「ひとりぼっちのあいつ 」(原題 : Nowhere Man )は、ビートルズ の楽曲である。レノン=マッカートニー 名義となっているが、ジョン・レノン によって書かれた。1965年に発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル 』に収録された。アメリカで発売された『ラバー・ソウル 』には収録されず、1966年にシングル盤として発売された後に、キャピトル 編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ 』に収録された。
1965年10月21日と22日にレコーディングが行われた本作は、ビートルズでは初の愛やロマンスを扱わない楽曲とされており、レノンによる哲学的な歌詞が特徴となっている[ 2] 。1968年に公開された映画『イエロー・サブマリン 』で劇中歌として使用され、1999年に発売された『イエロー・サブマリン 〜ソングトラック〜 』にリミックスが施された音源が収録された。
背景・曲の構成
「ひとりぼっちのあいつ」は、レノンがアルバム『ラバー・ソウル』のために曲を書こうと5時間悩んだ末に、自分自身について書いた楽曲。1980年の『プレイボーイ 』誌のインタビューで、レノンは「ある朝、僕は5時間ほど曲の構想を練ってた。意味のある良い歌を作ろうとして思ったんだ。だけどいつまで経ってもできなくて、ついに諦めて横になった。そしたら突然『Nowhere Man 』という言葉とメロディが思いうかんできた」と語っている。
ポール・マッカートニー は「ジョンの曲。この頃のジョンは自分がこれからどこに向かうのかを少し心配してたんじゃないかな」と語っている[ 4] 。
曲全体としては、32小節形式となっており、Eメジャー で演奏される8小節の主部、音楽的な問いかけをする第3フレーズ(17〜42小節)、Eメジャーの主部を再現する第4フレーズが繰り返される。主部は「He's a real 」でのEコードから始まり、「nowhere man 」でのBコードと「sitting in 」でのAコードとの間で下降する。最後のフレーズ「nowhere plans 」では、Aコードの代わりにAマイナーが使用され、同時にG♯で演奏されるメロディで不協和音となるAmM7を作り出している[ 5] 。
レコーディング
「ひとりぼっちのあいつ」のレコーディングは、ジョージ・マーティン のプロデュースのもと、1965年10月21日と22日にEMIレコーディング・スタジオ で行なわれた。リードギター はレノンとハリスンがソニックブルーのフェンダー・ストラトキャスター で演奏したもの。レノンとハリスンはギターを数セットのフェーダーに通していたため、エンジニアは2本のギターソロを強調する為に、トレブルを幾度となく上げていた。
本作のレコーディングについて、マッカートニーは「思いきりトレブルを効かせたギターの音にしたかったんだ。エンジニアが「わかった。トレブルをフルにしよう」と言ったのに対して、僕らは「それじゃ足りない」と返したら、彼は「でもこれが限界なんだ」と。「だったらそれを別のフェーダーに繋いでトレブルを上げてみてくれないか。それでも足りないんだったら、それをまたさらに別のフェーダーに繋げればいい」と提案したら、彼らが「そんなことはしない」と言うもんだから、「とにかく試してみてくれ。もし変な音になったら僕らは負けを認めるよ。でもきっといい音になると思うよ」と言ったんだ。やってみたら「おお、うまくいったぞ!」ってね。これまでの3倍のトレブルが出せたから、エンジニアは喜んだと思うよ」と振り返っている。
リリース・評価
1965年12月3日にパーロフォン からアルバム『ラバー・ソウル』が発売され、「ひとりぼっちのあいつ」は「ユー・ウォント・シー・ミー 」と「嘘つき女 」の間にあたるA面4曲目に配置された。後に本作をカバーしたスマッシング・パンプキンズ のビリー・コーガン は、「画期的で実存的な歌詞を持つ美しいポップソング」と評している[ 13] 。
アメリカでキャピトル・レコード から発売された『Rubber Soul 』には収録されず、この関係から1966年初頭のアメリカではエアプレイ が規制されていた。同年2月21日にキャピトル・レコードからシングル盤として発売され、B面には「消えた恋 」が収録された。Billboard Hot 100 では最高位3位を記録し[ 15] 、オーストラリアのチャートでは第1位[ 16] を獲得した。アメリカでは50万枚以上の売上を記録したことから、アメリカレコード協会 からゴールド認定を受けている[ 17] 。1966年6月20日にキャピトル・レコードから編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ 』が発売され、「消えた恋」と共に収録された。
本作は、1965年のイギリスツアーから1966年のアメリカツアーまでセットリストに加えられており、ライブ映像が映像作品『ザ・ビートルズ・アンソロジー 』に収録されている。なお、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2 』には、1966年の日本武道館 公演でのライブ音源が収録される予定となっていたが、最終的に未収録となった。
1968年に公開されたアニメ映画『イエロー・サブマリン 』では、ビートルズがひとりぼっちのジェレミーに向けて本作を歌っている。1999年に発売された『イエロー・サブマリン 〜ソングトラック〜 』にリミックスされた音源が収録されており、オリジナルで右寄りになっていたボーカルが、こちらでは中央に定位している[ 21] 。
『ローリング・ストーン 』誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs 」では第66位にランクインした[ 13] 。
クレジット
※出典
チャート成績
認定
カバー・バージョン
タイニー・ティム は本作をウクレレでカバーしており、このカバー・バージョンは1968年にビートルズのファンクラブの会員のみに配布されたクリスマス・レコードに収録されている。ビートルズの歴史家であるジョン・ウィンは、ティムによるカバー・バージョンを「このレコードのハイライト」として挙げている。
本作は他にも、ガーション・キングスレイ によるシンセポップ 調、ドッケン によるグラム・メタル 調、ヤニー によるイージーリスニング 調など、さまざまなカバー・バージョンが存在する。ジョン・クルトは『ラバー・ソウル』のレガシーに関する著書の中で、1968年にレコーディングされ、カレン・カーペンター (1983年没)の死後の2001年に発売されたカーペンターズ によるカバー・バージョンについて、「ストリングス・アレンジをオーバー・ダビングしたばかげたカバー」と評している。
日本では、笹島明夫 が2015年に発売されたアルバム『Images of Lennon McCartney』で本作をカバーしている。
脚注
出典
^ Pollack, Alan W. . “Notes on "Nowhere Man" ”. soundscapes.info . 2020年4月24日 閲覧。
^ Unterberger, Richie. Rubber Soul - Beatles|Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年4月24日 閲覧。
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^ Pedler, Dominic (2003). The Songwriting Secrets of the Beatles . Omnibus Press. p. 193. ISBN 0-7119-8167-1
^ a b “66. 'Nowhere Man' ”. 100 Greatest Beatles Songs . Rolling Stone (2020年4月10日). 2021年5月25日 閲覧。
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^ a b Kent, David (2005). Australian Chart Book (1940-1969) . Turramurra: Australian Chart Book. ISBN 0-646-44439-5
^ a b "American single certifications – The Beatles – Nowhere Man" . Recording Industry Association of America . 2020年9月14日閲覧 。
^ 斉藤早苗・葉山真『イエロー・サブマリン 〜ソングトラック〜 』(ブックレット)ビートルズ 、アップル・レコード 、2012年。
^ "Austriancharts.at – The Beatles – Nowhere Man" (in German). Ö3 Austria Top 40 . 2020年9月14日 閲覧。
^ "Top RPM Singles: Issue 5709 ." RPM . Library and Archives Canada . 16 May 2016 閲覧。
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^ “Record World 100 Top Pops - Week of April 2, 1966”. Record World : 17. (2 April 1966).
^ “Offizielle Deutsche Charts - The Beatles - Nowhere Man ” (German). GfK Entertainment Charts . 2020年9月14日 閲覧。
^ “The Beatles Single-Chartverfolgung (in German) ”. musicline.de. 2013年12月13日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年9月14日 閲覧。
参考文献
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外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
UK盤 (パーロフォン /アップル )
US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1970年 1976年
その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
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