「アイ・アム・ザ・ウォルラス」(I Am the Walrus)は、ビートルズの楽曲である。1967年11月にシングル盤『ハロー・グッドバイ』のB面曲として発売された。ジョン・レノンによって書かれた楽曲で、作曲者のクレジットはレノン=マッカートニー名義となっている。なお、EP『マジカル・ミステリー・ツアー』のブックレットには「"No you're NOT!" Said Little Nicola」というサブタイトルがつけられている[注釈 2]。同年12月に公開されたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』に演奏シーンが収められ、同名のサウンドトラックEP盤(英国)、LPアルバム(米国)に収録。映画ではビートルズのメンバーがサイケデリックな格好をしたり、セイウチをはじめとした動物の着ぐるみを着て演奏するシーンで使用されている。
1967年12月の全英シングルチャートで、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」が収録されたシングル盤『ハロー・グッドバイ』とEP『マジカル・ミステリー・ツアー』の2作品が上位2位を独占したため、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」は同時に1位と2位を獲得した楽曲となった。なお、歌詞に出てくる「You've been a naughty girl, you've let your knickers down(まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。)」というフレーズが問題視されたことにより、BBCより放送禁止の措置を受けた。
背景・曲の構成
音楽評論家のイアン・マクドナルド(英語版)は、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のモデルとなったのは、1967年夏に発売されたヒットを記録したプロコル・ハルムの「青い影」と推測している。同作はレノンのお気に入りの楽曲の1つであった[2]。ある朝、レノンはパトロールカーのサイレンから着想を得て「Mister city policeman」という楽曲を書き始め、他の未完成となっていた楽曲を融合して完成させた[3]。歌詞には「Lucy in the sky」と、本作と同じくレノン作の「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」を思わせるフレーズも含まれている[4]。
Yellow matter custard, green slop pie,
All mixed together with a dead dog's eye,
Slap it on a butty, ten foot thick,
Then wash it all down with a cup of cold sick.[7]
という、過去に作った歌詞からの引用であるとレノンの友人であるピート・ショットン(英語版)は語っている。なお、「You've been a naughty girl, you've let your knickers down(まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。)」というフレーズが問題視され、BBCでは放送禁止となった[8][9]。
1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで、レノンは本作について「最初の部分はある週末にトリップした時に書いて、次の部分は次の週末にトリップした時に書いた。そしてヨーコと出会った後に完成した。一部はハレ・クリシュナについての言及。クリシュナに興味を持っていた人が多かったんだ。「Elementary penguin(ペンギン聖体)」というのは「ハレ・クリシュナ」のような偶像崇拝を簡素化した表現さ。当時はディランの影響もあって、いろんな意味に取れる表現を使っていたよ。あと『不思議の国のアリス』の「セイウチと大工」は僕にとってはとても美しい詩だった。ルイス・キャロルが資本家や社会構造について言及していたとは予想だにしてなかったけどね。でも後になって実はセイウチが悪人で、大工が善人だということに気がついて「しまった!」と思った。僕は「セイウチ」ではなく「大工」になるべきだった。'I Am The Carpenter'(俺は大工)でもそんなに違和感はないだろう?」と語っている[11]。
9月27日にスタジオ1にて、ヴァイオリン、チェロ、ホルン、クラリネットをはじめとしたオーケストラの演奏が加えられた[15]。アレンジはジョージ・マーティンが担当。なお、マッカートニーはオーケストレーションについて多少アイデアを提出したとされている。翌日には、マイク・サムス(英語版)を中心とした16人の合唱団がレコーディングに参加し[15]、「Ho-ho-ho, hee-hee-hee, ha-ha-ha」、「oompah, oompah, stick it up your jumper!」、「everybody's got one」というコーラスが録音された[16]。
Oswald: (3:52) Slave, thou hast slain me. Villain, take my purse.
If ever thou wilt thrive, (4:02) bury my body,
And give the (4:05) letters which thou find'st about me
To (4:08) Edmund, Earl of Gloucester; (4:10) seek him out
Upon the British party. O, (4:14) untimely Death! Edgar: (4:23) I know thee well: a (4:25) serviceable villain;
As duteous to the (4:27) vices of thy mistress
As badness would desire. Gloucester: What, is he dead? Edgar: (4:31) Sit you down father, rest you.
なお、モノラルのミキシングを行った際にその場で流れていたBBCのラジオ音声をマルチトラック・テープではなく、モノラル・マスターにオーバー・ダビングしたために、ステレオ・ミックスの「Sitting in an English garden」という歌詞から先の部分はモノラル・ミックスを疑似ステレオ化されている[22][注釈 4]。
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd rev. ed.). Chicago, IL: Chicago Review Press. ISBN978-1-55652-733-3
Russell, Jeff P. (2006). The Beatles Complete Discography. Universe. ISBN0-7893-1373-1
Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN0-312-25464-4
Womack, Kenneth (2018). Sound Pictures: The Life of Beatles Producer George Martin, The Later Years, 1966-2016. Chicago Review Press. ISBN0-9127-7777-X