この項目では、ビートルズ の楽曲について説明しています。
「ノルウェーの森 」(ノルウェーのもり、原題 : Norwegian Wood (This Bird Has Flown) )は、ビートルズ の楽曲である。本作は1965年12月3日に発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル 』のA面2曲目に収録された楽曲で、クレジットはレノン=マッカートニー となっているが、主にジョン・レノン によって書かれた楽曲で、一部ポール・マッカートニー によって書かれた。
リード・ボーカル およびアコースティック・ギターはレノン、バッキング・ボーカル はマッカートニーが担当。本作ではリードギター を担当しているジョージ・ハリスン が演奏するシタール が特徴となっており、レコード化されたポップ・ミュージック で初めてシタールが使用された例とされている。
オーストラリアでは「ひとりぼっちのあいつ 」との両A面シングルとして発売され、同国の音楽チャートで2週連続で第1位を獲得した[ 5] 。
『ローリング・ストーン 』誌が発表した「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500 」(2010年版)では第83位にランクされている[ 6] 。
背景・構成
歌詞は、冒頭でほのめかされているように、レノンが当時の妻シンシア に気付かれないように、他の女性と関係を持っていたことを表している。レノン自身が相手の女性について明かしたことはないが、作家のフィリップ・ノーマン (英語版 ) はレノンの親友でジャーナリストのモーリーン・クリーヴ (英語版 ) 、またはサニー・ドレイン (英語版 ) のどちらかであると推測している。タイトルについてマッカートニーは、ロンドンで当時流行していた安物の松材を使用した内装を皮肉ったものと説明している。
本作は、レノンが1965年1月に当時の妻シンシアとジョージ・マーティン と共にアルプス山脈 のサンモリッツ へ休暇で訪れた際に書きはじめられたもので、翌日に6/8拍子のアコースティック・ナンバーという形でアレンジが決定した。なお、1970年のインタビューでレノンはミドルエイトと最後の「So I lit a fire (だから私は火をつけた)」というフレーズが、マッカートニーによって書かれたものであることを明かした[ 9] 。マッカートニーの解説によれば、最後のフレーズは「風呂で寝ることになってしまった復讐をするために、その場所を燃やしてしまうことにした」とのこと。
1965年4月5日から6日にかけて、ビートルズ主演の映画『ヘルプ!4人はアイドル 』におけるインドのレストランのシーンをトゥイッケナム・フィルム・スタジオ (英語版 ) で撮影している際に、ハリスンはインドのミュージシャンが演奏していたシタール に興味を持った。それをきっかけに本作でシタールが導入され、発売されたポップ・ミュージック で初めてシタールが使用された例となった[ 注 1] 。その後シタールに対する興味が増したハリスンは、シタール奏者のラヴィ・シャンカル に弟子入りしてインドの哲学とシタールを習得し[ 13] 、「ラヴ・ユー・トゥ 」や「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー 」などの楽曲を制作した[ 14] 。また、ビートルズ以降にもローリング・ストーンズ 「黒くぬれ! 」やポール・バターフィールド・ブルース・バンド 「イースト・ウェスト (英語版 ) 」などの楽曲で、シタールが使われた。
レコーディング
『ラバー・ソウル』のレコーディング・セッション初日にあたる1965年10月12日に、「ノルウェーの森」の初期バージョンがEMIレコーディング・スタジオ でレコーディングされた。当時の仮タイトルは「This Bird Has Flown 」で、リハーサルが行われた後に、2本の12弦 アコースティック・ギター 、ベース 、シンバル という編成リズム・トラックが1テイクで録音された。このリズム・トラックに対してハリスンは、シタールのパートを加えた。この時のテイクでは、最終リリース版よりもドローン が強調されたアレンジとなっている。その後レノンのリード・ボーカル が録音されたが、バンドはアレンジに満足せず、このアレンジは破棄されることとなった。1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2 』には、破棄されたアレンジ(テイク2)が収録されている[ 19] 。
10月21日にキーをDメジャー からEメジャー に上げ[ 注 2] 、少々激しいアレンジでリメイクを開始した。しかし、アレンジに満足せず、キーはそのままに以前のアレンジが採用された。3テイクの頃にはタイトルが「Norwegian Wood」に変更されていた。
なお、本作のレコーディング・エンジニア であるノーマン・スミス は、シタール録音時にレベルのピークが読めないことから苦労したと語っている。
タイトル
原題の"Norwegian Wood "が何を意味するか歌詞中に明確に描かれていないため、「ノルウェーの森」や「ノルウェー製の家具」などと訳されている。
大津栄一郎 によれば、"wood "という単語は、"the wood "と定冠詞がつく場合以外の単数では森を意味しないという。「森」は語学的におかしく、「ノルウェイ材の部屋」のような訳の方が正しいのではないかとしている。ただし一方で、「ノルウェーの森」の方がタイトルとしてははるかに良いということも述べている。この説はアルバート・ゴールドマンによるレノンの伝記にも登場する。
また、村上春樹 は、「ジョージ・ハリスンのマネージメントをしているオフィスに勤めているあるアメリカ人女性から『本人から聞いた話』」として、"Knowing she would "(オレは彼女がそうすると(俗的に言えば「ヤらせてくれる」と)知って(思って)いた)という言葉の語呂合わせとして、"Norwegian Wood "とした、という説を紹介している。
「ノルウェーの森」という邦題は、当時東芝音楽工業 でビートルズ担当のディレクターだった高嶋弘之 が付けた[ 27] 。高嶋は知っている単語で適当に歌詞を訳してから曲を聴き、自分で閃いたところでタイトルを付けていた[ 28] 。ハリスンが弾くシタールと、レノンの靄がかっているような物憂げな声に"wood"なので、なんの疑いもなく「ノルウェーの森」に決めたという[ 29] 。
なお、日本での発売当初の邦題は「ノーウェジアン・ウッド 」[ 30] で、以降の作品では「ノルウェーの森 (ノーウェジアン・ウッド) 」[ 31] や「ノーウェジアン・ウッド (ノルウェーの森) 」[ 32] と表記されている。
リリースや文化的影響など
「ノルウェーの森」は、1965年12月3日に発売されたオリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』の収録曲として発売された。本作はロックバンドがシタールをはじめとしたインド楽器を使用したレコーディングを行った初の例となった。イギリスやアメリカはシングル・カットされなかったが、オーストラリアでは「ひとりぼっちのあいつ 」との両A面シングルとして発売され、同国の音楽チャートで2週連続で第1位を獲得した[ 5] 。また、本作は解散後に発売された 『ザ・ビートルズ1962年〜1966年 』、『ラヴ・ソングス 』、『ビートルズ バラード・ベスト20 』、『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス 』などのコンピレーション・アルバムにも収録された。
『ピッチフォーク 』のスコット・プラゲンフーフは、「ガール 」と共にレノンのソングライターとしての成熟度を示す楽曲の1つとして挙げている[ 36] 。
本作は一部の文献でラーガ・ロック の祖とされている[ 37] ほか、ワールドミュージック における重要な作品の1つとされている[ 39] 。東洋の音楽性を取り入れた本作の作曲について興味を持ったローリング・ストーンズ のブライアン・ジョーンズ は、1966年に発売された楽曲「黒くぬれ! 」でシタールを演奏した。
2006年に『モジョ 』誌が発表した「The 101 Greatest Beatles Songs 」では第19位、2010年に『ローリング・ストーン 』誌が発表した「The 500 Greatest Songs of All Time 」では第83位[ 6] にランクインした。
クレジット
※出典
カバー・バージョン
脚注
注釈
^ ビートルズ以前にはヤードバーズ が「ハートせつなく (英語版 ) 」のレコーディングでシタールを使用している[ 12] が、リリース時にシタールのパートが消去された。シタールが入ったアレンジは1984年に発表された。
^ イアン・マクドナルド (英語版 ) は、本作はDメジャーのコードを中心に構成されていることから、カポタスト を使用して録音した可能性と、最終ミックスでテープの回転速度を速めた可能性を提示している。
出典
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外部リンク
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