篠田 三郎(、1948年〈昭和23年〉12月5日[出典 1] - )は、日本の俳優。本名は、大塚 晴生()[出典 2]。
東京都港区麻布出身[3][4]、東京都板橋区成増育ち[7]。日本大学第二高等学校中退[出典 2]。劇団民藝青山事務所所属。
来歴
プラスチック製品の工場を経営する父[7]と母の長男で、弟が2人いる[4]。豊島区立道和中学校を経て1964年に日本大学第二高校に進学するが、翌年に大映第18期ニューフェースに合格したことを機に高校を中退する[3][4]。将来の目標というのはあまりなかったが三國連太郎・安井昌二主演の『ビルマの竪琴』や仲代達矢主演の『人間の條件』に感動したなどのことで[7]映画への憧れはあり、東宝と大映のニューフェイスを受けたところ、東宝には落ちて運良く大映に受かったという[8]。学業も続けようと思ったが、学校の方針で受け入れてもらえなかった[8]。前述の通り実家が工場を経営しており、「役者で上手くいかなくとも家業を継げばいいか、という考えはあった」と述べている[8]。
養成所期間を経て大映東京撮影所に入社し、1966年に映画『雁』でデビュー[3][4]。その後は大部屋に配属され、主に通行人などで出演を続けることになる[8]。この時期には、ガメラシリーズ『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(1968年)にも端役で顔を出している[9]。
1970年、帯盛迪彦監督の『高校生番長』で初主演を果たして以降、全4作までつくられたシリーズに男優のエースとして出演[4]。1971年、関根恵子(現・高橋惠子)と共演した『高校生心中・純愛』のヒットによって『樹氷哀歌』『成熟』と関根とのコンビ作が続くが、この年末に大映は倒産してしまう[4][10]。
活躍の場をテレビに移し、TBSのプロデューサー・橋本洋二からの誘いによる『ガッツジュン』で初レギュラーを得て、同じく橋本がプロデューサーを務めた『シルバー仮面』にも、橋本から口説かれる形で春日兄妹の三男・光三役でレギュラー出演した[11][12]。1973年のウルトラシリーズ『ウルトラマンタロウ』 (TBS) では、主人公・東光太郎役を演じる[4]。同年の『天下堂々』 (NHK) でも主演し、幅広いお茶の間の支持を得た[4]。1974年の『若い!先生』では教師・海堂健太役を演じ、テレビスターとしての地位を確立する[9][13]。
1975年、大映テレビ制作の刑事ドラマ『TOKYO DETECTIVE 二人の事件簿』に主演[13]。夜10時台のドラマとしては高視聴率を獲得したことから、1976年には続編『新・二人の事件簿 暁に駆ける!』も制作された[13]。この間、映画でも複数の作品に助演したのち、高林陽一監督の『金閣寺』で主人公・溝口を演じている[4]。1977年には大河ドラマ『花神』での吉田松陰役でさらに広範な人気を得て、1978年にはドラマ人間模様『夫婦』でも忘れがたい印象を残す[4]。同年から1979年にかけては『やあ!カモメ』『一発逆転』など、民放のゴールデンタイムのテレビドラマでも主演を務めた。
以後は活動の中心をテレビに置きながら映画や舞台にも出演し、さわやかな個性で人気を得ている[4][14]。1990年には、長寿ドラマ『部長刑事』シリーズの『新・部長刑事アーバンポリス24』に主演[15]。2000年代に入ってからは、映画『忘れられぬ人々』などで悪役も積極的に演じている[15]。端正なマスクと口跡は貴人役も得意とし、映画『ヤマトタケル』での大王役、大河ドラマ『草燃える』での源実朝役、銀河テレビ小説『復活』での伯爵役などが挙げられる。また、『ピュア・ラブ』シリーズや、野島伸司脚本の『ゴールデンボウル』などで印象的な役柄を演じた[15]。
2020年1月より劇団民藝青山事務所に移籍。
人物・エピソード
趣味はゴルフ[16]と旅行[5]、特技は乗馬[17][16]。
1975年に結婚し、一男一女がいる[3][18]。
『二人の事件簿』以降も、刑事ドラマ『兄弟刑事』『Gメン'82』にレギュラー出演したが、いずれも短命に終わってしまった[15]。『Gメン'82』に関しては、番組の知名度の低さから出演していたこと自体を疑問視されたことがあるという[15]。
『シルバー仮面』関連
- 篠田三郎が演じた春日光三は、5人兄妹の中でも一番無鉄砲で血の気の多い役柄であり、監督の実相寺昭雄からは「どんどん暴れろ」と指示されたという[12]。感情をストレートにぶつけるうえに人間臭い一面もあり、非常に魅力的なキャラクターだったと述べている[12]。
- 1987年のインタビューでは、主演の柴俊夫とはその後も親交が続いていることを語っている[12]。作品については、本当に楽しくやれた作品の一つとして思い出深いと述べている[12]。
- 殺陣師の高倉英二からは、台詞を完全に覚えてくるために現場で台本を見ることはなかったと証言されており、真面目で俳優として素晴らしかったと評されている。また、共演した夏純子からも、落ち着いた人物だったと評されている。
『ウルトラマンタロウ』関連
- 出演前、『ウルトラマンA』第20話で船乗りを目指す篠田一郎青年役でゲスト出演したのは、ウルトラシリーズの新たな主役に篠田三郎がふさわしいと考えたプロデューサー・橋本洋二が、篠田に撮影現場の雰囲気を知ってもらうためだった[21]。
- 出演が決定して『A』の撮影現場を見学した時、北斗星司役の高峰圭二が白いマフラーを巻いているのを見て自分も使用したくなり、高峰に申し出て『タロウ』の撮影でもマフラーを使用することになった。
- 撮影所には電車で通っていたが、いつの間にか眠って目を覚ますとファンの子供たちが集まっており、真剣な眼差しで自分を見つめていた[21]。
- 登場怪獣の中では、第10話のデッパラスが印象に残っている。
- 最終回(第53話)で東光太郎が人間として生きることを選んで雑踏に消えていくラストについては、驚いたと同時に考えもしなかった[23]。また、光太郎のその後については、「人間として平和のために頑張っている」と考えている[24]が、このラストを尊重しているわけではないという。
- 放送終了後には息子が生まれ、物心が付いたら観せてやろうと、恐らく再放送時に1本だけビデオに録画した。しかし、それが2話完結の前編でタロウが苦戦して次回に続く終わり方だった。これを観てからというもの、息子は『タロウ』をまったく観てくれないという。
- 後述の事情によりウルトラシリーズで共演したことはないが、次作『ウルトラマンレオ』で主人公・おおとりゲンを演じた真夏竜やその妻子とは家族ぐるみの親交があり(篠田の息子と真夏の息子は同級生である)、彼の舞台の陣中見舞に訪れたことがある[24]。真夏が2004年に胃癌に罹患した際には、セカンド・オピニオンを紹介するなどして治療に協力した。真夏は篠田に紹介された医師の執刀による手術を受け、2024年のインタビューにて「素晴らしい先生でね。『来年の桜は見られない』なんて言われていたんですが、もうそれから20年以上も桜を見ていますよ(笑い)。篠田さんとはずっと交流があったんですが、本当に命の恩人です」と述べている[27]。
『タロウ』終了後のシリーズへの携わり
『番組対抗スターお年玉大会』(日本テレビ系・1986年1月5日)に『妻たちの課外授業』チームで出演した時、『タロウ』に登場する宇宙科学警備隊ZATの隊員服を白いマフラーなしで着用し、タロウの変身ポーズを披露したことがある[要出典]。
他の昭和ウルトラシリーズの主演俳優と異なり、後のシリーズに客演していない。その理由については、『スポーツ報知』の「円谷プロ創立50周年記念特別号(2013年7月10日発売)内の『タロウ』40周年記念インタビューで「東光太郎は自分の中での青春の良き思い出としてとっておきたい」と話している[注釈 1][注釈 2]。
ただし、『タロウ』を嫌っておらず、特撮誌などのインタビューでも撮影当時のエピソードを披露することは多い。「1年間も主役を演じられるから張り切っていたのを思い出す」「『タロウ』は自分にとって財産」「撮影することも撮影所に通うことも楽しかった」「演じるに当たって特別に意識したり心がけたことはなく、役の一環として捉えていた」などと語っている[要出典]。
本編以外の行動に関しては、インタビュー以外にも積極的な姿勢を見せている。東日本大震災を受けて開設された「ウルトラマン基金」にも、「タロウからウルトラの父やウルトラの母への願い」としてメッセージを寄せている。また、『極上空間』(BS朝日)の2013年8月10日放送分では、変身ポーズの披露、主題歌の歌唱、同行した真夏とともに『レオ』第7話のブーメラン特訓の再現といったことを行なったほか、『タロウ』が「ウルトラマンジャック」や「ウルトラマンスター」といったタイトルで企画が進められていたことを話した[28]。
2019年には、タロウの息子・ウルトラマンタイガが活躍する『ウルトラマンタイガ』のBlu-ray BOXの発売決定に際し、応援コメントを寄せている[29]。
2020年には、「ウルトラ特撮 PERFECT MOOK」にて新規取材のインタビューが掲載された[30]。
『ゴジラvsデストロイア』などで共演した林泰文は、篠田に対して『タロウ』の話題を振ることを遠慮していたが、ある時『タロウ』が話題に挙がったところ、篠田は笑顔で変身ポーズを披露してくれたと証言している[31]。
出演
テレビドラマ
映画
- 雁(1966年、大映)
- 赤い天使(1966年、大映)
- 砂糖菓子が壊れるとき 1967年、大映) - ホテルのボーイ
- ガメラ対宇宙怪獣バイラス(1968年、大映) - ボーイスカウトA
- ジェットF104脱出せよ(1968年、大映) - 学生
- 不信のとき(1968年、大映) - 社員
- 女賭博師 花の切札(1969年、大映) - 兼松の子分
- ダンプ・ヒップ・バンプ くたばれ野郎ども(1969年、大映) - 若者
- 女賭博師 壷くらべ(1970年、大映) - 竹中稔
- 高校生番長(1970年、大映) - 柴田勇治
- 高校生番長 棒立て遊び(1970年、大映) - 工藤力哉
- 高校生番長 深夜放送(1970年、大映) - 塩田直之
- 高校生番長 ズベ公正統派(1970年、大映) - 香川雄一
- 太陽は見た(1970年、大映) - 山村
- 夜のいそぎんちゃく(1970年、大映) - 志村茂
- 十代の妊娠(1970年、大映) - 中原英彦
- 高校生ブルース(1970年、大映) - 五十嵐
- 高校生心中 純愛(1971年、大映) - 主演・丘谷由夫
- 樹氷恋歌(1971年、大映) - 主演・米沢信一
- 成熟(1971年、大映) - 笹尾隆二
- 哥(1972年、ATG) - 主演・淳
- あさき夢みし(1973年、ATG) - 庶民の男
- 吾輩は猫である(1975年、東宝) - 越智東風
- 妻と女の間(1976年、東宝) - 研一
- 金閣寺(1976年、ATG) - 主演・溝口
- 愛の嵐の中で(1978年、東宝)- 佐伯次郎
- ひめゆりの塔(1982年、東宝) - 玉井先生
- 大日本帝国(1982年、東映) - 江上孝
- ふるさと(1983年、松竹富士) - 伝三(青年時代)
- OKINAWA BOYS オキナワの少年(1983年、東宝) - 鑑察医務院職員
- あいつとララバイ(1983年、東宝) - 島英彦
- 千羽づる(1989年、共同映画) - 藤井医師
- あーす(1991年、『あーす』上映委員会) - 良平の父
- 遠き落日(1992年、松竹) - 二瓶連一郎
- ゴジラシリーズ
- さくら(1994年、ヘラルド・エース) - 主演・佐藤良次
- ヤマトタケル(1994年、東宝) - ケイコウ
- ちぎれ雲 いつか老人介護(1998年、フィルム・クレッセント) - 三井勝彦
- 破線のマリス(2000年、アスミック・エース) - 倉科
- 郡上一揆(2000年、映画『郡上一揆』製作委員会) - 秩父屋半七
- 忘れられぬ人々(2001年、ビターズ・エンド=タキコーポレーション) - 阿久津覚
- 森の学校(2002年、森の学校上映委員会) - 主演・河合秀雄
- 十三通目の手紙(2004年、『十三通目の手紙』製作委員会) - 和田
- IZO(2004年、チームオクヤマ) - 学界のドン
- 接吻(2008年、ファントム・フィルム) - 坂口の兄
- 山桜(2008年、東京テアトル) - 浦井七左衛門
- 白夜行(2011年、ギャガ) - 篠塚一成の父
- TAKAMINE 〜アメリカに桜を咲かせた男〜(2011年、ムービートマト) - 桜井錠二
- 人生の着替えかた「お茶をつぐ」(2022年、アークエンタテインメント)
オリジナルビデオ
- 風と大地と梨の木と 第1章〜第4章(1997年 - 2002年、オフィス・ヒューマンヒル) - 主演・牧村信彦 ※人権啓発用ビデオ
舞台
- 恋ちりめん(1976年、三越劇場)
- 夫婦(1979年、芸術座)
- 真夜中のパーティー(1983年・1984年、西武劇場) - アラン
- 櫻の園(1984年、帝国劇場)
- 木瓜の花(1986年、東宝)
- 枯れすすき(1992年 - 2000年、九プロダクション) - 主演・野口雨情
- 初代新潟奉行着任150周年公演 大砲奉行(1993年)
- 名残りの雪 村山たか女抄(1993年、帝国劇場)
- 思ひ川(1995年、東宝)
- 五瓣の椿(1997年、新歌舞伎座) - 青木千之助
- 夢見るおんなたち(1999年、東宝)
- 付き馬屋おえん -たった十日の花嫁-(1999年、松竹)
- 雪国(2001年・2003年、地人会)
- 細雪(2001年 - 2012年、東宝) - 貞之助
- 仁淀川(2002年、東宝)
- 昨日までのベッド(2004年・2006年、地人会)
- 喝采(2005年・2007年、地人会)
- 日本の面影(2005年・2009年、地人会) - 主演・小泉八雲
- ご存知!夢芝居一座(2006年、帝国劇場) - 辰巳紘平
- 三丁目の夕日(2008年、明治座) - 倉田八郎
- 旅館華村 若女将(2011年、明治座)
- 八月の鯨(2013年、劇団民藝)
- SOETSU -韓くにの白き太陽-(2016年、劇団民藝) - 主演・柳宗悦 [34]
- 闇にさらわれて(2019年、劇団民藝) - クリフォード・アレン卿
- 想い出のチェーホフ(2020年、劇団民藝) 新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言の影響で公演中止。
- ある八重子物語(2020年、劇団民藝)-主演・古橋健一郎
- 坂道-長崎、79年目の夏(2024年、六行会ホール)[35]
- 文学の夕べ─朗読─(2024年)
CM
ナレーション
- HAYABUSA〜BACK TO THE EARTH〜「全天周プラネタリウム」[37]
- 劇場版HAYABUSA2-REBORN-
- ミステリアス 古代文明への旅
- 朗読の世界 山田太一「異人たちとの夏」「故郷の劇場」(2024年4月1日 - 5月10日 全30回、NHK-FM)
ラジオドラマ
脚注
注釈
- ^ その際、平成ウルトラ映画(作品名は話していない)で光太郎役での出演を依頼されたが、時間が経過したことやそれを伝えて辞退したこと、そして今後もそれは変わらないとも話していた。
- ^ 以後の作品でタロウの声を石丸博也や森久保祥太郎が担当している。
- ^ 病気降板した細川俊之の代役[31]。
出典
出典(リンク)
参考文献
外部リンク
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