難波金融伝・ミナミの帝王
『難波金融伝・ミナミの帝王』(なんばきんゆうでん ミナミのていおう)は、天王寺大(原作)、郷力也(作画)による日本の漫画。『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて連載中。通称「ミナミの帝王」[1]。2013年4月時点でシリーズ累計部数は5300万部を記録している[2]。 これを原作とする竹内力主演でケイエスエス(Softgarage)製作のOVシリーズおよび劇場映画作品、千原ジュニア主演のテレビドラマシリーズおよび劇場映画作品などがある。 あらすじ幼少時代、非常に裕福な家庭(父親は萬田建設の社長・萬田浩一郎、母親は里子)で育つが、紆余曲折有って、後に貧困地区に堕ちた萬田銀次郎。そこで「長老」をはじめとする住民に政治・経済・礼節等を徹底的に叩きこまれ、その後、金貸しの師匠・金造に金融のイロハを習い、ミナミのマンションの一室に『萬田金融』(「萬田銀行」と称することもある)を開く。 利息はトイチ、「逃げれば地獄まで取り立てに行く」が謳い文句で、法のボーダーライン上で活動しているため、周囲からは「ミナミの鬼」と恐れられる。 原作マンガ原作では、舎弟の坂上竜一とともに萬田金融を開いている。他の舎弟に杉本達也(登場頻度は少ない)、黒崎千里(女性の弟子だが達也と恋仲になり破門)がいる。1話で完結している話もあれば、単行本換算で1冊以上を上回り20話程度で完結する話もある。萬田や坂上以外は毎回、登場人物が異なる。1992年から連載がスタートしており、2009年8月、100巻を達成した。これは日本文芸社発行のコミックとしては史上初である。主役以下、ほとんどの登場人物がかなり誇張された大阪弁を用いる。大阪弁の誇張については、単行本175巻所載の『黄金回廊(3)』冒頭にて、久しぶりに大阪に帰った設定の人物が「いったいいつの時代の大阪弁なの!?」と指摘している。その人物は後に東京弁を使う者は信用できないと言われて大阪弁に修正するが、今どきそこまでコテコテの大阪弁は使わないと逆に指摘される。 ストーリーとしては、通常の債権者と債務者のやり取りを描いた話の他、豊田商事事件、安田病院の診療報酬水増し事件、村上ファンド事件等の実際の事件や、痴漢冤罪、バブル崩壊、商工ローン、派遣切り、闇金融、貸し渋り、押し紙、新聞奨学生 etc.といった社会問題を題材にしたものがある。萬田に弁済できない状況に陥った債務者から話を聞き、(銀行による定期預金拘束など)返済できない事情によっては法理論を展開あるいは契約書の矛盾を指摘し弁済できる状況に戻すような法律相談的ストーリーも多い。もっとも、それはあくまでも「ワシに返済させるためにやったことだ」という体裁である。一方で債務者から取り立てる代わりとして、萬田が自ら詐欺を仕掛けて嵌めた事例もある[注 1]。 なお、民法をはじめとする法律問題の解説や民事裁判の詳細な描写も多いが、民事事件にも係わらず「告訴したるで!」との表現が非常に多い(「告訴」は刑事訴訟法上の用語であり、民事事件については「提訴」が正しい。作者の勘違いか、あえて登場人物にそのように語らせているのかどうかは不明。少なくとも平成時代までは一般人には区別はついていなかったのも事実である)。 話数カウントは「銭の○」。近年はストーリーが非常に長くなることが多く、単行本2 - 3巻分にも及ぶことがある。長編エピソードのとくに前半は、主人公の萬田がストーリーに絡まず、まったく登場しないこともある。 また、別冊漫画ゴラクでは、萬田がミナミに腰を据えるまでの若かりし頃を描いた「大阪ミナミ銭地獄伝説・ミナミの帝王 ヤング編」を連載していた。コミックス9巻分をもって完結している。 書誌情報単行本『ミナミの帝王』シリーズ刊行一覧
登場人物
金融のシステム融資を受けたいときは街を歩く萬田に直接交渉するか電話などアポをとって行きつけのスナック「オアシス」や喫茶店で融資を相談する。この時は必ず萬田本人が出向いて直接取引する。元本から利息分を抜いた分が融資され、10日後に利息のみ返済(ジャンプ)か元本を返済するまで10日おきに返済していく。 いかなる理由であっても借りた後での利息の変更や返済期日の延期は認められないが、債務者側の意志による繰上返済は可能で、萬田との対談の際に繰上返済の旨を告げれば対応してもらえる。 一方前述の通り萬田自身が「他人に約束を守らせるためには自分も約束を守らなければならない」という信条を持っているため、基本的に債権者側の都合による繰上返済の要求や貸し剥がしは行われない。 ただし決して公にはしないものの、萬田が債務者の事情を鑑みてこれらの金融システムを変更する事があるが、債務者側が嘘を吐く等の不誠実な言動を見せない限りは債務者側が不利になるような事は行わない。 返済ができないとき「飛ぶ」として逃げたり偽装を行うと制裁される。また、刑務所に入ったり死亡したりすると取り立てが完全不能になるため、制止する。債務が焦げ付いた時には次のような措置をとる。 臓器、ソープは脅しの要素が強く、よほどの意思や覚悟を持ってくる債務者がそれでもかまわないと表明すると、別の解決策が提示されることも珍しくない。 特に「今はお金が無いが利息を上乗せしたり違約金を追徴されてもいいので何としてでも完済まで払い続ける」「もし知っているならお金になる仕事を紹介して欲しい。そこで働いた上で返済する」等の返済に向けた強い意思表示をすると、返済に行き詰まった背後要因等の聴取が行われる事も多い。 詐欺や悪徳な方法で巻き上げられて発生した債務が債務者からは回収できないと判断された場合は、取り立て対象を債務者から詐欺を働いた第三者へ変更したり、詐欺でぶつけ返して元本を戻すこともある。この時は最終的に第3者から取った額より利息が多くなった場合は利息の返済のみに、元本以上になった場合には債務から引いた額を授業料や手数料としていただくか、再出発資金として債務が0になったほかに「謝礼金」「取り分」と称してお金が貰える場合もある。また、協力費用として債務の帳消しになったケースもある。 銀行のように事業計画に参加して、儲けさせて返済を促したり大きな融資を呼び込ませることもある。反対に倒産を促すこともある。 映画・Vシネマ版竹内力最大のヒット作・代表作であり、レンタルビデオ店ではランキングコーナーの常連であった。原作と違い全作品が一話完結。銀次郎の共闘者として、舎弟および萬田金融に出入りする女性探偵がいる。舎弟役・探偵役のキャストはたびたび変更されている。1992年から2007年にかけて劇場版20本を含め64作品が製作された。英語表記は「THE KING OF MINAMI」。 読売テレビとつながりが強く、第17作「特別編・密約」などは読売テレビ制作作品であり、同局でも放送された。関西地区では土曜日・日曜日の昼間〜夕方時間帯に放送されることが多かったため、『よしもと新喜劇』とともにお昼の定番番組として親しまれていたが、近年同時間帯ではほとんど放送されていない。また同じ読売テレビの「火曜ナイトパーク」(水曜未明の放送)と「金曜ナイトパーク」(土曜未明の放送)の枠だけではなく、年末年始に深夜帯でも不定期に放送されることもある。全国各地の放送局では深夜映画枠によく放送されているほか、CSではチャンネルNECO、日本映画専門チャンネル、V☆パラダイスで毎週放送されている。 ストーリーにはお決まりの筋があり、銀次郎の債務者が何者かに大金を奪われ逃走、銀次郎は債務者を追いかけるが、後から債務者が悪党に騙されていたことを知る。そこで「取れるところから取る」という持論から法律で悪党と立ち向かい金を巻き上げ、騙された債務者に対して借金を棒引き(チャラ)にしたうえ「これで人生やり直せ」と金を持たせるパターンが多い。しばしば登場する難解な法律用語に関しては、適宜解説字幕や説明的なセリフ回し等で補完されている。 オープニングは、銀次郎が債務者から借金を取り立てるアバンタイトルの後に流される。金の厳しさを叫ぶ銀次郎の顔面アップから切り替わり、「難波金融伝」の文字、道頓堀の夜景から「ミナミの帝王」の文字、下にサブタイトルがそれぞれ表示される。2000年リリースの第35作「非情のライセンス」からは、メイン出演者が数名登場するオープニングタイトルが作られ、次作である第36作「極道金融」からは、以降のシリーズ共通となる斉藤かんじ作曲のオープニングメインテーマ曲が流されている。 シリーズ開始以来フィルム撮影で作られてきたが、「恐喝のサイト」「闇の代理人」の回以降はVARICAM撮影で作られていた。 2009年8月に竹内力本人が別の新作発表の際に、「次のストーリーも考えていたけど、諸事情で撮影が不可能になった」と具体的な理由は明らかにしなかったが、本シリーズの打ち切りを表明した。その後2010年から千原ジュニア主演[注 5] でキャストを一新した新テレビシリーズ「新・ミナミの帝王」が関西テレビ制作で開始されている。関西テレビでのテレビドラマ製作開始時点で、原作のライセンス管理を行う新会社「ミナミの帝王株式会社」が設立されたことが公表されている。 映画・Vシネマ版出演者
歴代の舎弟
探偵・その他
沢木組端役・サブキャスト
その他、制作スタッフである田辺博之(キャスティングプロデューサー)、近藤俊明(助監督)なども、多くの回でエキストラとして出演している。 映画・Vシネマ版スタッフ
竹内力主演作品一覧
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年ヤング編
新・ミナミの帝王 THE KING OF MINAMI(テレビドラマ版)
関西テレビ(カンテレ)の制作により、フジテレビ系列(テレビ宮崎除く)で2010年9月21日の22:00 - 23:24(JST)に『新・ミナミの帝王(しん・ミナミのていおう)』のタイトルで単発のテレビドラマが放送された。萬田銀次郎役はテレビドラマ初主演となる千原ジュニアが演じた[18]。ハイビジョン制作、ステレオ・字幕放送。平均視聴率は関東8.9%、関西16.0%(いずれも数字はビデオリサーチ調べ)。 第2作以降は年に1、2作、新作が制作され、関西テレビ(関西ローカル)および一部のフジテレビ系列局で9作目から19作目までは正月明けの1月、20作目以降はゴールデンタイムの火曜日で3月に放送されている(関西テレビの場合)。 映画・Vシネマ版と同じくチャンネルNECOで不定期に放送されている。どちらでも字幕放送が行われており、萬田が黄色、竜一が水色、その話のメインゲストキャラクターが緑、それ以外は白で表示させる。 放送リスト
テレビドラマ版キャスト主要人物
第1作
第2作
第3作
第4作
第5作
第6作
第7作
第8作
第9作
第10作
第11作
第12作
第13作
第14作
第15作
第16作
第17作
第18作
第19作
第20作
第21作
第22作
原作および映画・Vシネマ版との相違点
テレビドラマ版スタッフ
新・ミナミの帝王 THE KING OF MINAMI(2017年映画版)
関西テレビ制作『新・ミナミの帝王』のキャスト・スタッフで製作され、2017年1月14日よりKATSU-do配給で公開された日本の映画作品。2016年4月24日に「第8回沖縄国際映画祭」で上映された。 2017年映画版キャスト※ テレビドラマ版同様のキャストは「#テレビドラマ版キャスト」の項を参照。 2017年映画版スタッフ
ミナミの帝王ZERO
千原ジュニアによるドラマと同じ関西テレビ・メディアプルポの制作で、萬田銀次郎がミナミの鬼と呼ばれるようになるまでを描いた「ヤング編」を原作とした連続テレビドラマ『ミナミの帝王ZERO』(ミナミのていおうゼロ)が、2019年4月26日(25日深夜)から6月28日(27日深夜)の間、金曜日未明の0時25分から0時55分(木曜日深夜)の時間帯に新設された「カンテレドラマらぼ」枠で放送された。全10話。 若き日の萬田銀次郎をBOYS AND MENの小林豊が演じ、ヒロインの菜穂子役をドラマ初出演となるNMB48の太田夢莉が演じる。銀次郎の両親役は、実の夫婦である楊原京子と金児憲史が演じた。この他、銀次郎を助ける長老を関秀人、銀次郎を育成する頭脳集団・チーム銀次郎をBOYS AND MENのメンバー、敵役を中村育二、銀次郎を後押しするサラ金王をトミーズ雅、といった面々が演じる[40][41][42]。劇中に大阪万博の計画が描かれるなど、物語の時代設定は放送年に近い時代になっている。 あらすじ(ZERO)萬田銀次郎は幼い頃に、阿久都商事の社長・阿久都天勝の詐欺行為によって、建設業を営む父の浩一郎が自殺した。そのショックで母の里子は病床に伏せて入院生活を送っている。成績優秀であったが高校に進学しなかった銀次郎は、ミナミで露天商をする、ヤクザをも敵に回すチンピラ然とした少年になった。その裏で銀次郎は「当たり屋」で里子の入院費用を稼いでいる。ある日そのターゲットにした車には、阿久都商事の社長の娘・菜穂子が乗っていた。菜穂子は誠意を尽くそうとするが、銀次郎はそれを金持ちの傲りだと疎ましく思う。銀次郎が自分のために当たり屋をしていると知った里子は病院で手首を切って自ら命を絶ち、両親を失った銀次郎は自暴自棄に陥る。愛釜地区の公園で倒れている銀次郎を救い出したのは、住民から「長老」と呼ばれる男と、彼に仕える教授と館長という男たちであった。 父が追い詰められた原因が阿久都だと知った銀次郎は、阿久都への復讐を決意する。かつて総理大臣秘書であったがその総理に命を狙われて愛釜に流れ着き、この場所を守るために生きている長老と、教授、館長のほか、ヤブ医者、バンク、IT、ペラペラという、それぞれの分野で優れた能力を持ちながらも社会からはみ出した男たちが、銀次郎の復讐の手助けをするべく「チーム銀次郎」を組織して、それぞれの特技を銀次郎に叩き込む日々が始まる。菜穂子が阿久都の娘だと知った銀次郎は、復讐という目的を隠して菜穂子に近づく。菜穂子はピアニスト志望であるが、それは父親の夢であって自分の夢ではないという。阿久都は愛釜地区に菜穂子のためのコンサートホールを建設する計画を立てるが、銀次郎たちに連れられてそこの住人たちと触れ合った菜穂子は「自分の夢は自分の力で追いかけたい」とそれを拒み、本気でピアニストを目指すためにヨーロッパへ留学する。 5年後。銀次郎はチーム銀次郎の育成の成果と、「サラ金王」と呼ばれる上杉のバックアップにより、若き経営コンサルタント・萬城銀次郎として成功していた。銀次郎は阿久都に接近し、阿久都商事に副社長として迎え入れられる。銀次郎はお披露目パーティーで、ピアニストになって5年ぶりに帰国した菜穂子と再会した。銀次郎の過去を知る菜穂子は本当の目的は何かと尋ねるが、銀次郎は菜穂子にふさわしい男になるために必死に這い上がってきた、と答える。次々と難題をクリアして阿久都の絶対的な信頼を勝ち取った銀次郎は、乱脈経営によって会社を倒産に導く計画を実行に移す。 銀次郎のことを快く思っていない阿久都商事の田崎は、銀次郎の当たり屋時代の相棒であった拓馬を見つけ出して、銀次郎の過去を阿久都に話させる。阿久都は激怒するが、菜穂子は田崎が拓馬に金を渡して嘘を話させたと言う。銀次郎の企て通りに阿久都商事は倒産の危機に陥り、阿久都はその責任を問われる。銀次郎の素性と企みを知った阿久都は、かつて手を組んで浩一郎を追い詰めたヤクザ・中沢に銀次郎の命を狙わせ、中沢の銃撃から銀次郎をかばった長老が命を落とした。社長の座を追われた阿久都であったが、かねてからの野望であった大阪万博の事務局長に就任してふたたび表舞台に姿を現す。銀次郎と銀次郎と同様に長老に救われて鍛えられてきた者たちであるチーム銀次郎は、長老の弔い合戦を決意して、中沢と阿久都は逮捕された。菜穂子と会った銀次郎はいままでの本当の目的を打ち明けて、菜穂子に対して何の感情もないと言い放つ。 阿久都は菜穂子のためにと、あらゆる手を使って会社を大きくしてきた。しかし菜穂子は貧しくても昔の小さな会社だった頃のほうが幸せだったと思い、父親も銀次郎も自分のせいで苦しんだと思いつめる。嫌な予感を察知した銀次郎が菜穂子の家に行くと、菜穂子は手首を切って倒れていた。ヤブ医者の緊急手術によって一命はとりとめたが、ピアニストとしての生命は絶たれたかもしれないと告げられる。銀次郎は菜穂子と会わずに病院をあとにする。長老を失った銀次郎は上杉の金融会社に入る誘い受けるが、大切な女性を傷つけた自分はもう表の世界にいられないとそれを断り、自分たちと一緒に愛釜に残るよう勧める教授に「気晴らしにミナミに行ってくるわ」と告げて愛釜を出て行った。 数年後。大阪の高層ビルの屋上にたたずむ男に、沢田組の組長・沢木が何者かとたずねる。その男は「ミナミの鬼」こと萬田銀次郎である。 キャスト
スタッフ
放送日程
関連商品音楽監修を務めたCalmeraによるサウンドトラック『「ミナミの帝王ZERO」サウンドトラック』が、2019年5月29日にB.T.C.Recordsからリリースされた。オープニングテーマに用いられた「ミナミの帝王ZERO〜メインテーマ〜」などが含まれる。
OVA(アニメ)版1993年製作、全二話。前述の映画・Vシネマ版同様、一話完結型の物語である。原作版を基にしているが、一部の展開はアニメオリジナルとなっている[注 19]。 2014年現在、バンダイチャンネルにおいて配信されている。 OVA(アニメ)版キャストOVA(アニメ)版スタッフ
ソーシャルゲーム
エピソード
脚注注釈
出典
外部リンク
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