別表神社(べっぴょうじんじゃ)とは、神社本庁が定めた、神社本庁が包括している一部の神社のことである。
概要
昭和21年(1946年)2月2日、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の神道指令による神社の国家管理の廃止に伴い、公的な社格の制度(近代社格制度)が廃止されたため、それに代わるものとして昭和23年(1948年)に定められた。社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。しかし、旧官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、「役職員進退に関する規程」(昭和23年9月30日規程第15号)[注釈 1]において特別な扱いをすることと定められた。その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」を「別表神社」と通称する[2]。
別表神社は、人事の面で以下のような特別の扱いがされる[4]。
- 一定以上の基準に達すれば宮司の下に権宮司を置くことが認められる
- 宮司・権宮司は明階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では権正階以上)
- 禰宜は正階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では直階以上)
- 権禰宜は権正階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では直階以上)
- 宮司・権宮司の在任中の身分は特級、一級・二級上以外の者は二級とする
- 宮司・権宮司の任免は各都道府県の神社庁長の委任事項としない(神社本庁統理の直接任免とする)
当初の別表神社は旧官国幣社のみであったが、昭和26年(1951年)7月9日に「別表に掲げる神社選定に関する件」という通達(昭和26年7月9日通達第4号)が出され、旧官国幣社以外で新たに別表神社に加える神社の選定基準が示された。それは以下のものである[6]。
- 由緒
- 社殿・境内地等の宗教施設の状況
- 常勤神職の数
- 最近3年間の経済状況
- 神社の活動状況
- 氏子崇敬者の概数、その分布等崇敬状況
また、別表神社の総数は一応300社程度とした。別表神社は昭和27年(1952年)1月29日の宗教法人「神社本廳」新廳規発行と共に旧官国幣社190社が指定され、次いで同年5月の第7回評議員会で現に権宮司を置くことを承認された東京大神宮以下8社が、同年5月27日に追加指定された。昭和28年(1953年)には各神社庁で選考された約30社が神社本庁に内申され、3月23日に行われた初の別表に掲げる神社審査委員会の審議、5月の第8回評議員会の審議を経て、同年5月29日付の「役職員進退に関する規程の一部を改訂する規程」により別表から京都府出雲神社(出雲大神宮)を削除、神奈川県伊勢山皇大神宮以下29社が追加された。昭和30年(1955年)7月1日に北海道小樽市の住吉神社、上川郡(現・旭川市)の上川神社、旭川市の北海道護國神社、岡山市の岡山縣護國神社、徳島県那賀郡(現・阿南市)の津峯神社が追加された。
この規定により、旧府県社・内務大臣指定護国神社を中心に別表神社の数は次第に増加し、昭和35年(1960年)末時点で261社[10]、昭和41年(1966年)6月24日時点で307社[11]、平成18年(2006年)現在で353社となっている。なお、別表神社の追加選定は5年毎に行われるのが通例だが、明治維新百年を記念した特例追加(1968年)等も行われている。
昭和28年(1953年)5月30日に通達された「役職員進退に関する規程の一部改正について」(昭和28年5月30日通達第5号)に「別表に掲げることは、事務取扱上の区別をしたに止まり、何等社格的な意味はない。」とあるように、別表神社は社格のような神社の格付けではなく、あくまでも神職の人事のみにかかわる区別である。しかし、別表に掲げられている神社は社殿、境内、神職の数などの面で比較的大きな規模の神社であり、一般には一種の格付けとして捉えられている。
なお、社格同様、伊勢神宮は別格として別表神社に入れられておらず、神宮大宮司の任免は「神宮規則」により「神宮崇敬者総代の同意を得て責任役員(当該大宮司を除く)が連署の上、勅裁[注釈 2]を仰ぐ」とされ(第32条)、さらに特別の扱いがなされている。
別表神社一覧
「式内」は式内社(名神=名神大社、国史=国史見在社)、「近代」は近代社格制度の社格(官大=官幣大社、国中=国幣中社、別官=別格官幣社、護国=内務大臣指定護国神社[注釈 3])。「加列年」は、旧官国幣社で昭和23年(1948年)の制度開始時点で本庁被包括であったものについては当初より別表神社であるので、一律で1948年と記載している。1948年以降に本庁被包括となったものについては「役職員進退に関する規程の一部を変更する規程」により別表神社一覧に加列した年を記載している。
また、神社本庁評議員会の決議(役職員進退に関する規程改正の附帯決議)で「単立の旧官国幣社が本庁(神社本庁)に所属した場合は別表に掲げる神社とすること」とされたことから、熊野座神社(熊野本宮大社)など旧官国幣社が神社本庁に所属した場合は別表神社に登載されている。
なお、昭和61年(1986年)に「本庁に所属しない神社の被包括関係設定に伴ふ特例措置に関する規程」(昭和61年規程第4号)が定められており、第3条「非所属神社の由緒中、旧官国幣社の取扱ひを受けた神社は、被包括関係設定の承認と同時に、(略)別表に掲げる神社(以下「別表神社」といふ。)とする」と非所属神社(単立神社)が神社本庁に所属した場合の別表神社に関する取り扱いが定義されている。このため、神社本庁から一時離脱していた別表神社のうち、旧官幣大社だった明治神宮は平成22年(2010年)の神社本庁への復帰と同時に別表神社に再加列しているが、旧府県社相当だった北海道護國神社は、平成15年(2003年)に神社本庁へ復帰したものの、別表神社への再加列は平成23年(2011年)となるなど、旧社格によって取り扱いが異なっている。
かつて別表神社だった神社
かつては別表神社だったが、神社本庁から離脱(被包括関係を解消)して別表神社ではなくなった「元別表神社」は以下の通り。
(神社本庁を一旦離脱したが復帰して、現在は別表神社になっている神社も、歴史記録として併記してあるが、区別のため背景色を暗くしている。)
旧官国幣社で別表神社になったことがない神社
旧官国幣社のうち、以下に掲げる各社は、昭和21年(1946年)の神社本庁発足当初から神社本庁と被包括関係にない単立神社のため、別表神社ではない。
脚注
注釈
- ^ 平成28年(2016年)7月1日施行の「役職員進退に関する規程」(平成28年規程第1号)により全部変更。
- ^ 天皇による直接の裁決。
- ^ ただし『神社本廳十年史』「別表神社一覧」などは護国神社の旧社格を「府社」「県社」で記載している。
- ^ 「別表神社一覧」に再加列されたのは2011年。
- ^ 「別表神社一覧」から削除されたのは1986年。
- ^ 「別表神社一覧」から削除されたのは1999年。
- ^ 「別表神社一覧」から削除されたのは2002年。
- ^ 2005年は神社本庁から離脱する神社規則変更を決議した年。離脱をめぐり係争となり、2010年の最高裁判決により確定。
- ^ 「別表神社一覧」から削除されたのは2018年。
出典
参考文献