フェミニストSFは、サイエンス・フィクションのサブジャンルの1つで、社会における女性の役割を扱う傾向がある作品群を指す。フェミニストSFは、如何にして社会は性的役割を構成するのか、ジェンダーを定義する際に生殖能力が果たす役割、男女の政治的・肉体的力の不均衡といった社会問題を提起する。著名なフェミニストSFには、ジェンダーの差やジェンダー間の力の不均衡が存在しない社会をユートピアとして描き、フェミニズム的テーマを探究しているものもある。また、逆にジェンダー差が強調されたディストピアを描くものもある。いずれもフェミニストとしての活動継続の必要性を表明したものである[1]。Elyce Rae Helford は次のように記している。
1960年代には、SFは扇情的な題材と社会の政治的・技術的評論を結合させるようになっていた。フェミニズムの第二波の到来とともに、この「打倒し、精神を拡張するジャンル」[4]で女性の役割が問われた。特筆すべき小説として、アーシュラ・K・ル=グウィンの『闇の左手』(1969年)とジョアンナ・ラスの『フィーメール・マン』(1970年)がある。どちらもジェンダーのない社会を構築することで、社会によって構築された性役割の観点に焦点を当てている[5]。この2人はSFにおけるフェミニスト批評のパイオニアであり、1960年代から1970年代にかけてのエッセイが The Language of the Night(ル=グウィン、1979年)と How To Suppress Women's Writing(ラス、1983年)にまとめられている。
^ワンダーウーマンの生みの親は心理学者で、若い女性にとって価値のある役割モデルとなる女性の英雄がほしかったと明確に述べている。「少女自身も、我々の女性のアーキタイプが体力も能力も権力もないものなら少女になりたくないと思っている。少女になりたくない彼女たちは、か弱く、服従的で平和的なよき女性にもなりたくない。女性の長所はその弱さのために軽蔑の対象となっている。明らかな救済策は、スーパーマンの持つ強さの全てを持ち、同時に良き美しい女性の魅力全てを兼ね備えた女性キャラクターを創造することである」 William Moulton Marston, in The American Scholar (1943).
^Hollinger, Veronica. "Feminist Theory and Science Fiction". The Cambridge Companion to Science Fiction. Cambridge, Cambridge University Press, 2003. 125-134.
Helford, Elyce Rae (2005), “Feminism”, in Westfahl, Gary, The Greenwood Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy Themes, Works, and Wonders, Greenwood Press
Wright, Bradford (2003), Comic Book Nation: The Transformation of Youth Culture in America, The Johns Hopkins University Press