「ヘイ・ブルドッグ 」(Hey Bulldog )は、ビートルズ の楽曲である。1969年に発売された10作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『イエロー・サブマリン 』に収録された。レノン=マッカートニー の作品で、ポール・マッカートニー の協力のもとで、ジョン・レノン が書いた楽曲。「レディ・マドンナ 」のミュージック・ビデオ の撮影中にレコーディングされた楽曲で、同作と同じくピアノ のリフを主体とした楽曲となっている。
イギリスやアメリカでは、シングルとして発売されることはなかったが、ヨーロッパではビートルズ解散後の1972年にシングル盤『オール・トゥゲザー・ナウ 』のB面曲としてリカットされた。
背景
本作のレコーディングが行われる数日前、マッカートニーは吠え声のような効果音が入ったポール・ジョーンズ の楽曲「The Dog Presides 」でドラム を担当した。その後のビートルズのレコーディング中に、マッカートニーは唐突に犬の吠える声を真似しだした[ 6] 。本作は当初「Hey Bullfrog 」というタイトルで作曲され、リハーサルが行なわれていたが、レノンとマッカートニーが犬の吠え声を真似たコーラスを入れることになり、「Hey Bulldog 」に改題することとなった。
当初映画『イエロー・サブマリン』のプロジェクトについて、メンバーは良く思っていなかった。その後作品を気に入ったことにより意識を改め、制作側から新曲を求められたことから、本作を手早く仕上げることとなった。本作についてレノンは、「良い音のレコードだけど、何の意味もない」と語っている。
「She Can Talk To Me 」と題されたデモ・テイクが存在しており、このテイクは半音階の上昇を模倣したコーラス で構成されている。
レノンが書いた元の歌詞では「measured out in news 」となっていたが、マッカートニーは誤って「measured out in you 」と歌ってしまった。レノンはこれを気に入り、歌詞を変更した。
レコーディング
「ヘイ・ブルドッグ」のレコーディングは、1968年2月11日にEMIレコーディング・スタジオ のスタジオ3で行なわれ、インドへ出発する前にレコーディングされた最後の楽曲となった。この日は「レディ・マドンナ」のプロモーション・ビデオ の撮影が計画されていたため、カメラで撮影されながらのレコーディングとなった。
レノンがピアノ 、マッカートニーがタンバリン 、ジョージ・ハリスン がリズムギター 、リンゴ・スター がドラム という編成でベーシック・トラックが録音され、10テイクで完成となった。トラック2にマッカートニーがベース 、ハリスンがファズ を効かせたギターで弾いたダブルトラック のメインのリフを録音し、スターはオフビートで叩いたスネアドラム をコーラス とコーダ に追加した。続いてレノンとマッカートニーがスタンドマイクを共有して、レノンの手書きの歌詞を読みながら、メインのボーカル・トラックを作成。なお、マッカートニーは、レノンのボーカル・パート(A )より下のキーで歌っている。
レコーディング時の様子はトニー・ブラムウェルによって撮影されていたが、最後のオーバー・ダビング時にはカメラが止められていた。この時にレノンがボーカルのリフレインをダブルトラックで録音したほか、ハリスンのギブソン・SGスタンダード を借りてギターソロを録音したとされている。
同日の夜にテープの回転速度を速めたモノラル・ミックスが作成され、アニメ映画用にキング・フィーチャーズ・シンジケート (英語版 ) に送られた。10月29日にサウンドトラック・アルバム用にステレオ・ミックスが作成された。なお、イギリスではサウンドトラック・アルバム『イエロー・サブマリン』のモノラル盤が発売されているが、同盤に収録されたのはステレオ・ミックスをモノラル化した音源となっている。
リリース・評価
1968年に公開されたビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン 』では、ビートルズがブルードッグを茶化すシーンで使用されている。しかし、アメリカでの公開時には本作が使用されたシーンはカットされた。その後、ソフト化の際に本作のシーンが復活した。
アメリカで1969年1月13日にアップル・レコード から『イエロー・サブマリン』が発売され、「ヘイ・ブルドッグ」は「オール・トゥゲザー・ナウ 」と「イッツ・オール・トゥ・マッチ 」の間の4曲目に収録された。イギリスではこの4日後に発売された。オールミュージック のトム・マギニスは「ポール・マッカートニーの『レディ・マドンナ』と肩を並べるほどの力作」[ 13] 、リッチー・アンターバーガー (英語版 ) は「レノンの悪趣味な一面も見られるが、素晴らしいビートと軸となるピアノのリフ、そして全体的に素晴らしい演奏で構成されている」[ 14] と評している。
1999年に本作のレコーディングの様子を撮影した映像を再編集して、本作のプロモーション・フィルムが制作され[ 15] 、2015年に発売された『ザ・ビートルズ 1+ 』に収録された。また、1999年に発売された『イエロー・サブマリン 〜ソングトラック〜 』には、エコーがかけられ、リード・ボーカルとベースのトラックの定位が変更されたリミックス・バージョンが収録された。
2006年に発売された『LOVE 』に収録の「レディ・マドンナ」で、本作のギターリフが使用された[ 16] 。
『ローリング・ストーン 』誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」で第81位にランクインした[ 6] 。
クレジット
※出典
カバー・バージョン
脚注
出典
^ DeRogatis, Jim (2003). Turn On Your Mind: Four Decades of Great Psychedelic Rock . Milwaukie, Michigan: Hal Leonard. p. 48. ISBN 0-634-05548-8
^ Terence J. O'Grady (1 May 1983). The Beatles, a musical evolution . Twayne. p. 149. ISBN 978-0-8057-9453-3 . https://books.google.com/books?id=n33uAAAAMAAJ . "Finally, Lennon's "Hey Bulldog," also recorded in January, 1968, is a rhythm and blues-influenced pop-rock song..."
^ Mojo . 150-153. EMAP Performance Limited. (2006). https://books.google.com/books?id=OXNLAAAAYAAJ
^ Neaverson, Bob (March 1999). The Beatles Movies . Cassell. p. 94. ISBN 9780304337972 . https://books.google.co.uk/books?redir_esc=y&id=rn4IAQAAMAAJ&focus=searchwithinvolume&q=acid+rock . "One of Lennon's most powerful acid-rock songs to date ('Hey Bulldog')..."
^ a b “81 - 'Hey Bulldog' ”. Rolling Stone (2020年4月10日). 2021年5月13日 閲覧。
^ Maginnis, Tom. Hey Bulldog - The Beatles | Song Info - オールミュージック . 2021年5月13日 閲覧。
^ Unterberger, Richie . “Yellow Submarine - The Beatles | Songs, Reviews, Credits ”. AllMusic . All Media Group. 2021年5月13日 閲覧。
^ 1+ (book). The Beatles . Apple Records . 2015.
^ “It's hard not to LOVE the new Beatles album ”. Miami Herald (2006年11月21日). 2006年11月23日 閲覧。
^ “悩んで学んで | 奥田民生 ”. ソニーミュージックオフィシャルサイト . ソニー・ミュージックエンタテインメント . 2021年5月13日 閲覧。
^ The Way The World Looks/Under The Influence EP - Wes Carr | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2021年5月13日 閲覧。
参考文献
外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
UK盤 (パーロフォン /アップル )
US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1970年 1976年
その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1968年 1969年 1970年 1972年 1978年 1981年