IRいしかわ鉄道
IRいしかわ鉄道株式会社(アイアールいしかわてつどう)は、石川県金沢市に本社を置く第三セクター方式の鉄道事業者(第三セクター鉄道)である。 概要2015年(平成27年)3月14日、北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間の延伸開業に伴い、西日本旅客鉄道(JR西日本)から並行在来線として経営分離される北陸本線の石川県内区間にあたる金沢駅 - 倶利伽羅駅間の運営を担う鉄道事業者として[3][4]、石川県と、沿線市町である金沢市と津幡町、財団法人石川県市町村振興協会のほか、北國銀行、北陸電力、北陸鉄道など民間企業からの出資により、2012年(平成24年)8月28日に「石川県並行在来線株式会社」(準備会社)として設立された。 設立当初の資本金は4億5,030万円[5](p4)。取締役会長は石川県知事(2024年時点では馳浩)、代表取締役社長は元石川県競馬事業局長の七野利明である。 北陸新幹線の敦賀延伸開業時には、北陸本線を福井県境まで経営分離することに沿線自治体が合意しており、北陸本線の大聖寺駅 - 金沢駅間もこの会社が運営主体となった[6]。 社名の由来社名については、本格会社への移行とともに、より親しみの持てるものに改称するとされていたが[7]、一般公募(2012年11月30日 - 同年12月30日[8])を経て[9]、2013年(平成25年)6月27日に「IRいしかわ鉄道株式会社」が新社名に決定[10]、同年8月1日に改称された[11]。 応募総数1,375点の中から選ばれた[10]この社名について、(英文表記の)「Ishikawa Railway」の頭文字である「IR」には、(石川)県民に親しまれる「愛ある」鉄道を目指すという思い[5](p2)と、アルファベット順で「I」は「J」の一つ前であることから、「JRの一歩先行くサービスを提供したい」という思い[12][13]が込められている。 ロゴマーク・コーポレートカラーロゴマーク(シンボルマーク)は、一般公募(2013年8月1日 - 9月30日)による応募総数814点の中から選ばれ[14]、2014年(平成26年)1月6日にコーポレートカラーとともに公表された[5](p4)。このデザインは、「IR」をモチーフに、当社と地域の発展を、未来へ向かって伸びていく線路のイメージで表現したものである[14]。 また、コーポレートカラーは空色のような明るい青色(=石川県旗の地色[15])であり、「未来へ向かって何事にも積極果敢に取り組み、困難を乗り越えていく」という当社の思いを表現している[14]。自社所有の521系電車のカラーリングにおいては、車両の正面全体や側面の太いラインに使用されている[16][17]。 役員2012年8月17日に行われた準備会社の設立に向けた初の取締役会で、代表取締役社長に石川県競馬事業局長や株式会社金沢港運社長を歴任した七野利明が、代表取締役副社長にJR西日本出身の山岸勝が選ばれた[18][19]。 七野の社長起用については、行政の経験だけではなく、株式会社金沢港運の経営にも携わっていたことから、民間的発想の手腕を期待された人選であるとする一方、石川県議会からは「行政出身者による民間的発想の限界」を指摘する声や、その経営手腕に疑問を呈する声があるとの報道がなされた[19]。 沿革
路線全区間とも、もともと北陸本線の一部で、北陸新幹線の延伸開業に際し、2015年に金沢駅 - 倶利伽羅駅間、2024年に大聖寺駅 - 金沢駅間がJR西日本から経営分離され、当社へ継承された。 2015年の金沢駅 - 倶利伽羅駅間開業時点では、鉄道資産上の経営区間は金沢駅から富山県境までの20.6 kmに及ぶ。営業上の境界駅となる金沢駅と倶利伽羅駅はそれぞれJR西日本およびあいの風とやま鉄道との境界(共同使用駅)となるが、金沢駅についてはJR西日本が、倶利伽羅駅についてはIRいしかわ鉄道が管理することとなる。このうち金沢駅の在来線施設は、北陸新幹線が敦賀駅まで延伸開業する際にJR西日本から取得する予定だったが、鉄道資産の取得費用の平準化を目的として開業時に先行取得するものである[9][32]。 開業後2年間、運行管理と指令業務はJR西日本金沢支社の金沢総合指令所において、あいの風とやま鉄道が自社路線とあわせ、当社とえちごトキめき鉄道から業務を受託し、金沢駅 - 直江津駅間にわたってIRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線・えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの計3路線の指令業務を行っていた。その後は3社がそれぞれ指令システムを整備し、自社で業務を行っている[9]。 あいの風とやま鉄道との間で金沢駅 - 倶利伽羅駅 - 富山駅間において相互直通運転を実施している(一部列車はえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの一部区間にも直通するが、これはあいの風とやま鉄道の車両を使用しているため、IRいしかわ鉄道所属車両はえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインには入線しない)。また金沢駅 - 津幡駅間を直通するJR西日本の七尾線の普通列車については、2020年秋から2021年春にかけて後述の新型車両をJR西日本とIRいしかわ鉄道の両社が導入して旧車両を置き換え、同区間の運行業務をJR西日本が受託する方式で運行している。金沢駅 - 和倉温泉駅間の特急「能登かがり火」が1日計5往復が乗り入れている。また、2015年10月より観光列車として金沢駅 - 和倉温泉駅間の特急「花嫁のれん」が土曜・休日など多客期を中心に1日2往復運行されている[33]。 2024年3月16日の北陸新幹線金沢駅 - 敦賀駅間の延伸開業に伴って、JR西日本から経営分離された金沢駅 - 大聖寺駅間の運営も同日より担っている。ハピラインふくいとの境界駅である大聖寺駅は、IRいしかわ鉄道に移管された[34][6][35]。 車両自社区間はすべて交流電化であるが交直流電車が使われている。特急列車が自社線を通過しているが普通列車用の車両のみを保有しており、特急形車両は保有していない。 自社車両は2015年北陸新幹線金沢延伸開業時にJR西日本から譲渡された2両編成5本と後述の七尾線の旧型車両置き換え目的に新造した2両編成3本、2024年の全線開業用にJR西日本から譲渡された2両編成16本、合計2両編成24本の521系電車であり、金沢総合車両所運用検修センターの一部を取得し車両基地として使用している[36]。また、車両検修等はJR西日本とあいの風とやま鉄道に委託して行う方向で協議している[9]。 車両デザインはコーポレートカラーとロゴマークに加え、石川の伝統工芸を彩る5つの色(加賀五彩:臙脂・黄土・草・古代紫・藍)を使用することで、親しみやすさと石川らしさを表現している。なお、この5つの色は、側面のアクセントカラーとして使用し、保有する5本でそれぞれ異なる配色とした[16][17]。 また2021年3月12日までは七尾線へ乗り入れる列車にはJR西日本の車両が使われており、自社車両は七尾線を含めたJR西日本区間へは乗り入れなかったが、同年3月13日より七尾線の普通列車が521系100番台に置き換えられるのにあたり2両編成全18本のうち3本が、2020年12月3日付でIRいしかわ鉄道の保有車両として導入された[37]。521系100番台については、JR西日本が保有する15本と同様七尾線内でのICOCAに対応するため車載型のIC改札機が設置されているほか、車両構造・デザインについてもロゴ部分がJR・IRで異なるのを除き共通化されている。 共同使用駅運賃・料金運賃旅客運賃は、普通と通勤定期は5年目までJRの1.14倍、6年目から11年目までJRの1.19倍、通学定期は5年目まで据え置き、6年目から11年目までJRの1.05倍がそれぞれ計画されている[9]。 大人普通旅客運賃(小児は半額・10円未満切り上げ)。営業キロの1 km未満は切り上げ。2024年3月16日改定(19キロ-65キロ間追加)[38][39]。
料金等JR西日本の特急列車がIRいしかわ鉄道線を経由して七尾線の間に運転されているため、特急料金が設定されている。 このほか、あいの風とやま鉄道と運行するあいの風ライナーは乗車時に300円のライナー券を購入する必要があるが、IRいしかわ鉄道線内の停車は始発・終着駅の金沢駅のみであり、IRいしかわ鉄道線区間の利用に対する料金は設定されていない。また、金沢駅でのライナー券の発売はなく、列車内での購入となる。 2024年3月15日までは、金沢駅で北陸新幹線と七尾線方面の特急列車を乗り継ぐと特急券の乗継割引が適用されていたが、割引はJR線の部分のみ適用されIRいしかわ鉄道線の特急料金は割り引かれなかった。 連絡運輸自社各駅(自社窓口)からの連絡運輸区間は以下の通りとなっている[40]。 凡例
通過連絡運輸
JR各社ではIRいしかわ鉄道線を通過する通過連絡運輸として、以下のものを設定している[41]。
途中下車他社線との連絡乗車券を含む[注釈 2]片道の営業キロが100 kmを超える普通乗車券(例:金沢駅 - 越中宮崎駅)は、後戻りしない限り何度でも途中下車が可能である。有効期間については、JRに準じる。 乗り継ぎ割引下記の区間に設定されている。
障害者割引JRと同じく身体障害者割引・知的障害者割引のほか、JR時代には設定のなかった精神障害者割引も設定されている。各種障害者手帳を提示すれば普通運賃より5割引となる。精神障害者割引の場合、JRとの連絡乗車券は発売できないので、金沢駅または津幡駅まで購入して着駅にて精算する必要がある。 企画乗車券
JRで発行する企画乗車券の通過利用の特例「青春18きっぷ」について、JR各線から七尾線への通過利用の特例として津幡 - あいの風とやま鉄道の富山間を途中下車しない条件で利用が認められている[44]。「ジャパンレールパス」について、金沢駅を経由して七尾線内各駅へ通過利用する場合の特例として、金沢 - 津幡間の普通・快速列車(普通車自由席)を途中下車しない条件で利用が認められている[45]。 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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