「消えた恋 」(きえたこい、原題 : What Goes On )は、ビートルズ の楽曲である。1965年に発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル 』に収録された。アメリカでキャピトル・レコードから発売された同名のアルバムには収録されず、翌年にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ 』のB面曲として発売された後、『イエスタデイ・アンド・トゥデイ 』に収録された。作曲者名はレノン=マッカートニー =スターキー とクレジットされている。Billboard Hot 100 では最高位81位を記録[ 3] 。
背景
ジョン・レノン が「消えた恋」を書いたのは、1959年初頭のメンローヴ・アベニュー251番地とされている。本作の初期バージョンは、バディ・ホリー の影響を大きく受けており、『ラバー・ソウル』に収録された完成バージョンとはコーラス を除き大きく異なっている。
ビートルズは、1963年3月に本作を録音しかけたものの、最終的には1965年11月の『ラバー・ソウル』のためのレコーディング・セッションまで録音されることはなかった。楽曲について、レノンは「たしかポールの手を借りてミドルエイトを新しくして、リンゴに歌ってもらおうと思って復活させた」と語っている。作家のバリー・マイルズ (英語版 ) は、ミドルエイトを書いたのはマッカートニーとスターであると主張している。本作には正式なミドルエイトが存在せず、1つのコーラスと1つのヴァースが繋がっていて、音楽評論家のイアン・マクドナルド (英語版 ) は、この長いパートはマッカートニーによって書かれたものという考えを示している。本作は、スターがビートルズの楽曲で初めて作曲と作詞にも参加した楽曲だが、楽曲への貢献についてスターは「5個くらい言葉を考えた。僕がやったのはそれだけ」と語っている。マクドナルドと音楽学者のウォルター・エヴェレット (英語版 ) は、スターが書いたのは「Waiting for the tides of time 」という歌詞であると述べ、マクドナルドはこのフレーズを「ディラン 風」としている。
レコーディング
1963年3月
1963年3月5日の「フロム・ミー・トゥ・ユー 」と「サンキュー・ガール 」のセッション中、ビートルズは「消えた恋」と「ワン・アフター・909 [ 注釈 1] 」の録音を検討していた。あと1曲しか録音できないという状況下で、ビートルズは「ワン・アフター・909」を選択。レノンとマッカートニーは、同年に本作のデモ音源を録音したが、1965年にスターのボーカル曲として録音されるまで使用されることはなかった[ 12] 。
1965年11月
ニール・アスピノール は、1965年にマッカートニーが自宅でマルチトラックのデモ音源を制作したことについて「ポールがリンゴに『消えた恋』を聴かせようとすることを目的に、マルチトラックのデモ音源を作った。デモ音源にはポールの歌、リードギター 、ベース 、ドラム が入っていた。完成したテープを聴いたリンゴは、レコーディング・セッションの前に自分のアイデアを加えていた」と振り返っている[ 13] 。
『ラバー・ソウル』に収録の完成バージョンは、1965年11月4日の深夜に行なわれたセッションで、1テイクで録音した後にオーバー・ダビング を加えたもの。ジョージ・マーティン がプロデュースを手がけ、エンジニア のノーマン・スミス 、ケン・スコット (英語版 ) 、グラハム・プラットがアシスタントを務めた。エヴェレットは、レノンはギターのパートについて「スティーヴ・クロッパー の奏法」としている。コーラスに入る前に、スターが「Tell me why 」と歌った後に、レノンが「We already told you why! 」と返しているが、これは1964年に発表された楽曲「テル・ミー・ホワイ 」に掛けたもの。
1965年11月9日、スミスとジェリー・ボーイズのアシストのもと、マーティンは本作のモノラル・ミックスとステレオ・ミックスを作成。モノラル・ミックスの最後の2小節では、ハリスンのギターがミュートされている。これについてエヴェレットは、エンジニアがボーカル・トラックをミュートするつもりが、ハリスンのギターが同じトラックに入っていることを忘れていたことにより生じたものではないかと指摘している。
リリース・評価
「消えた恋」は、1965年12月3日にイギリスで発売された『ラバー・ソウル』に収録された。キャピトル・レコード は、本作を1966年2月21日にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ 』のB面曲として発売した。B面曲でありながら、Billboard Hot 100 で最高位81位を記録[ 3] 。キャピトル・レコードは、『ラバー・ソウル』のアメリカ盤から本作をカットし、その代わりに1966年6月20日に発売した『イエスタデイ・アンド・トゥデイ 』に収録した。
ビートルズの伝記作家であるケネス・ウォマック (英語版 ) は、本作について「間違いなくアルバムの中で最も弱く、不調和な曲」と断言している[ 19] 。マクドナルドは、「『アクト・ナチュラリー 』と同じく、だらだらとしたカントリー&ウェスタン の雰囲気を持っている」と述べている。『オールミュージック 』のリッチー・アンターバーガー (英語版 ) は、「軽快なカントリー&ウェスタン風味の作品」とし、ハリスンのギター演奏について「ハリスンはカール・パーキンス の最高の弟子」と評している[ 20] 。エヴェレットは、マッカートニーのベースについて「ソウルフル」と表現している。
クレジット
※出典
カバー・バージョン
脚注
注釈
^ 当時のタイトルは「The One After 909」。
出典
^ Hamelman, Steven L. (2004). But is it Garbage?: On Rock and Trash . University of Georgia Press. p. 10. ISBN 0-8203-2587-2 . https://books.google.co.jp/books?id=9jkEJn45tCsC&pg=PA10&dq=what+goes+on+beatles+rockabilly&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiOkqWd_M7sAhXLBKYKHWAkB64Q6AEwBnoECAYQAg#v=onepage&q=what%20goes%20on%20beatles%20rockabilly&f=false
^ a b c “The Hot 100 Chart ”. Billboard (1966年3月19日). 2020年10月25日 閲覧。
^ Marinucci, Steve (2017年9月21日). “Unreleased 1963 Beatles Demo Up for Sale on eBay: Listen to a Snippet ”. Billboard. 2020年10月25日 閲覧。
^ Aspinall 1966 , p. 6, quoted in Everett 2001 , p. 329
^ Womack 2007 , p. 120, quoted in Decker 2009 , p. 84
^ Unterberger, Richie. What Goes On - The Beatles | Song Info - オールミュージック . 2020年10月25日 閲覧。
^ Roach, Pemberton. Beatle Country - The Charles River Valley Boys | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2021年9月19日 閲覧。
^ Change of Scenery - The Seldom Scene | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2021年9月19日 閲覧。
^ This Bird Has Flown - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2021年9月19日 閲覧。
^ “Various Artists This Bird Has Flown: A Tribute to the Beatles' Rubber Soul [Razor & Tie; 2005] ”. Pitchfork (24 October 2005). 12 July 2007時点のオリジナル よりアーカイブ。12 February 2021 閲覧。
参考文献
Aspinall, Neil (April 1966). “Neil's Column”. The Beatles Monthly Book (33).
Decker, James M. (2009). “"Try thinking more": Rubber Soul and the Beatles' transformation of pop”. In Womack, Kenneth . The Cambridge Companion to the Beatles . Cambridge: Cambridge University Press. pp. 75-89. ISBN 978-0-521-68976-2
Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver through the Anthology . Oxford and New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-1951-2941-0
Everett, Walter (2001). The Beatles as Musicians: The Quarry Men Through Rubber Soul . US: Oxford University Press. ISBN 0-19-514105-9 . https://archive.org/details/beatlesasmusicia00ever
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions . New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
Lewisohn, Mark (2013). The Beatles – All These Years, Volume One: Tune In . Crown Archetype. ISBN 978-1-4000-8305-3
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd revised ed.). London: Pimlico. ISBN 978-1-8441-3828-9
Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now . New York: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6
Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono . New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4
Womack, Kenneth (2007). Long and Winding Roads: The Evolving Artistry of the Beatles . New York: Continuum. ISBN 0-8264-1746-9
Womack, Kenneth (2009). “Beatles Discography, 1962–1970”. The Cambridge Companion to the Beatles . Cambridge: Cambridge University Press. pp. 286-293
外部リンク
UK盤・US盤共通
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US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
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その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
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