『イエロー・マジック・オーケストラ (US版) 』 (Yellow Magic Orchestra ) は、日本 の音楽グループであるイエロー・マジック・オーケストラ のデビュー・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ 』をリミックス してアメリカ でリリースされたアルバム。
前年にリリースされた「日本版」がアメリカ市場向けにアメリカにて全曲アル・シュミットによってリミックスされ、若干の手直しが加えられている。
背景
1枚目のアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ 』(1978年 )をリリースしたイエロー・マジック・オーケストラ (以下、YMO)は同年12月5日に新宿の紀伊國屋ホール にて開催された「フュージョン・フェスティバル」に参加。同ライヴを鑑賞していたA&Mレコード のプロデューサーであったトミー・リピューマ は、「私は、この音楽を世界に広めなければならない」と発言し、YMOのアメリカ合衆国 への進出が決定した[ 3] 。
同時期にA&Mレコードの日本国内での発売権がキングレコード からアルファレコードへ移譲されたこと、アルファレコード社長であった村井邦彦 の「アメリカ進出」という夢を実現させるものであり、契約には「日本人アーティストの海外発売」の項目も含まれていた[ 3] 。A&Mとのコンベンションでは大村憲司 、カシオペア と共にYMOも紹介。A&Mが最も注目したのがYMOであった[ 3] 。
その後、YMOは6月20日から6月22日にかけて六本木ピットインにてライブを開催、ゲストとして渡辺香津美 、矢野顕子 が参加[ 3] 。6月21日には高橋ユキヒロ が参加したRAJIE のアルバム『Love Heart』、細野晴臣 、坂本龍一 が参加した山下達郎 のアルバム『GO AHEAD! 』がそれぞれリリース[ 3] 。6月25日には細野が参加したムーンライダーズ のアルバム『NOUVELLES VAGUES』がリリース[ 3] 。
6月31日には渋谷パンテオンにて開催された「オールナイト・ジャズ・フェスティバル」に坂本が参加、渡辺と共に「東風 」を演奏した[ 3] 。
録音
リミックス作業は1979年2月12日から16日まで、ハリウッド にあるキャピトルレコード・スタジオにて[ 3] 。リミックス作業には細野も立ち会っている[ 3] 。
ミックスエンジニアはアル・シュミット。アルも含めA&Mレコードのスタッフは誰もYMOの音楽を理解する事が出来ず、オリジナルのミックスを参考にしてリミックス作業を実施[ 3] 。エコー処理に関してはアルが発言権を握り、低音部の処理が強調されフュージョン寄りミックスとなった[ 3] 。これに関し細野は「あれだったら僕は東京ミックスのほうが好きだな」と発言している[ 3] 。
サウンド的な大きな違いは以下の通り。
「Acrobat(アクロバット)」が削除された
「東風 (Tong Poo)」が「Yellow Magic (Tong Poo)」に改題され、吉田美奈子 のヴォーカルが加えられた
リリース
アルファレコード がアメリカのA&Mレコード と契約し、ホライズン・レーベルからリリース。発売日はアメリカでは1979年 5月30日 、日本では1979年 7月25日 である。
US版が日本にてアルファレコード よりリリースされるに当たり、オリジナルの『イエロー・マジック・オーケストラ 』が廃盤。その結果、次作『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー 』がヒットした影響で、ファースト・アルバムはUS版が数多く出回り、一般的にはデビュー・アルバムとして認識されている(「日本版」はその後1982年に再発された。CD化される迄入手困難な状態が続いた)。シングルカットされた「COMPUTER GAME (Theme From The Circus)」が、アメリカでリリースされ、1980年3月15日付の全米シングルチャート(Billboard Hot 100 )で60位を記録した[ 4] 。
アートワーク
ジャケットのイラストレーションはルー・ビーチが担当、ジャケットのデザインから「電線芸者」の異名を持つ。
ジャケット上部の電子回路を思わせる特徴的なロゴは、デヴィッド・アレン(David Allen)による[ 5] 。
ジャケット裏面には、YMOメンバー3人とシンセサイザーの写真を加工したものが印刷されているが、CBCラジオ 『電磁マシマシ 』2013年6月15日放送のゲスト松武秀樹 が、この写真は左右逆のものだったことを明かした。
アメリカ発売時、初回盤ではクリアー・イエロービニールディスク仕様。
批評
音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「コンピュータ・サウンドとディスコ・ビート、それにオリエンタルなメロディの融合という、YMOの基本概念が示された記念碑的作品[ 7] 」、「テクノ・ポップというカテゴリーを広めたYMOのエキゾチックな挑戦。(中略)特異な音楽性のヒントにもなっているマーティン・デニーの「ファイアークラッカー」を彼ら流に表現する[ 8] 」と革新性や異国情緒を感じさせる点に関して肯定的な評価を下している。
星野源 は自身が選曲した細野晴臣 が関わった楽曲を集めたコンピレーション・アルバム 「Hosono Haruomi Compiled By Hoshino Gen」のブックレットのインタビューで「僕の好みの音像なんです」と語っており、選曲したファースト・アルバムの楽曲は全てこのアメリカ版のミックスで収録された。
収録曲
A面 全編曲: イエロー・マジック・オーケストラ。 # タイトル 作詞 作曲 時間 1. 「コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ” 」(COMPUTER GAME "Theme From The Circus") イエロー・マジック・オーケストラ 1:46 2. 「ファイアー・クラッカー 」(FIRE CRACKER) マーティン・デニー 4:50 3. 「シムーン 」(SIMOON) クリス・モズデル 細野晴臣 6:27 4. 「コズミック・サーフィン 」(COSMIC SURFIN') 細野晴臣 4:26 5. 「コンピューター・ゲーム “インベーダーのテーマ” 」(COMPUTER GAME "Theme From The Invader") イエロー・マジック・オーケストラ 1:01
B面 # タイトル 作詞 作曲 時間 6. 「イエロー・マジック(東風) 」(YELLOW MAGIC (TONG POO)) 坂本龍一 6:17 7. 「中国女 」(LA FEMME CHINOISE) クリス・モズデル 高橋ユキヒロ 5:56 8. 「ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック 」(BRIDGE OVER TROUBLED MUSIC) イエロー・マジック・オーケストラ 1:18 9. 「マッドピエロ 」(MAD PIERROT) 細野晴臣 4:04 合計時間:
36:19
スタッフ・クレジット
イエロー・マジック・オーケストラ
参加ミュージシャン
スタッフ
ハリー細野 - プロデューサー
村井邦彦 - エグゼクティブ・プロデューサー
トミー・リピューマ - スーパー・バイザー
吉沢典夫 - レコーディング・エンジニア
齊藤篤 - レコーディング・エンジニア
アル・シュミット - ミックス・エンジニア
マイク・リース - マスタリング・エンジニア
宮住俊介 - レコーディング・コーディネーター
ローランド・ヤング - アート・ディレクション
アミー・ナガサワ - デザイン
チャック・ビーソン - デザイン
ルー・ビーチ - フロント・カバー・アート
鋤田正義 - バック・カバー・アート
リリース履歴
脚注
出典
外部リンク