アーリントン国立墓地
アーリントン国立墓地(アーリントンこくりつぼち、Arlington National Cemetery)は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.からポトマック川を渡ってすぐのバージニア州アーリントンにある国立墓地のひとつで、戦没者慰霊施設である。 概要1864年に、南北戦争の戦没者のための墓地として、南軍のロバート・E・リー将軍の住居周辺の土地に築かれた。その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争等の戦没者が祀られ、現在でも戦没者やテロ犠牲者などのアメリカ合衆国のために尽くした人物の墓地が存在する。墓地が築かれたのは1864年であるが、判明した範囲でアメリカ独立戦争の戦没者の墓地も設けられている。 アメリカ合衆国大統領はアメリカ軍(陸海空軍・海兵隊・沿岸警備隊)の最高司令官であるためこの墓地に埋葬される権利があるが、現時点で当墓地内に墓所があるのは、第27代ウィリアム・タフト、第35代ジョン・F・ケネディの2名のみである。 ワシントンメトロブルーライン(英語版)のアーリントン墓地駅が最寄り駅であるが、墓地の面積が2km2とあまりにも広大なため、事前に調べておかないと目的の墓石を見つけるのは困難である。このため各墓石には識別番号が刻印されており、インフォメーションセンターの端末で氏名や認識番号を入力すると墓石の位置を確認できるサービスがある。近年ではオンラインで検索できるサービスやスマートフォンのアプリも用意されている[1]。 年中無休で8時から19時まで開園している(10月-3月は17時まで)。 宗教性について政教分離の観点から無宗教施設と説明されることがあるものの、正確にはあらゆる宗教・宗派、宗旨(無宗教も可)による埋葬を許容しており、特定の宗教形式を押し付けず、「信仰の自由」を保障することで多様な宗教性を受け入れている。事実、専属契約する聖職者の大半はプロテスタント系であるものの、カトリックの司祭やユダヤ教のラビなどとも提携関係があり、また埋葬者や遺族の希望に応じて、あらゆる宗教形式が選択できる。 ちなみに、アーリントン国立墓地に建てられた墓石には、故人の信仰を表す宗教的シンボルマーク(Authorized emblems)が刻まれている。公式ウェブサイトによれば、施設公認のシンボルマークは41個存在しており、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の他にも、仏教や神道系、新宗教では、モルモン教、天理教、金光教、創価学会(SGI-USA)、生長の家、セブンスデー・アドベンチスト教会、統一教会、無神論者を示すものがある。 埋葬の決定権埋葬の決定権は施設側ではなく、本人と遺族の意向次第である。ただし、埋葬後に「埋葬に足る要件を満たしていない」ことが発覚した場合、墓が撤去された上、遺体が遺族に返還されることがある。 主要施設無名戦士の墓無名戦士の墓(Tomb of the Unknowns )は、身元が不明な戦没者を祀った墓地。各国の元首や首相は、外国を公式訪問する際にはその国の無名戦士の墓を訪問し献花するのが通例となっており、アメリカ合衆国を訪問した要人はこの墓地に献花することが多い。例えば、当時日本の内閣総理大臣であった安倍晋三は2007年5月の訪米の折にこの墓地に献花している。 この無名戦士の墓は、よく日本の千鳥ケ淵戦没者墓苑と同等視されるが、千鳥ケ淵墓苑が政府派遣遺骨収集隊によって集骨された遺骨の内、引き取り手のないものや、氏名のわからない遺骨を納めた「納骨堂」であるのに対し、この無名戦士の墓は各戦役で名前のわからない戦没戦士の遺体を一体だけ選び、その遺体を全無名戦士の遺体の代表として祀っている。 海兵隊戦争記念碑→詳細は「海兵隊戦争記念碑」を参照
海兵隊戦争記念碑(Marine Corps War Memorial , USMC War Memorial )は、アメリカ海兵隊の戦没者を追悼する記念碑である。硫黄島の戦いでのアメリカ海兵隊の星条旗掲揚の写真を元に作成され、1954年11月10日に除幕された。像のみの高さは約10 m、旗竿を含む高さは約20 mである。正式には国立墓地の外にあり、内務省国立公園局が所有し管理している。 碑の元となった写真があまりにも有名であるため、硫黄島記念碑(Iwojima Memorial )とも呼ばれるが、この碑はあくまでも、創設から現在までの全ての戦闘における海兵隊の戦没者を記念するものであって、硫黄島の占領といった個別のできごとを記念するものではない。 主な埋葬者→詳細は「アーリントン国立墓地に埋葬された著名人の一覧」を参照
軍人
2006年5月現在、アーリントン国立墓地には367人の名誉勲章受勲者が葬られており、そのうち9人はカナダ人である。 太平洋戦争期の日系アメリカ人太平洋戦争期に日系移民の子女(※戦時期には敵性市民として弾圧を受けた)でありながら、米国側の軍役に就いた60名を越える日系人が「歴史的に特筆すべきマイノリティー」としてアーリントン国立墓地に埋葬されている[2]。 大統領経験者アメリカ合衆国大統領には、墓地完成以来、アーリントン国立墓地に葬られる資格が存在する。
軍人、大統領経験者以外の主要人物
その他
関連項目
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