2017年のアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ
2017年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月3日に開幕した。アメリカンリーグの第48回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 48th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、13日から21日にかけて計7試合が開催された。その結果、ヒューストン・アストロズ(西地区)がニューヨーク・ヤンキース(東地区)を4勝3敗で下し、12年ぶり2回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのは、2015年のワイルドカードゲーム以来2年ぶり2度目。アストロズは球団創設から2012年シーズン終了までナショナルリーグに所属しており、12年前の前回リーグ優勝もナショナルリーグでのことだった。アメリカンリーグ初優勝により、アストロズは両リーグでの優勝を経験した史上初の球団となった[3]。ポストシーズンの7戦4勝制シリーズは今シリーズを含め172度開催されているが、そのうち本拠地球団が全勝したのは、アストロズがナショナルリーグ時代に出場した2004年のリーグ優勝決定戦以来5度目である[4]。シリーズMVPには、第2戦で13三振を奪って完投勝利を挙げるなど、2試合16.0イニングで2勝0敗・防御率0.56を記録したアストロズのジャスティン・バーランダーが選出された。このあとアストロズは、ワールドシリーズでもナショナルリーグ王者ロサンゼルス・ドジャースを4勝3敗で下し、球団創設56年目で初の優勝を成し遂げた。
MLB機構はこの年、史上初めてポストシーズンの全シリーズに冠スポンサーを募った。リーグ優勝決定戦については、キャンピングカー販売業者のキャンピング・ワールドがスポンサー権を獲得しており[5]、大会名はアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ presented by キャンピング・ワールド(英語: American League Championship Series presented by Camping World)となる。
両チームの2017年
10月9日にまずアストロズ(西地区優勝)が、そして11日にはヤンキース(東地区2位=第1ワイルドカード)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
アストロズは2016年、84勝78敗の地区3位でポストシーズンには5.0ゲーム差届かなかったが、チームの中核となる選手が次々と台頭してきていた。オフには彼らの脇を固めるベテラン野手として捕手ブライアン・マッキャンや指名打者カルロス・ベルトランらを獲得したが、その一方で先発ローテーションの補強は進まずエース不在の陣容となった[6]。2017年は11試合目でロサンゼルス・エンゼルスを抜いて地区単独首位へ立つと、その後も勝利数を伸ばしていく。5月下旬から6月上旬にかけては11連勝を記録し、MLB史上16年ぶりの開幕58戦42勝を達成[7]、前半戦終了時には60勝29敗で2位テキサス・レンジャーズに16.5ゲーム差をつけた。7月31日のトレード期限までには目立った補強を行わず、失望を公然と口にする選手もいたが、8月下旬にはウェイバーを介してジャスティン・バーランダーを獲得、エースとして迎え入れた[8]。後半戦も、2位とのゲーム差が1桁に縮まることなく進んでいく。9月17日にはバーランダーが7回1失点と好投して地区優勝を決め[9]、その後は101勝61敗まで勝率を伸ばしてレギュラーシーズンを終えた。平均得点5.53はリーグ最高、防御率4.12はリーグ5位。カルロス・コレアら若手の成長や補強組の活躍などにより形成された強力打線は、本塁打の多さと三振の少なさを両立させ、70打点以上が7人という高い得点力を有していた[10]。地区シリーズではボストン・レッドソックスを3勝1敗で下した[11]。
ヤンキースは、2016年はシーズン途中で救援左腕アロルディス・チャップマンやアンドリュー・ミラーを放出するなどポストシーズン進出を諦め[12]、84勝78敗で地区4位に沈んだ。オフにはFAとなったチャップマンを呼び戻す一方で、若手捕手ゲイリー・サンチェスを抜擢するためにベテランのマッキャンを放出するなど、勝利と世代交代を両立させようとしていた[13]。2017年は前半戦終了時点で45勝41敗とし、地区では首位レッドソックスから3.5ゲーム差の2位、ワイルドカード争いでは首位につける。新人外野手アーロン・ジャッジが前半戦だけで30本塁打を放ち、ポストシーズン争いの原動力となった[14]。チームも前年とは対照的な積極補強に動き、7月31日のトレード期限までに先発投手ソニー・グレイや内野手トッド・フレイジャーなど6選手を相次いで獲得した[15]。後半戦はジャッジが不振にあえぐとともにチームも一時的に調子を落としたものの、9月以降は復調する[14]。9月23日にはポストシーズン進出を確保し[16]、残り8試合で逆転地区優勝を目指したが、レッドソックスには2.0ゲーム差及ばなかった。平均得点5.30はリーグ2位、防御率4.07はリーグ3位。ジャッジやサンチェスの強打に先発投手ルイス・セベリーノの好投など、生え抜き若手選手の活躍がチームを支えた[17]。ミネソタ・ツインズとのワイルドカードゲームに8-4で勝利すると[18]、続く地区シリーズではクリーブランド・インディアンスを3勝2敗で下した[19]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、アストロズがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、アストロズが5勝2敗と勝ち越していた[20]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
アストロズは地区シリーズのロースターから、内野手のタイラー・ホワイトに代えて投手のコリン・マクヒューを加えた。日程上、地区シリーズにはなかった3連戦がリーグ優勝決定戦にはあることから、アストロズは地区シリーズで唯一出番のなかったホワイトを外し、空いた枠で投手陣の層を厚くすることにした[21]。これに対し、ヤンキースは地区シリーズからのロースター変更はない[22]。
試合結果
2017年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月13日に開幕し、途中に移動日を挟んで9日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
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10月13日(金) |
第1戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
1-2 |
ヒューストン・アストロズ |
ミニッツメイド・パーク |
|
10月14日(土) |
第2戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
1-2x |
ヒューストン・アストロズ
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10月15日(日) |
|
移動日 |
|
10月16日(月) |
第3戦 |
ヒューストン・アストロズ |
1-8 |
ニューヨーク・ヤンキース |
ヤンキー・スタジアム
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10月17日(火) |
第4戦 |
ヒューストン・アストロズ |
4-6 |
ニューヨーク・ヤンキース
|
10月18日(水) |
第5戦 |
ヒューストン・アストロズ |
0-5 |
ニューヨーク・ヤンキース
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10月19日(木) |
|
移動日 |
|
10月20日(金) |
第6戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
1-7 |
ヒューストン・アストロズ |
ミニッツメイド・パーク
|
10月21日(土) |
第7戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
0-4 |
ヒューストン・アストロズ
|
優勝:ヒューストン・アストロズ(4勝3敗 / 12年ぶり2度目=ナショナルリーグ加盟時代も含む)
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第1戦 10月13日
第2戦 10月14日
第3戦 10月16日
第4戦 10月17日
第5戦 10月18日
第6戦 10月20日
第7戦 10月21日
脚注
- ^ "Umpires for League Championship Series announced," MLB.com, October 13, 2017. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Bob D'Angelo, Cox Media Group National Content Desk, "2017 World Series: 5 fun facts," AJC.com, October 22, 2017. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Manny Randhawa, "ALCS makes history as home teams dominate / Astros advance to World Series by winning four games in Houston," MLB.com, October 22, 2017. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Matthew Rocco, "MLB signs YouTube TV as first presenting sponsor of World Series," Fox Business, October 3, 2017. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Jon Tayler, "Winter Report Card: Assessing the Astros' bold yet risky off-season," Sports Illustrated, January 30, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Jake Kaplan, "Astros beat Royals to extend winning streak to 11," Houston Chronicle, June 6, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Mike Axisa, "Verlander again gives Astros all he's got, and now they'll play for the AL pennant," CBS Sports, October 21, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Brian McTaggart, "Vintage Verlander K's 10 as Astros clinch West / 'He changes the whole dynamic of our team,' McCann said of veteran righty, who made home debut" MLB.com, September 18, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ 城ノ井道人 「30球団通信簿 全選手最終成績+編成トップの通信簿 ヒューストン・アストロズ 脅威の破壊力で独走し、16年ぶり地区優勝」 『隔月刊スラッガー』2017年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2017年、雑誌15510-12、68頁。
- ^ Ian Browne and Brian McTaggart, "Astros remove Sox, reach ALCS in epic finish," MLB.com, October 10, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Jared Diamond, "A New Yankees Tradition: Being Totally OK With Losing," The Wall Street Journal, August 4, 2016. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Mike Axisa, "2017 New York Yankees season preview: Trying to win and rebuild at the same time," CBS Sports, March 29, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ a b 杉浦大介 「30球団通信簿 全選手最終成績+編成トップの通信簿 ニューヨーク・ヤンキース 再建シーズンのはずがプレーオフ返り咲き」 『隔月刊スラッガー』2017年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2017年、雑誌15510-12、60頁。
- ^ Bryan Hoch, "'Baby' Yankees rise to the challenge in 2017 / Judge, Sanchez help power NY to 1 win shy of World Series," MLB.com, October 24, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Bryan Hoch and Keegan Matheson, "Flying high: Bird leads Yanks to playoff clinch," MLB.com, September 24, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Mike Mazzeo, "Aaron Judge, Luis Severino are backbone of young Yankees playoff team that has been rebuilt ahead of schedule," New York Daily News, September 24, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ "Yanks' kids keep growing with WC Game win," MLB.com, October 4, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ Bryan Hoch and Jordan Bastian, "CC, Didi, NYY earn ALCS, spell doom for Tribe," MLB.com, October 12, 2017. 2024年6月23日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Brian McTaggart, "Astros carrying 12 pitchers for ALCS / Right-hander McHugh added to staff for series vs. Yankees," MLB.com, October 13, 2017. 2022年3月26日閲覧。
- ^ Bryan Hoch, "Yankees roster remains same for ALCS," MLB.com, October 13, 2017. 2022年3月26日閲覧。
外部リンク
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(2回) | |
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ワールドシリーズ敗退(3回) | |
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リーグ優勝(5回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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ライバル関係 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(27回) | |
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ワールドシリーズ敗退(14回) | |
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リーグ優勝(41回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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