七曲署捜査一係『七曲署捜査一係』(ななまがりしょそうさいちがかり)は日本テレビ系列で放送されたスペシャルドラマ。刑事ドラマシリーズ『太陽にほえろ!』の復活版の2時間ドラマスペシャルとして、1997年から1999年に3作品が制作・放送された。太陽にほえろ!七曲署捜査一係とも呼ばれる。 『太陽にほえろ!』『太陽にほえろ!PART2』と世界観を共有し、オリジナル版と同様に東京の警視庁管内(新宿区)にある七曲警察署の捜査第一係[注 1]を主な舞台とする。 2001年に同様のスタイルで制作・放送された『太陽にほえろ!2001』もこの項に記す。以下、便宜上、各作品を97,98,99,01の略号で表す。 キャスト七曲署捜査一係刑事・内勤員
七曲署捜査一係(97〜99シリーズ)
太陽にほえろ!2001係長の山岡以外、全て入れ替わった。本作ではニックネームが付いていない者が多い。
ゲスト七曲署捜査一係(97)七曲署捜査一係'98七曲署捜査一係'99
太陽にほえろ!2001スタッフ
制作『太陽にほえろ!』本放送時のチーフプロデューサーであった岡田晋吉は日本テレビから中京テレビへ異動し、同局の取締役を務めていた。会社の経営が落ち着くと、現場でのドラマ制作に再度戻りたいと考え、古巣である日本テレビとの交渉の末に『金曜ロードショー』の枠で放送する契約を得た[1]。岡田自身が関わった『太陽にほえろ!』の新作が視聴率面でも有利であり、放送開始25周年、終了10周年の節目からも最適だろうと岡田は考え、日本テレビと合意[1]。ただしタイトルに関しては、『太陽にほえろ!』の主役は石原裕次郎以外には考えられないという思いから、思案の末に旧作の舞台であった「七曲署」を題名に据える事となった[1]。 劇伴音楽は大野克夫が旧作から続投。本作のために再録音が行われ、旧作の楽曲および新曲も含めて、大野克夫バンドの演奏と、ミュージックシーケンサーによる打ち込みアレンジが使い分けられている。旧作の楽曲は極力オリジナルと同じアレンジで演奏されている。 キャスティング第1作目の制作が決まるに当たって、石原裕次郎に代わって誰をボス役にするか問題になったが、岡田は舘ひろしを推挙した[2]。理由は石原プロの一員として裕次郎存命のころから可愛がられており、年齢的にも『あぶない刑事』の若いアクションスターから「受けの芝居」ができる大人の役者になる時期だと考えたからである[2]。これに対して舘は「まだ若すぎる」と固辞したが、裕次郎がボス役を演じた37歳の年齢を舘はすでに超えており、舘と同様に「画面の中で暴れていたい」と固辞した裕次郎も、最終的に引き受けてくれたことを理由に説得した[2]。こうして、舘ひろし演ずるボスの山岡係長は4作品を通じて登場している。 また旧作のレギュラーを登場させるかも問題となった[3]。旧作終了時に存命であったキャラクターは登場可能であり、かつての出演者に声をかければ喜んで出演してくれるだろうと岡田は考えたが、出演依頼をする人としない人で不公平になることを懸念したことから、代表として第1話から登場していた長さん(野崎太郎)役の下川辰平に出演してもらうことになった[3]。 新人刑事には旧作の新人刑事を担当した松田優作、宮内淳、渡辺徹が所属していた文学座の俳優が活躍すると考え、浜田学を起用した[4]。その他のキャストも旧作を参考にして、露口茂役を石橋蓮司、竜雷太の役を小西博之、小野寺昭の役を中村繁之、関根惠子の役を多岐川裕美とした[4]。 98では沖雅也を起用した時のことを考え、犯人を射殺したことがトラウマとなっている元警視庁特殊急襲部隊役として吉田栄作を起用した[5]。また1作目では女性が少ないことが批判されたため、当初の脚本では男だった犯人役を女に変えて、天海祐希を起用した[5]。なお天海は起用が決まった際、刑事役だと思って落胆したが、母親と二人で旧作のファンだったことから出演を快諾した[5]。 99では新人刑事として、松田が演じたジーパン刑事が留置場から登場したことに倣って、押尾学を起用し、交番で𠮟られている場面から始まった[5]。また容疑者の恋人役として藤谷美和子を起用した[6]。 01では新人刑事として、金子賢を起用し、役名を松浦淳としたが、これは旧作の萩原健一が演じた早見淳の名前から拝借されたものである[7]。 こうして本シリーズのキャストの多くは旧作の設定を参考にしている。また例えば97の冒頭に登場する野崎は「10年前(1987年)まで一係の刑事」と紹介されており、旧作PART2の設定が活かされている。一方、山岡は藤堂の後任という設定になっており、さらに藤堂は山岡のセリフによると「生涯、所轄のいち係長を貫き通した」とあり、ここではPART2の設定を考慮していなかったことになっている。 なお『太陽にほえろ!』のゴリさんこと、石塚刑事を演じた竜雷太が本作の撮影現場を見学し、ダンクこと松井陽平刑事役の浜田学に拳銃の撃ち方などの演技指導を行った。その際、竜は「僕もまた『太陽にほえろ!』に出たい」と言っていたという。 劇中の自動車ドラマに登場する覆面車は97では旧作と同じくトヨタ車であったが、98以降は金曜ロードショーの番組スポンサーであったマツダ車に全て入れ替わった。また01では、劇用車の車両提供の担当を「太陽にほえろ!」のファンであった悪役商会の柿辰丸が携わった。 放送日程1997年から2001年の間に、年に1回、日本テレビ系『金曜ロードショー』の「金曜特別ロードショー」の枠で2時間ドラマスペシャルが制作・放映された。
評価1作目のオープニングで主題歌が流れると、日本テレビに視聴者から「感動した」と電話で感想が寄せられたという[4]。視聴率も好調だったことから、98、99と回を重ねたが、99で視聴率が20%を下回ったことに対して岡田晋吉は「少し天狗になっていたのかもしれない」「恥をかいた」と述べている[6]。そのため2000年は『太陽にほえろ!』の設定から離れて、舘ひろし主演の単独作品である刑事ドラマ『刑事』を制作したが、こちらも視聴率的には振るわなかった[12]。 2作続けて視聴率が振るわなかったため、シリーズを成功させるには『太陽にほえろ!』の題名を使うしかないと岡田は考えた[7]。2001年に岡田は定年退職しフリーのプロデューサーとなったため、自由に制作活動ができると考え、01の制作には力を入れた[7]。放送時は1分おきの視聴率が18%を超え、このまま放送が続けば20%を超えると思われていたところ、緊急報道番組によって放送は中止となった[7]。この事態に岡田は憤慨し、その後帰宅するまで何をしたか覚えていないほどだったという[10]。 そして01の仕切り直し放送時の視聴率が11.7%だったことに関して、岡田は、旧作は脚本の小川英、メイン監督の竹林進と3人で作ったものであり、特に小川抜きでは『太陽にほえろ!』を作れないことを実感した[11]。周囲からは本放送時は不慮の事情であることから仕方がないと慰めの言葉を受けたが、いかなる事情であっても旧作で11.7%という低い数字が出ることはなく、岡田は自身の力のなさも実感し、過去の栄光にすがって番組を作る考え方自体が間違っていたと自戒した[11]。岡田はもし01が成功していたら、もう一度連続ドラマとすることを考えていたが、この低視聴率により、「太陽にほえろ!シリーズ」を終了させることに決めた[13]。 関連商品
脚注注釈出典
参考文献
外部リンク
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