『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 』（ゴジラ エビラ モスラ なんかいのだいけっとう）は、1966年 （昭和 41年）12月17日 に公開された日本映画 で[ 11] [ 18] ゴジラシリーズ 」の第7作である[ 出典 6] 東宝 [ 9] シネマスコープ （東宝スコープ）[ 出典 7] [ 29] [ 30] [ 注釈 2] 福田純 、主演は宝田明 。
併映は『これが青春だ! 』[ 出典 8]
初回興行時の観客動員数は345万人[ 32] [ 33] [ 注釈 3]
南海の孤島を舞台に、若者たちの活躍を描いたアクション活劇[ 32] [ 37] ゴジラ は人類の敵でも味方でもない中立の存在と語られている[ 38] [ 37] [ 39] [ 40] エビラ はシリーズ初の水中怪獣であり[ 41] [ 42] モスラ も名を連ねているが、出番は少ない[ 出典 10]
第一次怪獣ブーム の中で制作された本作品は、加山雄三 の「幸せだなァ！ 」や膝を抱えた寝姿など、前作以上にゴジラの描写に対する変化が顕著となった[ 出典 11]
本作品以降、1960年代後半のゴジラシリーズでは島が主要な舞台となった[ 39]
青年・良太は、南方海域にて遠洋漁船ごと行方不明になった兄の漁師・彌太が生きていると告げた恐山 のイタコ の託宣を信じ、マスコミを頼って単身上京する[ 44] [ 17] [ 44] [ 44] [ 44] [ 45] [ 46]
4人が上陸したレッチ島は世界制覇を目指す秘密結社「赤イ竹」の工場となっており、原水爆 の製造が行われていた[ 45] [ 46] エビラ の餌食になってしまう。ヤーレン号を転覆させたのはエビラの巨大なハサミであり、輸送船の撒いていた黄色い液はエビラの苦手とする木の実の汁であった[ 46] インファント島 の住民を奴隷として強制連行して労働を強要し、黄色い汁の製造に従事させていたのである。
島からの脱出案を練る吉村らは、脱走して来たインファント島の娘・ダヨと出会う[ 45] [ 45] [ 46] [ 注釈 4] [ 17] [ 44]
やがて防衛線を突破したゴジラは施設を破壊し、赤イ竹は基地の放棄を決定して島の核爆破装置を起動させる[ 46] [ 44] [ 46] [ 44] [ 44]
原住民の作ったかごに乗り込んだ一同は、モスラによってレッチ島からの脱出に成功する[ 44] [ 26] [ 44]
吉村 （ よしむら ） [ 47] 本作品の主人公。実は金庫破りで、ヤーレン号に潜伏しているところを市野たちに出くわし、良太の彌太探しに無理矢理駆り出される[ 出典 12] 浪花節 に弱い人情家[ 47] [ 49]
ダヨ[ 50] [ 51]
本作品のヒロイン。日本語を話せるインファント島の娘で[ 51] [ 49] [ 50] 演じる水野久美は、南国の女性を演じるためにドーラン を全身に塗っており、皮膚呼吸が困難になることから、1時間ごとにシャワーで洗い流し、休憩後に塗り直さなければならず苦労した旨を語っている[ 出典 13] [ 54]
商品化権申請用とみられる特写スチールが存在しているが、公開当時に商品化は行われなかった[ 56]
市野 （ いちの ） [ 57] 仁田 （ にた ） [ 58] [ 注釈 5] 共に耐久ラリーダンス大会に参加し、途中でギブアップした二人組の大学生[ 49] [ 60]
仁田は山岳部に所属しているが[ 61] [ 58] [ 49]
市野は理工科に所属しており[ 57] [ 49]
良太 （ りょうた ） [ 62] 東北地方の田舎に住む学生[ 49] イタコ の言葉を信じ、遭難した彌太を探すために上京して[ 49] [ 63] [ 62]
弥太 （ やた ） [ 64] [ 注釈 6] 良太の兄[ 65] [ 出典 14] [ 65]
カネ[ 67]
彌太と良太の母[ 67]
竜尉隊長 （ りゅうい たいちょう ） [ 68] 赤イ竹の警備隊長で[ 68] [ 49] [ 49] [ 63]
赤イ竹司令官[ 69]
赤イ竹のレッチ島基地司令官[ 69] [ 49] [ 69]
白衣の男
赤イ竹の重水の製造に携る2人の科学者。そのうちの1人がレッチ島内の地下核爆発装置を作動させた直後、ゴジラの襲撃に巻き込まれて瀕死の重傷を負う。最後は、吉村らにレッチ島が残り数時間で核爆発によって水没することを告げ、絶命する。
ゴジラ
エビラ
モスラ
小美人
その名の通り獰猛な性質の現生種コンドル の10倍もの大きさを誇る巨大な猛禽類で、レッチ島の岩山に生息している[ 出典 25] [ 出典 26] [ 91]
エビラ との戦いに引き分けたあと岩山で居眠りをしていたゴジラ を奇襲し、手や尻尾に噛みついたり嘴で突っついたりしてゴジラを苦しめる[ 80] [ 27] [ 出典 27]
南洋の島レッチ島にて、秘密裏に水爆 の原料である重水 を製造していた秘密組織[ 出典 30] [ 注釈 14] 赤い竹 と表記している[ 出典 31] [ 104]
全員とも軍服を着用しており、胸の前で右腕を水平に構える独特の敬礼を行う。隣島のインファント島の人間を連行して強制労働させ、木の実からエビラよけの黄色い汁 [ 106] [ 107] [ 注釈 15]
赤イ竹戦闘機[ 出典 32] [ 注釈 16]
レッチ島防衛のため、ゴジラ対策に繰り出したジェット戦闘機[ 109] [ 49] イギリス空軍 のライトニング と、ソ連空軍 のミグ19 を合体させたような形状をしている[ 109] [ 110]
赤イ竹本部からレッチ島に飛来してゴジラをロケット弾で攻撃するが[ 49]
『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 』にもライブフィルムで登場する[ 69]
赤イ竹水上艇[ 出典 33]
小型水上警備艇。インファント島民の強制連行と、レッチ島にて製造された兵器「烈1号」の本部への輸送に用いられる[ 109]
物語終盤で赤イ竹隊員が逃走に使用するが、黄色い汁が偽物にすり替えられていたため、エビラに襲撃されて破壊される。
2尺サイズのミニチュアと、船舶を改造した実物大の2種が撮影に使用された。
探索気球[ 113]
脱走者を監視する探索気球。色は赤と白のツートンカラー[ 113]
銃器類
トンプソン短機関銃 ・M1カービン ・MP40 ・M1919
レッチ島
赤イ竹が基地を構える南海の孤島[ 114] [ 115] インファント島 からほど近いが、小美人からは「悪魔の島」と呼ばれる[ 115]
参照[ 10] [ 11] [ 12] [ 24]
本編監督や音楽担当も、それまでの「ゴジラシリーズ」の主軸を務めた本多猪四郎 から福田純 へ、伊福部昭 から佐藤勝 へ変わり、作風もそれまでの重厚なものから軽快なものへ変わっている[ 出典 38] 宝田明 と福田は、前年に映画『100発100中 』でも組んでおり、同作品に近い作風とも評される[ 159] 007シリーズ のパロディと称している[ 39]
『ゴジラの逆襲 』以来の参加となった佐藤は、エビラのモチーフにエレキギターを取り入れるなど、当時の流行を取り入れている[ 160] [ 161] [ 161]
本作品の公開年である1966年 5月、東宝は『キングコング対ゴジラ 』（1962年、本多猪四郎 監督）製作の際にアメリカ のRKO 社から取得した「キングコング 」の5年間分のキャラクター使用権を活用してもう1本「キングコング映画」を製作しようと、南海の孤島を舞台にキングコング、エビラ、モスラの3大怪獣の登場する特撮映画『ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ』を企画する[ 出典 39] 福田純 を予定し、関沢新一 によって脚本化されたが、アメリカ側が内容に難色を示したため[ 注釈 19] キングコングの逆襲 』（1967年、本多猪四郎監督）として翌年に制作されることとなった[ 出典 40]
一方、不採用となった『キングコング対エビラ』の脚本は、主役のキングコングをゴジラ に置き代え、「ゴジラシリーズ」の一編として再利用されることとなり、本作品が製作された[ 出典 41] [ 注釈 21] [ 出典 42] [ 24]
脚本を担当した関沢新一 は、本作品について日本人科学者が中国へ渡ったとする当時の新聞記事に着想を得たと述べている[ 166] コミュニスト を象徴する赤と中国 の竹 を連想させるものと解釈している[ 8] [ 167]
キャスティングでは「眼帯をつけた平田昭彦[ 注釈 22] [ 注釈 23]
『モスラ 』（1961年）以来ザ・ピーナッツ が演じてきた小美人 は、本作品では彼女たちと同様に双子タレントであるペア・バンビ に交代している[ 出典 43] [ 170] [ 170]
島の娘ダヨには、内藤洋子 や酒井和歌子 に続く1966年 のホープ・高橋紀子 が起用され[ 171] [ 118] [ 注釈 24] 虫垂炎 で入院してしまう[ 出典 44] 水野久美 が代役を務めることになり[ 出典 45] [ 注釈 25] ウルトラQ 』第23話「南海の怒り」で同様の役柄を演じている[ 171] 松竹 の山本豊三 が起用されていたが、当銀長太郎に変更された[ 53]
主演の宝田明 は、本作品のころより気を張らずに軽く演じることを重視するようになり、明快なヒーローではない金庫破りという設定がフランスの冒険映画のようであったと述懐している[ 175]
彌太役の伊吹徹 は、良太役の渡辺徹[ 注釈 17] [ 176]
特殊技術スタッフは、撮影の有川貞昌 が監督補に昇格し、事実上の特技監督を務めた[ 出典 46] 円谷英二 が特技監督としてクレジットされるのは、本作品が最後となった[ 15]
有川は、本作品の前に円谷プロダクション へ出向し、特撮テレビドラマ『ウルトラQ 』に参加したが、自身は映画のほうが性に合っていると感じたという[ 177] [ 177]
有川によれば円谷は現場にはいなかったが、本編との打ち合わせを苦手としていた有川は円谷を介して本編側に話を通してもらっていたという[ 177] [ 177] [ 177]
エビラの造形は、ザリガニ やイセエビ の現物を持ち込んで研究したが、現物をそのまま拡大しても意外に怖くないことに気付き、怖そうな部分だけを集めたと、特殊美術造形の利光貞三 は述べている[ 178] [ 179] 関田裕 ）だけでは不十分で、上部から吊るした細いワイヤで身体の数か所を釣り上げて操作を行ったが、関田は「こっちの背中がエビみたいに曲がったりして苦しくて」と述べている[ 179]
ラストのレッチ島崩壊シーンは『大冒険 』（1965年、古澤憲吾 監督）の流用である。
東宝チャンピオンまつり （1972年夏）
ゴジラ映画大全集（1979年夏）
全国5つの東宝直営館で行われたプログラム内で、8月6日に再上映された。
当初、東宝の国際部では本作品に『EBIRAH 〜HORROR OF THE DEEP〜（エビラ・深海の恐怖）』という英語タイトル[ 出典 47] [ 182] [ 181] [ 182] [ 184] [ 注釈 27]
英語の吹き替えは2種類存在しており、東宝国際版の吹き替えはフロンティア・エンタープライズが制作[ 182] [ 182] ピーター・フェルナンデス が演出した。
ビデオ
1980年代初頭に左右トリミング画面で発売。このバージョンは冒頭の東宝マークが「東宝株式会社配給」とあり、途中で英語の字幕[ 注釈 28] [ 185] シネマスコープ 仕様の廉価版として、パッケージを変更したうえで再販された。
VHS 品番 TG1947[ 3] [ 186]
レーザーディスク
1989年発売。ノーカット・シネマスコープ版。品番 TLL2049[ 186] VHD 版も発売された[ 187]
1992年8月1日に発売されたLD-BOX「ゴジラ激闘外伝」に、東宝チャンピオンまつり版が収録された。 DVD
2003年6月21日にジュエルケース版が発売[ 189] [ 190] [ 190] 1972年 ごろに発売された『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣 』を編集した8mm +ソノシート 「ジャンボ怪獣島」とセットの絵本「ジャンボ怪獣島」が収録されている[ 190]
2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」にも収録されている。
2008年2月22日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションII」にも収録されており、単品版も同時発売された。
2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
2016年6月15日、東宝DVD名作セレクション版が発売。 Blu-ray Disc
ソノシート 『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』朝日ソノラマ より1966年12月22日に発売された[ 199] [ 200] [ 199] ソノシートは、1970年に書籍『怪獣大襲撃』（朝日ソノラマ）の付録として再録された。絵本部分は1999年に『大復刻怪獣ソノシートブック』（朝日ソノラマ）へ再録された[ 200]
『現代の主役 ウルトラQのおやじ 』（1966年6月2日、TBSテレビ ）
実相寺昭雄 演出のドキュメント番組[ 202] [ 202] 『ゴジラ対ヘドラ 』（1971年）
港のセットにヤーレン号のミニチュアが係留されている[ 203] [ 204]
『ゴジラ 』（1984年）
石坂浩二 が演じる原発職員の衣装に赤イ竹の階級章が逆さにつけられている[ 205]
^ 東宝公式サイト映画資料室では「86分」[ 10] [ 23]
^ 本作品と同じく「南海」をタイトルに含める『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣 』（1970年）との区別から、『南決』を用いる例も見られる[ 31]
^ 現在の公表値は421万人だが[ 出典 9] [ 33]
^ ゴジラは当時流行の「ゴーゴー音楽」に乗って暴れる。
^ 書籍『ゴジラ大百科』では、読み仮名を「じんた」と表記している[ 59]
^ a b 資料によっては、彌太 と表記している[ 65] [ 66]
^ 資料によっては、読みがなを「だいコンドル」としている[ 72]
^ 資料によっては、大怪鳥 と記述している[ 出典 17]
^ 資料によっては、「10メートル[ 88] [ 75] [ 89]
^ 資料によっては「45メートル」と記述している[ 出典 20] [ 90]
^ 資料によっては、「2万1千トン[ 80] [ 74] [ 70] [ 89]
^ 資料によっては出身地を「出生地」と記述している[ 74] [ 91] [ 76]
^ 書籍『大ゴジラ図鑑2』では、『怪獣大戦争 』時の操演用ラドン と記述している[ 97]
^ 書籍『ゴジラ1954-1999超全集』では、某国の武装集団と記述している[ 104]
^ 書籍『ゴジラ大百科』では、原料を「黄色い木の皮」と記述している[ 106]
^ 書籍『決定版ゴジラ入門』では、名称をジェット攻撃機 と記述している[ 111]
^ a b 同姓同名の俳優 とは別人[ 127]
^ 川北は、後年のインタビューにて人手不足で撮影助手も務めたと述べている[ 157]
^ 書籍『ゴジラ大全集』では、円谷英二が強い不満を表していたと記述している[ 159] 有川貞昌 になったことにアメリカ側が不満を示したためと記述している[ 163]
^ 中島春雄 いわく、この仕草は特技監督の円谷の指示による。^ 美女に好意を持つ、「若大将シリーズ 」における加山雄三 を真似て得意気に鼻をこする[ 注釈 20]
^ 平田が演じた第1作『ゴジラ 』（1954年、本多猪四郎監督）の芹沢大助博士のセルフパロディとなっている[ 168] [ 169]
^ 『ゴジラ』（1954年）の芹沢大助や『地球防衛軍 』（1957年）の白石亮一。
^ ヴィレッジブックス『東宝特撮映画大全集』[ 164] [ 172]
^ 水野は前年に東宝を退社していたが[ 174] 田中友幸 から直接依頼されたという[ 173] [ 54] [ 55]
^ 書籍『モスラ映画大全』では、「1時間15分」と記述している[ 13]
^ この際、佐藤勝は "MASARU SATO" となるところが "MARARU SATO" と誤記されている。
^ 冒頭の恐山 のシーンに "Holly Mountain" など。
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