金井 恒太(かない こうた、1986年5月25日 -) は、将棋棋士。飯野健二八段門下。棋士番号は265。埼玉県上尾市出身。聖学院中学校・高等学校[1]、法政大学キャリアデザイン学部卒業[2]。
経歴・棋歴
オーストリアのウィーンで生まれたが、前月に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故の影響を心配した両親と共にすぐに帰国している。
4,5歳の頃、祖父にルールを教わり将棋を覚える[3][4]。小学3年生のときに埼玉県大会で3位になり、初めてプロ棋士を意識したという[4]。1998年、小学6年生の時に小学生将棋名人戦に出場し、ベスト8(東日本大会ベスト4)に進出したが、テレビ出演となるベスト4には一歩届かなかった。(同年の大会出場者には、高崎一生(優勝)、船江恒平(準優勝)、戸辺誠(3位)、中村太地、広瀬章人、糸谷哲郎、佐藤天彦らがいた。)
1999年、中学1年のときに新進棋士奨励会に入会[4]。
三段リーグでの8期4年間の勝率は5割程度であったが、法政大学キャリアデザイン学部在学中[4]の2006年、第40回奨励会三段リーグにおいて、3勝4敗からの11連勝で14勝4敗(リーグ2位)の成績を収め、プロ入りを決めた。同期の棋士は豊島将之、伊藤真吾(2度目の次点を取りフリークラス入り)[5]。
プロ入り1期目(2007年度)の2008年1月28日から2008年3月31日まで11連勝し、連勝継続中に年度をまたぎ、2008年度の最初の対局(4月4日)が不戦敗のため11連勝が連勝がストップした2008年度の記録となった。2007年度には13連勝をした棋士が2名おり、2008年度には豊島将之も11連勝(次年度に継続)をあげたが、将棋大賞の連勝賞の規定では、年度をまたいだ連勝記録は連勝が止まった年度のものとして扱うため、金井が2008年度将棋大賞の連勝賞を単独で受賞した。
第58回(2008年度)NHK杯戦で本戦3回戦まで勝ち進むが、佐藤康光(棋王)に敗れる。
3年目の順位戦となる第68期(2009年度)C級2組順位戦で、開幕6連勝を達成するなどして昇級争いの3番手につけた(C級2組からの昇級枠は3名)。第9回戦(2010年2月2日)は、勝てば昇級の一番であったが、降級点2点を抱え順位戦残留が風前の灯の児玉孝一との千日手指し直しの末の戦いに敗れ、ほかの2名とともに7勝2敗で並んだ(この児玉との戦いで、将棋大賞で初の「名局賞特別賞」を受賞)。しかし、金井は前期に7勝3敗の好成績を挙げていたため、3名の中でリーグ表順位が最も上であった(12位)。そのため、最終10回戦(3月9日)も、勝てば昇級(自力昇級)の状態で迎えた。そして、ほかの2名は勝って8勝2敗としたものの、金井も山本真也に勝って8勝2敗とし、順位戦初昇級を決めた。結果としては、すでに2名(豊島将之、高崎一生)が昇級を決めたリーグで、金井が一人で最終10回戦に見せ場を作り、その代わりに、自分の五段昇段が1か月遅れになるという形になった。
第75期(2016年度)C級1組順位戦は1勝9敗の大不振でクラス最下位となり降級点がつくも、翌第76期(2017年度)で6勝を挙げ、1期で降級点を消去した。また、第30期(2016年度)竜王戦6組・昇級者決定戦決勝で星野良生を破り、5組に昇級した。
第3期(2018年度)叡王戦[注 1]で予選六段戦を勝ち抜き本戦に進出。本戦で佐藤天彦(前期叡王)、佐藤康光、行方尚史を破り、初のタイトル挑戦となる決勝七番勝負に進出。金井と同じくタイトル初挑戦の決勝進出者となった高見泰地との番勝負は0勝4敗のストレート負けに終わり、タイトル獲得はならなかった。
棋風
居飛車党である。プロデビュー時のインタビュー(日本将棋連盟公式サイト)で、「得意戦法は角換わり腰掛け銀」と答えた。矢倉、横歩取りなども多く指す。
目標の棋士に郷田真隆を挙げ、棋風も強く影響を受けている[6]。
人物
元々母親がピアノ教師だった関係もあり、自らもピアノを趣味としており[7]、過去に将棋イベントや友人の結婚披露宴でピアノ演奏を披露したこともある[8][9]。また、自身が挑戦者となった第3期叡王戦七番勝負のPR動画でも、BGMのピアノ演奏を行っている。
同じく関根茂一門である矢内理絵子曰く、礼儀正しく丁寧で先輩を立ててくれる「将棋界の貴公子」。
2014年現在、栄光ゼミナールの「栄光キッズカレッジ」にて将棋の特別クラスを受け持っている[10]。
芸能人では華原朋美のファン。好きな曲は『save your dream』[11]。
2019年2月より、出身地・上尾市の「キラリ☆あげおPR大使」を務めている[12]。
昇段履歴
昇段規定は、将棋の段級 を参照。
- 1999年00月00日 : 6級 = 奨励会入会
- 2002年10月00日 : 三段(第33回奨励会三段リーグ<2003年度前期>から三段リーグ参加)
- 2007年04月01日 : 四段(第40回奨励会三段リーグ成績2位)= プロ入り
- 2010年03月09日 : 五段(順位戦C級1組昇級)
- 2016年03月09日 : 六段(勝数規定 /五段昇段後公式戦120勝)
主な成績
タイトル戦登場
- 登場回数1、獲得0
将棋大賞
- 第36回(2008年度)連勝賞
- 第37回(2009年度)名局賞特別賞
在籍クラス
順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始 年度
|
(出典)順位戦
|
(出典)竜王戦
|
期
|
名人
|
A級
|
B級
|
C級
|
0
|
期
|
竜王
|
1組
|
2組
|
3組
|
4組
|
5組
|
6組
|
決勝 T
|
|
1組
|
2組
|
1組
|
2組
|
2007
|
66
|
|
|
|
|
|
C245
|
6-4
|
21
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
2-2
|
2008
|
67
|
|
|
|
|
|
C222
|
7-3
|
22
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
2-2
|
2009
|
68
|
|
|
|
|
|
C212
|
8-2
|
23
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
2-2
|
2010
|
69
|
|
|
|
|
C128
|
|
5-5
|
24
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
4-2
|
2011
|
70
|
|
|
|
|
C117
|
|
5-5
|
25
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
--
|
1-2
|
2012
|
71
|
|
|
|
|
C116
|
|
7-3
|
26
|
|
|
|
|
|
|
6組
|
1-1
|
6-0
|
2013
|
72
|
|
|
|
|
C108
|
|
4-6
|
27
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
2-2
|
2014
|
73
|
|
|
|
|
C121
|
|
8-2
|
28
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
0-3
|
2015
|
74
|
|
|
|
|
C104
|
|
5-5
|
29
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
3-2
|
2016
|
75
|
|
|
|
|
C116x
|
|
1-9
|
30
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
5-1
|
2017
|
76
|
|
|
|
|
C137+
|
|
6-4
|
31
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
1-2
|
2018
|
77
|
|
|
|
|
C113
|
|
5-5
|
32
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
4-2
|
2019
|
78
|
|
|
|
|
C116
|
|
4-6
|
33
|
|
|
|
|
|
5組
|
|
--
|
5-1
|
2020
|
79
|
|
|
|
|
C126
|
|
4-6
|
34
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
1-2
|
2021
|
80
|
|
|
|
|
C126x
|
|
2-8
|
35
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
4-2
|
2022
|
81
|
|
|
|
|
C133*
|
|
5-5
|
36
|
|
|
|
3組
|
|
|
|
--
|
1-2
|
2023
|
82
|
|
|
|
|
C115*
|
|
4-6
|
37
|
|
|
|
3組
|
|
|
|
--
|
1-2
|
2024
|
83
|
|
|
|
|
C123*
|
|
|
38
|
|
|
|
|
4組
|
|
|
--
|
|
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。
|
年度別成績
公式棋戦成績
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2007
|
31 |
21 |
10 |
0.6774 |
[15]
|
2008
|
38 |
20 |
18 |
0.5263 |
[16]
|
2009
|
27 |
16 |
11 |
0.5926 |
[17]
|
2010
|
37 |
22 |
15 |
0.5946 |
[18]
|
2007-2010 (小計)
|
133 |
79 |
54 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2011
|
38 |
20 |
18 |
0.5263 |
[19]
|
2012
|
36 |
24 |
12 |
0.6667 |
[20]
|
2013
|
40 |
24 |
16 |
0.6000 |
[21]
|
2014
|
33 |
17 |
16 |
0.5152 |
[22]
|
2015
|
26 |
12 |
14 |
0.4615 |
[23]
|
2016
|
37 |
17 |
20 |
0.4595 |
[24]
|
2017
|
30 |
15 |
15 |
0.5000 |
[25]
|
2018
|
33 |
14 |
19 |
0.4242 |
[26]
|
2019
|
36 |
21 |
15 |
0.5833 |
[27]
|
2020
|
36 |
16 |
20 |
0.4444 |
[28]
|
2011-2020 (小計)
|
345 |
180 |
165 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021
|
26 |
9 |
17 |
0.3462 |
[29]
|
2022
|
32 |
16 |
16 |
0.5000 |
[30]
|
2023
|
26 |
9 |
17 |
0.3462 |
[31]
|
2021-2023 (小計)
|
84 |
34 |
50 |
|
|
通算
|
562 |
293 |
269 |
0.5213 |
[32]
|
2023年度まで
|
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
日本将棋連盟所属棋士 ( 現役棋士 および 2024年度引退棋士) |
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タイトル 保持者 【九段 6名】 【七段 1名】 |
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九段 【26名】 | |
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八段 【34名】 | |
---|
七段 【44名】 | |
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六段 【28名】 | |
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五段 【20名】 | |
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四段 【15名】 | |
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2024年度 引退棋士 |
- 九段 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 八段 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 八段 中座真 (2024年6月19日 引退)
- 七段 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
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現役棋士 全174名(2025年1月16日時点、日本将棋連盟所属) / △は2024年度の昇段 / 引退棋士の()は引退日 / 詳細は将棋棋士一覧を参照 |
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竜王 | |
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1組 【 ▼降級 4名 】 | |
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2組
| |
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3組
| |
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4組
| |
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5組
|
【在籍 31名(棋士30名・奨励会員1名) / 定員 32名 (欠員1) 】
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6組 【 △昇級 5名 】 |
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次期から出場 |
- 2025年4月昇段者(2-3名)
- 2025年10月昇段者(2-3名)
- (いずれも第39期からの出場)
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★挑戦者 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
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名人 | |
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A級 | |
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B級1組 | |
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B級2組 | |
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C級1組 | |
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C級2組 | |
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フリー クラス
|
| 宣言 | |
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棋戦限定 出場 | |
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2024年度 引退者 |
- 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
- 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 中座真 (2024年6月19日 引退)
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次期から の出場者
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フリークラスからの昇級者 | |
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2024年10月1日昇段者 | |
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先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの数字は在籍可能残り年数(2024年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |
将棋大賞 |
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1970年代 | |
---|
1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
---|
2010年代 | |
---|
2020年代 | |
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表記の前年度の成績・活躍が対象(数字は連勝数)。3月末日時点で連勝継続中の場合は次年度扱い。 |
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---|
2000年代 | |
---|
2010年代 | |
---|
2020年代 | |
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2009年から創設。数字は受賞年。前年度の対局が対象。勝者は左側に表記。 ※2018年の牧野光則 - 中尾敏之は持将棋成立局が受賞対象。指し直し局は牧野が勝利。 |
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