調和平均は、典型的には率や比に対する平均を考える場合に適切である。例えば速度の平均を計算することを考えると、乗り物がある距離を時速 60 km で走りそれから同じ距離を時速 40 km で走った場合、全体の走行時間と走行距離から求められる平均速度は調和平均の値である時速 48 km であって、算術平均によって求められる時速 50 km を平均とするのは適切ではない。もっとも、調和平均が適切な場合でもしばしば誤って算術平均が用いられる[1]。
他の平均との関係
正の実数の集合に対して、調和平均を H, 算術平均を A, 幾何平均を G とすると、3つの平均の間には関係 H ≤ G ≤ A が成り立つ。平均を取る数の値がすべて等しいとき、かつそのときに限り、3つの平均は等しくなる。
例えば、乗り物がある距離を速度x(例えば時速 60 km)で走りそれから同じ距離を速度 y(例えば時速 40 km)で走ると、平均速度は全距離を総走行時間を割ったものになるが、これは x と y の調和平均となる(時速 48 km)。調和平均が適切でない場合もあり、例としては、乗り物がある時間速度 x で走りそれから同じ時間速度 y で走る場合が考えられ、その平均速度は x と y の算術平均となる(同じ例では、時速 50 km)。3つ以上の異なる速度で走った場合でも同様となる。
異なる例として、2つの電気抵抗を接続することを考える。抵抗 x(例えば 60 Ω)と抵抗 y(例えば 40 Ω)とを並列に接続すると、その効果は x と y の調和平均 (48 Ω) に等しい同じ2つの抵抗を並列に接続した場合と同じである(合成抵抗の逆数が x の逆数と y の逆数との和に等しくなる)。また、この抵抗を直列に接続すると今度は x と y の算術平均 (50 Ω) に等しい抵抗を直列に接続したものと同じ効果となる(合成抵抗は x と y の和に等しい)。
正三角形ABC の外接円の劣弧BC 上の任意の点に対して、B と C からの距離をそれぞれ q と t として、PA と BC の交点が点 P から距離 y にあるとして、y は q と t の調和平均の 1/2 である[4]。
直角三角形において、脚を a, b, 直角に対する斜辺からの高さを h とすると、h2 は a2 と b2 の調和平均の 1/2 である[5][6]。
t と s (t > s) を斜辺 c の直角三角形の2つの内接四角形の辺とすると、s2 は c2 と t2 の調和平均の 1/2 に等しい。
台形の頂点を順に A, B, C, D として AB と CD が平行とする。E を対角線の交点とし、F を辺 DA 上にあるとし G を辺 BC 上にあるとし FEG は AB と CD に平行とする。すると FG は AB と DC の調和平均である。(これは相似な三角形を使って証明できる。)
図のように、二つのはしごが通路の両端に立ててあり、高さ A および B の位置で脚とは反対側の壁に寄りかかっている場合を考える。このとき、はしごが交差する点の床からの高さ h は A と B の調和平均の 1/2 である。壁が斜めであっても、床からの各点の距離は壁との平行線を基準にすれば、A, B, h で変わらない。
米国で自動車の燃費を表す際に主に使用される2つの単位 マイル毎ガロン および リットル毎 100 km の次元は互いに逆数の関係にある(前者は体積あたり距離で、後者は距離あたり体積)ので、広範な車の燃費の平均値を調べる際、一方の単位で算術平均を取ると、それは他方の単位の調和平均の関係になる。たとえば、リットル毎 100 km の単位で表された燃費の算術平均の値をマイル毎ガロンに変換すると、マイル毎ガロンの単位で表された燃費は調和平均の値になる。
^Statistical Analysis, Ya-lun Chou, Holt International, 1969, ISBN 0030730953
^Inequalities proposed in “Crux Mathematicorum”, [1]. p. 74,#1834
^Mitchell, Douglas W., "More on spreads and non-arithmetic means," The Mathematical Gazette 88, March 2004, 142-144.
^Posamentier, Alfred S., and Salkind, Charles T., Challenging Problems in Geometry, second edition, Dover Publ. Co., 1996, p.172.
^Voles, Roger, "Integer solutions of a−2 + b−2 = d−2," Mathematical Gazette 83, July 1999, 269-271.
^Richinick, Jennifer, "The upside-down Pythagorean Theorem," Mathematical Gazette 92, July 2008, 313-317.
^"Fairness Opinions: Common Errors and Omissions", The Handbook of Business Valuation and Intellectual Property Analysis, McGraw Hill, 2004. ISBN 0071429670