BMP-3
BMP-3(ロシア語:БМП-3 ベエムペー・トリー)は、ソビエト連邦およびロシア連邦の軍用車両メーカー、クルガン機械工場(ロシア語:Курганмашзавод)で開発された歩兵戦闘車である。 概要BMP-3の最大の特徴とされるのは、極めて火力重視の火器システムである。主砲の100mm低圧砲に、30mm機関砲と7.62mm機関銃を同軸で装備しており、さらに2丁の7.62mm機関銃を持つ。また、主砲からは対戦車ミサイルも発射できる。 開発ソ連陸軍で運用されていたBMP-1は、1979年から始まったアフガニスタン侵攻で実戦を経験したが、武装の73mm低圧砲は命中率が悪く、全高が2mしかない車体は居住性が劣悪であるなど歩兵戦闘車としては攻守共に欠点が多い車両となってしまった。 1981年、BMP-2の開発を行ったクルガンスキー自動車工場では、アフガン侵攻の戦訓を基にした新型BMPの開発がA・ニコノフ技師を中心にして始まった。開発にあたり、ソ連機甲局が攻撃力でかなり重武装の要求を行ったこともあり、設計のベースには1975年頃に同工場でPT-76の後継として開発されたが不採用となった水陸両用戦車オブイェークト685を原型とした[1]。 従来のBMPと外見が大きく異なった車体となったBMP-3は、1987年に採用された。 車体武装主砲は100mm低圧砲2A70で、歩兵戦闘車に搭載する砲では非常に大きなものである。2A70は自動装填装置を装備しており、1分間に8-10発程度を主砲に送り込む能力を持つ。この砲からは射程4,000m程度の破片効果榴弾(FRAG HE)3OF32が発射できる。砲弾は弾底部にロケット噴進口があり、弾道計算機・風力センサー・レーザー測距儀などを装備した射撃管制装置によって、主力戦車であるT-80にも劣らない高精度の射撃が可能になっている[1]。 2A70からは、9M117 バスティオン(NATOコードネーム:AT-10 スタッバー)砲発射式対戦車ミサイルを発射できる。9M117は、2A70に車内から装填して砲口から発射され、レーザー誘導装置1K13-2で誘導される。BMP-1やBMP-2と異なり、車外にミサイル発射機がなく、再装填の際に車外に出る必要がなくなっている。9M117の有効射程は1,000-4,000mで、圧延鋼板換算で600mmの貫徹力を有する。2A70は、自動装填装置に榴弾22発、手動装填用として榴弾18発が用意されており、合計で40発の榴弾と、8発前後の対戦車ミサイルを搭載することができる。 主砲の横には30mm機関砲2A72が取りつけられている。2A72は、BMP-2に搭載された2A42の改良型で、1,500-2,000m程度の射程で一分間に300発ほどの砲弾を発射できる。弾薬も、装甲貫通を目的としたAP弾と破片効果榴弾HE-FRAGから選択できるようになっている。副武装として7.62mm機関銃PKTを主砲同軸に搭載するのに加えて、車体前方の左右にも各1丁装備している。これは、搭乗した歩兵が車体前部左右で操作するが、潜望鏡から曳光弾の光跡を見ながら射撃するもので、命中を期待したものではない威嚇目的のものである[1]。7.62mm弾は2,000発を格納している。 このほか、兵員室上方ハッチから射撃するための9K34携行式地対空ミサイルの発射機を2基搭載しているほか、車体側面には搭乗歩兵の乗車戦闘用に左右各2箇所の銃眼、砲塔には6基の発煙弾発射機が装備されている。 車体と機関車体は一新され、従来のBMPよりも容積が大きいことから、居住性も向上している。車体は18tを超える重量になったが、エンジンは500馬力のディーゼルエンジンUTD-29に強化されており、軽戦車ゆずりの機動力で荒地走破能力は格段に向上し、最高速度は70km/hに達し、装軌式のIFV/APCとしては世界一速い部類に入る。ただし、ほぼフラットな150° V型とはいえ、エンジンを車体後部の後部扉から至る連絡通路の床下に配置したため、車体後部背面のハッチ2枚と同じく後部上面のハッチ2枚の合計4枚ものハッチを開けなければ、兵士たちは速やかに兵員室への出入りができないという不都合も持っている。 車体後部には左右両方にウォータージェットが搭載されており、BMP-1以来の水上浮上航行能力は維持され、水陸両用戦車PT-76の後継車としての役割も持っている。乗員は車長・操縦士・砲手の3名で、後部兵員室の定数は7名だが、前方操縦席両脇に各1名ずつの座席があり、ここにも人員を搭乗させた場合、固有搭乗員3名を除き最大9名の人員輸送が可能となる。この前部搭乗員席が車体前方左右の7.62mm機関銃PKTの銃手席を兼ねる。ただし、この座席から降車する場合は天井のハッチを開けて乗降するしかなく、戦闘中の乗降は危険が伴う。この欠点はBMP-2の砲塔左前の座席と同様である。 従来のBMPがアフガン侵攻でRPG-7によって次々と撃破されていった戦訓から、BMP-3は要所に二重装甲を施している。また、車体と砲塔の前面は特に防御力が高く、ソ連製30mm機関砲による射距離300mからの射撃に耐えることができる。これだけの防御力と水上浮上航行能力を両立させた車両は世界的にも珍しい。さらに防御力を高めるために、浮航性を損なわない程度の爆発反応装甲を取り付けることも可能となっている。 比較
運用1987年に採用されたBMP-3は、生産も同時に始まり、西側諸国には1990年にモスクワでのパレードで存在が明らかになった。BMP-3は攻撃力と機動力に優れた歩兵戦闘車であり、ソビエト連邦の崩壊後も生産が続けられているが、価格も従来のBMP-1やBMP-2に比べて高価なものとなったため、配備速度は低率である。 むしろ、ロシア国内向けよりも輸出に重点が置かれており、ロシア兵器輸出公団では多数のバリエーションやオプション提案と共に海外への売り込みを図っている。単価が約80万ドルと、歩兵戦闘車でも比較的安価であることから、すでにアラブ首長国連邦(UAE)やクウェート、キプロス、スリランカ、韓国で採用されている。UAEではエンジンを強化したBMP-3Mを採用し、フランス製の暗視装置を装備するなど独自の改良を行っている。韓国陸軍では、30両を第90機械化歩兵大隊に配備し、機械化歩兵戦力の一翼を構成している。 1990年代後半には、ようやくロシア陸軍でもまとまった数が運用できるようになり、チェチェン紛争や南オセチア紛争などの実戦を経験している。 中国は、BMP-3の射撃管制システムと9M117 バスティオン対戦車ミサイルの技術供与を受け、04式歩兵戦闘車とGP-2砲発射式対戦車ミサイルを開発している。 2022年ロシアのウクライナ侵攻に伴い、多数のBMP-3が実戦投入されている。 派生型
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出典
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