『影同心』(かげどうしん)、『影同心II』は、毎日放送と東映(東映京都撮影所)が制作、TBS系列で放映された時代劇。1975年4月5日 - 1976年3月27日の1年間、土曜夜22時からの1時間枠で放送された。
概要
本作が放映される直前、朝日放送(ABC)と毎日放送(MBS)のネットチェンジ(腸捻転の解消)が行われた。解消前は関西ではABC、関東ではTBSが『必殺シリーズ』を放送。必殺シリーズは関西では視聴率 30%前後を誇る時代劇で、ネットチェンジによって人気番組が失われることを憂慮したTBSが新たに準キー局となるMBSに対して、必殺シリーズと同系統の時代劇を依頼。MBSは東映に企画を発注して、本作が制作された。
『影同心』は放映開始直後から視聴率 20%を超え、順調なスタートを切り、全28話を制作・放映した。一方で、必殺シリーズ(当時は第5作『必殺必中仕事屋稼業』)は好調時の半分程度の視聴率 13%まで視聴率を下降している[1][2]。MBSは『影同心』の放映終了後、このヒットを受けて設定を一新した続編『影同心II』を制作して、全24話を放映した。
『影同心II』の視聴率は低迷して、シリーズは2作で終了となった。必殺シリーズは第6作目に藤田まこと演じる中村主水を起用した『必殺仕置屋稼業』を制作。視聴率を好転させて、長期人気シリーズとなった[2][3](視聴率は関西地区のもの)。
東映は『必殺仕掛人』の際に朝日放送から声を掛けられ、松竹とコンペを行った結果、松竹が製作を担当したという経緯がある。『~仕掛人』コンペ時、東映側は結束信二を脚本家として挙げており[4]、本作では2本 執筆している。一方で、池上金男は『~仕掛人』に参加していたが同作の第5話 「女の恨みはらします」を本作の第4話「欲にからんで殺し節」に流用している。
山内久司(朝日放送)からの批判
必殺シリーズの山内久司プロデューサーは1997年12月に出版された洋泉社『必殺シリーズを創った男 - カルト時代劇の仕掛人、大いに語る』で以下の様に述べている。
- 「TBSは徹底的に必殺を真似せいと言うたらしいね。毎日放送の青木氏に」[5]
- 「青木が『いややった』と言うてましたわ」[5]
- 「あれも全部あかんよ。東映の話はやくざっぽいから(笑)」「私情や個人的怒りに任せて、人を殺したらいかん。職業として捕らえたら、一つの展開がある」[6]
はまぐりで金玉を潰す殺し技(金子信雄演ずる柳田茂左衛門の技)については「『必殺』では一切やっていない」「勘違いしている」「単なる正義感で殺すなら、ハマグリで殺すのはおかしい」と述べており、「金を取らないからダメ」と語った[7]。
当時の報道(『週刊TVガイド』1975年3月14日発売号)では、TBSは「必殺」の2文字をタイトルに入れようとしたが朝日放送側の牽制により断念したとの事。同誌によると『影同心』は仮題でタイトル候補は10個 近くあり、『影同心 殺し節』『本命暗殺剣』があった[8]。
影同心(初作)
放映期間:1975年4月5日 - 10月11日 全28回
あらすじ
天保年間。南町奉行 鳥居甲斐守配下の同心 小石川養生所 見回り役の更科右近、高積 見回り役の高木勘平、例繰方の柳田茂左衛門は南町奉行所で役立たずの厄介者と烙印を押される鼻摘み役人。三人の裏の顔は奉行が法で裁けぬと判断した悪人たちを成敗する “影の刺客” だった[9]。
登場人物・キャスト
- 更科右近(山口崇)
- 南町奉行所の小石川養生所 見回り役同心。女物の櫛に偽装した朱塗りで持ち手付きの鉄歯櫛で悪人の首動脈部分を突き刺す。第1話は歯が長く、柄の部分が着脱式の鉄歯櫛で悪人の首筋を刺した。大刀や脇差を使用したり(第8、13、25 - 28話)、お袖の遺髪での絞殺(第14話)、菊の残した簪(第15話)、手拭い(第19話)を武器として使っていた。
- 高木勘平(渡瀬恒彦)
- 南町奉行所の高積 見回り役同心。無精髭を生やしているが髭面を上司の小田頼母に咎められ、お佐知の元で無精髭を剃った(第27話)。役目柄、六尺棒を普段から持ち歩く。日常から帯びている鎖付きの大刀[10]で悪人を斬り倒す。包丁(第5、19話)や鳶口(第11話)、敵の銃(第25話)を武器として使っていた。
- 柳田茂左衛門(金子信雄)
- 南町奉行所の例繰方同心。定年間近の昼行灯だが、影同心のリーダー格である。日頃の昼行灯振りは人一倍で役人然としていない。蛤の貝殻で悪人の睾丸を握り潰して、ショック死させる[11]。素手で潰す事(第2話)があった他、女性に対しては空振りしていた(第24話)。
- お佐知(范文雀)
- 髪結い。柳田茂左衛門の愛人。三人の同心をサポートする。
- おとら(菅井きん)
- 長屋に住む、ドケチな金貸し。三人に情報を提供する事がある。
- 小田頼母(勝部演之)
- 南町奉行所の与力。茂左衛門、右近、勘平の上司で三人を疎んじている。三人が影同心であることは無論 知る由もない。
- 源太(林大興)
- 勘平の弟分で街の情報屋。二丁ヌンチャクが武器。三人をサポートする。
- 横綱町の文造(園田裕久)
- 目明かし。
- 同心(古川ロック、浜田雄史)
- 南町奉行所の同心。
- 柳田周江(丹阿弥谷津子)
- 茂左衛門の妻。「あなたの下に嫁(か)して三十年。私に取っては後悔ばかりの毎日でございました」と茂左衛門へ愚痴をこぼすのが定番だった。
- 丹阿弥と金子は実生活でも夫婦。
- 鳥居甲斐守(田村高廣)
- 南町奉行。茂左衛門、右近、勘平に「影同心」設立を命じた張本人で自らが元締となる。
- ナレーター(芥川隆行)
主題歌
放映リスト(サブタイトルリスト)
サブタイトルのフォーマットは「殺し節」。
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影同心II
『影同心II』(かげどうしん ツー)。放映期間:1975年10月18日 - 1976年3月27日 全24回
あらすじ (II)
登場人物・キャスト (II)
- 香月尼(浜木綿子)
- 谷中の尼寺 香泉院[13]の尼僧。通称「庵主様」。先が鋭く尖った花の茎や枝で悪人の首筋を刺す。柳の枝など刺しにくい物には針を仕込ませている。女郎だったが、先代の庵主様に救われて僧籍に入った過去がある。
- 「一殺多生。浮かばれぬ哀れな人たちを成仏させる為なら、あたしは喜んで地獄に落ちます」が出陣前の決め台詞である。
- 最終回で悪人を成敗した後、源八郎や留吉とともに姿を消した。
- 堀田源八郎(黒沢年男)
- 寺社奉行所の同心。市井の事件は管轄外の為に腕が振るえず鬱屈した生活を送っていた。剣の達人で、悪人を大刀で斬り倒す。
- 最終回で悪人を成敗した後、香月尼や留吉とともに何処ともなく姿を消した。
- 留吉(水谷豊)
- 香泉寺の寺男。博打狂いの遊び人であったが、源八郎の計らいで香月尼の元で寺男として雇われた。楊枝を悪人の額(場合によっては首筋、こめかみ)に吹き刺し、槌で叩いて駄目を押す。
- 最終回で平七を惨殺した悪人を彼の褌で絞殺した後、香月尼や源八郎とともに何処へ去っていった。
- 平七(山城新伍)
- 南町奉行所の牢番。元 錠前破り。初期は女の黒髪を束ねた紐で悪人の首を絞め殺していたが、後に褌を使う様になる。相手によっては短刀を使って殺しを行う事があった。
- 最終回で留吉と共に悪人に捕らえられて拷問を受けるが隙を見て、留吉を逃す。その後は悪人の手で惨殺された。平七の墓標には彼の愛用の煙管と煙草入れが木の枝に刺さっていた。
- おいね(片桐夕子)
- 源八郎の情婦。
- お勝(森みつる)
- 平七の妻。野菜の行商をしている。
- 石井多門(早川保)
- 南町奉行所の定町廻り同心で源八郎の友人。源八郎に乗せられて、町奉行所の情報を話してしまうことが多かった。
- 稲葉新左衛門(岡田英次)
- 寺社奉行所の大検使で源八郎の上司。第8話で妻の佐代が悪人の手に掛かり、死亡した。
- ナレーション(芥川隆行)
主題歌 (II)
- 「いつかおまえに」
- 作詞:中山大三郎 作曲:鈴木淳 編曲:竜崎孝路 唄:黒沢年男(現・年雄)
- 発売:日本コロムビア
放映リスト( サブタイトルリスト) (II)
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スタッフ
- プロデューサー:青木民男(毎日放送)・小野耕人、杉本直幸、斎藤頼照(IIのみ)(東映)
- 音楽:渡辺岳夫
- 脚本:放映リスト参照。
- 監督:放映リスト参照。
- 制作:毎日放送、東映
ソフト化 情報
ネット配信
備考
- 初作の第23話で、遠山左衛門尉景元を演じた山城新伍は『影同心II』で平七を演じている。
- 初作の主題歌『風の女』を唄った朝月愛が最終回にゲスト出演。右近たちの行き付けの居酒屋の看板娘役を演じた。勘平との会話も僅かではあるが存在する。
- 初作 最終回のラストシーンは『影同心II』の香月尼、堀田源八郎、留吉、平七の四人[18]がワンカットずつ出演しており、出演者交代を印象付けるものとなった。
放送局
- ※特記の無い限り全て放送時間は 土曜 22:00 - 22:55、同時ネット。
- ※初作、Ⅱ通してのネット局を記載する。
脚注
- ^ 「必殺DVDマガジン 仕事人ファイル3 知らぬ顔の半兵衛」講談社 ISBN 978-4063670059
- ^ a b 必殺アワー よもやま噺 必殺必中仕置屋稼業 時代劇専門チャンネル
- ^ 山田誠二著、発行:データハウス『必殺! 大全集』
- ^ 山内久司・山田誠二『必殺シリーズを創った男 - カルト時代劇の仕掛人、大いに語る(映画秘宝SPECIAL)』(1997年12月、洋泉社)67頁、68頁、72頁、73頁。
- ^ a b 洋泉社『必殺シリーズを創った男 - カルト時代劇の仕掛人、大いに語る』145頁。
- ^ 洋泉社『必殺シリーズを創った男 - カルト時代劇の仕掛人、大いに語る』73頁。
- ^ 洋泉社『必殺シリーズを創った男 カルト時代劇の仕掛人、大いに語る』145頁。
- ^ 洋泉社『必殺シリーズを創った男 - カルト時代劇の仕掛人、大いに語る』144頁。
- ^ “影同心”. 時代劇専門チャンネル. 2014年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月10日閲覧。
- ^ 刃が着脱可能で、鎖は第9話から使用。
- ^ 茂左衛門は第1話で、この殺し技を「柳田家 秘伝 蛤の術」と悪人の前で述べていた。
- ^ クレジットには、おせつ。
- ^ 第24話(最終回)では香泉寺
- ^ 当時の芸名は「放駒清一」。
- ^ Twitterのベストフィールド公式アカウント 2022年1月7日のツイートより https://twitter.com/BF_yomigaeru/status/1479287423804657665?t=TyZRvOAsEK_iXoeyjC12og&s=19
- ^ ベストフィールド公式サイト https://www.bestfield.com/7w_5k9pk4j
- ^ ベストフィールド公式サイト https://www.bestfield.com/1j9k5ncbjnye
- ^ 但し、エンディングではノンクレジットである。
- ^ 『北海道新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『東奥日報』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『岩手日報』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『山形新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ a b 『福島民報』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『新潟日報』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『信濃毎日新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄
- ^ 『北國新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄
- ^ 『北國新聞』1975年10月6日付朝刊、テレビ欄。
- ^ a b 『山梨日日新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『中日新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『山陰中央新報』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ a b 『山陽新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ a b 『愛媛新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『高知新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ a b 『熊本日日新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『宮崎日日新聞』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
- ^ 『沖縄タイムス』1975年12月各日朝刊テレビ欄。
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