観覧車(かんらんしゃ、英語: Ferris wheel)は、大きな車輪状のフレームの周囲にゴンドラを取り付け、人を乗せて低速で回転させることで、高所からの眺望を楽しめるようにした乗り物。
歴史
観覧車の原形は、18世紀初めモスクワに登場したロシア帝国貴族の遊具であり、あらかじめ車軸に巻き付けてあったロープを人力で引っ張るものであった。さらに17世紀には、木製の大きな輪から垂らした鎖に人が乗って、この輪を人力で回すという遊具がオスマン帝国領のブルガリアにあったことが、西欧からの旅行者などの記録に残っている[1][2]。
現在のモーター駆動による機械式の観覧車は、1893年にアメリカ合衆国の技師ジョージ・ワシントン・ゲイル・フェリス・ジュニアにより開発されたものであり(観覧車の英名「フェリス・ウィール」は彼の名にちなむ)、シカゴで開催されたシカゴ万国博覧会 (World Columbian Exposition) のアトラクションの1つとして建設された[3]。これはパリのエッフェル塔に対抗して作られたものであり、直径75.5m、2,160人乗りと当時としては巨大なものだった。1995年に再建されたシカゴNavy Pierの観覧車は直径も42mと小さなものになっている。
モーター駆動式は長らくホイールの中心軸にモーターを仕込んだものであったが、この機構は振動や強度の問題から観覧車の大型化の足かせになっていた。巨大観覧車の建設の嚆矢となったのはホイールに取り付けたガイドレールをタイヤローラーで挟み、そのタイヤを回転させてホイールを回すタイヤ駆動式の開発であった。タイヤ駆動式は静穏性がそれまでの駆動方式よりも優れ、中心軸に掛けてもいい負荷が多くなり、理論上は形状が変化するベルトを使用する観覧車も製作できる。
世界最大の観覧車の変遷
*数値は全高(車輪の直径ではない)
世界の観覧車
*歴代で高さ世界一となったものは水色の背景
*かつ高さ世界一でも移転したのものは緑色の背景
日本の観覧車
歴史
日本の観覧車の歴史では1907年(明治40年)4月、東京・上野で開催された東京勧業博覧会のものが有名である。これが日本初の観覧車とされていたが、福井優子の研究により、1年前の1906年5月に大阪・天王寺公園で開催された日露戦争戦捷紀念博覧会で観覧車が設置されていたことが確認された[25]。その後の調査でさらに、天王寺の観覧車(蒸気動力で動き、直径15メートル、ゴンドラ14個を設置)は、1か月半で解体され、翌年、上野の東京勧業博覧会に移設されたことが判明した。この博覧会では大阪から移設された1台に加え、電動式観覧車1台も設置されていた[26]。
日本では明治末期の1906年~1911年、上記を含む5基の観覧車が設置された。かつて、これらは全て輸入されたと見られていたが、福井は全基が国産だった可能性が高いとの見解を示している。理由としては、1907年7月の『東京日日新聞』に、観覧車を製造した石川島造船所と営業人の間での訴訟を伝える記事が掲載されていること、1910年に福岡市で開催された共進会を図柄とした絵葉書で、観覧車の支柱に「若松徳永鉄工所製造」という文字があること、ゴンドラ内に椅子がない構造が5基に共通していることを挙げている[27]。
イルミネーション点灯機能を備えた観覧車は、神戸ハーバーランド・モザイクガーデンの「ワンダーホイール(1995年)」が世界初である。現在この機能は多くの大口径観覧車に搭載されるようになった。
世界初のビル一体型の観覧車が登場したのは1998年、大阪の「HEP FIVE」であり、10階建ビルの7階が乗り場になっており、ビル屋上を越えて最高点(106m)に達する。他に横浜モザイクモール(最高点75m)、アミュプラザ鹿児島(最高点91m)、みらい長崎ココウォーク(最高点70m)にも同じタイプの観覧車が存在する。
2024年の時点で、営業している観覧車で日本最大のものは、2016年に開業した大阪府のEXPOCITY内にある「REDHORSE OSAKA WHEEL」(高123m)である。
日本最大の観覧車の変遷
日本の主な観覧車の一覧
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ビッグ・オー(東京ドームシティアトラクションズ)
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コスモクロック21(よこはまコスモワールド)
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シャイニング・フラワー(富士急ハイランド)
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梅田、HEP FIVEの観覧車
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ドンキホーテ道頓堀店の観覧車
営業終了または休止中の観覧車
日本以外の主な観覧車
ヨーロッパ
北米
アジア
オセアニア
主なメーカー
参考文献
脚注・出典
- ^ Still turning – Jacksonville built the world's first portable Ferris Wheel
- ^ Eyes in the sky
- ^ “Bird's-Eye View of the World's Columbian Exposition, Chicago, 1893”. World Digital Library (1893年). 2013年7月17日閲覧。
- ^ a b Great Wheel, Earls Court - English Heritage Images
- ^ The Great Wheel, Earl's Court Exhibition Ground
- ^ The Ferris Wheel's London Rival - The New York Times
- ^ PhotoLondon: National Monuments Record - The Great Wheel, London
- ^ a b c Ferris wheels - an illustrated history, Norman D. Anderson
- ^ KIPPO NEWS Tuesday, June 24, 1997 (日本語)
- ^ a b Palette Town Daikanransha website date page (日本語)
- ^ Trejos, Nancy. “World's tallest Ferris wheel opens in Vegas”. USA TODAY. USA TODAY. 31 March 2014閲覧。
- ^ 「写真特集:高さ世界一の観覧車 ドバイ」『CNN.co.jp』2021年9月19日。2021年9月25日閲覧。
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- ^ a b c d e f g h i World’s top 10 tallest Ferris wheels
- ^ The Ferris Wheel to Revolve Hopefully on May Day
- ^ Century pleasure garden Profile(中国語)
- ^ Evergreen marinoa official website (日本語)
- ^ China's Highest Ferris Wheel under Construction
- ^ The wheel deal: Amusement park offers lofty view
- ^ Shanghai Jinjiang Amusement Park Introduction
- ^ Space World attractions information
- ^ Nagashima Resort Guide Book
- ^ Mirabilandia - Vivi il Divertimento! Novità 2009 - ISpeed, il nuovo Roller Coaster!
- ^ 劍湖山世界 welcome to janfusun fancyworld
- ^ 1906年4月6日付の『大阪毎日新聞』。福井優子『観覧車物語―110年の歴史をめぐる』(平凡社、2005年)。
- ^ 『都新聞』1907年4月11日。「国内初の観覧車はどこへ? 大阪→東京 移設判明」2011年5月26日 『読売新聞』大阪本社版31面。福井優子「観覧車の時代--その後の新発見(番外)塗り替えられる歴史」『建築設備&昇降機』93号、2011年9月。
- ^ 【文化往来】明治の観覧車「全て輸入品」説に異論『日本経済新聞』朝刊2019年5月17日(文化面)2019年6月7日閲覧。
- ^ かつてフランスに「Grande Roue de Paris」が存在したため
- ^ 日本最古の観覧車、2メートル小さかった 函館公園「こどものくに」 2019年5月22日記事、2019年5月24日閲覧
- ^ 『北海道新聞』第4社会面 2019年5月23日記事「最古の観覧車 公表より小さく 函館 高さ12メートル→10メートル、直径10メートル→8メートル」より、2019年5月24日閲覧
- ^ “<ベニーランド>観覧車命名権 あおがく取得”. 『河北新報』. (2017年2月21日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201702/20170221_12003.html 2017年3月12日閲覧。
- ^ “<コボスタ>観覧車 回り巡ってまた笑顔を”. 『河北新報』. (2016年5月4日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201605/20160504_14026.html 2016年5月4日閲覧。
- ^ “屋上に観覧車 日光の複合商業施設オープン”. 下野新聞 (2021年4月2日). 2021年7月2日閲覧。
- ^ ~☆7月17日りんどう湖に観覧車新規OPEN☆~那須高原りんどう湖ファミリー牧場
- ^ のりもの広場|あらかわ遊園公式ホームページ
- ^ 観覧車も含め敷地の大部分は川崎市多摩区に所在。
- ^ a b “よみうりランド、エアコン付き新観覧車「スカイゴーランド」”. Impress Watch (2024年8月23日). 2024年8月23日閲覧。
- ^ 屋上かまたえん
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- ^ “「海竜の里センター」2024年3月末で終了 施設・遊具の老朽化や利用者減で 福島県いわき市が発表”. いわき市. 2023年12月3日閲覧。
- ^ “いわき市海竜の里センターの利活用に関するサウンディング型市場調査 実施要領”. いわき市. 2023年12月3日閲覧。
- ^ 大規模修繕のため休止中であったが、ドリームワールドそのものが閉園になった。「千葉市動物公園 遊園地を無料開放! ~ 遊園地廃止にあたり皆様に感謝を込めて ~ 」(千葉市動物公園プレスリリース)。
- ^ 荒川遊園改修工事スケジュール (PDF)
- ^ 『北日本新聞』2022年4月27日付18面『魚津のゆうえんち ミラージュランド40周年<下> 観覧車 一番人気 子どもの笑顔 原動力』より。
- ^ 『北日本新聞』1991年4月21日付朝刊20面「できたよ大観覧車 魚津ミラージュランド 20階ビルの高さ」より。
- ^ 大山の歴史編集委員会編『大山の歴史』大山,1990年刊,p.613
- ^ 『富山県100年記念 にっぽん新世紀博覧会公式記録』(1984年6月20日、北日本新聞社発行)106頁『プレーランド』より。
- ^ 『北日本新聞』2006年9月20日付朝刊33面『観覧車 老朽化で撤去 富山市ファミリーパーク 部品落下 6月から休止 安全運行見込めず』より。
- ^ “福井県唯一の観覧車、老朽化で43年の歴史に幕 越前市武生中央公園のシンボル”. 福井新聞ONLINE. (2021年5月21日). https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1321438 2021年5月21日閲覧。
- ^ 御殿場プレミアム・アウトレット Information
- ^ “【あの日】海の中道に国内最大級の観覧車=8月10日”. 西日本新聞me. 2024年5月16日閲覧。
- ^ “かしいかえんの観覧車、新天地は秋田の動物園 福岡市東区で21年末閉園”. 西日本新聞me. 2024年5月16日閲覧。
- ^ “台湾最大の観覧車、台中にオープン 福岡から移築 (2017年5月15日)”. エキサイトニュース (2017年5月15日). 2024年5月16日閲覧。
- ^ “福岡・マリノアシティ全面刷新 ランドマークの観覧車は撤去へ”. 西日本新聞me. 2024年5月16日閲覧。
- ^ “沖縄・北谷の観覧車を撤去「カーニバルパーク・ミハマ」解体作業9月に終了”. 琉球新報. (2022年4月5日). https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1496819.html 2022年5月7日閲覧。
外部リンク
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