『名探偵コナン 世紀末の魔術師』(めいたんていコナン せいきまつのまじゅつし)は、1999年4月17日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズの第3作目にあたる劇場版アニメ。上映時間は100分[注 1]。興行収入は26億円[1][2][3][4][5]、配給収入は14億5000万円[6]、観客動員数は216万人。アメリカ合衆国で2009年7月17日に公開された。キャッチコピーは「世紀末最大の謎を解くのは誰だ!?」。
概要
作品概要
本作の舞台は大きく3つに分けられており、前半が大阪、中盤が豪華客船、後半が古城で構成されている。
劇場版初登場のキャラクターが多く、灰原哀、高木渉、服部平次[注 2]、遠山和葉、鈴木史郎、茶木神太郎、中森銀三、怪盗キッドが劇場版シリーズに初登場した[注 3]。ただし、平次はキッドを追跡中に交通事故で負傷してしまったため、和葉と共に前半のみ登場しており、出番は少なかった[注 4]。同様にキッドも、スコーピオンに狙撃され生死不明になったため、変装なしでの登場は前半のみだった。以上の本作初登場のキャラクター中で灰原は、以後の劇場版でも既に第1作から連続登場が確定しているコナン(新一)、蘭、小五郎、博士、少年探偵団、園子と同様に、毎回必ず常連メンバーとして登場する事となる。また、2018年10月17日に田中信夫が死去したため、田中が演じる茶木が登場する映画は本作のみであり[注 5]、後任は決まっていない。
冒頭の作品解説で恒例の「コナンの正体を知っている人物」のメンバー紹介に、本作から灰原が新しく加わっている。
本作の公開当時に発売された『週刊少年サンデー』の原作では「命がけの復活」シリーズが連載されていた。その影響もあって、コナンの正体を蘭が疑っていくという原作と似た展開になっている[注 6]。また、怪盗キッドがコナンの正体を新一と認識したのも本作からで、後に原作やテレビアニメでも、その認識をしているうえでコナン(工藤新一)の母親である工藤有希子について話す展開が描かれる。
山口勝平はキッドとの兼任だが、ラストに登場する新一はキッドが変装した姿であり、本物の工藤新一の出番は極めて少なく、冒頭の解説を除けば台詞は1つだけであった。
本作以降、キャラクターデザインが原作の絵柄に近くなっている。また、グッズやプログラムに作品名の英語表記が入るようになった。
恒例のダジャレクイズで、阿笠博士が出題した初の作品である[注 7]。
ストーリー前半の舞台が大阪であることから、その名所が数多く登場している。新幹線でコナンたちが降り立った新大阪駅から、大阪城、通天閣、大阪ドーム、公開当時の読売テレビ社屋など、実在する建造物を多数見ることができる。大阪は本作以降の劇場版シリーズでも、平次たちが住んでいることから連絡中に背景として描かれることが多い。
公開当時は未解明だった歴史上の出来事に独自の解釈を加え、ストーリーの軸にしている。歴史上の出来事をストーリーに絡めたのは劇場版シリーズ史上初で、ニコライ二世やグリゴリー・ラスプーチン、マリア[注 8]など実在の人物が深く関わっている。また、『コナン』シリーズはその後も作中での時間軸が中々進まない設定で毎年の季節だけ現実に沿ってループして続いていき、年代などの明言はなされていないが、本作の年代イメージはタイトルにもあるように公開時の20世紀末となっている[注 9]。
当初、キッドが狙うのは幻の青いバラだったが、青山剛昌のスタッフがテレビでインペリアル・イースター・エッグを見て報告したことでロマノフ朝にまつわるストーリーが生まれた。
藤田淑子が演じる浦思青蘭のセリフ「馬鹿な坊や」は収録中のスタジオ内で流行り、誰かがミスをしたら言い合っていたという。
2013年11月からテレビシリーズの主題歌を歌ったVALSHEは、本作に聞き間違えたロシア語として出てくるセリフ「バルシェ・ニクカッタベカ」を芸名の由来としている[7]。
ファニメーションによって英語吹き替え版が制作された。英語名は「Case Closed: The Last Wizard of the Century」。
2016年に開催された歴代映画19作品の人気投票で、今作は7位を獲得した[8]。
製作状況
今作の特徴はコンピュータ作業を加えた事で、新大阪駅から鈴木近代美術館に移動するまでのビルの映像や鈴木家の船で東京に戻るシーンの海、ゲストキャラクターの名前表示のスーパーなどに新たな試みが施されている。
ストーリー
鈴木財閥の蔵からロマノフ王朝の遺産、「メモリーズ・エッグ」と呼ばれる51個目の「インペリアル・イースター・エッグ」が見つかったため大阪で展示することとなり、怪盗キッドからエッグを盗み出すという、暗号による予告状が届いた。警察は日付を8月22日から23日にかけての夜、大阪城からキッドが現れると読解し、小五郎は具体的な時刻を午前3時とした。
コナンたちや服部平次、遠山和葉らが鈴木財閥の会長のもとを訪れると、ロシア大使館一等書記官のセルゲイ・オフチンニコフ、美術商の乾将一、ロマノフ王朝研究家の中国人・浦思青蘭、映像作家の寒川竜がおり、彼らはみなエッグを狙っていた。
コナンと平次は、キッドの予告した時刻が実際は午後7時20分で、場所は通天閣であることにその直前になってから気付く。中森警部は偽物のエッグを展示室へ移し、限られた人間だけで本物のエッグをあるビルの一室で警備していたが、キッドは鳩に取り付けたカメラからそのことを知り、街中を停電にして、病院やホテルなど以外で自家発電が稼働する場所を探すことによって位置を特定し、エッグを盗み出した。
キッドを追跡する途中、平次はバイクで転倒してしまい、無事だったコナンだけで追跡を続けるが、コナンは負傷した鳩とエッグ、破損したキッドのモノクルを発見する。キッドは撃たれて海に落ちたものと思われたが、キッドの生死は確認できなかった。
エッグは傷がついていないか調べるため、展示を中止し鈴木財閥の船で東京へ持ち帰ることとなった。
船にはコナンやセルゲイたちの他、パティシエの香坂夏美が同乗していた。彼女はエッグ製作者の工房で働いていた香坂喜市という男の曾孫であり、喜市が描いたと思われる図面がメモリーズ・エッグの写真と違うというので、執事の沢部蔵之助を伴って財閥を訪れていたのだった。その図面には2つのエッグが描かれていたことがわかり、さらに鈴木財閥の所有するエッグにはめ込まれていた鏡は魔鏡となっていて、ドイツ風の城が映し出された。これは喜市が横須賀に建てた城であり、小五郎はそこに2つ目のエッグが隠されていると推理し、コナンやセルゲイたちもそこへ同行することに決まるが、寒川が右目を撃たれ、死んでいるのが発見される。彼の部屋は荒らされており、彼が見せびらかすように身につけていたニコライ二世の娘、マリアの指輪や、撮影したビデオテープがなくなっていた。寒川の部屋から鈴木会長の秘書、西野真人のボールペンが発見され、西野の部屋に指輪が隠されていたが、コナンは西野が羽毛アレルギーであることを指摘し、寒川の部屋の羽毛枕が切り裂かれていたことから疑いを晴らし、阿笠博士に調べてもらった情報から、ロマノフ王朝の遺産を専門に狙い、常に右目を撃つ強盗・スコーピオンが犯人であると指摘する。西野に恨みを持つ寒川が彼を指輪泥棒に仕立て上げようとしたものと、スコーピオンの正体を示すなにかを撮影してしまった寒川が襲われたものの、2つの事件が重なっていたのだった。
捜査のため船へやってきた白鳥刑事も交え、城へやって来たコナンたちは地下室への入口を見つけ、ロシア語で「世紀末の魔術師」という意味のパスワードを入力して中へ進入する。これはかつて喜市が呼ばれていた異名で、キッドも予告状にこの文句を使っていた。
地下の奥にはロシア皇帝の紋章に光を当てると道が現れる仕掛けがあり、更に先へ進むと桐で作られた西洋風の棺があった。中身はもう1つのエッグと遺骨であり、これは夏美の曾祖母にあたる、喜市のロシア人であった妻であると思われた。
もう1つのエッグは空であり、鈴木財閥のエッグを入れることが出来るようになっていた。白鳥が鈴木会長から借りてきていたエッグを入れて、下から光を当てると周囲にニコライ皇帝一家の写真が浮かび上がる。その中には一切写真が残っていなかった、夏美の曾祖母が喜市とともに写っているものもあり、夏美やマリアによく似ていた。
セルゲイは夏美が持つにふさわしいとして、ロシアが鈴木財閥のエッグの所有権を放棄することを宣言し、小五郎もエッグを夏美に譲るよう鈴木会長に口添えする約束をしたところで、小五郎がスコーピオンに狙われ、スコーピオンはエッグを奪って逃げてしまう。
コナンは途中で射殺された乾を見つけつつもスコーピオンを追い、スコーピオンが城へ放火したところで、コナンは殺された寒川や乾のものを含む、色々な人物の声でスコーピオンの正体である青蘭を翻弄する。彼女は本当はロシア人であり、浦思青蘭の中国語読み、「プース・チンラン」は「ラスプーチン」のアナグラムで、彼の末裔だった。青蘭はロマノフ王朝の財宝は本来、皇帝一家と縁深かったラスプーチンのものになるはずだったと考えており、寒川を殺害した理由は飾っていたラスプーチンの写真を撮られたと思ったため、小五郎を襲ったのはラスプーチンを「世紀の大悪党」と評したためである。
コナンは拳銃に装填された最後の一発を撃つよう挑発するが、右目を狙った弾は眼鏡に弾かれる[注 10]。青蘭は弾倉を交換し再度撃とうとするもキッドのトランプ銃に阻まれ、コナンはキック力増強シューズで青蘭を気絶させる。
事件解決後、探偵事務所に戻ったコナンは、限界を感じて蘭に自分の正体を明かそうとするが、そこへ新一に変装したキッドが現れる。コナンたちの会った白鳥刑事はキッドの変装であり、彼はエッグを夏美に返そうと画策していたのだった。
コナンはキッドに、夏美の曾祖母とはマリアであり、彼女の遺体が見つかっていないのは喜市に助けられ日本へ逃れたためで、香坂家の城がドイツ風だったのは彼女の母親がドイツ人だったため、という推理を語るが、キッドは「世の中には謎のままにしておいたほうがいいこともある」と語り、コナンも同意する。
キッドはコナンや蘭が保護していた鳩とともに去る直前、「何故自分が新一の姿で蘭の前に現れ、厄介な敵であるコナンを助けたのか」という謎をかけるが、コナンは「そんなものは謎でもなんでもない、鳩を手当した礼だろう」と、心の中でキッドに呼びかけるのだった。
帰宅後、蘭に何故引き止めておいてくれなかったと注意されるコナンだったが、「新一にいちゃん、『また来る』って!」と、嘘の伝言をする。その直後、蘭は「いいわ!今度会った時には…」と、新一(に、変装したキッド)に渡す予定だったハンドタオルを宙に浮かせ、空手チョップで三枚おろしにし「こうしてやるんだから!!」と腕組みして意気込む。割れたうちの1枚がコナンの頭に乗り、モノローグで「当分、元には戻れねえな。こりゃ…」と苦笑いする場面で、終幕を迎える(なお、コナンの「新一にいちゃん…」の台詞は、劇場版シリーズで初めてモノローグではないものとなった)。
登場人物
レギュラーキャラクター
- 江戸川 コナン(えどがわ コナン)
- 声 - 高山みなみ
- 本作の主人公。本来の姿は「東の高校生探偵」として名を馳せている工藤新一だが、黒ずくめの組織に飲まされた毒薬・APTX4869の副作用で小学生の姿になっている。
- 怪盗キッドが現れる時間を予告上の文面から午後7時20分と推理する。「メモリーズ・エッグ」の解明に臨むと同時に、エッグを狙うスコーピオンに警戒する。夏美と青蘭の誕生日を聞いて自分と1日違いだと口を滑らせてしまい、蘭がコナンの正体を疑う原因になった。
- 毛利 蘭(もうり らん)
- 声 - 山崎和佳奈
- 本作のヒロイン。新一の幼馴染かつガールフレンドで、都大会で優勝するほどの空手の達人。
- コナンの誕生日が新一と同じ(5月4日)であることを知り、コナンの正体が新一でないかという疑惑を強めていく。
- 毛利 小五郎(もうり こごろう)
- 声 - 神谷明
- 蘭の父親で「眠りの小五郎」の異名で有名な私立探偵。コナンの保護者。元警視庁捜査一課強行犯係の刑事。
- 怪盗キッドが現れる時間を予告状の文面から午前3時と推理する。
- 工藤 新一(くどう しんいち)
- 声 - 山口勝平
- コナンの本来の姿で高校生探偵。
- 新一としての登場は終盤でコナンの姿と声が重なる演出および蘭のイメージシーンのみで、それ以外はキッドの変装である。
- 怪盗キッド(かいとうキッド)
- 声 - 山口勝平
- 本作のキーパーソン。神出鬼没な大怪盗。コナンのライバルで、その正体を新一と知る。キッドの正体は、本作公開の時点で原作やテレビアニメでは既に判明しているが、本作でその描写はない。
- 「メモリーズ・エッグ」を盗み出した直後、ハンググライダー飛行中にスコーピオンに狙撃されて海に墜落し生死不明となるが無事生存。その後は休暇中だった白鳥刑事に変装しコナンたちと行動を共にした(そのため横須賀の城へ向かう際、前方の車は彼が運転しているため事実上、無免許運転になる[注 11])。
- 目暮 十三(めぐれ じゅうぞう)
- 声 - 茶風林
- 警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係の警部。
- 寒川竜殺人事件の捜査を担当する。
- 阿笠 博士(あがさ ひろし)
- 声 - 緒方賢一
- コナンの正体を新一と知る数少ない人物の一人で発明家。
- コナンに電話でスコーピオンの存在を知らせ、横須賀の城へ赴いた際はバージョンアップした眼鏡を手渡す。
- 城に入ろうと一生懸命になる少年探偵団を引き止めようとするが、その時に塔から地下に続くトンネルのスイッチを押していまい、哀たちと離れ離れになってしまう。
- その後、縄梯子を用意し、コナンと白鳥(キッド)以外を救出した[注 12]。
- 吉田 歩美(よしだ あゆみ)、小嶋 元太(こじま げんた)、円谷 光彦(つぶらや みつひこ)
- 声 - 岩居由希子(歩美)、高木渉(元太)、大谷育江(光彦)
- 少年探偵団の3人。
- オープニング前、歩美はたまたま自身の家のベランダに止まっていたキッドと邂逅し、会話をした。
- 横須賀の城へ向かうコナンに会うためにビートルの後部座席の毛布に潜り込んで同行する。
- 小五郎に、中には絶対入るなと言われ素直に返事をしたがハッタリで、別の入口から城に入りコナンたちより先に宝を見つけるという作戦で、結果論だが博士のおかげで地下に入り、彼らと合流した。
- 地下の深層部で見つけたエッグが空っぽだったことに大人たちが首を傾げる中、歩美が父の友人のお土産に貰ったマトリョーシカのことを話したことから、「メモリーズ・エッグ」は、2個で一つのエッグであることに気づくきっかけとなった。
- 灰原 哀(はいばら あい)
- 声 - 林原めぐみ
- 本来の姿は宮野 志保(みやの しほ)。元黒の組織の一員かつAPTX4869の開発者だったが、同じく組織の一員であった姉の宮野 明美(みやの あけみ)を組織内の都合で殺されたために、自ら薬を飲んで小学生の姿になって脱走した。コナンの正体を新一と知る数少ない人物の一人。本作が劇場版初登場で、以後は常連メンバーとなる。
- 城の罠で地下に入ってしまった少年探偵団を先導し、コナンらと合流する。
- ラスプーチンがニコライ皇帝一家と親しかったことを知っており、「メモリーズ・エッグ」の仕掛けが終わった後、彼の写真がなかったことについてコナンに疑問を投げかけた。
- 服部 平次(はっとり へいじ)
- 声 - 堀川亮
- 「西の高校生探偵」として有名で、新一とは「東の工藤・西の服部」と並び称されるライバルにして親友。コナンの正体を新一と知る数少ない人物の一人。本作が劇場版初登場で、以後の作品でもコナンの協力者として主要な役割を担って登場する。
- コナンをバイクに乗せてキッドを追跡する途中、トラックと接触しそうになり転倒するも、軽い捻挫で済んだ。
- 遠山 和葉(とおやま かずは)
- 声 - 宮村優子
- 平次の幼馴染かつガールフレンド。平次に好意を持っていて、蘭とも仲が良い。合気道部に所属しており有段者。本作が劇場版初登場で、以後の作品でも平次と共に登場する。
- キッドが予告時間に来るまでの間、蘭と園子に大阪の繁華街を案内する。
- 鈴木 園子(すずき そのこ)
- 声 - 松井菜桜子
- 蘭の同級生で親友。鈴木財閥の令嬢で、蘭や新一とは幼馴染でもある。
- 平次と和葉の仲を見て、自分にも幼馴染の男子がいればと羨ましく思う[注 13]。
- 本作から初めて序盤から中盤に掛けて、一連の事件に関わった。また、会話シーンはないが、今作で映画オリジナルキャラクターだった白鳥刑事と初対面した[注 14]。
- 鈴木 史郎(すずき しろう)
- 声 - 松岡文雄
- 園子の父親で鈴木財閥会長。
- キッドが予告時間に来るまでの間に小五郎に会食を誘う。
- 非常に寛容な人物で、平次に「おっちゃん」呼ばわりされても気にも留めず、叱咤する小五郎を宥めている[注 15]。
- 白鳥 任三郎(しらとり にんざぶろう)[注 16]
- 声 - 塩沢兼人
- 警視庁捜査一課のキャリア組の刑事で警部補。本作公開時点における原作およびテレビアニメ版では警部に昇進していたことが判明するが、本作では警部補として登場する。
- 休暇を取って軽井沢の別荘で休養していたが、殺人事件を聞き付けて現場に赴く。また、今回はコナンを積極的に捜査に関わらせており、その動向に注目している。
- 上記の通り、コナンたちと行動を共にしたのは全てキッドの変装であり、彼本人の登場は事件解決後に目暮警部との対面シーンのみ。
- 高木 渉(たかぎ わたる)
- 声 - 高木渉
- 警視庁捜査一課の刑事で巡査部長。本作が劇場版初登場であり、以後の殆どの作品にも登場する。
- 犯人とのやり合いで額に傷をつけたため、絆創膏を貼っている。
- 西野真人の部屋のベッドの下で寒川の所持品だった「ニコライ皇帝の三女・マリアの指輪」を見つける。
- 中森 銀三(なかもり ぎんぞう)
- 声 - 石塚運昇
- 警視庁捜査二課知能犯捜査係の警部。本作が劇場版初登場となる。
- 怪盗キッドが現れる場所を予告状の文面から大阪城だと推理する。鈴木近代美術館に展示する「メモリーズ・エッグ」を偽物にすり替え、本物を秘密裏に別の場所に隠す。
- 茶木 神太郎(ちゃき しんたろう)
- 声 - 田中信夫
- 警視庁捜査二課の警視。本作が劇場版初登場となる。
- 捜査会議で「メモリーズ・エッグを盗むという旨のキッドの予告状を発表する。
オリジナルキャラクター
犯人
- スコーピオン(Scorpion)
- 世界各国にある、ロマノフ王朝の財宝を盗んでいる連続強盗殺人犯。
- ICPOにより国際指名手配中だが、正体は一切不明。使用する拳銃は「ワルサーPPK/S」で、必要に応じてサプレッサー・レーザーサイト・スコープを装着している。また、人を撃つ時は必ず標的の右目を撃ち抜くという特徴がある。
容疑者
- 香坂 夏美(こうさか なつみ)〈27〉
- 声 - 篠原恵美
- パティシエール。誕生日は5月3日。
- 怪盗キッドに盗まれた「メモリーズ・エッグ」の最初の所有者であった香坂家の相続人。現在はフランスに住んでいる。容姿端麗な美女で浦思青蘭と同じく灰色の瞳をしているが、夏美自身は瞳の色について(母も祖母も同様のため)曾祖母の色を受け継いだのだろうと語っている。子供の頃に聞かされていた「バルシェ・ニクカッタベカ」という謎の言葉は暗号解読のヒントになっており、コナン一行と協力しながら城に隠された謎を解き明かしていく。
- 乾 将一(いぬい しょういち)〈45〉
- 声 - 大塚周夫
- 美術ブローカー。
- 鈴木会長に「メモリーズ・エッグ」の商談を持ちかけてきた。来客者の中で最も高額での取引を望んでおり、エッグを譲り受けられるなら億単位での取引にも応じるつもりでいる。出会った当初は紳士的な態度を見せていたが、その下には卑劣な本性を隠している。香坂家の城にある財宝を盗むため、トイレに行く振りをして一同を出し抜き「貴婦人の間」に戻る。絵画に隠された金庫を発見して開ける事には成功したが、防犯装置に捕えられるという醜態を晒した。
- 地下で、不審な動きを取った同行者の一人を追いかけると、その人物がサイレンサーを付けているところを見てしまったため射殺された。
- その後、コナンがスコーピオンを追いかけている時に、彼の遺体に躓いている。
- 沢部 蔵之助(さわべ くらのすけ)〈65〉
- 声 - 依田英助
- 香坂家の執事。愛煙家で、執事業をしていない時はパイプをふかしている。
- 夏美の祖母の代から香坂家に仕えており、現在も夏美に付き添いながらお世話をしている。香坂家の内情にも詳しい。コナン一行が城の中を探索するため「皇帝の間」「貴婦人の間」「騎士の間」「執務室」を案内している。「貴婦人の間」の金庫には防犯装置が設置されており、宝石を奪おうとした乾が罠に嵌ってしまい、からくり好きな喜市の意向で仕掛けられていたと、冷静な口調で伝えながら罠を解除して見せた。
- しかし、執務室の地下に続く仕掛けについては知らなかったらしく、目の当たりした際は驚愕していた。
- 全てが終わった後、地下の深層部にある夏美の曾祖母の遺骨を喜市の墓に埋葬しようと、夏美に優しく微笑みながらいった。
- 寒川 竜(さがわ りゅう)〈32〉
- 声 - 大塚芳忠
- フリーの映像作家。
- 鈴木会長に「メモリーズ・エッグ」の取材を申し込んできた。また、自らの資金で購入も考えているが乾の所持金の多さから諦めている。女性客の部屋を訪れては美人を撮影しており、蘭もドアを開けて顔を撮られてしまった。映像作家でロマノフ王朝にはそれほど精通していないが、ニコライ二世の三女・マリアの指輪を所持しており青蘭を驚かせていた。
- 西野とは3年前にアジアの内戦で面識があり、その撮影中に殴られたトラブルから恨みを抱いていたことから、彼を上記の指輪を使って泥棒に仕立て上げ嵌めようとするが、その前にスコーピオンに射殺され、ビデオテープを全て盗まれた。
- 西野 真人(にしの まさと)〈29〉
- 声 - 宮本充
- 鈴木財閥会長秘書。
- 鈴木会長の秘書で、忠実に職務を遂行することから特に信頼されている。糸目で、常に微笑んでいるような表情だが、劇中では驚く時のみ目を見開いている。かつては、世界中を回っていた経験から英語・フランス語・ドイツ語などに堪能である。羽毛アレルギー体質で、怪盗キッドの鳩が羽をまき散らしたので慌てて退室している。寒川とは3年前のアジア旅行で出会っており、内戦で家を焼失した女の子の撮影を止めないので殴ってしまい逆恨みされている。その寒川が殺害され、所持していたボールペンが残されていたことから容疑者として怪しまれる。
- その後、上記の羽毛アレルギーのおかげで容疑が晴れたため、真犯人に殺害される、コナンの協力者になるなどを除き容疑者から完全に外れた、非常に稀な人物である[注 17](ゆえに古城での探索には西野がいても仕方がないとして、鈴木父娘は同行していない)。
- セルゲイ・オフチンニコフ〈41〉
- 声 - 壤晴彦
- ロシア大使館一等書記官。名前のロシア語ラテン文字表記は「Sergei Ovchinnikov」、ロシア語キリル文字表記は「Сергей Овчинников」。
- ロシア人。「メモリーズ・エッグ」のロシア返還を求めている。大使館に勤めているため日本語には堪能で流暢に喋る。屈強な体格の持ち主だが、態度は紳士的。二つ目のエッグが横須賀の城に隠されていることを知り、誰よりも先に同行を頼み込んだ。暗号の謎解きでは香坂喜市がロシア語を暗号にしていたため、入力を任された。その後、二つ目のエッグと対面。ニコライ皇帝一家の写真を見て言葉を失い、夏美にこそ相応しいとロシアを代表して所有権を放棄した。
- 「メモリーズ・エッグ」欲しさに鈴木近代美術館を訪れた4名の中で、燃えゆく古城をコナンたちと共に見届けた唯一の人物である。
- 前作『14番目の標的』のピーター・フォードに続いての外国人の男性ゲストキャラクターで、フォードとは異なりコナンからは「セルゲイさん」と名前で呼ばれ、声優も日本人の壤が演じている[注 18]。
- 浦思 青蘭(ほし せいらん)〈27〉
- 声 - 藤田淑子
- ロマノフ王朝研究家。
- 中国人。名前の中国語読みは「プース・チンラン」(簡体字では、浦思青兰、ピンインはpǔ sī qīng lán)。誕生日は5月5日。香坂夏美と同じく灰色の瞳をしており、年齢も同じなので意気投合していた。脚線美で当初は赤や青のチャイナドレスを着用しており、小五郎はその色っぽい脚に見惚れていた。ロマノフ王朝の研究者であるため、エッグは誰よりも欲しているが寒川と同じく資金面の理由から諦めている。横須賀の城では、暗号解読に積極的な参加をしていなかったが、コナンの推理から「世紀末の魔術師」という重要な答えを導き出した。
- 歴代劇場版で、初めて登場した外国人の女性ゲストキャラクターで、声優は日本人の藤田が演じている(なお、藤田の出生地は中国の遼寧省大連市である)。
メインキャラクターの親族
- 歩美の母
- 声 - 佐藤しのぶ
- ソファーに座ってドラキュラ映画を見ていた歩美に早く寝るよう促す。
- 歩美の母親は、正確には本作オリジナルのキャラクターでも劇場版で初登場したわけでもないが、本作でもテレビアニメ版と同じく顔は判明していないままである。
警察関係者
- 鑑識課員
- 声 - 中嶋聡彦
- 寒川竜殺害事件の現場検証をしていた鑑識官。
- 犯行現場である寒川の部屋で、西野真人のボールペンを発見していたことから目暮警部に渡した。
- 刑事
- 声 - 小上裕通、井上隆之、千葉一伸、布目貞雄
- 怪盗キッドの捜査会議に参加していた刑事たち。キッドがこれまでに関わった事件や「インペリアル・イースター・エッグ」の歴史についての調査報告をしていた。
スタッフ
興行成績
興行収入が初めて20億円を突破し、最終的に『14番目の標的』の18.5億円を上回る26億円となった。劇場版シリーズは2018年現在、20作連続で興行収入20億円以上を突破し続けている。
テレビ放送
回数 |
番組名(放送枠名) |
放送形態 |
放送日 |
放送時間(JST) |
放送分数 |
平均世帯視聴率 |
備考
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1
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通常拡大枠
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2000年3月20日
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19:00-20:54
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114分
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2
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2002年10月7日
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3
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2008年9月29日
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4
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金曜ロードSHOW!
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2019年3月22日
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21:00-22:54
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11.1%
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デジタルリマスター版を放送。
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音楽
主題歌
- B'z「ONE」
- 作詞 - 稲葉浩志 / 作曲 - 松本孝弘
- 名探偵コナン映画作品初の男性ボーカルによる作品であった。
- 本作は「1番→間奏→ラストサビ」ではなく、1番のメロディの後は全て2番以降が使われている(そのため、前作までや次作『瞳の中の暗殺者』とは違い、Cメロが流れている)。
挿入歌
- 「I'll be there」
- 作詞 - 三枝翔 / 作曲・編曲 - 大野克夫 / 歌 - 菅井えり
- 「キミがいれば(世紀末バージョン)」
- 作詞 - 高柳恋 / 作曲・編曲 - 大野克夫 / 歌 - 伊織
- 「愛はいつも」
- 作詞 - 三枝翔 / 作曲・編曲 - 大野克夫 / 歌 - 伊織
サウンドトラック
本作のストーリーがロマノフ王朝のイースターエッグをめぐる争いということもあり、劇場版初登場の怪盗キッドの本格的なテーマ楽曲など、かなりスケールの大きな楽曲が目立つ。シリーズ前々作『時計じかけの摩天楼』と同様に当作に比べて少ないがTVオリジナルサウンドトラックの楽曲、前作『14番目の標的』の楽曲「恋のトランプゲーム占い」の本作仕様のリアレンジバージョンが収録されている。
TVシリーズでは9月27日放送の第162話(1時間スペシャル)『空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件』から使用が開始されるが、汎用初回はこれまでの異なり一曲のみの汎用になっており同話はM.16「尋問」のみで、12月13日放送の第172話『よみがえる死の伝言(前編)』からはM.25「赤い光のスナイパー2」が使用開始され、十曲以上の使用は2000年1月3日放送の第174話(年明け2時間スペシャル)『二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件』からとなる。特に同話から汎用されている、M.24「古城のテーマ」は第5作『天国へのカウントダウン』の制作・公開前後で黒ずくめの組織のエピソードで長らく使用され、2007年7月のリアレンジ後の現在でも流用されている。
収録曲
- 名探偵コナン メイン・テーマ(世紀末ヴァージョン)
- I`ll be there
- 走るリムジン1
- 怪盗キッド出現
- 出動のテーマ1~予感
- 怪盗キッドの予告状1
- 恋のトランプゲーム占い(世紀末ヴァージョン)
- 前作『14番目の標的』の同名楽曲の本作リアレンジバージョン
- 蘭のテーマ(世紀末ヴァージョン)
- イースターエッグの謎
- 怪盗キッドの予告状2
- スケボー大作戦
- 行き止まり
- コナンVS怪盗キッド
- 出動のテーマ2~サイレンサー
- 古城の神秘
- 尋問
- 阿笠博士のテーマ(世紀末ヴァージョン)
- 想い出(世紀末ヴァージョン)
- 空飛ぶ怪盗キッド
- 走るリムジン2
- 赤い光のスナイパー1
- 古城の探索
- 秘密の地下室
- 古城のテーマ
- 赤い光のスナイパー2
- キミがいれば(世紀末ヴァージョン)
- 城が燃えている
- 愛はいつも
- 飛び立つ鳩
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関連本
出典本
漫画
フィルムブック
備考
- 香坂家の秘密
- 香坂喜市
- ロマノフ王朝の細工職人で、夏美の曾祖父。ピーター・カール・ファベルジェの工房で細工師として働いていた。現地でロシア人の女性と結婚し娘が生まれる。ロシア革命後に日本へ渡るも、妻を亡くしたため、その遺品を売り払い横須賀市に城を建設する。妻を亡くした9年後に自身も45歳でこの世を去った。本作のタイトルである『世紀末の魔術師』とは、1900年に開催されたパリ万国博覧会に弱冠・16歳で、からくり人形を出品して賞賛された彼に対する異名で、執務室にある城の隠し通路を開く際の重要なヒントとなった。
- なお、喜市は幼い娘(夏美の祖母)を残して亡くなっているが、彼が細工師時代に貯えた遺産は莫大なものだったらしく、夏美の祖父と父はどちらも婿養子である[注 19]。また、上記に出てきた彼の年齢を「満年齢」、「誕生日を迎えている」と仮定すれば、1884年(明治17年)生 - 1929年(昭和4年)没になる。
- 世紀末の魔術師のロシア語
- 露: "волшебник конца века"、音訳:「ヴァルシェーブニク・カンツァー・ヴェカ」
- 本作はタイトルが重要な鍵となっており、上記のロシア語での読み方が城の謎を解き明かす際のポイントとなっている。
- コナンによる装弾数の解説
- ワルサーPPK/Sは全弾撃ち尽くすとスライド(英語版)がストップする構造であり、スライドが戻っているということはすなわち、装弾されていることを意味するが、これは外観で判別可能であり、当然コナンも気が付く。スコーピオンに対してコナンが解説を聞かせた真意は、
- 全弾撃ち尽くした後にマガジンを交換した。
- この場合は残弾数が判別できない。また、撃ち尽くした後に交換する時間も十分にある。
- チャンバーに装填されている時にマガジンを交換した。
- という2点を確認するための誘導である。スコーピオンはこの誘導に引っかかり、「1発だけ残っている」と答えてしまった。
脚注
注釈
- ^ 劇場版シリーズで初めて上映時間が100分以上になっている。
- ^ 前作の企画当初で登場予定だったが、テレビシリーズに登場して間もないこともあって見送られたため、本作は製作が決定した段階で登場させる事が確定していた。なお、前作のオープニングで平次はイメージカットで登場している。
- ^ 2023年現在、茶木の登場は本作のみである。
- ^ その後、第7作『迷宮の十字路』でコナンと共にメインキャラクターとして活躍し、それ以後も定期的に劇場版に登場してコナンに協力することになる。
- ^ 茶木神太郎以外では、第12作『戦慄の楽譜』で堂本一揮を演じている。
- ^ テレビシリーズで「命がけの復活」シリーズが放送された後に公開された次々作『天国へのカウントダウン』でも蘭が終盤の展開を踏まえた発言をしている。
- ^ 前々作『時計じかけの摩天楼』では森谷帝二が、前作『14番目の標的』では円谷光彦が出題している。
- ^ 2007年にロシアで遺骨が発見された。
- ^ 作中にはロシア革命の約80年後であることを示唆するシーンが存在する。
- ^ 阿笠博士に頼み、眼鏡のレンズを特別製の硬質ガラスに取り替えてもらっていた。
- ^ 後年、キッドが変装なしで車を運転する作品に、『ルパン三世』とのクロスオーバー作品『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』のオープニング前のシーンがあるが、これはルパン三世による変装である。
- ^ この時、上記の2名以外はスコーピオンが逃走中に手榴弾を使ったことで「執務室」まで戻る通路を塞がれてしまい、身動きが取れなくなっていた。
- ^ 本作は後に恋人となる京極真と出会う以前の時系列である。
- ^ ただし、この時の白鳥はキッドの変装のため、彼本人とは全く関わっていない。
- ^ 小五郎の方も、彼の人柄を高く評価しており、夏美がセルゲイにエッグの所有権は自身のものだと告げられ、中のエッグは史郎のものと躊躇った際にも自分から話すと提案し「きっと解ってくれます」と太鼓判を押している。
- ^ エンドロールでは「白鳥警部補」と表記。
- ^ なお、西野は大阪の街が停電した時に夏美と沢部と一緒におり、その裏が取れればキッドを狙撃した容疑者(スコーピオン)から外れる(これについては、上記の2名も同様である)が、その証人であるコナン本人がそのことについて全く覚えておらず「西野は羽毛アレルギー体質」だと気づかなければ誤認逮捕を認めかけるという、あるまじき失態をおかしている。
- ^ ピーター・フォードについては、コナンや白鳥は彼のことを「フォードさん」と名字で呼び、声優もアメリカ人のアンディ・ホリフィールドが担当している。
- ^ 香坂家が夏美の父方の親族だった場合、曾祖母の灰色の瞳を受け継ぐのは夏美の父になるため。
出典
関連項目
外部リンク
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