安全管理者
安全管理者(あんぜんかんりしゃ)とは、労働安全衛生法において定められている、事業場の安全全般の管理をする者である。 1947年(昭和22年)制定の労働基準法、旧・労働安全衛生規則に規定され、1972年(昭和47年)の労働安全衛生法、新・労働安全衛生規則等の制定により、現行法に連なる法的な位置付けや職務が明確化された。
選任すべき事業場次の業種[1]で常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任が義務付けられている(施行令第3条)。10人以上50人未満の場合は、安全衛生推進者を選任することになる。
以下の事業場では、安全管理者のうち少なくとも1人を専任の安全管理者としなければならない(規則第4条1項4号)。
職務安全管理者は、総括安全衛生管理者が統括管理する業務(第25条の2の規定により労働者の救護に関する技術的事項を管理する者を選任した場合は、救護に関する事項を除く)のうち、安全に係る技術的事項[2]を管理するとともに(第11条1項)、作業場等を巡視(巡視の頻度に特に定めはない)し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を講じなければならない(規則第6条1項)[3]。また、事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置をなしうる権限を与えなければならない(規則第6条2項)。「安全に関する措置」とは、第11条1項の規定により安全管理者が行なうべき措置をいい、具体的には、次のごとき事項を指すものであること(昭和47年9月18日基発601号の1)。
安全管理者が事故等でその職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない(規則第4条2項)。安全管理者は、総括安全衛生管理者が選任されている事業場においては総括安全衛生管理者の指揮を受ける。 安全管理者は、労働基準法第41条でいう「監督若しくは管理の地位にある者」に当然には該当せず、該当するか否かは当該労働者の労働の態様によって判定される(昭和23年12月3日基収3271号)。 安全管理者の選任、職務違反をした者は、50万円以下の罰金に処せられる(第120条)。 資格要件安全管理者は、次のいずれかの要件を満たす者でなければならない。労働安全衛生規則の改正により、選任する安全管理者の要件として、新たに安全管理者選任時研修の受講が必要になった(規則第5条、平成18年10月1日施行)。
安全管理者は、その事業場に専属の者を選任しなければならない。なお、1989年(平成元年)4月の改正法施行により事業場の安全管理活動に労働安全コンサルタントを自主的に活用することができるようにするため、安全管理者の資格を有する者として労働安全コンサルタントを加えるとともに、複数の安全管理者を選任する場合において当該安全管理者の中に労働安全コンサルタントがいるときは、当該労働安全コンサルタントのうち1人については、事業場に専属の者である必要はないこととした(規則第4条1項2号、昭和63年9月16日基発602号)。 事業者は、安全管理者を選任すべき事由が発生した日から[5]14日以内に安全管理者を選任しなければならず(規則第4条1項1号)、選任したときは遅滞なく、所定の様式により、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届出なければならない(規則第4条2項)。労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる(第11条2項)。 なお、選任すべき人数については、所轄都道府県労働局長が指定する化学設備を備えた事業場においては生産施設の単位について、操業中、常時必要な数の安全管理者を選任することとされるほか[6](規則第4条1項3号)、事業場の規模や作業の態様等の実態に即して、必要な場合には2人以上の安全管理者を選任するよう努めなければならないとされるが、衛生管理者のように規模等によって選任すべき人数を定めた一般的な規定は安全管理者には設けられていない。 親事業者(ある事業者の意思決定機関(株主総会その他財務及び営業又は事業の方針を決定する機関)を支配している事業者)の事業場の安全管理者が子事業者(支配されている事業者)の事業場の安全管理者を兼ねる場合には、次の要件のいずれにも該当するときは、それぞれ、事業場に専属の者を選任しているものと認められるものであること。これにより親事業者の事業場の安全管理者が子事業者の事業場の安全管理者を兼ねることを認められた後、それぞれの事業場において別の安全管理者を選任するに至った後は、再びこれによる兼務を行うことは認められないものであること。なお親事業者の事業場における安全管理者が子事業者の事業場の衛生管理者又は衛生推進者を兼ねること及び親事業者の事業場における衛生管理者が子事業者の事業場の安全管理者を兼ねることは認められないものであること。(平成18年3月31日基発第0331005号)。
安全管理者に対する教育等事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、安全管理者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない。厚生労働大臣は、この教育、講習等の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする(第19条の2)。これに基づき、現在「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」(平成元年5月22日公示第1号、最終改正平成18年3月31日)が公示されている。事業者は、安全衛生業務従事者に対する能力向上教育の実施に当たっては、事業場の実態を踏まえつつ当指針に基づき実施するよう努めなければならない(指針)。 安全管理者選任時研修・能力向上教育選任時研修時には当該業務に関する全般的事項について教育が行われる。
能力向上教育時には以下の項目が定期又は随時行われる。
脚注
関連項目外部リンク
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