この項目では、タイ料理について説明しています。沖縄の魔除け具については「シバサシ 」をご覧ください。
ゲーン あるいはケーン (แกง [kɛːŋ] 、kaeng/gaeng)は、タイ王国 の各種スープ (汁物)の総称であり、タイ料理 を代表する料理である。日本ではしばしばカレー(タイカレー)と呼ばれるが、辛くないものも存在する。
水分量や素材はさまざまである[ 1] 。様々な香辛料・ハーブ 、ココナッツミルク (もしくは水 )、肉 ・魚介 類、シュリンプペースト
、野菜 や果物 などから作られる。原則としてサラリとしたスープ状の料理であり、主に飯 に掛けて食べる[ 1] 。
調味料としてアレルゲン となるシュリンプペースト (カピ)を含むことが多いのでエビ アレルギー には注意が必要である。
タイカレー
この節には
複数の問題があります 。
改善 や
ノートページ での議論にご協力ください。
出典 がまったく示されていないか不十分です。内容に関する文献や情報源 が必要です。(2024年7月 )
独自研究 が含まれているおそれがあります。(2024年7月 )
レッドカレーペースト用の新鮮な材料の一部。ダイキョウ、レモングラス、エシャロット、唐辛子、ニンニク、コブミカンの葉
タイ国外では、一般的に「タイカレー」と呼ばれるが、ゲーンはインド料理 のカレー や、東南アジア 各国の類似の料理と比較して、乾燥させた香辛料を混合したものよりも生のハーブや芳香の強い葉を多用する点に違いがある[ 2] 。またインド由来のカレーとは味が大きく異なることも多く、「タイカレー」という呼び名は便宜的なものと言える。
ゲーンの種類は多くそれぞれ固有名称が存在するが、大まかに分けて「レッドカレー 」「グリーンカレー 」「イエローカレー 」などと分ける場合があり、これもタイカレー同様にタイ国外での一般名称である。様々な香辛料を調味した「ゲーン・クルーン」(ゲーンの調味ペースト )を作り、これを用いて調理する。従来は各家庭で手作業でスパイスをすり潰していたが、現在は電動ミキサー を使用することが多く、またまた調味料を加えてある市販品ペーストを使用する場合も非常に多い。
そもそもインドにおいてもカレーなる語は元々存在せず、インドの香辛料を使った様々な料理を、外国人がそう呼んでいるに過ぎなかった。タイにおいてカレー/"kari"(タイ語 : กะหรี่ )/として知られる料理は、タイ語でポン・カリー(phong kari )というインド風のカレー粉 を用いた料理またはゲーン・カリー を指す。いわゆる「カレー粉」を利用したタイ料理には、プー・パッ・ポン・カリー などがある。
バリエーション
ココナッツミルク
1873年 に発行された最初のタイ語辞書ではゲーンを「水分が多く、シュリンプペースト 、タマネギ かエシャロット 、唐辛子 、ニンニク を必須材料として用いる米 と一緒に食べる料理」と定義している[ 3] 。ココナッツミルクはこの定義では含まれておらず、ゲーン・ソム (Kaeng som )やゲーン・パー (keang pa )など多くのゲーンには含まれていない。タイの北部地域に当たるラーンナー地域 では標高が高いためにココヤシ の生育が悪く、料理の特徴としていくつかの例外を除けばその材料としてココナッツミルクを利用しておらず、ゲーンにも使用されない。また、ココナッツの胚乳 をおろしてココナッツミルクを絞るのは手間がかかるため、ココナッツミルクを用いた料理は伝統的に王宮や上流階級の料理人が作るもので、庶民が普段から口にするものではなかった。
辛さと濃さ
ゲーンの辛さはペーストの作成時に使う唐辛子の種類と量により、同じゲーンの種類であっても辛さが大きく異なることがある。
また、ゲーンは水気の多いものとして定義されているものの、その濃さにはブイヨン ほどの薄さのものからシチュー のように濃いものまでかなり幅があり、中には完全に水気の無いものも存在する。ゲーン・ソムやゲーン・パーはスープ状に近いゲーンの代表であり、ゲーン・マッサマン やゲーン・クア(kaeng khua )[ 4] はシチューのように濃い。また、ゲーン用ペーストを使用し、肉や野菜を炒め合わせたパッ・プリッ・キン (phat phrik khing )や クア・クリン(khua kling )には汁気がない[ 5] [ 6] 。鶏卵の入った蒸し物ホー・モク (英語版 ) (Ho mok )、タイ北部のゼリー 寄せ風のゲーン・クラダーン(kaeng kradang )[ 7] 、細い麺につけて食べるカノム・ジーン ・ナム・ヤオ (khanom chin nam ngiao )[ 8] などにも様々な食材を混ぜて作ったペーストが使われていて、これらの料理もゲーンの範疇に入れられている。
ゲーン・チュート
ゲーン・チュート(kaeng chuet ) は普通のゲーンから少し外れており、ゲーンのペーストを使わず、肉や野菜から煮出したスープに野菜や豚 挽肉 、豆腐 、春雨 などを入れた中国 風のスープである。これは「あっさり味のゲーン」という意味であるが、スープを意味するトム(tom )という語を使い、トム・チュート(tom chuet )とも呼ばれている[ 3] 。
米食
タイではゲーンは長粒のインディカ米 とともに食されるが、中部タイや南部タイではうるち米 [ 9] 、北部タイや北東タイ ではもち米 と共に食されるほか、カノム・ジーン などの麺と食べられる場合もある。また、特定のゲーンはマレーシア から伝わったインド風のフラットブレッド の一種ロティ と共に食される。
カオ・ゲーン(Khao kaeng )、あるいは、カオ・ラート・ゲーン(khao rat kaeng )は、「ゲーンをご飯に乗せたもの」を意味し、タイの伝統的なファスト・フード 店では、ゲーン数種としばしばいくつかの他の料理を用意し、ご飯と共に供される。しかし近年バンコク などでは、新たなファスト・フードとしてハンバーガー やピザ などが入ってきたことも手伝って、カオ・ゲーンやカオ・ラート・ゲーンを供するファスト・フード店の人気は低下傾向にある[ 10] 。
種類の一覧
ゲーン・ガリー (Kaeng kari ) - カレーのゲーンという意味。日本や西欧ではイエローカレーとして知られる。
ゲーン・ケー (Kaeng khae ) - 北部タイ料理の野菜のゲーン。
ゲーン・キヨウ・ワーン (Kaeng khiao wan ) - 緑の甘いゲーンという意味。日本や西欧ではグリーンカレーとして知られる。
ゲーン・パー (Kaeng pa ) - 密林のゲーンという意味。ゲーンのペーストに加えて、野の食材(いわゆる山菜など)を利用する。
ゲーン・ペッ (Kaeng phet ) - 辛いゲーンという意味。日本や西欧ではレッドカレーとして知られる。
ゲーン・ソム (Kaeng som ) - 酸っぱいゲーンという意味。各地域で独自のものがある。西欧ではオレンジカレーとも。
ゲーン・マッサマン (Kaeng matsaman ) - ムスリム のゲーンという意味。タイ語の「マッサマン」はムスリムを指す古語「ムスルマン」から来ているとされる[ 11] [ 12] 。タイ南部のマレーシアに近い地域で食されることが多いが、2011年 に「世界で最も美味な料理ランキング(CNN主催)」で1位に選ばれ、タイ国内、そして世界的にも人気が高まっている。
カオソーイ (Khao soi ) - ビルマ料理 の影響を受けたタイ北部で見られる、小麦粉 の麺 の入った水気の多いゲーン。
ペナン (Phanaeng ) - マレーシアのペナン の名前が冠されたものとされる。クリーミーで一般的には甘口。
パッ・プリッ・キン (Phat phrik khing ) - 唐辛子と生姜の炒め物という意味。しかし、実際には生姜は含まれておらず、ガランガル を使用する。
材料
大家族などの場合を除いて、香辛料を調理することは手間が掛かる為に、市販のペーストを使用することが一般的である[ 1] 。
ペースト
ペーストの例。右から赤・緑・黄・パネーン ・マッサマンのペースト
ケーン・キヨウ・ワーンの食材
ほとんどのゲーンを調味するペーストを「ゲーン・クルーン」と言う。このペーストは複数の食材からなり、またペーストにはさまざまな種類がある。多くのペーストで使われる一般的な食材はシュリンプペースト 、生か乾燥、赤か青など作るゲーンによってさまざまな唐辛子 、タマネギかエシャロット、ニンニク 、レモングラス 、ガランガル 、コリアンダー の根などである。
ゲーンの種類によって、ペーストにウコン 、コショウ 、コリアンダー の種、カルダモン の実、クミン のようなスパイスが加えられ、食材では茹でた発酵魚[ 13] やクラチャーイ というショウガ科 の植物の根が加えられる。ペーストの材料は伝統的な石のすり鉢で一緒に砕かれ、混ぜられる。近年ではフードプロセッサー が利用されることもある。多くのゲーンでは、他の具材が料理に加えられる前にペーストを調理油で炒める。油は沸騰した水よりも高温に達するため、香辛料やペーストの他の素材から、煮立てることでは不可能な特有の風味を引き出すことができる[ 14] 。
クルアン・ゲーン(khrueang kaeng 、ゲーンの材料)やゲーン・ナム・プリック (nam phrik 、唐辛子ペースト)もタイでは「ゲーンのペースト」を指すために使われる。後者はさらに縮めてプリック・ゲーン(phrik kaeng 、ゲーン用唐辛子)とも呼ばれる。
なお、ゲーンに用いられるペーストは、家庭の有り合わせの食材で自家製のペーストを作ることができる他、タイの市場では作りたての生ペーストが売られており、タイのスーパーマーケット などの商店では工場などでパッケージや缶詰 にされたペーストが売られている[ 15] 。
具材
使用される材料は地域や季節によって変わる。それでも、多くのゲーンでは主な材料として食肉 や魚介類 が使用される。この他、野菜 や果物 だけでなく、チャー・オム(cha-om )というアカシア の一種(Acacia pennata )やパク・ルアット(phak lueat )というイチジク属 の一種(Ficus virens )などの木の葉やドーク・ケー(dok khae )というシロゴチョウ (英語版 ) [ 16] やバナナ (hua pli )[ 17] の花なども用いられる。
動物性の材料では豚肉 、鶏肉 (家畜化されたセキショクヤケイ )、エビ などは比較的手に入りやすい[ 18] 。川、湖、田などの淡水やタイランド湾 やアンダマン海 などの鹹水などの水域から取れる魚や魚介類はさまざまな種類が利用される。他の伝統的な材料にはアヒル 、カエル 、ヘビ 、カタツムリ 、野鳥、サンバー 、イノシシ などがあげられる[ 19] 。
主に野菜を使ったゲーンには、様々な野菜を煮込んだゲーン・リアン(kaeng liang )や[ 20] タケノコ を使ったゲーン・ノーマイ(kaeng nomai )などがある[ 21] 。 ゲーンには、一般的にセイバンナスビ (英語版 ) (makhuea pro )、ジュウロクササゲ (thua fak yao )やカボチャ (fak )類が使われる。
その他の材料
コブミカン の葉(bai makrut 、バイマックルー)などの木の葉に加え、カミメボウキ (kraphao 、クラパオ)、レモンバジル (maenglak 、メーンラッ)、オオバコエンドロ (phak chi farang 、パクチー・ファラン)、コリアンダー (phak chi 、パクチー)の葉などのハーブがゲーンに加えられる。これらは時にほかの材料と共に調理されるが、多くの場合風味を維持し、ゲーンそのものの味と対照的な味を添えるために最後に加えられる。
魚醤 は香りと塩味をつけるために使われる、日本で広まっているレシピではナンプラー (材料はカタクチイワシ などの小魚)を多用するが、タイではシュリンプペースト (カピ)を多用する。ナンプラーはお好みのテーブルソースとしても使われ、よりしょっぱくて辛めの味付けを好む人向けに、刻んだ緑色のプリッキーヌー を入れた調味料プリッ・ナンプラー(phrik nam pla)として食卓にのぼることがある[ 22] 。甘くする必要がある場合、伝統的な椰子糖 などの砂糖が使われる。ライム やタマリンド は酸味を利かせたゲーンの酸味料として利用される。パネーンなど特定のゲーンでは[ 23] クリーミーな味付けにするために、他の具材を加える前にペーストをココナッツミルクでなく、より濃厚なココナッツクリーム で炒める。
画像
関連文献
脚注
^ a b c タイ観光旅行ガイド「バンコクナビ」 『タイカレー特集(Gaengゲーン)』2013.3.10
^ Thai curries rich in flavour
^ a b Thai Food History Chapter 5
^ http://www.bangkokpost.com/food/features/275198/dishes-the-march-of-time-passed-by
^ http://www.eatingthaifood.com/2011/12/food-photo-flavor-packed-thai-dry-curry-kua-kling/
^ http://spacesandspices-dorrie.blogspot.com/2011/11/khua-kling-ein-trockenes-thai-curry-dry.html
^ http://library.cmu.ac.th/ntic/en_lannafood/detail_lannafood.php?id_food=21
^ http://library.cmu.ac.th/ntic/en_lannafood/detail_lannafood.php?id_food=71
^ 以前は輸出用が主だった高級香り米 のジャスミンライス も近年の経済成長により家庭での消費が増えている。
^ MCDANG: Hungry for Thai noodles.
^ http://www.shesimmers.com/2010/07/massaman-curry-recipe.html
^ http://www.worldplatter.com/viewbeyondthefood.php?id=5
^ http://library.cmu.ac.th/ntic/en_lannafood/detail_lannafood.php?id_food=48
^ http://www.bbc.co.uk/food/recipes/thaimonkfishandokrac_83780
^ Easy Thai Green Curry, an Interview with Kasma Loha-unchit, and Musings on Thai Curry Pastes.
^ http://www.bangkokpost.com/food/features/286931/kaeng-som-a-thai-culinary-classic
^ http://library.cmu.ac.th/ntic/en_lannafood/detail_lannafood.php?id_food=26
^ Fumihito, A; Miyake, T; Sumi, S; Takada, M; Ohno, S; Kondo, N (December 20, 1994), “One subspecies of the red junglefowl (Gallus gallus gallus) suffices as the matriarchic ancestor of all domestic breeds”, PNAS 91 (26): 12505–12509
^ http://www.bellaonline.com/articles/art175700.asp
^ http://www.shesimmers.com/2011/08/spicy-thai-mixed-vegetable-soup-kaeng.html
^ http://library.cmu.ac.th/ntic/en_lannafood/detail_lannafood.php?id_food=54
^ http://www.shesimmers.com/2010/02/nampla-prik-ubiquitous-thai-table-sauce.html
^ http://www.shesimmers.com/2011/04/panaeng-curry-with-beef.html
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
タイカレー に関連するカテゴリがあります。
外部リンク