700形モ705)-クハ142(元名鉄ク2200形ク2202)
2代
モハ141-1(元長野電鉄モハ300形モハ301)-モハ141-2(元名鉄モ900形モ901)
モハ142-1(元長野電鉄モハ300形モハ302)-モハ142-2(元名鉄モ900形モ902)
モハ143-1(元モハ40形モハ42)-モハ143-2(元名鉄モ900形モ907)

脚注

注釈

  1. ^ 東洋電機製造製ES152B型電動カム軸式自動加速制御器および同TDK516型主電動機。
  2. ^ a b J.G.ブリル社製27MCB-2型のデッドコピー製品であった。
  3. ^ モハ140形については両端の扉にのみ設置され、中央扉には設置されなかった。
  4. ^ モハ142が装備するボールドウィン78-25A型とは軸距が異なり、78-25A型の1,981mmに対して本台車は2,180mmであった。
  5. ^ 一例をあげると、武生方モハ(-1)の転換クロスシートは12脚であるのに対し、福井方モハ(-2)では14脚装備されている。
  6. ^ 端子電圧600V時定格出力60kW, 歯車比3.05
  7. ^ 改造前の全長13,840mmから同16,250mmに延長。
  8. ^ a b 旧型国電の廃車発生品を流用したものといわれている。
  9. ^ モハ42当時の窓配置は1D11D1であった。
  10. ^ モハ143-2が緩い曲線を描く形状とされていたのに対し、本車は直線形状とされていた。
  11. ^ 名鉄在籍当時に片運転台化されていたが、乗務員扉は存置されていた。
  12. ^ 本工事施工により車体のリベットがなくなった。

出典

  1. ^ a b 鉄道友の会 福井支部 「若い仲間と代わります 福井鉄道200形 ー去りゆく老兵に贈る讃歌ー」、2017年4月、p.97、ISBN 978-4-9909490-0-6
  2. ^ a b c 清水武 「福井鉄道(下)」、ネコ・パブリッシング、2016年11月1日、p.30~31、ISBN 978-4-7770-5401-5
  3. ^ a b c d e 鉄道友の会 福井支部 「若い仲間と代わります 福井鉄道200形 ー去りゆく老兵に贈る讃歌ー」、2017年4月、p.77、ISBN 978-4-9909490-0-6

参考文献

外部リンク

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