当初の曲名は「Seventeen」[8]で、サウスポートランカシャーでの仕事からの帰り道[9]、マッカートニーが1960年にリヴァプールで聴いた民俗音楽「Seventeen Come Sunday」を現代風にアレンジした楽曲として考案された[10]。ビートルズの伝記作家であるマーク・ルイソン(英語版)によると、マッカートニーは1962年10月22日の夕方に友人のロリー・ストーム(英語版)の実家で、アコースティック・ギターを使用してコードとアレンジを練り上げたとのこと[11]。2日後、マッカートニーは当時17歳だったガールフレンドのセリア・モーティマーとロンドンを訪れた時に歌詞を書いた[12]。この約1か月後にフォースリン・ロードにある自宅でジョン・レノンと共に完成させ[13]、1962年12月にハンブルクのスター・クラブで演奏された[14]。なお、マッカートニーは本作をロリー・ストーム&ザ・ハリケーンズ[注釈 2]に提供する予定だったが、曲を聴いたブライアン・エプスタインによって却下された[15]。
歌詞は、リバプール芸術学校で使用していたノートに記された。1992年に出版されたマイク・マッカートニー(英語版)の著書『Remember: The Recollections and Photographs of Michael McCartney』には、マッカートニーとレノンがアコースティック・ギターで音を鳴らしながらノートに歌詞を記している様子を捉えた写真が掲載されている。1988年のマーク・ルイソン(英語版)とのインタビューでマッカートニーは「ジョンと一緒に書いた曲。学校を休んで、ギターで書いた。「Well she was just seventeen / Never been a beauty queen(彼女はちょうど17歳 / 絶世の美女ってわけじゃない)」という歌詞だったんだけど、ジョンに「何だって?それじゃ駄目だ」って言われた。初めてのことだったよ。そこで「You know what I mean(意味わかるだろ?)」に変えたんだ」と語っている[18][19]。レノンも1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで「ポールがいつもの調子で作った曲で、ジョージ・マーティンが「ウケ狙い」と呼んでいた。歌詞をちょっと手伝った」と語っている[20]。
1963年2月25日にミキシングが行なわれ[23]、テイク9に入っているマッカートニーによるカウントがテイク12の冒頭に継ぎ足された[22]。通常カウントは、最終ミックスの段階でカットされるが、アルバムにライブ演奏のような雰囲気を演出したかったプロデューサーのジョージ・マーティンの意図によりそのまま残されることとなった[24]。なお、アメリカで1963年7月22日にヴィージェイ・レコードより発売された編集盤『Introducing... The Beatles』収録テイクでは、このカウントがフリーランスのサウンド・エンジニアによってカットされている[25]。
マッカートニーは、1986年のプリンス・トラストのチャリティー・コンサートで、エルトン・ジョン、エリック・クラプトン、フィル・コリンズ、マーク・ノップラー、レイ・キングと共に演奏[25]。その後1989年から1990年にかけて行なわれたワールドツアー、1991年の「Unplugged Tour」、1993年の「New World Tour」、2002年の「Driving World Tour」、2003年の「Back in the World Tour」、2004年の「Summer Tour」、2009年の「Summer Live Tour」などでも演奏しており[25]、『ポール・マッカートニー・ライブ!!』、『バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002』、『バック・イン・ザ・ワールド』などのライブ・アルバムにライブ音源が収録されている[25]。なお、1987年に発売されたカバー・アルバム『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』制作時に、ソロ・バージョンのレコーディングが行われたが、未発表のままとなっている[41]。
1988年にティファニーによるカバー・バージョン「アイ・ソー・ヒム・スタンディング・ゼア」(I Saw Him Standing There)が発表され、後に発売されたアルバム『ティファニー(英語版)』にも収録された。なお、英語圏では性別を違えて歌うことはほとんどなく、その代わり歌詞や楽曲のタイトルを性別に合うように変更することが通例となっており、ティファニーによるカバー・バージョンもこの例に倣って、「アイ・ソー・ヒム・スタンディング・ゼア」と歌詞とタイトルが女性目線に変更されている。
ダイアナ・ロス&ザ・スプリームス - 2008年に発売されたコンピレーション・アルバム『Let The Music Play: Supreme Rarities: Motown Lost & Found (1960-1969)』に収録[53]。ティファニーによるカバー・バージョンと同様に、歌詞とタイトルが女性目線に変更されている。
^1960年代から1970年代に発売された楽譜集では「その時ハートは盗まれた」という邦題がつけられているが、東芝音楽工業はこの邦題を採用していない。ただし、1975年7月に新興楽譜出版社が発行した楽譜集『ビートルズ80曲集』198頁 - 199頁に「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」の楽譜が掲載されているが、タイトルとして「I Saw Her Standing There」に「その時ハートは盗まれた」が併記されている[2]。また、1966年7月にビクターから発売されたメリー・ウェルズ(英語版)のLP『くたばれ!ビートルズ』(原題:英語: LOVE SONGS TO THE BEATLES)に、この楽曲のカバーが収録された際に「その時ハートは盗まれた」という邦題が採用されている[3]。
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN0-517-57066-1
Lewisohn, Mark (2013). The Beatles: All These Years, Volume One - Tune In. Crown Archetype. ISBN978-1-4000-8305-3
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN1-84413-828-3
Marcus, Greil (1976). “The Beatles”. In Miller, Jim. The Rolling Stone Illustrated History of Rock and Roll. New York: Rolling Stone. p. 177-189. ISBN0-3947-3238-3
Margotin, Philippe; Guesdon, Jean-Michel (2014). All The Songs: The Story Behind Every Beatles Release. Running Press. ISBN1-6037-6371-6