第54回スーパーボウル
第54回スーパーボウル(Super Bowl LIV)は、2020年2月2日にフロリダ州マイアミガーデンズのハードロック・スタジアムで開催された試合。 2019年シーズンのNFLチャンピオンの座をかけて、AFC王者カンザスシティ・チーフスとNFC王者サンフランシスコ・フォーティナイナーズが対戦した。 試合は、チーフスが49ersを31対20で破り、50年ぶり2度目のスーパーボウル制覇を果たした。1970年に死去したヴィンス・ロンバルディの功績から命名された優勝トロフィーのヴィンス・ロンバルディ・トロフィーは、第5回スーパーボウルからその名称で授与されたので、第4回スーパーボウル制覇を最後にスーパーボウル制覇から遠ざかったチーフスにとって初めて、「ヴィンス・ロンバルディ・トロフィー」という名称でトロフィーを受け取った。 MVPには、パトリック・マホームズが選ばれた。 開催地決定まで2015年3月15日、以下のスタジアムが最終候補地になることが発表された[1][2]。
このうちアトランタは第53回スーパーボウル開催地に選ばれたため除外され、ロサンゼルスは第54回については辞退して第55回開催地に選ばれ、残るマイアミガーデンズとタンパが争うことになった。2016年5月にオーナー投票が行われ、開催地はマイアミガーデンズに決定した。 同スタジアムでスーパーボウルが開催されるのは、ドリュー・ブリーズ、レジー・ブッシュ、ペイトン・マニング、レジー・ウェインといった選手が出場した第44回大会以来、10年ぶり6度目、マイアミでの開催は11度目である。
は、勝利したチーム 出場チームAFC代表カンザスシティ・チーフスは、AFL-NFL合併前最後のスーパーボウルとなった第4回大会にAFLチャンピオンとして出場して以来、50年ぶり3度目の出場である。勝利すれば、第4回大会以来50年ぶり2度目のスーパーボウル制覇となる。NFC代表サンフランシスコ・49ersは、QBコリン・キャパニックを擁して出場した第47回大会以来、7年ぶり7度目の出場である。勝利すれば、QBスティーブ・ヤングが6TDパスを記録した第29回大会以来、25年ぶり6度目のスーパーボウル制覇となる。両チームがスーパーボウルで対戦するのは初めてである。 カンザスシティ・チーフス→詳細は「2019 Kansas City Chiefs season(英語)」を参照
石油王ラマー・ハントがダラスへのNFLチーム誘致を失敗したのをきっかけにNFLに対抗するリーグとしてアメリカン・フットボール・リーグ(AFL)を設立し、チーフスは、AFLの新チームとしてリーグ設立と共にダラスで誕生した(3年後にカンザスシティへ移転)。AFL設立提唱者であるラマー・ハントがチーフスの初代オーナーとなり、AFLが存在した10シーズン中、3回優勝した古豪である[3][4][5]。 AFLの人気が高まると、ハントとNFLとの合併交渉が始まり、合併を前提として1966年シーズンからAFLとNFLのチャンピオンが対戦する試合(現在のスーパーボウル)を開催することとなった。その第1回大会となるAFL-NFLワールドチャンピオンシップゲーム(後に第1回スーパーボウルと改称)にチーフスはAFLチャンピオンとして出場し、名将ビンス・ロンバルディ率いるグリーンベイ・パッカーズに敗れた。その3年後のAFL-NFL合併前最後のスーパーボウルである第4回スーパーボウルでNFLチャンピオンのミネソタ・バイキングスを破り、スーパーボウル初制覇を果たした[6][7]。 NFLへの合併後、チーフスはAFL所属チームを中心として再編されたAFCに所属したが、チームは低迷し、1971年シーズンに一度プレイオフに進出して以降、1986年シーズンまでプレイオフに進出できなかった。1989年シーズンからマーティ・ショッテンハイマーがHCに就任するとチーム状態が徐々に良くなり、1993年シーズンに49ersからジョー・モンタナ、レイダースからマーカス・アレンが移籍すると、11勝5敗とフランチャイズ創設以来最高成績をあげた。しかし、カンファレンス決勝でバッファロー・ビルズに敗れ、スーパーボウル出場はならなかった。1998年シーズン後、ショッテンハイマーが退任し、再びチームは低迷した。 2013年シーズン、アンディ・リードがHCに就任し、コリン・キャパニックの台頭で控えQBに甘んじていたアレックス・スミスを49ersから獲得すると、ペイトン・マニング擁するデンバー・ブロンコスと地区優勝争いをするまでにチーム成績が好転した[8]。2018年シーズン、スミスを放出し、2年目のパトリック・マホームズを開幕から先発QBに起用したチームは大躍進し、AFC第1シードを獲得したが、カンファレンス決勝でニューイングランド・ペイトリオッツに敗れ、スーパーボウル出場はならなかった[9]。 2019年のこのシーズンは、シーズン途中怪我でマホームズが欠場したものの[10]、12勝4敗で地区優勝に輝き、AFC第2シードを獲得した[11]。プレイオフでは、ヒューストン・テキサンズとテネシー・タイタンズを破り、スーパーボウル出場を果たした。AFCのチャンピオントロフィーは、AFL設立の功績からラマー・ハント・トロフィーと命名されているが、AFL-NFL合併から50年の時を経て、ハントがオーナーを務めたチーフスへ初めてトロフィーが渡ることとなった。チーフスのスーパーボウル出場は、50年ぶり3度目であるが、AFCチャンピオンとしての出場は初となる[12]。 サンフランシスコ・49ers→詳細は「2019 San Francisco 49ers season(英語)」を参照
1980年代、49ersはQBジョー・モンタナ、WRジェリー・ライスらを擁し、HCビル・ウォルシュの下で構築したウェストコーストオフェンスでリーグを席巻し、1995年までにスーパーボウルを5度制覇した。1990年代後半以降、しばらくチーム成績が低迷した後、2012年にHCジム・ハーボーの下、機動力のあるQBコリン・キャパニックを中心としたピストルオフェンスで第47回スーパーボウルに出場したが[13]、スーパーボウル制覇はならず[14]、再びチーム成績が低迷した。 2017年、フロント未経験のジョン・リンチがGMに就任し、前シーズンアトランタ・ファルコンズのオフェンシブ・コーディネーターとしてスーパーボウルに出場したカイル・シャナハンをヘッドコーチに起用してチーム再建に乗り出すと、ジミー・ガロポロ、ニック・ボーサといった選手の獲得に成功し、チームを立て直した[15]。 2019年のこのシーズンは、第10週でシアトル・シーホークスに負けるまでの開幕8連勝で始まった[16]。その後、最終週まで地区優勝をシーホークスと争ったが、最終週直接対決で勝利し、13勝3敗のNFC西地区優勝に輝いた。13勝3敗はNFCトップタイの勝率であったが、同じく13勝3敗のパッカーズ・セインツに直接対決で勝利していたため、NFC第1シードでプレイオフに進出した[17]。ディビジョナルプレイオフで、第6シードのバイキングスを破り、第12週の再戦となったNFC決勝では、第2シードのパッカーズに勝利して、第47回スーパーボウル以来、7年ぶり7度目のスーパーボウル出場を決めた[18]。
エンターテイメント試合前一時休養しており、グラミー賞受賞式で復帰したばかりのデミ・ロヴァートがアメリカ国歌を斉唱した[19]。またヨランダ・アダムスがアメリカ・ザ・ビューティフルを斉唱した[20]。 国歌斉唱が終了するタイミングでスタジアム上空を飛行機が通過するフライオーバーは、海軍の第151戦闘攻撃飛行隊 (en:VFA-151)所属 のF/A-18E、第147戦闘攻撃飛行隊 (en:VFA-147)所属の F-35C[21]、第129電子攻撃飛行隊(en:VAQ-129)所属のEA-18G[22]及び海兵隊の第501海兵戦闘攻撃訓練飛行隊(en:VMFAT-501) 所属の F-35B[23]で行われた。 第151戦闘攻撃飛行隊はフォーティーナイナーズの本拠地カリフォルニア州にあるリモア海軍航空基地(en:Naval Air Station Lemoore)所属で部隊には同州出身の隊員が多いが、同隊の隊長Heirig中佐はチーフスの本拠地カンザス州のローレンス出身。[21] 過去にもフライオーバーを実施している海軍のアクロバットチーム、ブルーエンジェルスには海兵隊のパイロットも在籍しているが、海軍部隊と海兵隊部隊共同で行われた今回は、史上初のスーパーボウルにおける複数の軍により実施されたフライオーバーとなった。 ハーフタイムショージェニファー・ロペスとシャキーラがハーフタイムショーを行った[24][25]。 シャキーラが赤い衣装で登場、数曲披露した後、ジェニファー・ロペスがレザーパンツ姿で登場した[26]。ロペスは、「Jenny from the Block」、「Ain't It Funny」、「Get Right」を歌った後、ブラックレザーの衣装とサイハイブーツを脱いで、ボディスーツ姿となり、ポールダンスを見せつけながら、「Waiting for Tonight」を熱唱した。また元夫のマーク・アンソニーとの間の11歳の娘エメがサプライズで登場した。ショーのフィナーレではロペスとシャキーラがデュエットを行い、最後には盛大な花火が上げられた[27]。 →「ジェニファー・ロペスの作品」も参照
この6分間のショーでジェニファー・ロペスは130人のダンサーを引き連れたが、衣装213着、靴143足を用意した[28]。 スーパーボウルのハーフタイムショーでラテンアメリカ人女性がメインを務めるのは初めてであった。パフォーマンス中には、白い檻に少女が入っているように見える演出がなされたが、CNNを含む複数メディアは、移民問題を示唆していると報道した[26][29]。 試合経過サンフランシスコ・49ers 対 カンザスシティ・チーフス
開催地 フロリダ州マイアミガーデンズ ハードロック・スタジアム
前半49ersがコイントスに勝ち、後半レシーブを選択したので、49ersのキックオフで試合が始まった[30]。 チーフスの最初のドライブがファーストダウン更新を1度もできずにパントで終わった後(いわゆるスリーアンドアウト)、49ersはサミュエルの32ヤードランなど、10プレーで62ヤード前進して、38ヤードのフィールドゴールで3点を先制した[30]。 これに対し、チーフスは15プレー75ヤードの前進を次のドライブで決め、マホームズのタッチダウンランで逆転した。このドライブでは、マホームズがスクランブルでファーストダウン更新を狙ったプレーでファンブルをしたボールが後ろに跳ねて、ファーストダウンにわずかに足らない地点でアウト・オブ・バウンズになり、4thダウン1ヤードとなる局面があった。しかし、チーフスはこの局面で4thギャンブルを成功させて、逆転に繋げた[30]。 クォーターをまたいだ次の49ersのドライブで、49ersのQBガロポロは強いパスラッシュを受け、体にコンタクトを受けた状態で強引に投げたパスが力の無いパスとなり、ブリーランドによるインターセプトを喫した。チーフスはインターセプトで得た好位置からのドライブを活かし、フィールドゴールで追加点を得て、10対3とリードを広げた[30]。 リードを広げられた49ersは、5回の10ヤード超えのプレーで前進し、最後はガロポロからユースチェックへのパスで同点に追いついた[30]。 10対10、前半残り5分、チーフスのドライブがパントで終わった次の49ersのドライブでは、ガロポロからキトルへの42ヤードパスが決まり、一気にゴール前まで前進したかと思われたが、このプレーでキトルにパスインターフェアランスの判定がされ[31]、自陣35ヤードに戻された。49ersが前半残り時間を消費して、前半を10対10の同点で折り返した。同点で前半を折り返すのはスーパーボウルでは、4回目である[32]。 後半49ers最初のドライブは、サンダースの2回のパスキャッチ、サミュエルのラン、ユースチェックのパスキャッチで60ヤード前進し、フィールドゴールで49ersが3点を勝ち越した(13対10)[30]。 次のチーフスのドライブでは、ワーナーがホームズのパスをインターセプトして、49ersが好位置で攻撃権を得た[30]。 このドライブをガロポロは、サミュエルへの16ヤードのパスで始め、3rdダウン8ヤードとなった局面では26ヤードのボーンへのパスで打開した。続くプレーでユースチェックへの10ヤードのパスを決め、ゴール前1ヤードまで前進した。最後はモスタートの1ヤードのランでタッチダウンを決め、第3クォーター残り2分35秒でリードを10点に広げた(20対10)[30]。 チーフスの次のドライブで、チーフスは敵陣23ヤードまでボールを進めた。3rdダウン6ヤード、マホームズはヒルへパスを投げたが、ヒルがそのボールを弾き、ムーアがインターセプトし、チーフスは攻撃権を失った[30]。このピンチをチーフス守備陣はしのぎ、無失点でチーフスは攻撃権を取り戻した。 次のドライブでチーフスは、一度はパス成功が認められたプレーを49ersのチャレンジで判定が覆り、3rdダウン15ヤードという窮地を迎えたが、44ヤードのパスをヒルに決め、局面を打開した。その後、エンドゾーンで49ersがケルシーに対するパスインターフェアランスを犯し、チーフスはゴールライン残り1ヤードまで前進した。次のプレーでマホームズがケルシーへのタッチダウンパスを決め、7点を返した(17対20)[30]。 3点差に迫られた49ersは、次のドライブをスリーアンドアウトで攻撃権を失い、チーフスは残り時間の消費を最小限に留めて逆転のチャンスを得た。このチャンスをチーフスはワトキンスへの38ヤードのパスなどで60ヤード前進し、最後はウィリアムスへのタッチダウンパスを決め、逆転した(24対20)[30]。このタッチダウンパスでは、パイロンを避けるようにエンドゾーンにボールが差し入れられるタイミングとウィリアムスの足がサイドラインを踏むタイミングの前後がブースレビューで確認された。3rdダウンのプレーで、判定が覆ると4thダウンとなることから試合の勝敗を左右する可能性があったレビューであったが、判定が覆らなかった[33]。 試合時間残り2分44秒、49ersは、敵陣49ヤードまで進んだ。ここで3回連続パスを失敗し、4thダウンでガロポロがサックを喫し、49ersが攻撃権を失った。この時点で、残り試合時間は1分12秒だったが、49ersにタイムアウトが3回残っていたため、辛うじて49ersに再逆転のチャンスは残った[30]。しかし、攻撃権を得たチーフスは、ウィリアムスの38ヤードランでタッチダウンを奪い、勝利を決定づけ、50年ぶり2度目のスーパーボウル制覇を果たした [34]。
試合後42回中26回パス成功で2タッチダウンパス286ヤード(29ヤードラン、1ラッシングタッチダウン)を稼いだマホームズがMVPに輝いた。24歳138日でのMVPは史上最年少での受賞である。また、複数回のインターセプトを喫しながらMVPに輝いたのは、テリー・ブラッドショー(第14回)、トム・ブレイディ(第49回)以来、3人目である[35]。 スターティングラインアップトーナメント表
脚注
|