ハウステンボス
ハウステンボス(蘭: Huis Ten Bosch)は、長崎県佐世保市にあるテーマパーク。略称は「HTB」[注釈 1]、テンボス。オランダの街並みを再現し、ヨーロッパ全体をテーマとしている。東京ディズニーリゾートの1.5倍の敷地面積で、単独テーマパークとしては日本最大[4]。ドラマ・映画・CMなどのロケ地としても使われている。佐世保市の町にもなっており、所在地の住所は「佐世保市ハウステンボス 概要名称について「ハウステンボス」(Huis Ten Bosch)は、オランダ語で「森の家」。「Huis」が「家」、「Ten」が「の」あるいは「〜にある」、「Bosch」が「森」である。オランダのベアトリクス王女が住む宮殿の一つ、ハウステンボス宮殿(Paleis Huis ten Bosch)を再現した事から名付けられた。オランダ語の慣用例に基づいた「Huis Ten Bosch」のカナ転写は「ハウス・テン・ボス」である[注釈 2]。現代のオランダ語では「bosch」という言葉は「bos」として書かれ、「ten」という場所を示す文法的な表現 (te + den) は古くからある慣用表現に限られる。 プロジェクトの概要大村湾北端に面した佐世保市針尾島の早岐瀬戸に接する部分に位置し、総開発面積は152ヘクタール(46万1千坪)。現在の東京ディズニーリゾート(ディズニーランド+ディズニーシー)とほぼ同規模。単独テーマパークとして、連続した敷地面積では、群を抜いて日本最大である。 テーマパークの一形態ではあるが、ひとつの街として造るというコンセプトに基づいているため、舞台裏と呼べる部分がない。そのため、宅配業者などが行う店舗への物品搬入や、ホテルのリネン類補給のためのサービス車両は、全てハウステンボスの街中を走り建物脇に堂々と停車・駐車している。普通に宅配便の車が走っており、これによってハウステンボスの街並みに現実感が備わるとともに、こうした車両を、クラシックデザインの導入や、原色系に統一したテーマカラーで彩ることで、街並みのアクセントとして積極的に機能させている。 開園当初の構内車両には、日産自動車や富士重工業が開発したオリジナルのクラシック架装が施してあるほか、トヨタ・クラシックなどのクラシックデザインの車両なども使われている。ハウステンボス向け特注車両がもとになって市販化された車が、スバルサンバー・クラシックである。 なお、開業までの詳細な経緯は、創業者である神近義邦の著書「ハウステンボスの挑戦」(講談社、1994年1月、ISBN 4062064073)に記述されている。 現在のハウステンボス敷地の大部分は、江戸時代に干拓された水田地跡である。太平洋戦争時に軍に接収されたのち、ごく短期間、広島県江田島の海軍兵学校針尾分校が置かれた。大戦終結後には、厚生省佐世保引揚援護局が置かれ、針尾島西部の浦頭港に帰着した船舶から上陸した引揚者は、ここまでを徒歩で移動し、休息救護を受けた歴史がある。この地で休息後、もよりの国鉄南風崎駅から故郷への帰宅の途についた。引揚援護局閉鎖後は、陸上自衛隊針尾駐屯地を経て、その後長崎県に払い下げられた。県は、針尾工業団地として造成を行ったが、工業用水供給の問題などから企業誘致が進まず、手つかずのままだった。議会で毎回のように批判を浴び頭を悩ませていた県は、大村湾西岸でテーマパーク運営で成功していた長崎オランダ村に注目。長崎オランダ村株式会社(当時)も、長崎オランダ村付近の交通渋滞が著しかったことなどから、駐車場としての購入を希望した[5]。しかし、神近はアジアのリゾート観光拠点を創り上げる新たな構想をねり上げ、オランダ村を発展的に大規模に拡大した施設を新たに建設した。完成後、商号変更を行い、現在のハウステンボス(ハウステンボス株式会社)に至る。 イメージづくり計画の設計は、日本設計が行い、オランダ村の設計も手がけた池田武邦が再び行なった。オランダ400年の国づくりに学びながら、現在の時代を先取りする環境都市となっていく生活ストーリーを作り、「人と自然が共存する新しい街」「自然の息づかいを肌で感じることのできる新しい空間」を目指してつくられた。ユトレヒト地区を最古の市街部に見立て、ビネンスタッド、ニュースタッドと入園口方向へと新しく都市が広がっていく形の構造となっている。 各地区毎にオランダの文化と豊かな自然が息づかせ、ハウステンボスで生活する人々や訪れる人々につかの間の余暇と、本格的な充実したリゾートライフを提供することを目指している。どの地区でも、施設や街の紋章までもがオランダ政府の協力や助言のもとにオランダに実在する建物を忠実に再現する方法で造られており、建物に付属の石像もオランダの文化財修復家が製作に当たっている。車道はピンコロの石畳とし、歩道や横断歩道にまで様々な色彩のレンガが使われた。このようなレンガ基調の街並に、ウッドデッキなど木材を配して落ち着ける空間を提供し、さらに、そこに植物を植え込んで充足感を抱けるように工夫されている。特に最奥部に建てられたパレスハウステンボスは、オランダ王室の宮殿を写したもので、王室の許しを得て忠実な再現が行われている。宮殿最上部に置かれた王冠は、オランダの企業グループより贈呈を受けたもので、日蘭両国の友好の象徴である。このパレスハウステンボス宮殿は、庭園の設定にも、これからの友好関係の発展を願う、希望を込めたストーリーが隠されている。 町名としては、1991年(平成3年)6月16日に「佐世保市ハウステンボス町(まち)」に変更された[6]。施設の側を通る県道にも長崎県道141号ハウステンボス線の名称が付されている。 なお、母体となった長崎オランダ村は、2001年10月まで西彼町の元の場所でしばらく営業を続けていたが、閉園後、2003年に西彼町に売却された。現在、西彼町は、町村合併によって西海市になっている。オランダ村跡地はハウステンボスの南方、27kmの所に現存している。2010年5月より施設の一部が西海市西彼支所として活用されている。 土壌の改良長崎オランダ村株式会社が買い上げた土地は、敷地のほぼ全域がヘドロで埋め立てられており、雨が降ると地面に染みこまずに巨大な水溜りになり、乾燥するとひび割れを起こした。砕石されずに投棄された2m近い岩塊が次々とでてくる有様だった[5]。一面、背の高い草に覆われ、樹木は生えていない状況だった。まずは草木が失われていた土地を土壌改良して樹木林を形成させることからスタート。土地購入費以上の投資をして土地を掘削し、堆肥を混入する有機的な方法で土壌改良を実施した。東京農業大学関連の学術研究者による綿密な周辺調査に基づいて植栽を行い、約40万本の樹木と30万本の花を植えた。 運河の掘削水田だった頃には、塩害防止用のクリークが張られていたが、ハウステンボス建設時にはすでに埋められていた。ハウステンボス建設では、これとは別に、城塞部を囲むように新たに運河が掘削された。運河は全長6,000m。水深2.5m、幅20〜30m。水際は、動植物に対し自然の生態系がなだらかに形成されるように、接水部分に砕石や土、木を利用した。運河護岸はコンクリート壁を使わず、石積みとしている。ハウステンボスでは親水護岸と呼んでいる。白鳥などの水鳥も、運河から容易に陸部に上がり、営巣している姿が見られる。また、魚類の姿もよく観察できる。 また、運河の海水は大村湾の干満の潮位差を利用して入れ替える他、要所要所に設置した水中ポンプで強制循環させて澱ませないように管理している。園内には水処理施設が建設され、ここで汚水や排水を高度浄水処理し、中水道として草木に散水、または土壌浸透させて、自然に運河に戻すという方法をとっている。その徹底した環境への配慮により、大村湾の水質よりもハウステンボスから湾に戻される海水のほうが水質が良いと言われている[7]。 営業状況建設などにかかった初期投資費用は総額2千数百億円といわれる。総合保養地域整備法(リゾート法)の適用も受けている。 ハウステンボス自体の入場者は1996年度には380万人を記録したが、2001年度の入場者は293万人まで減少、2003年には、初期投資の負債2,289億円を解消できず、会社更生法の適用を申請して破綻に追い込まれた(改正会社更生法の第1号適用)。メインバンクであった都市銀行の統合合併を前に、融資先から一斉に債務処理を迫られる事態となったためである。これによって、ハウステンボスカントリークラブ ジャックニクラウスコース、ハウステンボス商事、長崎バイオパークなどの関連会社とともに、十八銀行や長崎バスなど、出資していた地元企業も経営に打撃を被っている。2000年代後半には入場者が激減してゴーストタウン化していた[8]。 野村プリンシパル・ファイナンスをスポンサーとする更生計画案が認可されて以来、他のテーマパーク同様、韓国や台湾、中華人民共和国、香港等の近隣諸国からの来場者が増えた。しかし、2008年に起こった世界金融危機の影響を受けて、近隣諸国からの来場者、国内顧客共に減少し、大規模なリストラ策を発表するなど経営再建が厳しくなった。このような経営状態の悪化により、野村プリンシパル・ファイナンスは2010年3月をもって支援から手を引くことになった。 2010年4月からはエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が中心となる新たな経営再建が開始され、澤田秀雄が社長に就任した。澤田は当初旅行代理店業のH.I.S.が経営そのものに関与するのを否定的に考えており、支援はするものの経営には関与しない方針であったが、九州財界からの度重なる要請に応えて社長に就任した。澤田は金融機関と交渉により当時残っていた60億円の債務の8割の債権放棄を受け、残債務も九州財界から出資金で弁済し、債務ゼロの状態で経営を開始した。佐世保市から固定資産税納付額に相当する再生支援交付金を10年間受け取る約束も結んだ[9]。2010年3月13日に西日本鉄道(西鉄)が出資に参加することを表明し、西鉄の他、九州電力、九電工、西部ガス、九州旅客鉄道(JR九州)もハウステンボスに出資することを表明した。H.I.Sの傘下に入っての事業再建を始めて初の決算で、「開業以来初の営業黒字に転換しました」と公表した[3]。 また、コスト削減や利用者増のため、2010年4月にハウステンボス敷地の南側1/3を切り離して、フリーゾーン(無料で入れる領域)とした。フリーゾーンとの境界には新たに「南門」を設けて、フリーゾーンには他企業の参入も許し[注釈 3]、ベンチャー企業による「英語専用店舗」などのユニークな施設も建設された。また、隣接して所有していたヨットハーバーである「ハウステンボスマリーナ」を2011年4月に手放し、長崎県に譲渡した。 なお、前述のフリーゾーンは2015年5月1日以降準有料化となっている。 ただし当日有効のハウステンボスの入場券所持の場合とホテルヨーロッパ・フォレストヴィラ・ウォーターマークホテル長崎の宿泊者はフリーゾーンの入場料金は不要となる。 またフリーゾーンは2015年7月18日以降ハーバーゾーンに名称変更された[10]。 2015年にはオペレーティングロボットを採用する変なホテルをオープンさせ、科学技術に興味を持つ若者育成に力を入れている[要出典]。2019年10月1日からハーバーゾーンは花火開催時を除き入場無料化となる。 2018年12月3日、ハウステンボスは中国の投資会社復星集団から2割超の出資を受ける方針を表明。中国人観光客の受け入れ増なども視野に入れた提携話であったが、2019年2月に破談となっている[11]。 2019年5月21日、代表取締役社長を坂口克彦へ交代。前任のカリスマ経営から組織経営の転換を目指し、入場料金の見直しなどを図る。2019年10月1日からはシニアや妊婦、幼児連れなどを対象とした新区分「おもいやりパスポート」を導入。 2022年9月30日、エイチ・アイ・エス(HIS)は子会社ハウステンボスの全株式を香港の投資会社PAGに666億6000万円で売却した [12]。 沿革
チケットの種類パスポート(入場券)1日券
複数日券
年間パスポート1DAYパスポート約3回分で1年中遊べるチケット。年間パスポート限定特典として場内レストラン10%割引や駐車場無料券等の特典がある。 プレミアムチケットアトラクションやレストラン、ショーの優先利用ができるチケット。パスポートとは別途購入が必要。 プレミアムチケット~Royal6~アトラクション6施設やレストラン、ショーの優先利用にラウンジまで使える最上級の体験が出来るチケット。 プレミアムチケット~Standard3~アトラクション3施設やレストランを優先利用できる、パークを賢く楽しめるチケット。 施設営業中のミュージアム・アトラクション等ウェルカムゲート
アドベンチャーパーク
アトラクションタウン
光のファンタジアシティ
アートガーデン
アムステルダムシティタワーシティ
ハーバータウン
閉館したミュージアム・アトラクション等ウェルカムゲート(旧ブルーケレン)フラワーロード(旧キンデルダイク)
アドベンチャーパーク(旧ブルーケレン)
アトラクションタウン(旧ニュースタッド)
クローズ)
アートガーデン
光のファンタジアシティ(旧ミュージアムスタッド/スリラー・ファンタジー・ミュージアム,スリラーシティ)
アムステルダムシティ(旧ビネンスタッド)
ハーバータウン(旧スパーゲンブルグ)
場外・パークワイドハウステンボスオフィシャルホテルハウステンボス場内と場外に7件のオフィシャルホテルがある。オフィシャルホテル宿泊者専用パスポート[注釈 6]といった特典が利用できる。ホテルでハウステンボス各種パスポートも扱う。 このうち、ハウステンボスの直営ホテルという扱いで「ハウステンボスオフィシャル5ホテル」と称されている[注釈 7]。オフィシャルホテルとしての特典の他、開園前の先行入場、ハウステンボス入場口近くから手荷物配送、ハウステンボス入場口近くの宿泊者専用駐車場の無料利用などの特典を得る(特典内容はホテルにより異なる)。 このうち、ハウステンボス5ホテルを除く2件のホテルのみがオフィシャル&パートナーシップホテルと称されることもある[注釈 8]。 場内
場内ホテル宿泊者(ホテルデンハーグ含む)は入国口、マリンターミナルの場内ホテル手荷物預かり所で荷物を預け各ホテルまで届けてもらうことができる。 但しマリンターミナルの場内ホテル手荷物預かり所はホテルデンハーグは対象外 場外
その他サービス施設
登場作品
アクセス
テレビ番組
書籍関連書籍
脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク
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