ドラえもん のび太の南海大冒険
『ドラえもん のび太の南海大冒険』(ドラえもん のびたのなんかいだいぼうけん)は、1998年3月7日[2]に公開されたドラえもん映画作品。および、公開に先立って1997年9月から萩原伸一(藤子プロ)によって連載が開始された大長編ドラえもんシリーズの漫画作品。藤子不二雄の藤本弘が1980年代初頭に執筆した短編漫画を膨らませた内容になっている。映画シリーズ第19作。大長編シリーズ第18作(まんが版映画シリーズ1)。 映画のキャッチコピーは「ドラマチックですこし不思議な、マリン・アドベンチャー!!」 映画の同時上映は『ザ☆ドラえもんズ ムシムシぴょんぴょん大作戦!』と『帰ってきたドラえもん』。 映画は第53回(1998年度)毎日映画コンクールアニメーション映画賞、第16回ゴールデングロス賞優秀銀賞、第2回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞作品。 映画公開を記念して帆船「ドラりん丸」が作られた。このドラりん丸は本作とテーマを共通する『ドラえもん のび太の宝島』公開の際、20年ぶりにリニューアルされている[3]。映画でもラストシーンにて同様のデザインの船が登場している。 概要漫画『ドラえもん』の作者である藤子・F・不二雄(藤本弘)没後の第1作。関係者が集まり、藤本が生前に描いた『ドラえもん』の短編漫画の物語をさらに展開させることで長編映画のプロットを作り上げた。 その後、依頼を受けた脚本家の岸間信明が、プロットを元にシナリオを執筆した。完成したシナリオを元に、藤本の生前にチーフアシスタントを務めていた萩原伸一(藤子プロ)が漫画を執筆し月刊誌に連載。その漫画を元に監督の芝山努が絵コンテを描くことで映画が作られた。ただし、漫画の終盤が完成する前に絵コンテを仕上げる必要があったため、終盤はシナリオを元に絵コンテが描かれた。 沿革藤本の短編漫画藤子不二雄の藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)は1980年に『ドラえもん』の短編漫画『南海の大冒険』(てんとう虫コミックス45巻収録)を、1981年に同短編漫画『無人島の大怪物』(同41巻収録、初出時の題名は『変身リングとカード』)を執筆して発表した。長編作品『のび太の南海大冒険』は、上記2作を組み合わせて物語を膨らませることで成り立っている[4]。 プロットとシナリオ本作は藤本没後に製作が開始された初の大長編漫画作品、映画作品である。1997年の前作『のび太のねじ巻き都市冒険記』(以下、前作)の映画公開後、藤子プロの萩原伸一、小学館『コロコロコミック』の担当編集者、映画監督の芝山努、プロデューサーが中心メンバーとなり、複数人で物語のテーマやイメージを何度も打ち合わせを重ね、舞台、登場人物、物語の展開を明確にし、プロットが作られた[5]。 シナリオを脚本家の岸間信明に発注。プロットを元に、岸間によって漫画と映画兼用のシナリオが執筆された[5]。 大長編漫画(連載)完成したシナリオを元に、藤本の生前にチーフアシスタントを務めていた萩原伸一(藤子プロ)が漫画を執筆し『大長編 ドラえもん のび太の南海大冒険』として、『月刊コロコロコミック』1997年10月号から1998年3月号に連載を行った。 漫画連載時のクレジットは「原作 藤子・F・不二雄」「作画 萩原伸一(藤子プロ)」。 序盤は藤本の短編漫画のコマをそのまま引用している部分が多く、財宝を目当てにジャイアンやスネ夫たちと「ほどほど海賊船」で出来レースを演じるくだりなども短編漫画と同様である。 中盤でのび太はドラえもんたちとはぐれて行方不明となり、謎の無人島に漂着。のび太と一人ぼっちの少年ジャック、ピンクのイルカ「ルフィン」との交流が描かれる。ドラえもんらが乗り込んだ海賊船での展開と、のび太らの無人島の展開が並行して描かれ、如何にして彼らが再会するかが見どころとなっている。最終決戦ではしずか達にもそれぞれ見せ場が与えられている。 今作に登場する女性キャラクターのベティは、ジャイアンとの交流場面が多い。大長編で登場する女性キャラクターはのび太と仲良くなったり、互いに名前を呼び合ったりすることが多いが、ベティとのび太の会話は一切ない。 映画連載漫画を元に、監督の芝山努により絵コンテが描かれた。ただし、終盤部分は連載漫画が完成前だったため、シナリオを元に絵コンテが描かれた[5]。 それでも、本作の制作がきっかけでラストシーンの設定は事前の打ち合わせである程度は固めることが出来る様になったため、アニメーター・美術スタッフの負担が軽減し、キャラクターの動き方のクオリティも向上した[6]。 映画『ドラえもん のび太の南海大冒険』は1998年3月7日に公開された。配給収入は前作の記録を超え、当時の歴代最高額を記録した。 本作にはタレントや落語家など、多くの有名人がゲスト声優を担当している。 エンディングテーマとオープニングテーマ「ドラえもんのうた」の歌唱を吉川ひなのが担当している[注 2]。『のび太の恐竜』より音楽を担当していた菊池俊輔の降板(テレビ版は引き続き担当)により、本作から旧来のテレビ版の音源が一切使用されることがなくなった。菊池に代わり本作の音楽はシンガーソングライターの大江千里が担当。編曲には、2005年4月からのテレビアニメおよび劇場版の音楽を担当する沢田完が参加している。映画ドラえもんシリーズ(第1期、2004年まで)で唯一単作でのサウンドトラックが発売された作品である(「映画ドラえもん のび太の南海大冒険 メモリアル音楽集」のタイトルで発売。演奏・スロバキア国立管弦楽団)。また前作までは画面アスペクト比4:3で撮影されていたが、本作よりスクリーンサイズと同じ16:9で作られている。 劇場版第一作から音響効果を担当した柏原満が本作で最後の参加となった。 本作でのび太が読んで宝探しに憧れるきっかけとなったスティーヴンソンの小説である「宝島」は2018年の映画版『ドラえもん のび太の宝島』のモチーフにもなっている。 本作には藤本が描いた短編漫画の物語も含まれるため、本作は「ドラえもん本編を大長編化・映画化した作品」だが、藤本が大長編漫画や映画に関わっていないことを考慮し、藤本が執筆した漫画以外を派生作品と呼ぶという定義ならば「ドラえもんの派生作品(スピンオフ)」と呼ぶこともできる。 これまでの映画作品同様、漫画と映画では省略および変更されたシーンがある。エピローグは漫画ではのび太がグループ研究の題材に海賊を選んだことが描かれ、図書館から借りて来た文献に四次元ポケットがゴミ袋として記述されていたというオチだった。映画はドラえもん一行が17世紀を去ると同時にエンドロールに入り、ドラえもんがスペアポケットに付け替える姿や、漫画のようにのび太が海賊について調べる様子などの後日談が宝の地図のような羊皮紙風に映し出される形となっている。 大長編漫画(単行本)1998年10月に単行本(てんとう虫コロコロコミックス)が発売された。 カバーと表紙には作者名として「藤子・F・不二雄プロ」と掲載された。本扉には雑誌連載時と同様に「原作 藤子・F・不二雄」「作画 萩原伸一(藤子プロ)」とクレジットが掲載された。 あらすじのび太、しずか、ジャイアン、スネ夫のいつもの4人は、夏休みのグループ研究の題材として「海」を選んだ。各々が自分の研究テーマを決める一方、のび太はスティーヴンソンの小説「宝島」を読み耽ってばかりで、やがて憧れの宝探しに行きたいとドラえもんに頼み込む。当然、宝なんて現実に存在しないと突っ撥ねられるもその直後、見計ったかのように宝島が発見されたニュースが流れ、仕方なくドラえもんは宝さがし地図を出す。どうせ見つかるはずないと思いきや、のび太は恐ろしい強運により一発で宝島の在処を当ててしまった。場所はカリブ海にあるトモス島という無人島だった。しかし財宝だけではなく小説のような冒険も求めていたのび太は船による航海で宝島まで行きたいと言い出し、研究の参考になるからと言ってしずかも誘い、海の冒険に出発する。 宝船型モーターボートによる航海は何事もなく進んだが、スリルと興奮を求めたのび太の要望でほどほどあらしによるほどほどの嵐を体験する。しかし嵐はほどほどを通り越した激しさで船を襲い、のび太が船酔いに参ったこともあって一行は嵐が止むまで撤退する。その際にのび太は海賊船を見たと騒ぎ立てたがドラえもんもしずかも信じなかった。その後、ジャイアンとスネ夫を敵の海賊役として強引に引き込み、ほどほど海ぞく船でほどほどの砲撃をさせるも、ほどほど装置の故障で宝船はボロボロになってしまう。一行は仕方なく付近の無人島でキャンプをするが、ここでもまたのび太は海賊船を目撃した。 翌日、ほどほど海ぞく船に乗り換えて改めて宝島を目指す一行は伝説復元機によってバーチャル映像を楽しみつつ航海を進める。しかしバーチャルであるはずの海坊主に襲われて船が半壊させられ、更には時空間の乱れにより17世紀のカリブ海へと転移してしまった。そしてほどほど海ぞく船は本物の海賊船に激突して全壊し、海に落ちたのび太も流されてしまう。一行は海賊船に救助されるが海賊同士の戦闘に巻き込まれ、ドラえもんの偶然の活躍で相手側の海賊船を沈めたことで船長キャプテン・キッドに感謝される。しかしのび太は救助されておらず、四次元ポケットも紛失していた。幸い、海賊に拾われた7つの道具の中にあったほんやくコンニャクによって海賊との意思疎通は可能になり、ドラえもん一行とキッドの海賊団が目指す島が同一である事が判明する。 のび太はピンク色のイルカのルフィンに助けられ、無人島へ流れ着いていた。島で1人で暮していた少年ジャックと知り合い、言葉が通じないながらも交流を深めていく。しかしそこは怪奇な生物が住む島であり、のび太が探し当てたトモス島だった。翌日、ドラえもん一行ものび太が付近の島に流れ着いている可能性に賭け、キッドの海賊団と共にトモス島へと上陸する。一行はキッド、ベティ、パンチョ、ゴンザレスを始めとする海賊団と共に島を進むが、島に住む怪生物に襲われて団員は次々と姿を消していく。その途中、ドラえもん一行はキッドの兄貴分でベティの父であるキャプテン・コルトの海賊団がこの島で消息を絶った事と、ベティの弟のジャックも行方不明だという事を知る。一方ののび太とジャックも誰かが上陸した事を知り、ジャックはキッドの海賊船だと気付いて喜ぶが、何も知らないのび太は仲間が海賊に捕まったと誤解し、ジャックを止めようとして海に飛び込んでは溺れてしまう。のび太をまたも助けた際に宝の地図を見たルフィンは、急にのび太とジャックを乗せて島の奥地へと泳いでいく。そこには明らかな人工物であるトンネルがあった。 キッドの海賊団は怪生物やトラップに襲われ、もうドラえもん一行、キッド、ベティ、パンチョ、ゴンザレスしか残っていなかった。ドラえもんはトラップが22世紀で人気のアトラクションにそっくりだと気付き、やがて彼らの前に半魚人のようなスーツを着た何物かが現れる。拘束された一行は時間犯罪者Mr.キャッシュの元へ連行される。彼はこの島に基地を築き、マッドサイエンティストのDr.クロンに改造生物を作らせていたのだ。そして様々な時代へ兵器として改造生物を売りつける事を目論んでいた。島の宝は奴隷として海賊を寄せ集めるための餌であり、キッドの部下もキャプテン・コルトの海賊団も基地で強制労働を強いられていたのだ。そしてドラえもん一行がこの時代に来たのも、時空間のルートを探る実験に巻き込まれた結果だった。キャッシュは究極の改造生物リバイアサンを呼び出し、見せしめとしてキッドの船を破壊し、一方ののび太、ジャック、ルフィンもキャッシュの部下に捕まってしまう。 一行は牢屋に閉じ込められるが、ようやくのび太と合流。キッドとベティもジャックと再会する。折しも、偶然から敵のスーツを奪って変装していたゴンザレスとパンチョに助けられ、二手に別れて仲間の救出に向かう。のび太、ドラえもん、しずか、ジャックはDr.クロンを拘束してルフィンを救出。残るキッドらも仲間の海賊の解放に成功し、ベティとジャックは父と再会を果たす。一旦基地から脱出したものの、ドラえもん一行が元の時代に帰るには基地のバリアループを解除し、タイムパトロールにこの島を見つけてもらうしかない。つまりキャッシュの野望を阻止しなければ帰れないのだ。それを聞いた海賊たちもキャッシュ一味に借りを返すべく協力を申し出、一行は戦うために基地へと戻っていく。 キャッシュは改造生物の出荷を早めるべく指示を出すも、海賊という労働力を失っては思うように作業が進まない。そこに海賊の一団が襲撃し、基地は大混乱に陥る。キャッシュは改造生物を嗾けるもひみつ道具に敗れ、とうとうリバイアサンをも放った。その圧倒的な力に成す術もない一行だったが、実はルフィンはテレパシーで会話が可能であり、その指示を受けたスネ夫は改造生物輸送用の時空移動船に乗り込み、リバイアサンに麻酔砲を打ち込んで無力化する。一方、のび太とドラえもんは島の最上部に乗り込み、偶然にもドラえもんの頭突きでキャッシュを倒してしまっていた。すぐさまバリアループを解除するも、気が付いたキャッシュが逃げ出そうとしたため、追いかけて取っ組み合いとなる。その時、麻酔砲が効いていなかったリバイアサンが再び暴れ出し、丁度降りて来たキャッシュとドラえもんを飲み込んでしまった。ドラえもんは自分はロボットだから消化されないと落ち着き払い、キャッシュは必死に命乞いをするも一蹴される。しかし二人の言い合いに出て来た「夢」という言葉に反応した夢たしかめ機が胃をつねり、リバイアサンは腹痛に苦しみ出した。それを利用して二人は脱出に成功するが、リバイアサンが暴れ出したことで基地は水没する。一行はルフィンが連れて来たイルカの群れに助けられて脱出し、同時にタイムパトロールも現れた。実はルフィンはタイムパトロール隊員だったのだ。 キャッシュ一味は逮捕され、改造生物も元に戻される事になったが、リバイアサンだけは行方不明だった。しかし操作されない限りは凶暴性を発揮する事は無く、これからは伝説動物として生きていくだろうとして放置される事になった。基地を脱出していなかったキッドとコルトも財宝を手に入れて無事帰還し、いよいよ別れの時が来た。海賊たちに見送られながら、ドラえもん一行を乗せたタイムパトロールの船は17世紀を後にするのだった。 舞台
声の出演ゲストキャラクター
用語改造生物Dr.クロンが作り出した合成生物達。海坊主・イルカニ以外の名称及び能力は1998年4月3日放送の「春だ!一番ドラえもん 夢航海120分超スペシャル!!」のコーナー「怪獣クイズ」より。
スタッフ
主題歌
脚注注釈
出典関連項目
外部リンク
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