ビートルズは、1963年よりクリスマス・レコードの録音を開始し、毎年12月にファンクラブの会員に無料で配布していた[3]。初期に配布されたレコードにはファンへのメッセージ、後期に配布されたレコードには寸劇や音楽が収録されていた[4]。『ローリング・ストーン』誌のジョージ・ランタグが「ビートルズのクリスマス・レコードの頂点」と評する1967年のクリスマス・レコード『Christmas Time Is Here Again』は、これまでで最も大がかりなクリスマス・メッセージとなっており[5]、ビートルズは録音に向けて事前に台本を用意していた[6]。レコードの内容は、ラジオ番組やテレビ番組へのオマージュとなっていて[6]、BBCラジオの番組のオーディションを受ける「The Ravellers」という架空のバンドを中心とした物語になっている[7]。寸劇には、タップダンスや架空の広告、バンドがピアノを弾きながら「Plenty of Jam Jars」について歌う場面が含まれている[6]。レコードの最後には、各メンバーとプロデューサーのジョージ・マーティンによる[5]ファンに向けた季節の挨拶と、ジョン・レノンによる「When Christmas Time Is Over」という詩が含まれている[7]。作家のジョン・C・ウィンは、この作品について「スコットランドのクリスマスの詩」[8]と表現し、ケネス・ウォマック(英語版)は「ジョイスの…ナンセンスな詩」と呼んでいる[7]。
台本に加え、ビートルズはクリスマスソング「クリスマス・タイム」を書いた[6]。本作は、1967年の初期に作曲された「フライング」と同じく[9]、ビートルズの公式発表曲では数少ないメンバー4人の名前がクレジットに含まれている楽曲となっている[7][注釈 1]。Dメジャーで演奏される本作は、ブルースをベースとした構成になっており[14]、9つのヴァースの後に、インストゥルメンタルのヴァースが繰り返される[8]。ウォマックは、本作の「コミカルな精神」と1967年夏に録音された「ユー・ノウ・マイ・ネーム」の類似性、BBC Radio 1のボンゾ・ドッグ・ドゥー・ダー・バンドからの影響を受けた可能性を指摘している[7]。作家のスティーブ・ターナーは、本作について1966年に発売された「イエロー・サブマリン」から始まった子供向けの歌への関心を示していて、1940年代のリヴァプールへの懐古とサイケデリック・ミュージックの子供向けの性質の組み合わせを反映したものとしている[15]。ランタグは、「単なる聖日のマントラに過ぎないが、ビートルズは全力でのコミットメントとニュー・シングル『ハロー・グッドバイ』を思わせる巧妙なアレンジでそれを売りとしている」と評している[5]。
1967年12月15日に配布されたクリスマス・レコード『Christmas Time Is Here Again』は、本作のタイトルをわずかに変更したものとなっている[24]。これまでのビートルズのクリスマス・レコードと同じく、イギリスのファンには7インチ盤、アメリカのファンにはポストカードが配布された[7]。なお、本作の完全版は公式には発表されていない[11]。1976年4月23日に6分42秒のフル・バージョンのモノラル・ミックスが作成された。このミックスは元々EMIの幹部しか聴くことができなかったが、1983年に海賊盤で初めて流通した[25]。エメリックは、1983年にビートルズの未発表曲やアウトテイクなどを集めた『Sessions』のために再び本作のリミックスを行なった[23]。エメリックは本作のステレオ・ミックスを作成し、曲を1分8秒に短くしたうえで「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」とのメドレーとしてクロスフェードするように編集を施した。これは、1984年のクリスマス頃にアルバムからの先行シングル『リーヴ・マイ・キトゥン・アローン』のB面曲として発売される予定だった[25]。最終的にいずれも発売されることはなかったが、1985年と1986年にそれぞれ2つのバージョンが海賊盤として流通し始めた[26]。
アップル・レコードは、CDシングル『フリー・アズ・ア・バード』の4曲目に本作を収録し、1995年12月4日にイギリスで、12月12日にアメリカで発売した[23][27]。ウォマックは、このリリースにあたりマーティンがリミックスを行なったとしているが[23] 、ウィンは『Sessions』のために作られたステレオ・ミックスから、最初の2分19秒を編集した音源としている[26]。ルイソンによるライナー・ノーツでは、プロデューサーとしてマーティン、「エンジニア / リミックス・エンジニア」としてエメリックの名がクレジットされている[12]。同収録テイクは、1966年12月6日に録音された『Pantomime: Everywhere It's Christmas』に収録のメンバーの挨拶[28]が流れた後、「オールド・ラング・サイン」を伴奏にしたレノンによるナンセンス詩「When Christmas Time Is Over」の朗読で終わる[29]。
^1967年に配布されたレコードには、作詞作曲者のクレジットはない[10]。本作の作詞作曲者のクレジットについて、イアン・マクドナルド(英語版)は「Lennon-McCartney-Harrison-Starkey」[11]と表記している一方で、ウォマックは「Harrison-Lennon-McCartney-Starr」[7]と表記している。1995年にシングル『フリー・アズ・ア・バード』に付属のマーク・ルイソン(英語版)によるライナー・ノーツでは、「John Lennon, Paul McCartney, George Harrison and Ringo Starr」と表記されている[12]。また、リンゴ・スターによるカバー・バージョンが収録されている1999年に発売されたアルバム『アイ・ウォナ・ビー・サンタ・クロース〜リンゴのクリスマス・アルバム(英語版)』では、「George Harrison, John Lennon, Paul McCartney, Richard Starkey」[13]という表記になっている。