気候変動観測衛星しきさい(GCOM-C)は、NECが開発、製造した、人工衛星である。
2017年12月23日に、超低高度技術試験機つばめ(SLATS)と共にH-IIAロケット37号機で打ち上げられた。
「しきさい」という愛称は、「つばめ」とともに、愛称の公募で決められた。
観測機器
SGLI
多波長光学放射計(SGLI, Second-generation Global Imager)は, みどりIIに搭載されたGLI (Global Imager)の後継センサである。みどりIIの機械走査のGLIセンサが大型化・複雑化しすぎた反省から、2系統の簡素な観測装置に分割し、かつ、観測対象チャンネルを絞り込むことによって、信頼性とサバイバビリティの向上を図っている。
SGLIは, GLIに比べ, 地表面分解能が高いこと(1 km → 250 m), 陸上エアロゾル等を観測するための偏光・多方向観測機能を持つこと等の改善を行っている[1]。一方, SGLIで観測出来るチャンネル数は19と、GLIの36チャンネルから大幅に減少している。これはGCOMで求められている観測に必要なものに絞り込んでいるためである。
SGLIは「可視・近赤外放射計部」(VNR: Visible and Near Infrared Radiometer) と「赤外走査放射計部」(IRS: InfraRed Scanning radiometer)の2つの放射計から構成される。前者のSGLI-VNRはもも1号のMESSR、ふよう1号のOPS/VNIR、みどりのAVNIR、だいちのAVNIR-2センサの技術を継承している。
SGLI-VNRは, 直下方向を観測する非偏光観測センサ(NPサブユニット; 11チャンネル)と、+45°方向~-45°方向の範囲で切り替え、多方向観測ができる偏光観測センサ(PLサブユニット; 2チャンネル)から構成されている。検出器にはCCDを用いており、機械走査が不要な電子走査方式(プッシュブルーム方式)の放射計である。非偏光観測センサ(NP)は観測方向の異なる3 本の鏡筒で構成され, それぞれが画角24°で, あわせて合計70°(約1,150 km)の走査幅をもつ。陸域・沿岸では250 mの分解能、外洋域では1 kmの分解能で観測する。偏光観測センサ(PL)は、673.5 nm 用と868.5 nm 用の2 本の鏡筒を用いて、0°, +60°, -60°の3つの方向の偏光面について偏光観測を行う。また、衛星進行方向に対して前後45°の範囲内で任意の角度に設定が可能なチルト機構が実装されている。約1,150km の幅を1 km の分解能で観測する。[1]
SGLI-IRSは、地上から受けた光を短波長赤外(SWIR:1.05µm~2.21µm、4 チャンネル)と熱赤外(TIR:10.8µm、12.0µm、2 チャンネル)に分光し、各々の検出器へ導入する。IRS の走査方式は、走査鏡による機械走査方式(ウイスクブルーム方式)である。0.74 秒間に1 回、地表面を走査し、1 回の走査で観測幅80°(約1,400km)を観測する。[1]
観測幅はSGLI-VNRで1,150 km、SGLI-IRSで1,400 kmであり、日本付近(緯度 35度)において2 日に1回の観測が可能である。全チャンネルで機械走査であったGLIセンサの1,600 kmから後退しているものの、分解能250 mの高分解能で観測できるチャンネル帯は増えている。SGLI-VNRに新たに追加された偏光観測機能により, エアロゾルの粒子の大きさが判別できるため、エアロゾルの発生源が推測可能になる。
SGLI 観測チャンネル[1]
機器
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チャンネル
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中心波長
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バンド幅
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飽和輝度
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分解能
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観測対象
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SGLI-
VNR
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非偏光
観測
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VN1
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379.9 nm
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10.6 nm
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240 ~ 241 W/(m2 sr um)
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250 m
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陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
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VN2
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412.3 nm
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10.3 nm
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305~318 W/(m2 sr um)
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植生・陸上エアロゾル・大気補正・海上エアロゾル・光合成有効放射量・雪氷
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VN3
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443.3 nm
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10.1 nm
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457 ~ 467 W/(m2 sr um)
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植生・海上エアロゾル・大気補正・光合成有効放射量・海色・雪氷
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VN4
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490.0 nm
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10.3 nm
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147 ~ 150 W/(m2 sr um)
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海色(クロロフィル濃度・懸濁物質濃度)
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VN5
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529.7 nm
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19.1 nm
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361 ~ 364 W/(m2 sr um)
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光合成有効放射量・海色(クロロフィル濃度)
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VN6
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566.1 nm
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19.8 nm
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95 ~ 96 W/(m2 sr um)
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海色(クロロフィル濃度・懸濁物質濃度・有色溶存有機物)
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VN7
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672.3 nm
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22 nm
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69 ~ 70 W/(m2 sr um)
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植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色
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VN8
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672.4 nm
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21.9 nm
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213 ~ 217 W/(m2 sr um)
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VN9
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763.1 nm
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11.4 nm
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351 ~ 359 W/(m2 sr um)
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1000 m
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水雲幾何学的厚さ
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VN10
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867.1 nm
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20.9 nm
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37 ~ 38 W/(m2 sr um)
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250 m
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植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
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VN11
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867.4 nm
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20.8 nm
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305 ~ 306 W/(m2 sr um)
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偏光
観測
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P1
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672.2 nm
|
20.6 nm
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295, 315, 293 W/(m2 sr um)
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1000 m
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植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色
|
P2
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866.3 nm
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20.3 nm
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396, 424, 400 W/(m2 sr um)
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植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
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SGLI-
IRS
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近赤外
(SWIR)
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SW1
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1050 nm
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21.1 nm
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289.2 W/(m2 sr um)
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1000 m
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水雲光学的厚さ・粒径
|
SW2
|
1390 nm
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20.1 nm
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118.9 W/(m2 sr um)
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雪氷面上雲検知
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SW3
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1630 nm
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195 nm
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50.6 W/(m2 sr um)
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250 m
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SW4
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2210 nm
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50.4 nm
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21.7 W/(m2 sr um)
|
1000 m
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水雲光学的厚さ・粒径
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熱赤外
(TIR)
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T1
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10.785 µm
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0.756 µm
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340 W/(m2 sr um)
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250 m
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地表・海面・雪氷面温度・火災検知・植生水ストレス等
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T2
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11.975 µm
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0.759 µm
|
340 W/(m2 sr um)
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脚注
関連項目
外部リンク