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この項目では、日本の制度について説明しています。総論については「保健センター」をご覧ください。 |
保健所(ほけんしょ、ほけんじょとも言う)とは、地域住民の健康や衛生を支える公的機関の一つであり、地域保健法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市、その他指定された市(保健所政令市)、特別区(東京23区)が設置する。
1938年(昭和13年)に保健所の設置が始まった当初は、国民、殊に農村の保健生活を向上させることを目的として無料の健康相談、保健相談に応じるほか衛生思想の普及、栄養食の改善、料理講習会、食品の腐敗防止、住宅改善の相談、学校給食、子供服の相談など幅広い業務を担うこととされていた。配置される職員は医師2人、薬剤師2人、看護婦3人、衛生指導員3人、書記1人を最小限の人員数とした。こうした目的や体制は戦中、戦後の社会情勢の変化を通じて大きく変化した[1]。
近年では市町村保健センター、福祉事務所などと統合され「保健福祉事務所」「福祉保健所」「保健福祉センター」「健康福祉センター」といった名称となっている場合もあるが、地域保健法に基づき保健所を設置する必要があることから、その地方公共団体の組織規定上は○○保健所という名称も併せて付けている場合が多い。また、政令指定都市・中核市・保健所政令市において、とくに保健所を一つのみ設置している場合には、本庁の保健、衛生を所掌する部局と保健所が一体化している場合も多い。一方、全国の保健所の数は1989年(平成元年)の848から2020年の469まで統廃合が進んでいる[2]。
沿革
業務
保健所の業務は大別すると対人保健と対物保健に分けられる。
- 対人保健(住民に対するもの)
- 一般に保健指導または保健サービスと呼ばれる分野で、母子保健や老人保健など一般的なものは市町村保健センターに任せ、保健所は災害医療や感染症、精神保健など、専門的・広域的な業務に特化している場合が多い。ただし、中核市や政令指定都市、特別区などは保健所設置主体と一致するため、保健所がかなり詳細な部分まで行っている例もある。
具体的な業務の例
保健所の業務を例示すると次のような多様な業務の全部又は一部を行っている。
- 地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項等
- 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
- 栄養の改善及び食品衛生に関する事項
- 調理師及び製菓衛生師免許交付手続き。
- 食品の製造、流通、調理及び販売施設・卸売市場・集団給食施設(飲食店など)に対する営業許可及び監視指導、諸届出の受理。
- イベントなどで食品を取り扱う場合の相談。
- 食品に関する苦情相談の受付。
- 食品や容器包装等の収去(抜き取り)検査。
- 食中毒について、医師からの報告の受理(食品衛生法第58条)。
- 食中毒の原因調査、及び食中毒予防のための普及啓発活動。
- 化製場等[注 3]に関する法律に基づく事務。
- 社会福祉施設(老人ホームなど)や特定給食施設(学校給食センターなど)に対する栄養指導。
- 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
- 医療及び薬事に関する事項
- 保健師に関する事項
- 公共医療事業の向上及び増進に関する事項
- 母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
- 歯科保健に関する事項
- 精神保健に関する事項
- 治療法の確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
- エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
- 衛生上の試験及び検査に関する事項
- その他地域住民の健康の保持および増進に関する事項
法律上の保健所
建築物衛生法における保健所
建築物衛生法3条に規定されている。
- 環境衛生上の正しい知識の普及に図ること。
- 環境衛生上の相談に応じ、環境衛生上必要な指導を行うこと。
児童福祉法における保健所
- 児童の保健について、正しい衛生知識の普及を図ること。
- 児童の健康相談に応じ、又は健康診査を行い、必要に応じ、保健指導を行うこと。
- 身体に障害のある児童及び疾病により長期にわたり療養を必要とする児童の療育について、指導を行うこと。
- 児童福祉施設に対し、栄養の改善その他衛生に関し、必要な助言を与えること。
地域保健法における保健所
地域保健法第6条により、保健所は、次の事項に係る企画、調整、指導などの事業を行うこととされている。
- 地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
- 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
- 栄養の改善及び食品衛生に関する事項
- 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
- 医療及び薬事に関する事項
- 保健師に関する事項
- 公共医療事業の向上及び増進に関する事項
- 母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
- 歯科保健に関する事項
- 精神保健に関する事項
- 治療法の確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
- エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
- 衛生上の試験及び検査に関する事項
- その他地域住民の健康の保持および増進に関する事項
職員
地域保健法施行令第5条第1項により、「保健所には、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士、統計技術者、その他保健所の業務を行うために必要な者のうち、当該保健所を設置する法第5条第1項に規定する地方公共団体の長が必要と認める職員を置くものとする。」とされている。
その他保健所の業務を行うために必要な者とは、保健所の業務を担うために必要な任用資格を有する職員として、薬事監視員、食品衛生監視員、環境衛生監視員、医療監視員、狂犬病予防員などがある。
保健所の所長
地域保健法施行令第4条第1項では、保健所の所長とは保健所の医師であって、次の各号のいずれかに該当する技術吏員でなければならないとされている。
- 3年以上公衆衛生の実務に従事した経験がある者
- 厚生労働省組織令(平成12年政令第252号)第135条に規定する国立保健医療科学院の行う養成訓練の課程(現行1年、平成19年度までの例外規定で3か月コースあり)を経た者
- 厚生労働大臣が、第2号に掲げる者と同等以上の技術又は経験を有すると認めた者
(健康局長通知では「外国において、養成訓練課程に準じる課程を修了し公衆衛生修士 (MPH、MSPH) の
学位を取得した者」とある。国内の
公衆衛生大学院は対象となっていない)
ただし、地域保健法施行令第4条第2項では「地方公共団体の長が医師をもつて保健所の所長に充てることが著しく困難であると認めるときは、2年以内の期間を限り、次の各号のいずれにも該当する医師でない技術吏員をもつて保健所の所長に充てることができる。」とも定められている。
- 厚生労働大臣が、公衆衛生行政に必要な医学に関する専門的知識に関し医師と同等以上の知識を有すると認めた者
- 5年以上公衆衛生の実務に従事した経験がある者
- 養成訓練課程を経た者
健康局長通知によると「厚生労働大臣が、公衆衛生行政に必要な医学に関する専門的知識に関し医師と同等以上の知識を有すると認めた者」とは、国立保健医療科学院教育訓練規程第5条第4項第1号に定める者と同等以上の学力を有すると国立保健医療科学院長が認め、「専門課程Ⅰ」の受講資格を得た者とされ、これを認めるに当たっては、国立保健医療科学院において、次に掲げる出題範囲の試験を行うとされる。
医師国家試験出題基準における
- 必修の基本的事項に関する事柄
- 医学総論に関する事柄
- 医学各論のうち
- ア 健康危機管理関係業務を行う際に必要な感染症、精神疾患、中毒及び外因による疾患に関する事柄
- イ 健康増進関係業務を行う際に必要な主要な生活習慣病(悪性新生物、脳血管疾患、心疾患及び糖尿病)及び関連疾患に関する事柄
- ウ その他、公衆衛生行政(特定疾患、小児慢性疾患等の申請を含む)において関与する可能性の高い疾患に関する事柄
保健所の一覧
この節の参考資料[5]
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
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岡山県
広島県
山口県
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香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
脚注
注釈
- ^ 保健所の統廃合に伴い、動物愛護や狂犬病予防に関する獣医衛生業務の多くは、都道府県や政令指定都市の機関である動物保護センター(自治体により名称は異なる)へ移行しつつある。
- ^ 薬事衛生業務は、自治体によっては生活衛生には含まない場合もある。
- ^ 家畜を食肉としてと畜する際に生じる食用に適さない内臓や骨などを用いて油脂類、ゼラチン、肥料などを製造する施設。
- ^ 清掃業務を所管する部局で行っている場合もある。
- ^ 保健所長が災害医療コーディネーターを兼ねる場合もある[3]。
- ^ 児童虐待防止に貢献しているという指摘がある。詳しくは児童虐待を参照。
- ^ 精神疾患の可能性のある者を見かけたならば、誰でも、保健所を通して指定医診察・保護を申請することができる(精神保健福祉法22条)。また、警察官は、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない(同23条)。
- ^ a b 高座郡寒川町は平塚保健福祉事務所の所管区域であるが、保健所業務は委託により茅ヶ崎市が行う。
- ^ a b 福井市保健所と福井県福井保健所は、同一施設(福井県福井健康福祉センター)内に所在。
- ^ a b 松本市保健所と長野県松本保健所は、同一施設(長野県松本合同庁舎)内に所在。
- ^ 生活衛生室(薬事課、検査課)は藤井寺保健所が管轄。
- ^ a b 旧鳥取保健所が所管していた鳥取市以外の市町村(岩美郡岩美町、八頭郡若桜町、智頭町、八頭町)の保健所業務については、委託により、鳥取市が実施する。
- ^ 松江市については自らが設置した保健所、安来市については島根県が設置した保健所の扱いとなる。
出典
関連項目
外部リンク
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