岩見沢駅
岩見沢駅(いわみざわえき)は、北海道岩見沢市有明町にある北海道旅客鉄道(JR北海道)の駅である。所属線である函館本線に当駅を終点とする室蘭本線が乗り入れる[1]。電報略号はイワ[4]。駅番号はA13。事務管理コードは▲130133[5][6]。 北海道内で最古の鉄道である幌内鉄道[注 1]の駅のひとつとして開業し、砂川方面や室蘭方面への延長拠点として発展して来た。幌内鉄道の小樽-岩見沢間がのちの函館本線に組み込まれた後も、残存部が支線となった幌内線や、室蘭本線志文駅から万字線が乗り入れたほか、戦後の高度成長期に増大した貨物輸送量を支えるために、東京以北で最大の操車場であった岩見沢操車場も存在した[7][注 2]。幌内線・万字線が廃止された現在でも、隣接するバスターミナルには周辺市町村からのバス路線が集結しており、交通の要衝としての役目を担っている。 また、現駅舎(4代目駅舎)は全国初の公募型コンペでデザインを選定し、2009年度グッドデザイン賞大賞を受賞した事でも知られ、2013年からは駅舎ガイドツアーが開催される事もある。こうした駅舎のガイドツアーは大都市圏以外では珍しく、北海道内の駅で開催しているのはこの岩見沢駅が唯一とされる。 歴史かつては幌内炭鉱(三笠市)や空知炭鉱(歌志内市)をはじめとする空知地方の石炭を手宮・室蘭・苫小牧の港へ運ぶ貨物列車が多く往来したが現在は炭鉱の閉山により石炭輸送はなくなり、旅客輸送も札幌が中心となった。 大和田建樹が1906年に作詞した『鉄道唱歌』北海道編北の巻では、幾春別炭鉱、幌内太炭鉱、幌内炭鉱へのアクセス駅であったことが歌われている[9]。
年表
駅名の由来「岩見沢市#地名の由来」を参照 駅構造単式1面1線と島式2面4線を合わせた計3面5線を有する地上駅だが、跨線橋と駅舎3階の改札口が直結しているため構造的には橋上駅に近い。ホームのない副本線(2・5番線)もあり、2番線は主に貨物列車の発着、5番線は車両の留置などに使用される。夜間滞泊設定駅であり、7番線以降にも多数の側線を有する。 社員配置駅。みどりの窓口、自動券売機、話せる券売機[2]、自動改札機、セブンイレブン北海道ST(北海道キヨスク運営)設置。Kitacaは函館本線のみ利用可能で、室蘭本線では利用できない。また、当駅から苫小牧駅方面へ室蘭本線経由で行く場合も利用できない。 3・4番ホームには木彫りの「ばんばの像」が設置されている(写真参照)。1980年4月10日に設置され、ばんえい競馬(岩見沢競馬場での開催は2006年をもって終了)をPRする目的で、岩見沢市が彫刻家の中川貞司(旭川市在住)へ依頼し製作された。製作費の250万円と付属のそりは岩見沢市が負担、馬具一式は馬主会長であった松浦慶三より岩見沢駅へ寄贈された。重量は1トンにも及ぶ[25]。 岩見沢市は道内でも有数の豪雪地帯となっており、特別豪雪地帯に指定されている[26]。冬季には駅構内の除雪が間に合わず列車に遅れや運休が発生する[新聞 6]ことや、深夜・翌朝の列車を計画的に運休し、夜間の除雪作業を行うことがある[27]。
のりば
(出典:JR北海道:駅の情報検索) 駅舎1933年建築の3代目駅舎(木造2階建、延床面積1,070平米)は当時道内で由仁駅(2006年改築のため解体)、上白滝駅(2016年廃止)に次ぐ古さだったが、2000年12月10日未明、漏電による火災で全焼した。その後すぐにプレハブの仮駅舎(2階建、延床面積400平方m)を設置したものの、当時は駅前再開発による市街地分断の解消案として鉄道高架化[注 8]を検討していた時期だったため新築計画の確定に時間を要し、仮駅舎での営業が5年以上も続く事となった[注 9]。 新駅舎の基本計画が市施設・自由通路併設型へ確定した事に伴い、岩見沢市とJR北海道は、駅舎としては全国初の試みとなるデザインの一般公募(岩見沢複合駅舎建築デザインコンペ)を2005年3月5日に実施。応募総数376案の中から有限会社ワークヴィジョンズ・西村浩の案が最優秀賞として採用された。 現駅舎は鉄道の南側に建設され、正面から見て中央の岩見沢駅本体・左側の有明交流プラザ・右側の有明連絡歩道という3つのブロック[注 10]に分かれた構造[新聞 7]。2006年7月に着工し、2007年6月23日に岩見沢駅本体が暫定開業[JR北 2]。その後、西側の仮駅舎跡地に有明交流プラザ、東側に有明連絡歩道を建設しながら駅舎本体の仮設出入口の封鎖などが行われ、2009年3月30日に全面開業した[JR北 4][新聞 4]。 なお駅舎建設にあたって、外壁用レンガに自分のイニシャルなどを刻印する「岩見沢レンガプロジェクト(通称・らぶりっく!! いわみざわ)」という企画が行なわれた。そのためプロジェクト参加者が訪れて自分のレンガを探したり、旅行者がレンガの刻印に見入る光景を見られる事がある。また、駅舎の2~3階および自由通路上は大部分がガラス張りとなっており、岩見沢駅前の街並みや駅構内の風景を一望できる。
デザイン・設計岩見沢駅舎の大きな特徴の一つが低コストな設計である。 岩見沢駅舎は、内壁で囲まれた駅事務室や市役所サービスセンターと、内壁と外壁の間に挟まれた待合所やセンターホールの、2重に仕切られた構造が基本となっている。室内を2重に仕切るこの構造は、用途に応じた効率的な空調を施し光熱費を低減を図るためのものである。具体的には、服装を外気温に合わせてあり滞留時間も短い一般利用客を想定した、屋外との急激な気温差を作らない最低限のレベルに空調を抑えた空間。そして、季節を問わず制服やスーツを着用し長時間の業務にあたる施設職員を想定した、外気温に左右されない一定の室温を保つための重点的な空調を施す居室である。 また、一般的にはいくつものパーツを組み合わせた方式をとる事が多い屋根と天井も、岩見沢駅舎はPCコンクリートを用いて屋根材・梁・天井材などを一度に賄う方式としたため、内装工事の簡略化による建設費の圧縮を実現した。これにより室内には大きな凹凸(強度を増し、冬季の積雪荷重に耐えるための梁の代わり)のあるコンクリートが剥き出しとなったが、この凹凸を利用して間接照明を施したため、コンクリートの冷淡さや圧迫感を抑え、逆に暖かみの感じられる空間を作り出した。 もう一つの大きな特徴として、地域性を徹底的に表現したデザインが挙げられる。単なる色や形だけにとどまらず、郷土史と関わりの深い素材を多用しており、中でもガラスカーテンウォールに鉄道のレールを使用する工法は国内初となる。 随所に見られるレンガ壁は、レンガ造りの機関庫や整備工場が建ち並ぶ明治期の岩見沢駅周辺をイメージしたものである。そのうち1階外壁に使われている、寄付によって募られた4,777個の刻印入りレンガは、地域住民の想いが駅とともに新しい歴史を歩んでいく事を意味している。これらのレンガ壁は、北海道の伝統的な積み方である「小端空間積み」を再現した工法で積まれている。また内壁の一部には、小端空間積みを応用した独自の工法の「透かし積み」で意図的に隙間が作られ、すりガラスがはめ込まれている。この透かし積みによって、日中は木漏れ日のように日光を室内に取り込み、夜間は行灯のように柔らかい光が屋外へ放たれるようになっている。 ガラスカーテンウォールのマリオン(窓枠)にはかつて北海道内で実際に使われていたレールを合計232本使用しており、実際の線路とほぼ同じ1.1m間隔で配置され、鉄道によって発展した岩見沢の歴史を象徴している。また、古レールの使用を強く印象付けるため、独特の錆びた色合いを残す表面処理を施し、製造情報などが入った刻印は白く着色してアクセントとして目立たせ、そのレールを下から見上げられるように配慮して取り付けられた。 これらの取り組みによって、2009年11月6日に財団法人日本産業デザイン振興会主催のグッドデザイン賞で大賞(内閣総理大臣賞)を受賞した[JR北 5][JR北 10]。また、2010年は建築業界で国内最高峰と言われる「日本建築学会賞」を、2011年には鉄道関連デザインの国際コンペティション「ブルネル賞」をそれぞれ受賞[30][JR北 12]。それ以外にも建築・鉄道関連を中心に多数の表彰を受けているほか、世界の名建築ベスト20の一つとしてライフスタイル誌[31]で取り上げられるなど高い評価を得ている。 (出典:[32])
利用状況乗車人員の推移は以下のとおり。年間の値のみ判明している年については、当該年度の日数で除した値を括弧書きで1日平均欄に示す。乗降人員のみが判明している場合は、1/2した値を括弧書きで記した。 なお、『岩見沢市統計書』を出典とする値について、年間乗車人員は百人単位での記載となっているため、他文献に合わせて末尾の桁数を補足するため100倍した数値を記載する。 また、「JR調査」については、当該の年度を最終年とする過去5年間の各調査日における平均である。
駅周辺南口(駅前)駅舎に隣接するバスターミナルから岩見沢市内各所や周辺市町村への路線バス・札幌方面への都市間高速バスが発着している。なお、以前は駅舎正面に路線バスの降車場があったが、バスターミナル開業の際に現在の1条通沿いへ移転した。 →詳細は「北海道中央バス岩見沢ターミナル」を参照
南口周辺は岩見沢市の中心市街地で、行政・公共施設、保険・金融機関の支店が集積し、小規模ながらビジネスホテルがあるほか、商店街も広がる。しかし商店街においては郊外に大型商業施設が次々と出店した影響で空洞化が見られ、数軒の食品スーパーやドラッグストア、コンビニを除くと営業しているのは個人経営などの小型店がほとんどである。 主な施設(複合施設やテナントビルからは主なものを抜粋)
北口(駅裏/鉄北)北口周辺は通称「駅裏」「鉄北」とも呼ばれ、南口に比べて商業・業務系の施設は乏しく、鉄道用地を除くと住宅地となっている。 ロータリーから北へ伸びる有明北盛通(北口の駅前通りにあたる)を軸に、西側には岩見沢運転所や岩見沢レールセンターなどの鉄道関連施設が建ち並び、東側には宅地が造成されマンションやアパートが建ち始めている。 その外周は、北口がなかった時代に形成された住宅街が囲んでおり、1万人以上の人口を抱える。有明北盛通の東側を並行する「東2丁目通(道道6号)」と、西側を並行する「西10丁目通(道道687号)」のそれぞれの沿道に食品スーパーやコンビニなどの生活利便施設が立地している。 以前は駅の出入口が南口しかなく、アクセスにはそこから約500m離れた陸橋を利用しなければならなかったが、駅舎の改築に伴って自由通路や連絡道路が整備された事で利便性は大きく向上した。 主な施設
中心市街地活性化事業に伴う動向岩見沢駅周辺を含む中心市街地では、断続的ながら以前より再開発事業が進められている。また駅舎の新築および表彰などをきっかけに、駅舎と街並みの調和を図る景観整備の地区計画および条例が制定されるなど、駅舎を核としたまちづくりの機運が高まりを見せている。その一方で(特に大規模な事業ほど)計画当初よりも遅れたり規模が縮小されたり、そもそも実現に至らず頓挫してしまった事業もあるなど商業環境は依然として厳しい状況に置かれている。 駅周辺再開発事業
駅北土地区画整理事業(完了)
かつて販売されていた駅弁南口駅舎の1階西側にある観光協会で2023年まで花扇による以下の駅弁が販売されていた。かつてはキヨスクで取り扱っていたが、セブンイレブン北海道STへ業態転換する際に観光協会での販売に切り替えられた。この他(有)岩見沢駅構内立売商会がイクラ弁当やとりめしを販売していたほか、立ち食い形式のおでん店も設けられていた時代もあった。
隣の駅※特急列車「カムイ」「ライラック」「宗谷」「オホーツク」の停車駅は各列車記事を参照。 かつて存在した路線
脚注注釈
出典
JR北海道
新聞記事
参考文献
関連項目外部リンク
新駅舎関連ウィキニュースに関連記事があります。JR北海道・岩見沢駅舎が2009年度グッドデザイン大賞を受賞
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