『Introducing... The Beatles 』(イントロデューシング・ザ・ビートルズ)は、アメリカ で発売されたビートルズ 初のアルバムである。1963年7月22日にヴィージェイ・レコード から発売され、1964年2月に一部収録曲を差し替えて再発売された。
このアルバムは日本国内ではリリースされておらず、本記事で使用されている「イントロデューシング・ザ・ビートルズ」という邦題は仮称である。
解説
イギリス での所属レーベルであるパーロフォン の親会社EMI は、ビートルズをアメリカ合衆国 へ進出させるにあたり、資本提携関係にあるキャピトル・レコード に発売を持ちかけた。しかしキャピトルがこれを拒否したため、代わりとなるレコード会社として、リズム・アンド・ブルース やジャズ を扱う零細レーベルであるシカゴ のヴィージェイ・レコード が選ばれた。EMIは同社の持つ音源のイギリスにおける販売権を保有していたため、同社からビートルズのレコードを販売することができた。ヴィージェイはビートルズのファースト・シングルとして1963年2月7日に『プリーズ・プリーズ・ミー /アスク・ミー・ホワイ 』(Vee Jay VJ498)を、5月27日にセカンド・シングル『フロム・ミー・トゥ・ユー /サンキュー・ガール 』(Vee Jay VJ522)を、7月22日には本アルバム『イントロデューシング・ザ・ビートルズ』を発売した。本作はイギリス盤『プリーズ・プリーズ・ミー 』から「プリーズ・プリーズ・ミー」「アスク・ミー・ホワイ」を外して当時のアメリカでのLP標準である12曲の形式にしたものである。なお、本作はジャケット写真が裏焼きになっており、また「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア 」の冒頭のカウントが“three”までカットされてしまうなど、質はやや粗悪である。
ビートルズはイギリスでは圧倒的な人気を集めていたものの、当時のアメリカでは無名の存在であった。またフォー・シーズンズ の楽曲でビルボード 1位を幾度も獲得していたとはいえ、ヴィージェイの販路は決して大きくなかった。従って同社から発売されたビートルズの楽曲はいずれもヒットしなかった。その後ビートルズはEMIと提携していた零細レーベルのスワン・レコード に移籍し、9月16日に『シー・ラヴズ・ユー /アイル・ゲット・ユー 』(Swan 4152)を発売するが、こちらもヒットには至っていない(ただしキャピトルからのデビュー以後はヴィージェイ盤、スワン盤ともに大ヒットしている)。
ビートルズの人気がアメリカにも徐々に波及すると、それまでビートルズに関心を示さなかったキャピトルもレコードの発売を決定した。1963年12月26日にシングル『抱きしめたい /アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア 』(Capitol 5112)を、1964年1月20日にはアルバム『ミート・ザ・ビートルズ 』が発売されると記録的な大ヒットが生じた。この時点でヴィージェイはビートルズのアルバムの販売権を依然所有していたため、1964年2月に『イントロデューシング・ザ・ビートルズ』を再発売した。こちらでは、「ラヴ・ミー・ドゥ」が「アスク・ミー・ホワイ」、「P.S.アイ・ラヴ・ユー」が「プリーズ・プリーズ・ミー」に差し替えられている。
1964年の再発盤は、折からのビートルマニア の影響を受けて大ヒットに至っている。『ビルボード 』誌のアルバム・チャートでは、9週連続第2位を獲得。2014年7月24日にアメリカレコード協会 によってプラチナ認定された[ 6] 。
なおヴィージェイはEP『The Beatles』(Vee Jay VJEP1-903)やアルバム『The Beatles VS The Four Seasons』(Vee Jay VJLP 1065)、『The Beatles & Frank Ifield On Stage』(Vee Jay VJLP1085)を次々に発売するが、後に財務状況が悪化した末に倒産している。
1965年前半にヴィージェイの販売権は失効した。1965年3月22日にキャピトルが発売したアルバム『ジ・アーリー・ビートルズ 』には、『イントロデューシング・ザ・ビートルズ』収録の11曲が収録された[ 7] 。
収録曲
特記を除き、作詞作曲はレノン=マッカートニー によるもの。
初版盤
第2版盤
アナログA面 # タイトル 作詞・作曲 リード・ボーカル 時間 1. 「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア[ 注釈 1] 」(I Saw Her Standing There) ポール・マッカートニー 2:50 2. 「ミズリー」(Misery) 1:48 3. 「アンナ」(Anna (Go To Him)) アーサー・アレキサンダー ジョン・レノン 3:00 4. 「チェインズ」(Chains) ジョージ・ハリスン 2:55 5. 「ボーイズ」(Boys) リンゴ・スター 2:28 6. 「アスク・ミー・ホワイ 」(Ask Me Why) ジョン・レノン 2:24 合計時間:
15:25
アナログB面 # タイトル 作詞・作曲 リード・ボーカル 時間 1. 「プリーズ・プリーズ・ミー 」(Please Please Me) 1:59 2. 「ベイビー・イッツ・ユー」(Baby It's You) マック・デヴィッド ルーサー・ディクソン バート・バカラック ジョン・レノン 2:41 3. 「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」(Do You Want To Know A Secret) ジョージ・ハリスン 1:59 4. 「蜜の味」(A Taste Of Honey) ポール・マッカートニー 2:05 5. 「ゼアズ・ア・プレイス」(There's A Place) 1:53 6. 「ツイスト・アンド・シャウト」(Twist And Shout) ジョン・レノン 2:33 合計時間:
13:10
クレジット
ビートルズ
外部ミュージシャン・スタッフ
チャート成績・認定
脚注
注釈
^ a b 冒頭のカウント「one, two, three, four」の“three”までがカットされている。
出典
参考文献
Spitz, Bob (2012) [2005]. The Beatles: The Biography . ISBN 0-3160-3167-4
Spizer, Bruce (1998). Songs, Pictures and Stories of the Fabulous Beatles Records on Vee-Jay . New Orleans: 498 Productions. ISBN 0-9662649-0-8
Spizer, Bruce (2004). The Beatles Are Coming! The Birth of Beatlemania in America . New Orleans: 498 Productions. ISBN 0-9662649-9-1
Whitburn, Joel (2010). Joel Whitburn Presents Top Pop Albums, Seventh Edition . Record Research Inc.. ISBN 0-89820-183-7
外部リンク
太字はビートルズのカタログを構成する正式な作品 スタジオ・アルバム アメリカ盤 日本盤 コンピレーション ライブ・アルバム リミックス・アルバム ボックス・セット
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