白山
白山(はくさん)は、日本の北陸地方、白山国立公園内[注 1]の石川県白山市と岐阜県大野郡白川村にまたがる標高2,702mの活火山[3]。両白山地の北部に位置する加越山地(加賀山地)の最高峰である[4]。富士山、立山とともに日本三霊山の一つである[注 2][3]。日本百名山[5]、新日本百名山[6]、花の百名山[7]および新・花の百名山[8]に選定されている。 概要白山は、富山県、石川県、福井県、岐阜県の4県にまたがる[9][10]。山頂周辺は、成層火山となっている[11]。30万年から40万年前から火山活動を始め1659年(万治2年)の噴火が最も新しい[3]。白山とは、最高峰の御前峰(標高2,702m)・剣ヶ峰(2,677m)・大汝峰(2,684m)の「白山三峰(白山三山)」を中心とした周辺の山峰の総称である[3][10][12]。よって厳密には単独峰ではないため、単に「白山」と称した場合は、その跨ぐ県境は石川・福井・岐阜・富山各県に及ぶ。また、別山・三ノ峰を加えて「白山五峰」という。「白山連峰」と呼ばれることもある。 三主峰白山の山頂部は先述の御前峰、剣ヶ峰、大汝峰の三つの峰で形成されている[13]。このうち大汝峰は古白山火山の噴出物、御前峰と剣ヶ峰は新白山火山の噴出物からなる[13]。 最高点の御前峰(ごぜんがみね)には、一等三角点と白山比咩神社奥宮がある。1873年(明治6年)に白山山頂の社殿を白山比咩神社奥宮とし、1951年(昭和26年)に白山山頂部は白山比咩神社の境内地となった[14]。 白山山頂には1937年(昭和12年)に矢作水力が奉納した方位盤があったが、2007年(平成19年)に落雷で破損したため工務店の倉庫で保管されていた[15]。この方位盤は2023年(令和5年)12月に白山比咩神社境内の白山奥宮遥拝所に移設された[15]。 山名の由来「白山」の名は一年の大半を雪に覆われていることに由来するという[16]。古くは都人から「越のしらね」あるいは「越のしらやま」と称され、『古今和歌集』の中でも「しらやま」として詠われた(凡河内躬恒「消えはつる 時しなければ 越路なる しら山の名は 雪にぞありける」など)[16]。 歴史→「白山信仰」も参照
白山を霊峰とする白山信仰は古くからあり、中世には白山は白山修験の霊山として栄え、登山口には修験の道場がひらかれて白山信仰の全国的広がりのもととなった[注 3]。日本各地に約2,700社の白山神社があり、白山比咩神社(石川県白山市)がその総本宮となっている[11][17]。
地学活火山白山はランクCの活火山である[32]。山頂部には、約15個の爆裂火口があり、一部が翠ヶ池などの火口湖となっている。翠ヶ池の南隣りにある鍛冶屋地獄火口が、最も新しい1659年の噴火で形成されたものと考えられている。
地質山域の南東部は中生代ジュラ紀の手取層群の角閃石安山岩と輝石安山岩などからなり[34]、北西部は古第三紀から白亜紀後期の新期花崗岩類と濃飛流紋岩類などからなり、山頂付近は白山火山噴出物からなる[35]。 化石白山山麓周辺には、日本で数少ない中生代ジュラ紀の古い地層が分布し、日本を代表する恐竜の化石の出土地となっている[9]。1874年(明治7年)にヨハネス・ユストゥス・ラインが、白山周辺で植物化石の採集を行った。桑島地区には化石でできた露頭があり、1957年(昭和37年)7月10日に桑島化石壁が国の天然記念物に指定された[36]。 山頂部の池白山の山頂部には複数の池があり、周辺を散策する登山道が山頂のお池めぐりコースとして整備されている[10][37]。翠ヶ池と紺屋ヶ池は火口湖[37]。
自然白山一帯は国立公園(白山国立公園)に指定されている。白山の中腹は急峻なところが多く、道路もほとんどないため人跡未踏の場所も少なくない。また、国指定白山鳥獣保護区(大規模生息地)に指定されている(面積38,061ha)。周辺は豪雪地帯で[9]、冬には山全体が真白になる。 山域の白山市と白川村は、「豪雪地帯対策特別措置法」により、特別豪雪地帯に指定されている。また山頂部には、カンクラ雪渓、水屋尻雪渓、千蛇ヶ池雪渓、ヒルバオ雪渓などの雪渓があり、夏の終わりまで雪が残っていて、万年雪となる所もある[39]。室堂の下部付近から上は、森林限界のハイマツ帯となっている。山頂付近には、最大の翠ヶ池(みどりがいけ)、紺屋ヶ池(こんやがいけ)、油ヶ池、血の池、千蛇ヶ池(せんじゃがいけ)、五色池、百姓池の7つの火口湖がある。 植物白山は日本有数の花の山としても知られ、砂防新道を登る場合、甚ノ助小屋を越えた辺りから、さまざまな高山植物の花畑が広がる。中でもクロユリは日本一の個体数と言われ、群生するさまはみごとである。クロユリは石川県の郷土の花にもなっている[40]。白山の中腹にはブナの原生林が広がり、巨大なブナが林立し、中宮道では幹周5mを越えると言う、日本有数の巨木もある。近年、もともと白山には植生しないコマクサが見られるようになり、生態系を乱す行為として種の持ちこみが懸念されている[41]。 「ハクサン」を冠する和名の植物の種ハクサンコザクラ[9]、ハクサンフウロ、ハクサンチドリ、ハクサンシャクナゲ、ハクサンイチゲ[9](右画像の上段)をはじめ「ハクサン」を冠する植物名は多く[11][9]、ゴゼンタチバナも最高峰・御前峰に由来している。白山は日本で高山帯を有する山岳としてはもっとも西に位置している。 そのため早くから植物の研究が進み、「ハクサン」の名が付く植物が多い[11]。別名を含め20種以上のハクサンを冠する種が自生している[42]。 2010年に石川県環境安全部自然保護課は石川県の絶滅危惧種情報として、ハクサンイチゲ、ハクサンオオバコ、ハクサンスゲを絶滅危惧II類(Vulnerable, VU)に指定し、ハクサンイチゴツナギ、ハクサンコザクラ、ハクサンサイコ、ハクサンチドリ、ハクサンハタザオを準絶滅危惧(Near Threatened, NT)に指定している[43]。岐阜県は、ハクサンアザミとハクサンオミナエシを準絶滅危惧に指定している。
※ 「ハクサン」を冠する和名の種一覧を表示するには、右の [表示] をクリックしてください
動物白山には、石川県の県鳥であるイヌワシのほかにクマタカが生息している[45]。また、かつて白山にもライチョウが生息していたが、明治の頃に白山のライチョウ個体群は絶滅した。 その後、2009年(平成21年)6月2日に石川県白山自然保護センターが雌1羽を確認し、この個体は、調査により北アルプス方面から飛来したものであると推定された。2011年(平成23年)6月1日にも再び同一のライチョウが確認された[46]。 山腹には、ツキノワグマ[9]、ニホンカモシカ[9]などが生息している。 白山周辺には約2,000種の昆虫が生息し、「ハクサン」を冠する種としては、ハクサンシリアゲ(シリアゲムシ目シリアゲムシ科、Panorpa hakusanensis)、ハクサンハバチ(ハチ目ハバチ科、Neocolochelyna hakusana)、ハクサンゴマフアブ(ハエ目アブ科、Haematopota hakusanensis)などがある[47]。ケブカクロバエ(ハチ目クロバエ科、Aldrichina grahami)は、クロユリの受粉を行っている。 2008年、白峰上流の手取川で巨大な獣脚類の牙化石が見つかっている。得られた化石の長径は8.2センチメートルの歯冠〜歯根で、完全な獣脚類の歯としては国内最大。生息時代は白亜紀前期バレミアン期、体長8.5メートル、肉食[48]。 登山禅定道832年(天長9年)に、越前・加賀・美濃の三方から白山への登拝道(禅定道)が開かれた。現在も大部分が白山への登山道として利用されている。
登山道三つのコースが、よく利用される登山道で、いずれでも多くの高山植物が見られる[37][51][52]。
→詳細は「石川県道120号白山別当出合線」を参照
白山は国立公園の指定が古く、新たな開発がほとんど行われていない。人の手の入っていない地域が広いため、上記の3つの登山道以外は上級者向けでアプローチが長くなる[50]。
有人の山小屋白山には有人の山小屋が2か所設置されている。完全予約制を採っており[50]、入山者の総量制限を行い自然環境に配慮している。
避難小屋主要登山コースでは釈迦新道以外のコース上に避難小屋が設置されており、緊急時の避難に使用できるほか、水場に近い場合はシュラフ持参の自炊宿泊などに使用できる。また、ほとんどの避難小屋にはトイレが併設されているため、登山コース上の貴重なポイントとなっている。
登山者数の推移昭和40年代初めの登山者数は、年間15,000人ほどだった。1967年(昭和42年)の室堂ビジターセンター改築後に、年間2万人を超える多くの登山者が訪れるようになった。1983年(昭和58年)から室堂ビジターセンターが再リニューアル工事に入る前の年の1998年(平成10年)までは、年間30,000人ほどだった[55]。1999年(平成11年)からの工事中の期間は食事提供が休止されたため1万人台ほどに減少。2002年(平成14年)には、37,000人ほどに増加した[56]。登山者が増えるにつれて、その踏み跡により高山植物の群生地が荒廃した。 弥陀ヶ原などでは木道が整備され、高山植物の復元作業なども行われた。室堂から御前峰への登山道や室堂周辺の荒廃した登山道では、岩を平に敷き詰めることにより修復されている。また登山者が増えるにつれて、白山の高山帯や亜高山帯で従来生息しない外来種のオオバコ、セイヨウタンポポ、シロツメクサなどの外来種が増え始めている。これらの外来種の調査や除去作業などの活動が行われている[57]。 地理周辺の主な山両白山地および石川県の最高峰である。日本ではこれより西には2,000m以上の山がないため、2,000m超級の高山として最西端の山となる[注 6]。
源流の河川周辺の温泉白山周辺には温泉が多い。山麓には、中宮温泉、白山一里野温泉、白峰温泉、岩間温泉、新岩間温泉、白川郷平瀬温泉、鳩ヶ湯温泉などの温泉がある。尾添にある渓谷には温泉が自噴し、温泉の成分が凝結してできた塊が塔状になって林立しているところがある。岩間の噴泉塔群[58]と呼ばれ、1954年(昭和29年)12月25日に国の天然記念物に指定された[59]。白水湖の西側の地獄谷には噴気孔があり、その周辺の温泉を利用して白水湖畔ロッジの大白川露天風呂に利用されている[60]。 周辺の加賀温泉郷[61]、庄川温泉郷、芦原温泉郷などは、白山由来の温泉であると考えられている。 周辺のスキー場周辺は豪雪地帯で、山麓と山腹には以下の白山を冠するスキー場がある。
アクセス石川県側の市ノ瀬 - 別当出合間は、7月から10月までの土曜日・休日(日曜日・祝日・お盆も含む)にマイカー規制が実施される[50]。そのため、当該区間は有料のシャトルバスでの移動となる[50]。 白山の風景脚注注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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