「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ 」(Got to Get You into My Life )は、ビートルズ の楽曲である。1966年に発売された7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー 』のB面6曲目に収録された楽曲で、クレジットにはレノン=マッカートニー と表記されているが、主にポール・マッカートニー によって書かれた楽曲。ブラス を加えたサウンド[ 6] やサイケデリック体験 を思わせる歌詞が特徴となっていて、アレンジ面ではモータウン の影響を受けている。ビートルズ版と同年にマッカートニーがプロデュースのもと、クリフ・ベネット・アンド・ザ・レベル・ラウザーズ (英語版 ) によるカバー・バージョンが発売され、全英シングルチャート で最高位6位を記録した。
活動期にシングル・カットされることはなかったが、解散から6年後の1976年にアメリカでコンピレーション・アルバム『ロックン・ロール・ミュージック 』からの先行シングルとして発売され、Billboard Hot 100 で最高位7位を記録した。
作曲・レコーディング
レノン=マッカートニー 名義となっているが、主な作者はマッカートニーで、リード・ボーカルも歌っている。「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」のレコーディングは、1966年4月7日から6月17日にかけてEMIレコーディング・スタジオ で行われ、最初のテイクと最終バージョンとで大幅にアレンジが変更された。『リボルバー』のレコーディング・セッションの2日目に採り上げられた時は、アコースティック・ギター とハーモニウム を主体としたアレンジになっており、マッカートニーとジョン・レノン とジョージ・ハリスン がアカペラ で「I need your love」というフレーズを繰り返すセクションもあった[ 注釈 1] 。5月18日に外部ミュージシャンによるブラス・セクション の録音が行われた。ブラス・セクションは、楽器の近くにマイクを置いて録音し、リミッターがかけられている。なお、ビートルズの楽曲でブラス・セクションが含まれたのは、本作が初となる[ 12] 。なお、ブラス・セクションを加える際にファズ を効かせたギターでアレンジを試しており、発売された音源でもこのギターの音は残されている[ 14] 。
本作は、ブラス・セクションのファンファーレ から始まり、曲が始まってから7秒後にマッカートニーのリード・ボーカルが入り、1分4秒のところでコーラス部分に入り、曲のタイトルが歌われる。1分53秒のところで短いエレクトリック・ギター のソロ に入り、2分10秒のところでブラス・セクションのファンファーレが再び登場する。曲は、マッカートニーのボーカルがフェード・アウト して終わる。
マッカートニーは、1997年に出版された伝記『ポール・マッカートニー: メニー・イヤーズ・フロム・ナウ (英語版 ) 』で、「『ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ』は“人”ではなく、“マリファナ ”がテーマ」と明かしており、『アンカット (英語版 ) 』誌のインタビューでも同様の発言をしている[ 15] 。
リリース・評価
「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」は、1966年8月5日にパーロフォン より発売されたオリジナル・アルバム『リボルバー 』のB面6曲目に収録された。音楽学者のウォルター・エヴェレット (英語版 ) は、本作について「アルバムで最も人気のある楽曲」と説明しており、実際に1966年に発売されたクリフ・ベネット・アンド・ザ・レベル・ラウザーズ (英語版 ) によるカバー・バージョンは、全英シングルチャートで最高位6位を記録した。音楽評論家のティム・ライリー (英語版 ) は本作を「最も派生的な楽曲」と評する一方で、ビートルズがそのスタイルをうまく取り入れたことを示す本格的なR&B ナンバーとしている。特にライリーは、ハリスンのギターのブレイクから続く曲のエンディング部分を称賛している。また、1980年に『プレイボーイ 』誌のインタビューで、レノンは「ポールの曲で、彼のベストのうちの一つ。歌詞が良い。僕が書いたんじゃない。ポールだって努力すれば良い歌詞が書けるんだよ。その良い例がこの曲だ」と語っている。
ビートルズの解散から6年後の1976年にコンピレーション・アルバム『ロックン・ロール・ミュージック 』からの先行シングルとして、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オランダ、イタリア、オーストラリア、日本などの国で「ヘルター・スケルター 」をB面に収録したシングル盤が発売された。Billboard Hot 100 で最高位7位を記録した[ 19] 、1976年度年間ランキングでは78位[ 20] 。『キャッシュボックス 』誌では、最高位第3位を記録し[ 21] 、1976年度年間ランキングでは89位だった[ 22] 。
本作を発売した当時、ビートルズは『リボルバー』に収録された楽曲をコンサートで演奏しないと決めており、1966年8月のアメリカツアーをもってコンサート活動を終えたため、本作はビートルズ活動期にライブ演奏されなかった。1979年、ウイングス によるイギリスツアーでライブ初披露後、1989年から1990年のワールドツアーなどで演奏された。
チャート成績(ビートルズ版)
年間チャート
チャート (1976年)
順位
Canada Top Singles (RPM )[ 28]
28
US Billboard Hot 100[ 20]
78
US Cash Box [ 22]
89
認定(ビートルズ版)
クレジット
※出典
ビートルズ
外部ミュージシャン
カバー・バージョン
アース・ウィンド・アンド・ファイアーによるカバー
1978年7月にアース・ウィンド・アンド・ファイアー によるカバー・バージョンが、コロムビア・レコード からシングル盤として発売された[ 30] 。B面には「聖なる愛の詩」が収録された。アース・ウィンド・アンド・ファイアーによるカバー・バージョンは、1978年に公開された映画『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (英語版 ) 』で使用され、同作のサウンドトラック盤にも収録された。シングル盤は、全英シングルチャート で最高位33位[ 31] 、Billboard Hot 100 で最高位9位[ 32] 、Hot Soul Singles チャートで第1位を獲得した[ 33] 。また、アメリカレコード協会 からはゴールド認定を受けた。
評価
『デイリーニューズ 』誌は、アース・ウィンド・アンド・ファイアーによるカバー・バージョンを「非常にクール」と評し[ 34] 、オールミュージック は「最高のリメイク」と評した[ 35] 。また『キャッシュボックス 』誌は「革新的な演奏」と評している。
本作は、グラミー賞 の最優秀ポップ・パフォーマンス賞にノミネートされ、最優秀ヴォーカル入りインストゥルメンタル編曲賞を受賞した[ 36] 。
チャート成績(EW&F版)
認定(EW&F版)
その他のアーティストによるカバー
脚注
注釈
出典
^ Sullivan, James (2013年6月14日). “15 Songs You Didn’t Know Were About Drugs” . Rolling Stone . https://www.rollingstone.com/music/music-lists/15-songs-you-didnt-know-were-about-drugs-46810/the-beatles-got-to-get-you-into-my-life-92025/ 2019年6月9日 閲覧。
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参考文献
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外部リンク
UK盤・US盤共通
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