あいの風とやま鉄道線(あいのかぜとやまてつどうせん)は、石川県河北郡津幡町の倶利伽羅駅から新潟県糸魚川市の市振駅までを結ぶあいの風とやま鉄道の鉄道路線である。
概要
元は西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線の一部で、2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間延伸開業の際に並行在来線として経営分離された区間のうち、あいの風とやま鉄道が継承した富山県内の区間にあたる。なお、石川県内はIRいしかわ鉄道が、新潟県内はえちごトキめき鉄道が継承した。
当線を含む3社の各路線は、北陸本線や信越本線・羽越本線・奥羽本線などとともに日本海縦貫線の一部を構成している。
なお、あいの風とやま鉄道が鉄道資産を保有している区間は、倶利伽羅駅東側の県境上にある会社境界点から市振駅西側の県境上の会社境界点までである。また、キロポストは移管前の北陸本線時代の米原起点のものがそのまま使用され、線内の各踏切に記載されているキロ程表示も米原からの通算表示となっている。さらに、踏切番号標識も旧北陸本線時代のままとなっている。
路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):
- 軌間:1067 mm
- 駅数:24駅
- 旅客駅:23駅(起終点駅含む)
- 貨物駅:1駅
- 起終点の倶利伽羅駅・市振駅、貨物専用の富山貨物駅は他社管理であるため、当路線の自社管轄駅は21駅[2]。両端の駅である倶利伽羅駅・市振駅は、あいの風とやま鉄道公式サイト内の路線図・全線時刻表に記載されておらず、同社による駅情報ページもなく、富山県内の石動駅 - 越中宮崎駅間のみが掲載範囲となっている[3][4]。
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(交流20,000 V・60 Hz)
- 閉塞方式:複線自動閉塞式
- 保安装置:ATS-SW
- 運転指令所:あいの風とやま指令所(富山市)[5]
- 最高速度:110 km/h
- IC乗車カード対応区間:
歴史
国鉄・JR時代
あいの風とやま鉄道移管後
運行形態
旅客列車は基本的に泊駅で系統分離されており、金沢駅 - 糸魚川駅間に1日1往復の直通列車があるほかはすべて同駅での乗り換えが必要となる。
片道当たりの運行本数は、JR時代(2006年4月時点)では市振駅 - 黒部駅間が10本、黒部駅 - 富山駅間が16本、富山駅 - 高岡駅間が35本、高岡駅 - 倶利伽羅駅間で29本あったが、あいの風とやま鉄道移管後(2019年4月時点)では市振駅 - 黒部駅間が29本、黒部駅 - 富山駅間が32本、富山駅 - 高岡駅間が40本、高岡駅 - 倶利伽羅駅間で28本と概ね増発されている。
しかし、JR西日本時代は朝夕ラッシュ時に最長で6両編成が運行されていたが、移管後は最大4両編成となったことで、移管直後には朝ラッシュ時に積み残しも発生した[67]。その後、あいの風とやま鉄道では自社発注車両の増備や混雑する列車の増車を行っている。
1 - 2両編成の列車でワンマン運転を行う。なお、JR北陸本線の末期(2014年10月18日から)に金沢駅 - 富山駅間で日中の一部列車でワンマン運転を行っていたが、2024年3月15日まではIRいしかわ鉄道線を含む金沢駅 - 石動駅間では実施せず、すべての列車に車掌が乗務していた。一方で、石動駅以東においては引き続きワンマン運転が実施されていた[68]。ただし駅停車時は有人駅・無人駅を問わず全てのドアから乗降可能で、車内では乗車整理券の発行は行われず、切符や運賃の収受は駅員が行い、無人の場合は駅の集札箱に投入する形態である(えちごトキめき鉄道の車両による列車を除く)。なお、2019年4月に全駅で自動券売機の設置が完了している。
このほか観光列車として、車内で寿司や懐石料理を提供する「一万三千尺物語」[69]や、イベント列車「とやま絵巻」[48]が運行されている。
倶利伽羅駅 - 泊駅間
会社境界となる倶利伽羅駅発着の列車はなく、IRいしかわ鉄道線と一体的に運行されている。
普通列車は1時間に1 - 2本程度運行される。金沢駅 - 富山駅・泊駅間(IRいしかわ鉄道線直通)と高岡駅・富山駅 - 泊駅間の列車を基本としているが、金沢駅 - 黒部駅間や高岡駅 - 富山駅間などの区間列車も柔軟に設定されている。さらに平日朝夕には、金沢駅 - 泊駅間で座席指定制の「あいの風ライナー」も運行されている。
あいの風とやま鉄道の車両が金沢駅まで、IRいしかわ鉄道の車両が富山駅まで乗り入れる相互直通運転を行っており、運転士・車掌は、運行車両の所属ごとに全運行区間を担当する。このため、IRいしかわ鉄道へ直通するワンマン列車には車掌が乗車している。ただし、あいの風とやま鉄道線内から石動駅までは車掌は乗車券発売および安全監視業務のみ行い、ドア扱いは石動駅から行う。
城端線直通列車
平日の朝には城端線の城端駅 - 富山駅間で気動車による直通列車が城端発富山行のみ運行されている。高岡駅では乗務員交代が行われ、高岡駅 - 富山駅間はあいの風とやま鉄道の乗務員が乗務している。
泊駅 - 市振駅間
市振駅発着の列車はなく、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインと一体的に運行されており、えちごトキめき鉄道の気動車による泊駅 - 糸魚川駅・直江津駅間の列車がおおむね1時間に1本運行されている。ただし前述した通り、あいの風とやま鉄道の車両による直通列車も1日1往復のみ存在するほか、1日1本のみ泊駅から妙高はねうまライン新井駅へ直通する[70][注 1]。
えちごトキめき鉄道の車両の泊駅以西への乗り入れは通常実施されない[71]。泊駅 - 市振駅間は、運行車両の所属会社ごとの乗務員が担当している。
この区間におけるワンマン運転は、えちごトキめき鉄道の方式となるため、自社のワンマン列車と方式が異なり、車内精算方式で乗車時に整理券を受け取り、降車時に乗車券または運賃を車内の料金箱に投入する。なお、越中宮崎駅で下車する際、ICOCAで利用している場合は、運転士にカードを提示した後、駅のICOCA専用改札機にタッチする。自社車両の列車についてはワンマン運転は実施せず、車掌が乗務しているため、全てのドアから乗り降りができる。
貨物輸送
北陸本線時代から引き続き、日本貨物鉄道(JR貨物)による日本海縦貫線の貨物列車が多数経由する。線内で定期貨物列車の停車がある貨物取扱駅として富山貨物駅がある[72]ほか、氷見線経由新湊線高岡貨物駅、高山本線速星駅を発着する列車が設定されている。
利用状況
輸送実績
あいの風とやま鉄道線の輸送密度は、県の試算では7,400人/日と想定されていたが、2017年度では7,500人/日程度で想定を上回っている。あいの風とやま鉄道線の近年の輸送実績を下表に記す。表中の輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中の最高値は赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値は青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
年度別輸送実績
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年 度
|
輸送実績(乗車人員):万人/年度
|
輸送密度 人/日
|
特記事項
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通勤定期
|
通学定期
|
定期外
|
合計
|
2014年(平成26年)
|
36.3
|
23.0
|
30.5
|
89.7
|
9,585
|
西日本旅客鉄道から移管・開業(18日間の数値)
|
2015年(平成27年)
|
511.3
|
559.0
|
406.9
|
1,477.1
|
[74]7,522
|
|
2016年(平成28年)
|
516.1
|
562.6
|
393.5
|
1,472.3
|
7,521
|
|
2017年(平成29年)
|
510.8
|
577.7
|
394.7
|
1,483.2
|
7,540
|
|
2018年(平成30年)
|
512.1
|
593.1
|
405.4
|
1,510.6
|
7,680
|
|
2019年(令和元年)
|
517.1
|
599.4
|
396.4
|
1,512.9
|
7,688
|
|
2020年(令和2年)
|
452.6
|
472.4
|
212.1
|
1,137.1
|
5,686
|
|
2021年(令和3年)
|
461.0
|
553.5
|
240.8
|
1,255.3
|
6,343
|
|
2022年(令和4年)
|
470.1
|
572.7
|
331.1
|
1,373.9
|
|
|
2023年(令和5年)
|
493.1
|
571.5
|
382.2
|
1,446.8
|
|
|
管内鉄軌道事業者輸送実績(国土交通省北陸信越運輸局)[75]、鉄道統計年報運輸成績表(国土交通省)[76]より抜粋。
使用車両
自社線内に直流電化区間は存在しないが、自社で所有している旅客車は全て交直流電車である。
- 自社車両
- 521系
- 2両編成または4両編成で終日運行される。後述のIRいしかわ鉄道所属車との併結運転は行われていない。「あいの風ライナー」でも運用される。
- 413系
- 3両編成で、朝夕のラッシュ時間帯を中心に運行される。イベント等の多客時に対応する場合に限り、6両編成で運転されることもある[77]。
- 他社からの乗り入れ車両
- 521系(IRいしかわ鉄道所属)
- 2両編成または4両編成で、倶利伽羅駅 - 富山駅間で運行される。IRいしかわ鉄道所属車両とあいの風とやま鉄道所属車両の運用は区別されており、IR車は「あいの風ライナー」の運用には入らない。
- キハ40形・キハ47形(JR西日本所属)
- 城端線からの直通列車として富山駅 - 高岡駅で運用される。
- ET122形(えちごトキめき鉄道所属)
- 日本海ひすいラインからの直通列車として泊駅 - 越中宮崎駅間で1両または2両編成で運用される。1000番台「えちごトキめきリゾート雪月花」が入線したこともある[78]。
-
あいの風とやま鉄道
521系(2021年5月 泊駅)
-
あいの風とやま鉄道
413系(2022年4月 富山駅)
駅一覧
- (貨):貨物専用駅、◇・■:貨物取扱駅(貨物専用駅を除く。◇は定期貨物列車の発着なし、■はオフレールステーション)
- 累計営業キロは倶利伽羅駅からのもの(米原駅 - 倶利伽羅駅間の営業キロは194.4km)
- 普通列車は全ての旅客駅に停車
- あいの風ライナー…●:停車駅、|:通過駅
- 全線複線・交流電化
到着・発車メロディ
2017年(平成29年)3月13日から順次、他社管轄となる倶利伽羅駅・市振駅を除く全駅で新旅客案内システムを使用開始し、各駅独自の到着メロディを導入した(富山駅と高岡駅では発車メロディも設定)[51]。
各駅で使用されるメロディは下記の通り[52][50][79]。
到着メロディ
駅名
|
曲名
|
作曲
|
編曲
|
備考
|
石動駅
|
小矢部で見つけましょう
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高原兄
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2016年(平成28年)に制作された小矢部市のイメージソング。高原兄は富山県出身。
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福岡駅
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ふるさと高岡
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三枝成彰
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高岡市民の歌。高岡銅器の「おりん」によるアレンジ。
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西高岡駅
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高岡やぶなみ駅
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高岡駅
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ふるさとの空 verB
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久石譲
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福嶋尚哉
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2012年に「富山県ふるさとの歌」として制作された曲。verBはラスト部をアレンジ。
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越中大門駅
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イミズムズムズ♪
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伊藤敏博
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滝沢卓
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「射水ブランド」を推進するイメージソング。作曲者・編曲者ともに射水市在住。 伊藤はかつて国鉄富山車掌区勤務の傍ら音楽活動を行い「車掌さん歌手」として知られた。
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小杉駅
|
呉羽駅
|
ふるさとの空 verA
|
久石譲
|
福嶋尚哉
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高岡駅到着メロディと同じ原曲。verAはイントロ部をアレンジ。
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富山駅
|
新富山口駅
|
東富山駅
|
水橋駅
|
滑川駅
|
滑川市の歌
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信時潔
|
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市歌。オルゴール調にアレンジ。
|
東滑川駅
|
魚津駅
|
Uozu_Chime
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中村孝幸(一般公募)
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魚津で歌い継がれる民謡「せり込み蝶六」のアレンジという条件付きで一般公募され、東京都在住の男性による作品を採用。
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黒部駅
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公共交通のうた
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高原兄
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公共交通の利用促進を目的に黒部ワンコイン・プロジェクト実行委員会が2016年(平成28年)に制作。
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生地駅
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西入善駅
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ただいま
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梢
|
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入善町出身の歌手、西島梢(元:ナナムジカ)のソロ再デビュー時の楽曲のアレンジ。
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入善駅
|
上海帰りのリル
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渡久地政信
|
|
入善町出身の歌手、津村謙の楽曲のアレンジ。
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泊駅
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まめなけあさひ
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高原兄
|
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朝日町商工会が高原兄に依頼し制作した曲のアレンジ。
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越中宮崎駅
|
城の越しから
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岩谷秀樹 (シンガー秀樹)
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朝日町の伝統芸能「鹿嶋神社稚児舞」[80]のメロディを同町在住のミュージシャンがアレンジしたもの。
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発車メロディ
駅名
|
曲名
|
作曲
|
編曲
|
備考
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高岡駅
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越の高岡
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太田豊
|
-
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「おりん」を使ったオリジナル曲。JR北陸本線時代の2005年から継続使用[81]。 太田はこのほか万葉線高岡駅停留場、北陸新幹線新高岡駅発車メロディを作曲。
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富山駅
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春(3月 - 5月)
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アントニオ・ヴィヴァルディ
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福嶋尚哉
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季節により使用曲を変更する[注 2]
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同曲の第1楽章冒頭部
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いずれもヴァイオリン協奏曲『四季』より。 立山連峰を舞台にした映画『劒岳 点の記』のバックミュージックとして使用。 このほか、未採用曲として「冬 verB」(「冬」第1楽章冒頭)が制作されている。
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秋(9月 - 11月)
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同曲の第1楽章冒頭部
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冬 verA(12 - 2月)
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同曲の第2楽章冒頭部
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アルプスの牧場 (6 - 8月)
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国鉄形気動車などの車内チャイムで採用されている。
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また、これらとは別に倶利伽羅駅ではJR北陸本線時代から『倶利伽羅峠の歌』、市振駅では『村の鍛冶屋』『エリーゼのために』が接近メロディとして使用されている。
脚注
注釈
- ^ 2018年(平成30年)3月17日ダイヤ改正から実施。
- ^ 当初予定では「春」を3 - 6月、 「秋」を7月 - 10月、「冬」を11月 - 2月に使用とされていた。
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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路線 |
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車両基地・車両工場 | |
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乗務員区所(鉄道部除く) | |
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鉄道部・地域鉄道部 |
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