王鵬幸之介
王鵬 幸之介(おうほう こうのすけ、2000年2月14日 - )は、東京都江東区清澄白河出身で、大嶽部屋所属の現役大相撲力士。本名は納谷 幸之介(なや こうのすけ)。身長191cm、体重180kg、血液型はA型[1]。最高位は東前頭筆頭(2024年11月場所)。 父は元関脇の貴闘力忠茂、祖父は第48代横綱の大鵬幸喜[2]。長兄はプロレスラーの納谷幸男[3]。次兄は同部屋の納谷幸林。弟は同部屋の夢道鵬幸成。従兄は元大相撲力士の若闘力駿磁。曽祖父はマルキャン・ボリシコ。 来歴入門前2000年当時は現役幕内力士だった貴闘力と第48代横綱・大鵬(同、大鵬親方)の三女夫婦の三男(男4兄弟)として誕生[4]。 中央区立有馬小学校1年次から地元の相撲道場(江東青龍館)に通い、4年次には全国大会で準優勝の実績を残し[5]、同年次に清宮幸太郎と「わんぱく相撲東京都大会」で対戦して白星を挙げた[6]。小学6年次には後に兄弟子となる森麗と大嶽部屋の稽古場で対戦し勝利したとされる。さいたま市立大宮西中学校を経て埼玉栄高校保健体育科に進学すると相撲部に所属し、3年次に国体少年の部の個人と団体の両方で優勝した[7]。 高校卒業後の進路については、祖父の興した大鵬部屋の後身に当たる大嶽部屋(師匠は17代大嶽)への入門の意向を元々持っており、当初は国体終了後の2017年11月場所で初土俵を踏む予定だった[8]。ところが、優勝により12月開催の全日本相撲選手権大会の出場資格を得たことから、大相撲入りを延期した[9]。同大会では予選落ちだった[10]。全日本選手権終了後の2017年12月19日に大嶽部屋入門を正式に発表した[11]。四股名は本名と同じ「納谷」となり、初土俵は高校卒業を待たず2018年1月場所で踏むことになった。同期生には第68代横綱・朝青龍の甥の豊昇龍がおり、奇しくも元横綱の親族が2人同時に初土俵を踏むことになった[12]。 入門後初土俵の場所は前相撲で3連勝し、この場所で前相撲を取った14人の中で最初に新序出世を決めた[13]。新序出世披露では、大鵬が現役時代に使用した化粧廻しを締めた[14]。翌3月場所では7戦全勝で序ノ口優勝を遂げた[15]。序二段に上がった5月場所は、6番目の相撲で入門以来初めての黒星となったが[16]6勝1敗で終え[17]、三段目に上がった7月場所も6勝1敗だった[18]。 幕下に上がった9月場所は3勝4敗と入門後初めて負け越した。2019年1月場所は5日目の3番相撲から3連敗したが、3敗目を喫した場所10日目の夜に父に呼び出され「土俵で気迫が足りない。はたかず最後まで突き放していくように」と一喝された。これに気合が入ったのか、そこから残りを勝って4勝3敗と勝ち越し[19]。 2019年は番付を駆け上がり、幕下上位初挑戦となった7月場所では西幕下6枚目で3勝4敗と負け越したが、9月場所では東幕下10枚目で4勝3敗、11月場所では東幕下7枚目で4勝3敗と2場所連続で勝ち越した。 2020年7月場所2日目の1番相撲では三役経験者の常幸龍と対戦し、廻しを切りながら前に出て土俵外に出す相撲を取った(決まり手は押し出し)[20]。 西幕下筆頭で迎えた2020年11月場所に6勝1敗の成績を収める[21]。2021年1月場所での新十両昇進にあわせ、「王鵬」に改名[22]。大鵬の「大」に変わるものとして「王」の字を入れ、この四股名は王鵬が幼少期の頃に師匠が考えたものである[23]。祖父、父親、子と3世代で関取になった例は琴ノ若以来の2例目(ただし祖父と父は元養子縁組関係)。11月25日に部屋で行われたリモート会見では「小さい時におじいちゃんの相撲を(ビデオで)見て。相撲のカッコよさを感じたのは、おじいちゃん。今でもかっこいいなというのはあります」と祖父への想いを語り、「親方にも、悔しかったらやるしかないぞといわれた。自分の中では誰よりもやっているつもりで、それが結果につながったのかなと」と昇進に繋がった理由を分析した[24]。この昇進によって、祖父の出身地、北海道弟子屈町から化粧廻しが贈呈されることとなった[25]。2020年12月24日に2021年1月場所の番付が発表され、「王鵬」の四股名と十両昇進が掲載された[26]。 十両昇進後新十両の2021年1月場所は持ち前の馬力を生かせず5勝10敗に終わり、1場所で幕下に転落した[27]が、3月場所では幕下2枚目で勝ち越し、1場所で十両に返り咲いた。再十両の5月場所は12日目に十両の番付では初めての勝ち越しを達成して「最低限なことはできた」と安堵した様子を見せたが[28]、14日目の松鳳山との取組で右足首を痛めてしまい、千秋楽は自身初めての休場となった[29]。 11月場所は4日目時点で単独の全勝に躍り出るなど絶好の滑り出しとなった[30]。その後も白星を重ねて8連勝で勝ち越しを決めた。 12月11日の稽古後、2022年の抱負として怪我無く全6場所皆勤することを語った[31]。 新入幕後2022年(令和4年)1月場所で東前頭18枚目となり新入幕を果たした[32]。新入幕会見の際には、祖父の大鵬の新入幕場所の成績と比べずに勝ち越しを目指したい旨を語った[33]。この場所6日目には大関経験者の栃ノ心を寄り切りで下した。取組後「つかまってしまったけど、前傾姿勢は崩れていなかった」「めちゃくちゃ重かったです」と取組の感想を述べ、新入幕場所であるこの場所の感想については「毎日楽しく相撲を取っている。気持ちがいい。気分がいい」とコメント[34]。その2022年1月場所は10日目を終えた時点で7勝3敗だったが、そこから5連敗を喫して7勝8敗の負け越しに終わり、翌場所の十両陥落が決定した。東十両筆頭となった3月場所では、4日目からの5連勝などもあり10日目に勝ち越しを決め十両優勝争いにも加わっていたが、11日目から4日間で3敗を喫し優勝争いからは脱落。しかし千秋楽の勝利で10勝5敗で同場所を終え、十両1場所で再入幕を確実とした。7月場所は場所前に佐渡ヶ嶽部屋へ出稽古して自信を付けたこともあって13日目に勝ち越しを決め、自身初となる幕内での勝ち越し[35]。9月場所は7勝8敗と負け越したものの、翌11月場所は番付据え置き。11月場所は敢闘賞候補に挙がったが、三賞選考委員会による投票の得票数が出席過半数に満たず見送られた[36]。15代武蔵川は場所終了直後のコラムで、審判部に三賞を渋られてはいるが十分受賞が相当だという趣旨のコメントを行っている[37]。2021年12月に2022年の抱負として語った「怪我無く全6場所皆勤」は達成できた。豊昇龍の大関昇進直後の2023年夏巡業立川場所の際に日刊スポーツの一問一答に応じ、早く豊昇龍と戦える上位総当たりの地位まで上がりたいと抱負を語っていた[38]。9月場所は5勝10敗と2桁黒星を喫し、場所後の10月9日の秋巡業伊勢原場所の朝稽古では幕内最多の12番を取って鍛えた。その12番の中にはライバルで大関の豊昇龍に指名されて取った連続8番(3勝5敗)もあり、豊昇龍からの指名には「ありがたい」と感謝しつつ、豊昇龍が「負けたくない」と意識していたと聞くと「気合を入れてきてくれる。それに応えられるように、また対戦できるようになるためにも、上位に定着しないと」と意欲をのぞかせた[39]。2024年3月場所で、自己最高位を東前頭3枚目まで更新。自身としては初めて上位総当たりの場所に挑むこととなった[40]。場所5日目の照ノ富士戦で寄り切りにより白星を獲得し、横綱初挑戦にして金星獲得となった[41]。しかし11月場所では1枚半上昇と飯米の差で新三役には届かなかった。なお、父・貴闘力はこの番付運の悪さについて、その兄弟子で元安芸乃島の高田川親方の自身に対する私怨だと意図的な冷遇だと主張している[42]。この場所は6勝9敗と負け越して場所後の新三役を逃したが、この場所を14勝1敗で優勝した琴櫻に唯一土を付ける活躍をしたため、父の貴闘力も「子供の時からの英才教育を怠った自分が悪いよね」と見る目が無かったと惜しんでいた[43]。2024年は三役以上の対戦成績が14勝15敗の勝率4割8分3厘と、年間6場所で平幕の地位に在位した力士でトップとなり、中でも結びの一番で5勝1敗、勝率8割3分3厘は、平幕とは思えない驚異的な数字であった[44]。 取り口突き押しが得意だが、引き癖が弱点。引き癖は三役昇進が見えた頃にも若干残っている[45]。関取昇進前は腰高で腰が軽く、投げに吹き飛んだりあっさり寄り切られたりするケースが多かった。筋力が付いて突き押しの馬力が増したことによって十両昇進をつかんだ。十両昇進の際に舞の海から「四つ相撲を覚えてほしい」と期待された[46]。 2021年1月場所の相撲について15代武蔵川は、腹を出し過ぎた高い体勢で当たることと手の力が足りないことを指摘し、ぶつかり稽古のイメージで当たる事、鉄砲の稽古をもっと積むことを勧めた[47]。 新入幕の際に師匠の17代大嶽は「脇の甘さ、腰の高さという欠点があったが直ってきていると思う」と相撲ぶりを評した[33]。 2022年3月場所から手足をしっかりと前に運ぶ稽古を重点的に行い、ランニングと休養を大事にした調整を行った[48]。 2022年11月場所中には花田虎上が自身のコラムで、前場所までの雑な相撲がなくなって腰高にならず突っ張りも小さくしていることを好調の要因として挙げている[49]。この場所の相撲ぶりを15代武蔵川は「彼は、逃げないところがいい。今までは相撲が遅いからヤラレちゃっていたけれど、これから"勝ち方"も覚えていくと思う」と評していた[37]。 2023年1月場所中も北の富士のコラムでやはり十両昇進前からの引き癖を指摘された[50]。 2023年5月場所12日目の大相撲中継のインタビューで「毎日楽しんでやってます」と発言した際には、鶴竜親方から必死さやがむしゃらさに欠けているという趣旨の批判を受けた[51]。 2023年7月場所後の夏巡業中の取材では、四つに組まれた際の弱さは少しは改善されたと、自己認識しているところを語っていた[38]。 2024年1月場所中の玉ノ井親方(元大関・栃東)のコラムでは、以前と比べて引き癖が影を潜め、タイプの違う力士と対戦を重ねて幕内の雰囲気にも慣れたことで、自分の力を出せるようになっていると評された[52]。2024年3月場所中にも元武双山の藤島親方が小細工無しの真っ向勝負を評価している[53]。 父の貴闘力は琴ノ若(現・琴櫻)に大関昇進争いで先を越された[54]王鵬を「人間が優しいんだろうね」と精神面を指摘している[55]。 2024年9月場所後の元武蔵丸の武蔵川親方のコラムでは、序盤の出遅れ癖のイメージはあるが腰が重くなっていると評価している[56]。 父の貴闘力は、王鵬は小学6年生の時に体脂肪率が60%台に達したため脂肪肝や血行障害で健康を害していたが、埼玉栄中学・高校での6年間の野菜中心の食生活により体脂肪率が20%台まで落ちたと、山田道紀監督の食育に感謝している。一方で「体の芯が無い、股関節が硬い」と埼玉栄中学・高校出身の力士の傾向を王鵬とまとめて語っており、山田のフィジカル指導力に注文を付けてると取れる発言をしている[57][58]。 人物
主な成績2024年11月場所終了現在
三賞・金星
各段優勝
場所別成績
合い口2024年11月場所終了現在 (以下は最高位が横綱・大関の現役力士)
※カッコ内は勝数、負数の中に占める不戦勝、不戦敗の数。太字は2024年11月場所終了現在、現役力士。
改名歴
脚注注釈出典
関連項目外部リンク
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