富士急行
富士急行株式会社(ふじきゅうこう、英: FUJIKYUKO CO., LTD.)は、山梨県・静岡県東部・神奈川県西部を中心とする地域で、運輸(鉄道・バス・タクシー・船舶[2])、観光、不動産、流通事業などを営む会社である。富士急(ふじきゅう、Fujikyu)の愛称で知られている[注釈 1]。本社は山梨県富士吉田市に、東京本社は東京都渋谷区に所在する[3]。東証プライム市場上場。 概要1926年9月18日に富士山麓電気鉄道株式会社(ふじさんろくでんきてつどう)として設立され、1960年5月30日に現社名へ変更した。 鉄道・自動車(路線バス・高速バス・タクシー)などの運輸事業を創始とする企業であるが、現在、売り上げに占める鉄道事業の割合は5%程度である。自動車事業を合わせた運輸事業の営業収益に占める割合は2018年度3月期決算では約36%である。また、富士山や河口湖といった沿線の豊富な観光資源を背景にした遊園地(富士急ハイランド)、ゴルフ場等の観光事業の割合は約5割を占めている。創業から現在に至るまで2代目、3代目を除いて[4]堀内一家が社長を務める同族経営である[注釈 2]。 かつては直営で鉄道・バス・索道などの運輸事業を行っていたが、バスについては2020年10月の富士急モビリティ発足をもって分社化を完了。鉄道事業については2022年4月より富士山麓電気鉄道(2代目法人)に分社化し、直営で残った索道事業についても翌2023年までに子会社へ全て譲渡した。この他のほとんどの事業も富士急グループに属する関係会社が担っており、富士急行本体としては事実上の事業持株会社=統括会社に近い形態となっている。 なお、交通系ICカードについては2007年3月18日にバス事業でPASMOを、2015年3月14日に鉄道事業でSuicaを導入しており[5]、富士急モビリティ分社化までは唯一のPASMO・Suica両加盟事業者であった。
運輸事業鉄道→「富士山麓電気鉄道」および「富士山麓電気鉄道富士急行線」を参照
鉄道事業は分社化された子会社の富士山麓電気鉄道(2代目法人)により運営されている。 バスバス事業は分社化された子会社の地域会社・グループ会社により運営されている。かつては韮崎・吉原にも営業所を置いていたほか、貸切専門の沼津貸切・鷹岡・清水・名古屋営業所、貸切専業の系列会社の御殿場自動車、貸切バス事業が中心のグループ会社「富士急平和観光」が存在した。また、沿線に大石寺があることから創価学会の団体輸送に特化した営業所「学会営業所」、主に浜松町 - 大石寺間の路線(限定乗合)を運行した系列会社「大富士開発」まであったが、創価学会と大石寺の関係悪化後にいずれも廃止・統合・廃業されている。 バス営業所・地域子会社括弧内のアルファベットは営業所記号。
バスの車両概説日野自動車と資本関係があるため、日野車の導入が多い。ただし、貸切・高速車については三菱ふそう車の導入も多かった(三菱ふそうの路線車は少ない)。CNGバス導入前後からは、日産ディーゼル(現・UDトラックス)車も勢力を拡大していた。いすゞ車はどちらかといえば少数派である。ただし、岳南鉄道バスでは日産ディーゼル車も多かったが、これは営業エリア内に日産系列の事業所(ジヤトコ)があったことも関連があるとされている。いすゞ自動車の路線車は当時沼津(営)にだけしか配置がなかったが1977年に投入されたいすゞBU04は日野車体製だった(それ以前は川崎重工製)。いすゞ高速車は少数ながら導入例がある。輸入車はヒュンダイ・ユニバースがある。また、2014年3月まではボルボ・アステローペ(組立ては日本)の屋根を取り払い、ビニール製のスライド式帆を装着したオープントップバス「KABA BUS」が河口湖駅周辺の遊覧バスとして在籍していた。 現在の乗降は後乗り前降りだが、以前日野RE100が前後ドア車と前中ドア(引き戸)車の2種類配置された時は後乗り前降りと前乗り前降りと異なる乗降が行われた。このために一部の営業所では乗り入れ限定運用があった。 車両は一部をのぞいて富士急グループのエフ・ジェイが所有者となっており、運行会社はリース扱いで使用している。大半の車両が、希望ナンバーにより車番と登録番号を合わせている。 過去には、高速・路線兼用車「ワンロマ」を導入していた。詳細は「中央高速バス#高速・路線兼用車「ワンロマ」」を参照。 自社グループ内に放送機器メーカー(レゾナント・システムズ)を有する関係で、日本では比較的早い時期に路線バスでの音声合成放送装置を導入開始している。最初に導入されたのは、当時の富士営業所で1988年の初め頃だった。
カラーリング現在の路線車の標準色は「グリーンベルト」と呼ばれるカラーリングで、以前はほぼ全車両が「グリーンベルト」で統一されていた。「グリーンベルト」は、堀内光雄前社長時代に、富士山の景観を損ねないカラーリングにしようということで、当時流行していた赤や青ではなく緑を基調としたものを選定したものである。一方、流行とは正反対の地味なカラーリングであり、当時は垢抜けない色遣いを揶揄されることもあった。 現在の貸切車と高速車については、白地に緑2色で富士山のシルエットを表現した「Resort」(リゾートカラー)、キャラクターを描いた「Highland Dream」の2種類がメインである。「Resort」は、看板車であるボルボ・アステローペ「Resort Wind」から採用されたもので、その後しばらくはスーパーハイデッカー専用のカラーリングであったが、1997年以降はハイデッカー車にもこのカラーのものが多くなっている。「Resort」の場合、定員の数字を併記して「Resort60」というように表記することも多い。また高速車については「Resort Express」となっている。「Highland Dream」は1997年より採用されている。デザイナーはクライブ・ドブソンで、彼のオリジナルキャラクター「エディちゃん」が富士急ハイランドで遊ぶ情景をイメージしたとされている。乗務員の間の通称は「まんがバス」である。ただしキャラクター使用料を毎年支払わなければならないためラッピングを施されたり、車体更新の際に塗装変更を行い「Resort」カラーに変更されている車両が多い。「Resort」色の車両については2006年以降、社名表記の前のマークが富士急行の社章から、赤い富士山のシルエットに「Q」の字を描いた富士急行のシンボルマークに変更されている。 傍系の富士急行観光では、上半分をすべて白としており印象が異なっていた。現在は富士急行観光の車両もグループカラーのリゾートカラーに統一されており、乗車定員の数字を併記して「リゾート60」などと呼ぶ点も同一となっている[7]。赤い富士急行のシンボルマークは記されていない[7]。 なお、岳南鉄道の貸切車は「グリーンベルト」塗装を採用し、路線車は使用している色は同じだがパターンが全く異なるものであった。また、富士急平和観光は社名変更前はグリーンベルトのほかにオリジナルカラーも採用していた。 2017年5月に富士急グループのフラッグシップ豪華貸切バス「GRAND BLEU RESORT」(グランブルーリゾート)を導入。車両のメインボディカラーは富士山の荘厳な山肌をイメージした、このバスのために作られた「蒼富士」色で彩られ、逆さ富士を表現したオリジナルのフロントマスクや、輪郭を縁取る日光をイメージした富士山のシルエットを後方に施すなど、他に類を見ない特徴的な造形となっている。 従来より、富士急バス(旧・富士急山梨バス)本社営業所所属の高速車両に、富士急ハイランドにあるアトラクションの広告ラッピングを施したバスを運行しているが、2018年7月10日より、富士急ハイランドと「ラブライブ!サンシャイン!!」のコラボイベント『ラブライブ!サンシャイン!! 夏だ!Aqoursと!!富士急ハイランド』開催に乗じて期間限定ラッピングバスが運行された[8]。以降、富士急ハイランドで大規模なコラボイベントが開催される際は、開催期間中のみコラボラッピングバスが運行されている。
低公害バス「エバーグリーンシャトル」富士急行グループのバスでは、1995年(平成7年)以降継続的に低公害バスを導入している。山梨県や静岡県で独自の補助金制度があることもあって、地域子会社も含めたグループ全体の台数は2009年現在天然ガスバス(CNGバス)42台とハイブリッドバス11台[9] で、日本の民間バス事業者としては最大規模である(1社単独の場合は山梨交通が最大ユーザーである)。 富士急行では1970年代から富士山登山バスへの低公害バス導入を検討していたが[10] 、富士山登山バスは山梨県側で最大8%、静岡県側では9.6%という急な勾配の上り坂が続くという厳しい条件の路線であり[10]、低公害と登坂性能の両立ができなかった[10]。しかし1990年代中盤以降、ハイブリッドバスやCNGバスが登場したことを機に具体的な検討が開始された。 富士山登山バスのルートで各種試験を行った結果[11]、走行性能が通常のディーゼルバスと比べても遜色ない・黒煙の排出がない・騒音も低いといった条件をクリアした日産ディーゼルのCNGバスが導入車両として決定した[11]。 1995年7月24日から「エバーグリーンシャトル」と命名されたCNGバス2台が富士山麓での運行を開始した[12]。これは都市部以外では日本で初のCNGバス導入事例である[12] が、当時は都市部でさえも天然ガス充填施設は限られており[11]、富士山麓に天然ガス補給のための充填施設は存在せず[12]、東京ガスから供給を受けたガス[12] を、横浜市鶴見区からトラックで陸送していた[11]。しかし1回のトラック便ではバス2台分のガスしか搬送できず[11]、そのトラックの燃料代などがかさみ、通常のバスの約20倍ものコストがかかってしまうものになった[11]。このため、1996年には系列会社が営業する富士急ハイランド内のガソリンスタンドに、1億1,300万円を投じたエコステーションが併設された[11]。民間ベースでエコステーションを設置したのは富士急行が初めてであり、またガソリンスタンドに併設されたエコステーションは日本で初めてである[11]。この年にはCNGバスは9台に増車されていた[13]。 以降、富士登山バスを運行する営業所・地域会社では継続的に低公害バスが導入されている。特に独自の補助金制度のある山梨県内では、毎年の新車に必ず低公害車が含まれており、2005年からはハイブリッドバスの導入も開始された。2012年にはいすゞ自動車のエルガCNG車を2台、富士急山梨バスに初導入した。 CNGバスについては、低公害バス専用の「エバーグリーンシャトル」カラーになっている。この低公害バス専用カラーはハイブリッドバスにも引き継がれ、2006年以降に導入された日野ブルーリボンシティハイブリッドでも採用された。 フジエクスプレスが運行受託する東京都港区のコミュニティバス「ちぃばす」でも、初期導入車8台がCNGバスの日野・リエッセであった。「ちぃばす」では低公害バスとして、日野・ポンチョ電気バスも導入されている[14][15]。
車番富士急行観光以外のグループ各社においては、基本的には1995年以降は以下のような附番法則となっている[16]。過去には、富士急山梨バスが富士急都留中央バスであった時期に発注した車両については独自の連番、富士急三島バス・富士急静岡バスについては登録番号で管理していた時期もあった。また、富士急行観光以外の番号は全て通し番号となっており、グループ内での番号の重複は発生せず、移籍後も頭のアルファベット以外の改番もない。
以上の法則により、「M5562」号車は、富士急湘南バス(富士急行松田営業所)で西暦の下1桁が5の年に導入された三菱ふそう製造の路線車12台目62号車ということになる。 富士急行観光に関しては、以下の附番法則による[16]。富士急行グループ他社からの転入車では改番せずに営業所記号のみ変更する。
高速バス富士急グループの富士急モビリティ、富士急バス、富士急静岡バス、富士急シティバス、富士急湘南バス、フジエクスプレスが首都圏や愛知県、京都府、大阪府の各地と岩手県、山梨県、静岡県、長野県を結ぶ路線を多数運行している。富士急行は中央高速バス運行開始当時からの事業者であった。 運行中の高速バス路線バスタ新宿・渋谷駅(マークシティ)発着
東京駅発着
上記以外の東京都内発着
千葉県内発着
埼玉県内発着 群馬県内発着 神奈川県内発着
静岡県内発着
愛知県内発着
京都府・大阪府内発着
休止・廃止された高速バス路線
路線バス富士急グループの富士急モビリティ、富士急バス、富士急静岡バス、富士急シティバス、富士急湘南バス、フジエクスプレス、富士急山梨ハイヤーが山梨県、静岡県東部、神奈川県小田原地区・横浜市、東京都港区(港区コミュニティバスちぃばす)で路線バス事業を展開している。 富士急グループのバスでは、PASMO、Suicaおよび全国相互利用サービスに対応する交通系ICカードが利用可能。かつては富士急グループ共通の磁気式バスカードも存在したが、PASMO導入により廃止された。バス共通カードは富士急湘南バス・フジエクスプレス134系統のみ利用可能だった。 →富士急グループのバスカードについては「バスカード (富士急行)」を、ICカードについては「首都圏ICカード相互利用サービス#バスでの利用」も参照
索道山梨県南都留郡富士河口湖町で「〜河口湖〜 富士山パノラマロープウェイ」、福島県二本松市で「あだたら山ロープウェイ」を直営していたほか、スノーパーク イエティ・さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト・あだたら高原スキー場における特殊索道(リフト)も運営していた[20]。 2023年4月にスノーパーク イエティの索道をピカへ[21]、同年6月には残る索道も富士山麓電気鉄道[22]・相模湖リゾート[23]・富士急安達太良観光[24]へそれぞれ事業譲渡し、本体直営の索道事業は無くなった。 コラボレーションきかんしゃトーマス富士急ハイランド内に『きかんしゃトーマス』の屋外型テーマパーク「トーマスランド」があることから、富士山麓電気鉄道において『きかんしゃトーマス』とコラボレーションした列車を運行している。2020年3月12日には富士急ハイランド駅が「富士急ハイランド〈トーマスランド〉駅」としてリニューアルオープンした。また『きかんしゃトーマス』のラッピングバスもある。 また『きかんしゃトーマス』コラボ関連で、以下の鉄道会社との連携企画も行っていた。
リサとガスパール富士急ハイランド内に「リサとガスパール タウン」があることから、ラッピング車両(電車・バス)が運行されている。2019年3月15日より6000系電車1編成を、リサとガスパールの2人の誕生20周年を記念して「リサとガスパールトレイン」に改装して運行している[26]。 NARUTO・BORUTO2019年7月26日、富士急ハイランド内に「NARUTO×BORUTO 富士 木ノ葉隠れの里」がオープンしたことから、ラッピング車両(電車・バス)が運行されている。 富士急グループ
富士急グループ(ふじきゅうグループ)は、富士急行株式会社(富士急)を中心としてその連結子会社35社並びに持分法適用関連会社3社で構成する企業グループで、山梨県東部・富士五湖地方を中心に静岡県東部・神奈川県西部界隈を主な事業エリアとして運輸・行楽・サービス・不動産業を展開する。日本の富士山地域における鉄道・バスなどの運輸業を基盤とし、遊園地「富士急ハイランド」を旗艦事業として行楽・サービス業などを展開している。 主たる事業エリアの特徴を一言で表すと「富士山」であり、富士山登山客輸送を企図した交通事業が端緒にあって鉄道・バス事業を手広く行っているが、遊園地・ホテル・ゴルフ場・スキー場・キャンプ場などの行楽(レジャー)・サービス業および別荘経営などの不動産事業が成功し、現在では非運輸業の売り上げが多数を占め、総合レジャー企業の色合いが濃くなっている。 グループ全体の売上高は526億1,200万円[27]。CIは丸の中に運輸・観光・流通・不動産・土木建築・情報のグループ各部門を表す6本の曲線を入れたグループの限りない飛躍と発展を象徴する富士山を模した白抜きのイメージとした1969年制定の2代目社章の後[28]、2004年以降は元々富士急ハイランドのマークであった赤色の富士山に白抜きの「Q」のデザインをグループのシンボルマークとしていた。2024年9月からは2026年の創業100周年に向けて日本デザインセンターのデザインによる富士山の背景の空や湖水を表す群青を基調色として富士山を表す山型・下部に富士五湖の湖面のゆらぎや水面に反射する富士山を表す波模様をあしらったシンボルマークを制定し、使用を開始した[29]。 富士急ハイランドはコアターゲットである関東地方に照準を定めて独創的な広告展開をしており、東京近辺では「富士急」は「富士急ハイランド」の略称として認知されていることが多い。 富士急の前身である富士山麓電気鉄道創業以来、いわゆる甲州財閥の堀内良平自身とその子孫が4代に亘ってオーナー社長を務めており、現社長を除き保守系国会議員でもあった。富士急が筆頭株主であるテレビ山梨 (UTY) 開局に際してはその政治的影響が大きく、政商とみなされることもある。堀内一族は現在富士急株を約1割保有している。
グループ会社公式サイト富士急グループ企業一覧による[30]。 運輸事業鉄道・索道
バスバス事業(特に路線バス)に関しては分社化を進め、地域子会社における運行が中心となっている。
タクシー・自動車整備富士急グループのタクシー会社が、山梨県の富士急行沿線周辺および静岡県東部でタクシー・ハイヤー事業を展開している。
船舶・遊覧船
観光事業富士急ハイランドをはじめ、富士山エリアを中心に観光・レジャー事業を幅広く展開し、富士急行の主力事業となっている。
流通・サービス
その他の出資会社そのほか、以下の会社に出資している。
地域活動・環境への取り組み
スポーツ活動スケート部1968年の創部以来、富士急スケート部は多くのオリンピック代表選手を輩出してきている、名実ともに日本を代表するスピードスケートチームである。全日本実業団では2005年まで17連覇。所属選手は1984年サラエボ五輪から2022年北京五輪まで11大会連続で五輪出場している[59][60]。 活動拠点は富士吉田市にある屋外リンクの「セイコオーバル」。 在籍中または過去に在籍していた選手は以下の通り。
カーリング部→詳細は「チーム富士急」を参照
2010年にカーリング部「チームフジヤマ」を結成。2015年9月に「チーム富士急」と改名。2023年現在休部状態。
その他山梨県との訴訟富士急行は1926年から山中湖周辺の開発を始めたが、それから90年以上にわたり、山中湖畔の山梨県の県有地(約440ヘクタール)について賃貸借を行っている。富士急行では、元々山林だったこれらの土地を自社で別荘地として開発し、事業に利用していた。また一部の土地(約17ヘクタール)については、陸上自衛隊・北富士演習場の一部となっており、同社は土地を提供する代わりに国から演習場交付金を受け取る、ある種の「二重賃貸」状態となっていた[61]。ただこの賃貸契約は、元々の山林としての土地価格を元に結ばれており、賃貸料が低額なままとなっていた[61]。後藤斎知事時代の2017年に契約が更新されたものの、賃料は年額3億2530万円とされている[62]。 これに対し、同じく2017年にある個人が山梨県と富士急行を相手取り、両者の契約は「賃料が安すぎるため違法・無効」であることの確認、また歴代の県知事と富士急行に適正賃料との差額を賠償することを求める住民訴訟が提起される[62]。当初山梨県は「契約は適正である」として争う方針を示していたが、2019年に長崎幸太郎が県知事に就任すると、逆に「賃料が安すぎる」として富士急行と争う姿勢に転換する。県は「賃料は年額約20億円が適正」との第三者の鑑定結果を示し、富士急行に約93億円の損害賠償と不当利得の返還を求める訴訟を提起。一方で富士急行はそれに先立ち、賃貸借契約の有効性を確認する訴訟を提起し全面対決となった[62]。背景には、富士急行の創業家である堀内一家(堀内光雄、堀内詔子等)と長崎との長年の政争があるとも指摘されている[62]。 2022年12月、甲府地方裁判所は富士急行の主張を全面的に認め、賃貸借契約は有効であり損害賠償なども認められないとする一審判決を言い渡した[63]。しかし県はこれを不服として東京高等裁判所に控訴した[64]。2023年8月4日、東京高等裁判所は一審判決を支持し、県の控訴を棄却した。長崎は会見で「地裁判決と比較し県の主張も大幅に受け入れられた。司法の判断を尊重し、受け入れる」と、上告しない方針を説明した[65]。 テレビ番組
脚注注釈出典
参考文献書籍
雑誌記事
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