「ロール・オーバー・ベートーヴェン 」(Roll Over Beethoven )は、チャック・ベリー の楽曲である。1956年にチェス・レコード よりシングル盤として発売され、B面には「ドリフティング・ハート」 (Drifting Heart ) が収録された。楽曲の発表後、ビートルズ やエレクトリック・ライト・オーケストラ らによってカバーされた。『ローリング・ストーン 』誌の「The 500 Greatest Songs of All Time 」では第97位にランクインした。
歌詞・インスピレーション
『ローリング・ストーン 』誌や『オールミュージック 』のカブ・コーダによると、ベリーがポピュラー音楽 を演奏したい時に、姉のルーシーがいつも自宅のピアノ でクラシック音楽を演奏していたことが本作のインスピレーションとなっているとのこと[ 3] 。本作は、姉にピアノを独占されていた悔しさを歌った楽曲で、ベリーは自伝の中で「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ではなく、ルーシーに文句を言いたかったんだ」と語っている[ 4] 。
歌詞の中には、ベートーヴェンと同じくクラシック作曲家であるピョートル・チャイコフスキー の名前が登場している。歌詞中の「Don't you step on my blue suede shoes (俺のブルー・スウェード・シューズを踏むなよ)」というフレーズは、カール・パーキンス の「ブルー・スエード・シューズ 」からの引用で、「Reel and rock 」というフレーズは、かねてよりブルースで使用されているもの[ 4] 。
ヒューイ・"ピアノ"・スミス は、この曲の歌詞の中の一節、「I got the rocking pneumonia. I need a shot of rhythm-and-blues」 (俺はロッキン肺炎にかかってしまった。リズム・アンド・ブルースの注射を打たなければ)にインスピレーションを受け、翌1957年に「ロッキング・ニューモニア・アンド・ザ・ブギウギ・フルー 」をリリースし、ヒットさせている[ 5] 。
レコーディング
「ロール・オーバー・ベートーヴェン」のレコーディングは、1956年4月16日にイリノイ州シカゴで行なわれ、プロデュースはレナード・チェスとフィル・チェスが手がけた。
演奏者は、以下のようになっている。
チャート成績(チャック・ベリー版)
リリース・文化的影響
「ロール・オーバー・ベートーヴェン」は、1956年5月にチェス・レコード からシングル盤として発売され、B面には「ドリフティング・ハート」が収録された。シングル盤は、Billboard Top 100 では最高位29位、R&Bチャートでは最高位7位を記録した[ 8] 。その後、『ツイスト (英語版 ) 』や『ザ・チェス・ボックス (英語版 ) 』などのコンピレーション・アルバムに収録された。
『ローリング・ストーン 』誌の「The 500 Greatest Songs of All Time 」では第97位にランクインし、同誌は「新しい時代を宣言する究極のロックンロール・コールとなった」と評している。
カバー・バージョン
「ロール・オーバー・ベートーヴェン」は、ポピュラー音楽 の中で最も広くカバーされている楽曲の1つであり、コーダは「ロックンロール・バンドの定番」としている[ 3] 。
ビートルズ
「ロール・オーバー・ベートーヴェン」は、ビートルズ のメンバーのお気に入りの楽曲の1つで、活動初期より演奏していた。1963年7月30日にEMIレコーディング・スタジオ のスタジオ2で、「ロール・オーバー・ベートーヴェン」のカバー・バージョンのレコーディングが行なわれ、ジョージ・ハリスン がボーカル を務めた。5テイク録音した後、ギターソロ、ハンドクラップ (英語版 ) 、ハリスンの2本目のリード・ボーカルを2回オーバー・ダビング した。同日に録音したテイクのうち、テイク8はメンバー全員で曲の最後のコードを演奏しているところを編集したものとなっている。このカバー・バージョンは、イギリスでは同年に発売された2作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ 』に収録され、アメリカでは1964年4月10日に発売された『ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム 』にオープニング・トラックとして収録された。
イギリスやアメリカではシングル・カットされていないが、カナダではキャピトル・レコード から発売されたシングル盤『プリーズ・ミスター・ポストマン 』のB面に収録され、アメリカのBillboard Hot 100 で最高位68位[ 15] 、Cash Box Singles チャートで最高位30位[ 16] 、スウェーデンのKvallstoppen チャートで最高位11位を記録した[ 17] 。日本ではシングル盤『ツイスト・アンド・シャウト 』のB面に収録された。
1994年に発売された『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC 』には、1964年2月28日にBBCラジオ 『From Us To Say The Beatles』用に録音され、同年3月30日に放送された演奏が収録されている[ 18] 。また、1977年に発売された『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ! 』には1964年8月23日のハリウッド・ボウル 公演でのライブ音源[ 19] 、1995年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー1 』には1963年のストックホルム公演でのライブ音源が収録されている。
クレジット(ビートルズ版)
※出典
チャート成績(ビートルズ版)
エレクトリック・ライト・オーケストラ
エレクトリック・ライト・オーケストラ は、1973年に発売したオリジナル・アルバム『ELO2 』に、「ロール・オーバー・ベートーヴェン」のカバー・バージョンを収録した。エレクトリック・ライト・オーケストラによるカバー・バージョンは、チャック・ベリーの原曲のトレードマークとなっている12小節のロックンロール調のリフや、ベートーヴェンの「交響曲第5番 」の冒頭部分が盛り込まれている。1973年1月にバンドの2作目のシングルとして発売され、全英シングルチャート で最高位6位[ 27] 、Billboard Hot 100 で最高位42位[ 28] を記録した。
シカゴのAMラジオ放送局であるWLS では複数回放送されており、同局は「ロール・オーバー・ベートーヴェン」を1973年に89番目に人気のあるヒット曲としてランク付けし[ 29] 、2週連続で8位を記録した[ 30] 。競合局となるWMVP では6位を記録した[ 31] 。
チャート成績(エレクトリック・ライト・オーケストラ版)
その他
脚注
出典
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^ a b 小出斉 (2017年8月25日). “ロックンロールの大定番『ロール・オーヴァー・ベートーヴェン』の意味を歌詞から紐解く!|『意味も知らずにロックンロールを歌うな!?』より ”. リットーミュージック . 2021年7月1日 閲覧。
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参考文献
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外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
UK盤 (パーロフォン /アップル )
US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1970年 1976年
その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1968年 1969年 1970年 1972年 1978年 1981年
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