『家族八景』(かぞくはっけい)は、日本の小説家・筒井康隆のSF小説。また、それを原作とした漫画、およびテレビドラマ。
概要
1970年から1971年にかけて『小説新潮』『別冊小説新潮』に掲載された1話完結の8編の短篇小説からなる。それぞれの短編のタイトルは、「無風地帯」「澱の呪縛」「青春讃歌」「水蜜桃」「紅蓮菩薩」「芝生は緑」「日曜画家」「亡母渇仰」。後に続編として執筆された『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』をあわせた「七瀬シリーズ」「七瀬三部作」のひとつ。
第67回直木賞候補作。筒井にとっても3度目にして最後の直木賞候補だった。司馬遼太郎が『朝日新聞』記者に本命視することを示唆し、下馬評が高いことから筒井も期待していたが落選、井上ひさしと綱淵謙錠が受賞した[1][2]。
あらすじ
18歳の火田七瀬は人の心を読めてしまう精神感応能力者(テレパス)の女性である。高校卒業後、住み込みのお手伝いとなり様々な家庭を転々とする。家族それぞれの内面を読んでしまうことで、行く先々の家庭に亀裂や事件を起こしてしまう。女性として肉体的成熟を迎えて性的な関心を向けられるようになり、20歳を迎える最終話でお手伝いをやめることを決意する。
漫画
1977年、『天才バカボン』の連載を終えた赤塚不二夫に原作付きの作品を描かせるという企画の一環で、『ハウスジャックナナちゃん』のタイトルでマンガ化された。『週刊少年マガジン』12月11日号から12月25日号にかけての連載で、「澱の呪縛」「日曜画家」「亡母渇仰」を原作とした全3話。作品には『バカボン』のバカボンのパパが御用聞き役で登場している。他に牛次郎の『建師ケン作』、遠藤周作の『おばかさん』をマンガ化していた[3]。
山崎さやか(現山崎紗也夏)が『七瀬ふたたび』をコミカライズした『NANASE』第4巻巻末に「Another episode : 死を待つ家」のタイトルで『家族八景』の一部エピソードも番外編として漫画化した。
2007年から2008年にかけて、清原なつのの作画により角川書店『コミックチャージ』誌上で全8話がマンガ化された。単行本はチャージコミックスから上下巻の全2巻が出た。
テレビドラマ
1979年版
1979年2月25日にTBS系列の『東芝日曜劇場』にて「芝生は緑」(しばふはみどり)のタイトルで放送された。七瀬シリーズの初映像作品で、七瀬役は多岐川裕美が演じた。多岐川によると、シャワーを浴びると人の心が読めるという設定でコメディー調のドラマだったという[4]。
NHKの少年ドラマシリーズで放送されたシリーズ続編『七瀬ふたたび』で多岐川は七瀬役を演じており、『東芝日曜劇場』の話があった際、多岐川の七瀬を気に入った原作者の筒井が推薦したことで再び七瀬を演じることになったという[5]。少年ドラマシリーズ版『七瀬ふたたび』は『東芝日曜劇場』よりも後の放送だったが、実際には先に制作されたものである[5]。
キャスト(1979年版)
スタッフ(1979年版)
1986年版
1986年1月30日に、フジテレビ系列の木曜ドラマストリート枠にて『家族八景 18歳の家政婦は見た!! すべての秘密は今暴かれる?』(かぞくはっけい 18さいのかせいふはみた すべてのひみつはいまあばかれる)のタイトルで放送され、七瀬役は堀ちえみが演じた。
キャスト(1986年版)
スタッフ(1986年版)
2012年版
2012年1月より、毎日放送(MBS)制作・TBS系列の深夜ドラマ枠にて『家族八景 Nanase,Telepathy Girl's Ballad』(かぞくはっけい ナナセ・テレパシー・ガールズ・バラッド)のタイトルで放送された。木南晴夏は本作が連続ドラマ初主演となる[6]。
七瀬が心の声を読むシーンでは、七瀬には勤務先の家の人々の心の声がただ聞こえるだけでなく、第1話では裸になっているなど毎回何らかの奇妙な姿に変わって見え、その人の本心がより具体的に現れる演出となっている。事前番宣番組『異色の新ドラマ!! 家族八景 Nanase,Telepathy Girl's Ballad Navi〜家政婦の火田はミタSP〜』の中で、堤幸彦が自身なりの解釈をしたポイントとして語っている。心を読まれた人の内面の声は木南が担当する。七瀬の年齢はこのドラマでは20歳に設定されている。他の登場人物にも原作と異なる年齢設定がある。
第7話「知と欲」は原作にはないエピソードとして追加されている。また各エピソードの順序も原作とは異なっており、原作最終話は「亡母渇仰」であったが、ドラマ版では「芝生は緑」となっている。
2012年2月10日、16日、23日の3回にわたってニコニコ生放送で『家族八景Presents 七瀬の夜語り』と題したトーク番組が配信され、木南晴夏とゲストが出演して撮影の裏話などを語った[7]。ゲストは、佐藤二朗(2月10日)、大月俊倫(2月16日)、堤幸彦(2月23日)。
メイキングを収録した映像特典付きのブルーレイとDVDが期間限定版として2012年6月6日に発売。
キャスト(2012年版)
- 主人公
-
- ゲスト
-
- 第1話
- 第2話
- 桐生 勝美 (57) - 田山涼成
- 桐生 照子 (59) - 千葉雅子
- 桐生 竜一 (31) - 正名僕蔵
- 桐生 綾子 (29) - 佐藤寛子
- 桐生 忠二 (17) - 須賀健太
- 桐生 彰 (7) - 池澤巧
- 第3話
- 神波 浩一郎 (50) - 橋本じゅん
- 神波 兼子 (46) - 清水ミチコ
- 神波 慎一 (23) - 山本浩司
- 神波 明夫 (21) - 浜野謙太
- 神波 道子 (17) - 茜音
- 神波 良三 (16) - 岡本拓朗
- 神波 敬介 (14) - 野口翔馬
- 神波 五郎 (8) - 武井祐人
- 神波 悦子 (5) - 末原一乃
- 神波 六郎 (4) - 藤木夢現
- 第4話
- 第5話
- 根岸 新三 (36) - 眞島秀和
- 根岸 菊子 (29) - 井村空美
- 若い女 - 河原実乃梨
- 赤ん坊 - 小安正笑 / 佐藤美月
- 第6話
- 第7話
- 第8話
- 清水 信太郎 (36) - 黄川田将也
- 清水 幸江 (30) - 東風万智子
- 清水 恒子 (55) - 宍戸美和公
- 清水 茂蔵 (50) - 佐藤二朗
- 飯田 幸弘 (35) - 骨川道夫
- 清水 重良 (30) - 和知大祐
- 葬儀屋 - 松岡哲永
- 怪しい男 - 入月謙一
- 里山 - 種子
- 小森 - おのさなえ
- 坊主 - 池内直樹
- スーパーの客 - 勝平ともこ
- 第9 - 10話
スタッフ(2012年版)
放送リスト
話数 |
放送局 |
放送日 |
サブタイトル |
脚本 |
演出
|
第1話 |
MBS |
2012年1月19日 |
無風地帯 |
佐藤二朗 |
堤幸彦
|
TBS |
2012年1月24日
|
第2話 |
MBS |
2012年1月26日 |
水蜜桃
|
TBS |
2012年1月31日
|
第3話 |
MBS |
2012年2月2日 |
澱の呪縛 |
池田鉄洋 |
白石達也
|
TBS |
2012年2月7日
|
第4話 |
MBS |
2012年2月9日 |
青春讃歌 |
江本純子 |
高橋洋人
|
TBS |
2012年2月14日
|
第5話 |
MBS |
2012年2月16日 |
紅蓮菩薩 |
佐藤二朗 |
深迫康之
|
TBS |
2012年2月21日
|
第6話 |
MBS |
2012年2月23日 |
日曜画家 |
白石達也
|
TBS |
2012年2月28日
|
第7話 |
MBS |
2012年3月1日 |
知と欲 |
前田司郎 |
深迫康之
|
TBS |
2012年3月6日
|
第8話 |
MBS |
2012年3月8日 |
亡母渇仰 |
藤原知之
|
TBS |
2012年3月13日
|
第9話 |
MBS |
2012年3月15日 |
芝生は緑〜市川家編〜 |
上田誠 |
堤幸彦
|
TBS |
2012年3月20日
|
第10話 |
MBS |
2012年3月22日 |
芝生は緑〜高木家編〜
|
TBS |
2012年3月27日
|
ネット局
実現しなかった映像化
1978年にNHKからテレビドラマ化の申し入れがあったが、ホームドラマとすることに筒井側が難色を示して断ったという[9]。1985年にも、角川書店の角川映画で原田知世主演により映画化する企画があったが、文庫本の出版権を持つ新潮社が角川文庫でも出版することを認めなかったために企画が流れている[10]。これらに先立ち1977年にも番組制作会社のC.A.Lからテレビドラマ化の打診があったというが、筒井は七瀬シリーズとしており本作か他作品かは不明[11]。
脚注
外部リンク
|
---|
金曜ナイト劇場(土曜未明) (2009年4月 - 2010年3月) | |
---|
金曜未明(木曜深夜) 第一期 (2010年4月 - 2011年3月) | |
---|
日曜未明(土曜深夜) (2011年4月 - 2011年9月) | |
---|
金曜未明(木曜深夜) 第二期 (2011年10月 - 2012年3月) | |
---|
金曜未明(木曜深夜) 第三期 (2012年4月 - 2014年3月) |
|
---|
月曜未明(日曜深夜) (2014年4月 - 2016年3月) | |
---|
木曜未明(水曜深夜) (2008年10月 - 2011年3月) | |
---|
|